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□ キャリアデザインマガジン 第160号 2022年6月20日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 学会からのお知らせ
2 キャリア辞典 「インクルージョン」
3 私が読んだキャリアの1冊
『超一流になるのは才能か努力か?』
アンダース・エリクソン、ロバート・プール著
4 キャリアイベント情報等
5 学会活動ニュース
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1 学会からのお知らせ
◆第18回 研究大会 参加申込受付中
9月10日(土)・11日(日)に開催される第18回研究大会の参加申
込の受付中です。学会HPに大会の日程表もアップしております。
第18回大会の大会テーマは「時空を超えた自律的な働き方に向けた
挑戦」です。大会初日には、今大会開催校で、地域に根づいた授業を
展開されている大正大学地域創生学部でのお取組みを、ご紹介いただ
きます。大会2日目の基調講演では、株式会社パソナJOB HUB
の加藤遼氏にご自身の仕事経験をもとに、職場以外での働き方につい
て広くお話しいただきます。続くシンポジウムでは、加藤氏に加え、
辰巳哲子氏(リクルートワークス研究所)、高橋梓氏(ICCコンサ
ルタンツオーストラリア)にもご登壇いただき、石山恒貴先生のファ
シリテーションで議論を深めていきます。
詳細および申込方法:下記の学会ホームページからご確認ください。
第18回研究大会の申し込みは9月3日までです。皆様のご参加をお待ち
しております。
◆【明日開催・会員限定】2022年 第1回 キャリアのアゴラ ※明日正午申込締切
テーマ:「人材開発政策の今、これから」
開催日時:2022年6月21日(火)19:00~20:30(オンライン入場開始:18:45~)
開催方法:Zoomによるオンライン配信
※お申し込みいただいた方にzoom IDをご連絡いたします。
【 研究会詳細 】
「キャリア研究・政策・国際交流委員会」(委員長:梅崎修法政大学
教授)では、キャリアに関連する政策について議論をする場を作るこ
ととしました。この議論の場を、古代ギリシャ社会に市民が集う社交
の場で、政治、経済、哲学などの議論をした「広場=アゴラ」になぞ
らえてネーミングしました。政策に関わる方から話題提供をしていた
だき、それをもとに自由にディスカッションをして、政策に反映させ
ていただくという、双方向の交流の場にしたいと考えていますので、
この「場」を是非ご活用ください。
さて、「第1回 キャリアのアゴラ」は、厚生労働省人材開発統括官
付参事官(人材開発政策担当)の宇野禎晃氏をゲストスピーカーとし
てお迎えする予定です。会員の皆様からの質問にお応えいただくこと
にとどまらず、相互のディスカッションを通じて、キャリア政策の今
後について考えていきたいと思います。会員限定ではありますが、
是非ご参加ください。
登壇者:宇野禎晃 厚生労働省人材開発統括官付参事官(人材開発政策担当)
進行 :武石恵美子 法政大学キャリアデザイン学部教授
当学会キャリア研究・政策・国際交流委員会副委員長
参加費:会員/無料(事前申込制)、非会員は参加できません
申込詳細: https://career-design.org/conference/localtokyo2022-6/
◆日本キャリアデザイン学会 関西支部第25回研究会
テーマ:「本気でやれば学生はここまで成長するコーオプ教育(産学
協働教育)の実践
ー関西で一番元気のいい短大の学生募集V字回復の軌跡ー
開催日時:2022年7月27日(水)19:00~21:00
開催方法:Zoomによるオンライン配信
※お申し込みいただいた方にzoom IDをご連絡いたします。
【 研究会詳細 】
大阪夕陽丘学園短期大学は、大阪の中心地区にある2学科・学生数
440人の都市型小規模の短期大学です。食物栄養学科(定員120人)、
キャリア創造学科(定員100人)で戦後設置認可された短期大学149校
の1校であり、70年を超える歴史を持ちます。
この小さな短期大学が、令和3年度文部科学省「大学等におけるイン
ターンシップ表彰」において最優秀賞を受賞しました。経団連、経済同
友会、日本商工会議所といった経済団体からも高く評価され、短期大学
としては初の最優秀賞となりました。
(詳細は文科省HPをご参照ください:
https://www.mext.go.jp/b_menu/internship/1408338.htm)
本研究会では、そのありのままの姿をお話いただくことで、企業、
大学における人材育成の大きなヒントを得ることになると思います。
多くの方のご参加をお待ちしています。
講師:大阪夕陽丘学園短期大学前学長/コーオプ教育研究所研究主幹 東田晋三
大阪夕陽丘学園短期大学キャリア創造学科准教授 神殿織江
進行:松高政(関西支部長/京都産業大学)
総括コメント:三川俊樹(関西支部役員/追手門学院大学)
堀越ひとし(関西支部役員/公益財団法人関西生産性本部)
参加費:会員/無料、非会員/2000円(事前申込制)
申込詳細:https://career-design.org/conference/localkansai2022-7/
◆第4回 企業人交流会
テーマ:「ワークエンゲージメント」と「キャリア自律」
開催日時:2022年7月30日(土)15:00~17:00(オンライン入場開始:14:50~)
開催方法:Zoomによるオンライン配信
※お申し込みいただいた方にzoom IDをご連絡いたします。
【 交流会詳細 】
1年ぶりとなりますが、4回目となる「企業人交流会」を開催します。
コロナ過によるリモートワークをはじめとした働き方の改革の進展、
企業によってはジョブ型人材マネジメントへの改革と併せた社員の
キャリア自律を求め支援する施策の拡充、高齢者雇用安定法の施行に
よるシニアの雇用の在り方の変化、若手も含め労働市場での転職の増
加など、実際に職場にてこれらの変化を実感していらっしゃる方も多
いのではと思います。
さて、今回はこうした変化の底流に流れる「仕事」と「キャリア」の
関係の変化について、「ワークエンゲージメント」と「キャリア自律」
という切り口から議論してみたいと思います。広報委員会副委員長で
あり慶應義塾大学SFC研究所上席所員の堀内泰利氏に、ご自身の研
究を題材にした課題提起をいただき、会員の皆様の職場の現実を持ち
寄って議論することにしました。企業人のみならずご関心ある方のご
参加をお待ちしています。
登壇者:堀内泰利 慶應義塾大学SFC研究所上席所員
当学会広報委員会副委員長
ファシリテーター:松岡猛 NECライフキャリア(株)
当学会広報委員会副委員長
参加者:学会員(企業にお勤めの方以外でも歓迎します)
学会員から紹介された方(学会への入会を検討されて
いる方はなお歓迎いたします)
定員50名
参加費:会員・非会員/無料(事前申込制)
※終了後の懇親会について
終了後、お時間が許す方は、懇親会をかねて、30分程度の全体共有兼
懇親会をいたします。率直な意見交換のため、お好みでアルコールを
入れながら議論したいと思いますので、適宜呑み物・食べ物をご準備
ください。
申込詳細:https://career-design.org/conference/networkeventtokyo04/
◆学会ウェブサイト(http://www.career-design.org/)、フェイスブック
(https://www.facebook.com/careerdesigngakkai)随時更新中です。
ぜひご一読ください。
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2 キャリア辞典
インクルージョン
近年、「ダイバーシティ&インクルージョン」を経営戦略の一つとして謳う企業
が増えた。「ダイバーシティ」については、いまさらその定義を説明する必要ない
ほど市民権を得た言葉となったが、いまだ「ダイバーシティ」については誤解があ
るようだ。それは、女性、外国籍人材など多様な人材を確保すれば価値創造につな
がる、というものである。
少し学術的になるが、「ダイバーシティ」には、女性、人種、外国人、年齢と
いった表から見て区別できる「表層的ダイバーシティ」と、キャリア、働き方、経
験、スキルなど相手をよく知ることで認知される「深層的ダイバーシティ」がある。
前者についえは、職場の多様性が高くなると各メンバーの満足度が低なり、組織か
らの離脱も高くなることや組織業績に負の影響をもたらす傾向があると指摘されて
いる。一方、後者は、組織業績に正の効果をもたらすことが明らかになっている。
その違いは、表層的ダイバーシティが、自分と類似する者同士のグループを「イ
ングループ」、そうでないグループを「アウトグループ」と区別し、様々なグルー
プが乱立しコンフリクトを起こしたり、アウトグループとして阻害された側の意欲、
行動を低下させてしまうリスクがあるのに対し、深層的ダイバーシティは彼らが持
つ能力をうまく活用することにある。
人は、目に見える違いだけではなく、「気があう」、「自分と類似性がある」と
いう要素でカテゴリー化(仲間づくり)をしたがる傾向がある。気の合う人たち、
同じ価値観を持っている人たちとはコミュニケーションを「あ・うん」の呼吸で進
められ、仕事も円滑に運ぶことが多いことは多くの人が実感しているだろう。一方、
いちいち説明をしなければいけないグループとのコミュニケーションや、多様な立
場から意見が出されその収集に時間がかかる場には、できれば関わりたくない、一
緒に仕事をしたくないのが心情だろう。このカテゴリー化に伴う苦手意識、さらに
は偏見や差別の醸成がダイバーシティの効果を軽減・消滅させているのである。す
なわち、ダイバーシティは多大なコストを要するため、その効果がなかなか出ない
のである。
では、どのように表層的ダイバーシティのコストを軽減し、個々人の知識、経験、
スキルといった深層的ダイバーシティを引き出して価値創造に結実させることがで
きるのだろうか。その解が「インクルージョン」である。
「インクルージョン」とは、「職場の一員として認められており、かつ自分の独自
性や能力が組織の成功のために必要とされている」という本人の自己認識をいう。
Shoreら(2011)は、X軸を「職場の一員として認められている程度」、Y軸を「独自
の価値が認められている程度」として、両者が高い状態を「インクルージョン」と
した。
さらに、「職員の一員として高く認められているが、自分の独自性や能力は組織の
成功のために必要とされていない、あるいは、自分の独自性を発揮しないことで仲
間として認めてもらえる」状態を「同化」、「職場の一員としては認められていない
が、自分の独自性や能力は組織の成功のために必要とされている」状態を「分化」と
し、組織の一員として認知されておらず、かつ独自性や能力を組織の成功のために必
要とされていない状態を「排他」とした。たとえば外国籍の社員に対して言語や文化
的側面でだけアドバイスを求め、その他の重要事項は日本人の社員だけで決めてしま
う場合や彼らに日本人社員と異なるルールを認めたりすることは「分化」の状態にあ
るといえる。
また、シニア社員が「昔の経験を語ると社内で疎まれる」として、自身が持つ知識
や経験の提供を差し控えようとする場合は「同化」状態にあるといえる。近年では、
育児短時間勤務を取る女性社員にも能力発揮の場を提供するようになってきたが、か
つては育児をしている女性らを「特別枠」に当てはめ、能力発揮の場を提供してこな
かった状況も「分化」といえるだろう。
林・森永ら(2019)は、日本国内にある某企業データをもとに、組織に認められてい
る(同論文では「同一化」と言っている)と感じる従業員が職場に多い場合、自分の
職場のダイバーシティの高さが協力的モチベーションに結実することを明らかにした。
まさに、Shoreらが指摘した、組織の一員として承認され、かつ自分の能力を発揮する
場があることが価値創造に結実することを再確認したといえよう。さらに、林・森永
らは、インクルージョンのある職場では、互いが持つ能力や知識を共有する傾向があ
ることも指摘している。組織の一員として認められ、自分の能力発揮が組織業績に寄
与していることが自信となり、他者への支援にも積極的になるのかもしれない。
これについては、トーマス(Thomas, D.A.)とイーライ(Ely, R.J.)もダイバーシ
ティの効果について、インクルージョンと同義のことを指摘している。
彼らはダイバーシティの効果・業績として「学習・効率性パラダイム(learning and
effectiveness paradigm)があるとした。このパラダイムは、多様性から学習すると
いう姿勢を組織から求められ、違いがあるからこそ同じ組織で働くことが重要だと組
織員が考えることが、組織の価値を高める、というものである。
「インクルージョン」は決して自然発生的にできるものではない。インクルージョン
の定義からも分かるように、組織の一員として「承認」されることや、能力を発揮す
ることを支援する職場風土があることが重要である。その醸成には、やはり職場マネ
ジメント者が不可欠であることは、読者はすでお分かりだろう。
Shore L.M., Randel A.E., Chung B.G., Dean M.A., Ehrhart K.H. & Singh G.(2011)
“Inclusion and Diversity in Work Groups: A Review and Model for Future Research”,
Journal of Management 37(4), pp.1262-1289
林祥平、森永雄太、佐藤佑樹、島貫智行(2019)「職場のダイバーシティが協力志向的
モチベーションを向上させるメカニズム」『本経営学会誌』日 42 (0), pp.52-62
(編集委員 松原光代)
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3 私が読んだキャリアの一冊
『超一流になるのは才能か努力か?』
アンダース・エリクソン,ロバート・プール著
土方奈美訳 文藝春秋 2016.7.30
「Deliberate Practice」という言葉をお聞きになられたことがあるだろうか。
「限界的練習」と訳されているが、超一流と言われている人たちが共通的に取り入れて
いる練習法で、「限界的練習」の原則を適用することで学習や技能向上の効果を格段に
高めることが可能とされている。私が「Deliberate Practice」を知ったのは、大学の
キャリアカウンセラー研修会であった。「セラピストは長い時間経験していれば上手に
なるのか?」「10000時間かければマスターするのか?」「あなたは、まあまあ練習を
しているvs ビデオを見直して、何を直すのかに焦点化して、何度も繰り返す」との質
問の後、アメリカで行われているEmotion-Focused TherapyのDeliberate Practiceにつ
いて紹介があった。私自身20年近くキャリアカウンセリングを実践してきたが、自身の
カウンセラーとしての研鑽についても、またカウンセラーの指導という点でも改めて考
えさせられた。
「Deliberate Practice」についての書籍(翻訳本)はほとんどなく、少し前の書籍に
なるが本書を紹介したい。本書の著者は、フロリダ州立大学心理学部のアンダース・
エリクソン教授で、長年にわたりスポーツ、音楽、科学、医療、ビジネスなどそれぞれ
の分野のエキスパート(達人)たちについて科学的に研究してきた超一流研究の第一
人者である。その研究から超一流と言われる人たちが取り入れている共通の練習法を突
き止め、それを「限界的練習(Deliberate Practice)」理論として発表している。
本書は、「PEAK:SECRETS FROM THE NEW SCIENCE OF EXPERTISE」の翻訳書で、超一
流と言われる人たちに関する研究を踏まえ、適切な訓練や練習を通じて脳や身体の驚
くべき適応性を引き出し、能力を生み出すことが可能であること、どうすれば自ら選
んだ分野において能力を向上させられるかを考察している。
本書の内容を少し詳しく紹介したい。
序章は、「スポーツ、音楽、科学、医療、ビジネスなど、どこでもその技能で周囲
を圧倒するひとにぎりの傑出した人たちがいる。生まれつき人並み以上の何かを持っ
ている、才能に恵まれている、本物の才能があると考えられている。本当にそうだろ
うか。」との質問で始まる。生まれつきの才能と思われてきた「絶対音感」を数カ月
のトレーニングですべての子供が獲得した研究を紹介し、絶対音感などこれまで天賦
の才と考えられてきたものは、適切な訓練によって習得できる能力であるとしている。
筆者は、幅広い分野の傑出した人材を研究した結果、分野を問わず技能を向上する
ための最も有効な方法は例外なく、同じ一般原則を満たしているとし、この普遍的な
アプローチを「限界的練習」と名づけている。
続く第1章以降で、「限界的練習」とは何か、なぜ有効なのか、エキスパートは傑
出して能力を生み出すためにどのような実践をしているかを説明している。
第1章では、まず短期記憶に関する筆者の研究を紹介している。短期記憶では7ケタの
数字を覚えるのが限界とされてきたが、筆者と特別な訓練を繰り返した学生が最終的
に82ケタも記憶することに成功している。この100年間にオリンピック競技、ピアニス
トなどの技能が劇的に向上してきたこと、それが限界を少し超える負荷をかけ続ける、
コンフォート・ゾーンから飛び出す限界的練習の成果であるとしている。
第2章では、限界的練習によって実現される驚異的な能力向上の背後で起きている
ことを説明している。厳しいトレーニングに反応して人間の脳の構造や機能が変化す
ることを示す研究(ロンドンのタクシー運転手のMRI画像を使った研究、バイオリスト
やチェリストの左手指を制御する脳の領域の研究など)から、限界的練習が脳の適応性
を引き出し、その結果として能力が向上することを説明している。
第3章では、超一流が、瞬時に膨大な情報を処理するために活用している心的イメー
ジについて説明している。チェスのグランドマスターは心理的イメージを用いて、膨大
な数の駒のパターンを記憶し、進行中のゲームの展開を瞬時に理解していること、エキ
スパートは長年にわたる練習によって極めて精緻な心的イメージを形成し、それぞれの
専門分野で圧倒的技能を発揮するのに必要な高度な能力を実現してことを紹介している。
限界的練習により優れた心的イメージが形成され、心的イメージがさらにスキルとパフォ
ーマンスの向上を後押しすると説明している。
第4章では、能力の差がどうやって生まれるかを説明している。天才の練習時間は抜き
ん出ており、練習に膨大な時間を費やさなければ並外れた能力は手に入らないことを研究
結果から明らかにしている。だが練習時間以外にも重要な要素が必要であり、それが限界
的練習であるとしている。限界的練習では、現在の能力をわずかに上回る課題に挑戦し続
けること、明確に定義された具体的目標があること、集中して意識的に活動に取り組むこと、
フィードバックとそのフィードバックに対応して取り組み方を修正すること、有効な心的
イメージを生み出すことが求められるとしている。
第5章では、長く経験するだけでは能力は向上しないもしくは低下すること、どれだけ
知識があっても技能がなければ意味がないこと、講義やセミナーを受けてもほとんど何の
効果もないことを医師や看護師の例をあげて説明し、ビジネスの世界に限界的練習を取り
入れる必要性を強調している。
第6章では、自身の限界を超える負荷をかけつづける苦しい限界的練習をつづけるテク
ニックについて説明している。第7章では、超一流になる子供の育て方について、3人の娘
を全員チェスのトッププレイヤーに育てあげたハンガリーの心理学者ラズロ・ボルガーの
事例などをもとに説明している。
第8章では、「生まれながらの天才はいるのか?」との質問に対して、誇張されていた
モーツァルト伝説や、パガニーニの魔法なような能力も限界的練習の賜物だったことなど
を取り上げ、「生まれつきの才能」で超一流になった人などおらず、またトッププレイヤー
に共通の遺伝子的特徴なども存在しないとしている。練習こそが能力の最大の源であり、
さまざまな練習法の中で最も効果が高いのは限界的練習であると主張している。
終章「人生の可能性を切り拓く」で、限界的練習の応用可能性について述べている。
ノーベル物理学賞を受賞したカール・ワイマンが限界的練習の原則を応用した物理学の教
授法を開発し驚異的な成果を出しており、教育分野に限界的練習型の授業・学習を取り入
れることで大きな変革を起こすことが可能と主張する。また医師、教師、技術者、パイロ
ット、プログラマーをはじめさまざまな分野のプロフェッショナルが生涯にわたって限界
的練習により能力を発展させていく可能性を高めることができ、自分の人生の可能性を自
分で切り拓いていけるのだと述べている。
本書は科学的研究からこれまでの才能や学びに関する常識を覆し、研究に基づき限界的
練習法とその有効性、限界的練習法の開発と実践について説明しており、大変説得力に富
むものである。学校教育に携わる方、プロフェッショナルの育成に携わる方、自らのプロ
フェッショナルとしての能力開発と向上を目指す方々にぜひ読んでいただきたい書籍である。
(編集委員 堀内 泰利)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
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4 キャリアイベント情報等
◆テーマ 労働セミナー「副業・兼業制度導入と人材活用のコツ」
日 時 2022年6月24日、29日
参加費 無料(定員75名)
主 催 東京都労働相談情報センター
詳 細 https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/seminarform/index/detail?kanri_bango=seminar-zchuo-001222
◆テーマ ワークショップ「コミュニケーションエラーはなぜ起こる?」
日 時 2022年6月28日
形 式 オンライン開催
参加費 無料(事前申込制)
主 催 大原記念労働科学研究所
詳 細 https://www.isl.or.jp/service/seminar/20226.php
◆セミナー「直近の法改正に基づく実務対応のポイント」
日 時 2022年7月4日
参加費 無料 募集人数70名(先着順)
主 催 神奈川県かながわ労働センター
詳 細 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/k5n/evt/e6092671.html
◆「働く女性のためのキャリアデザイン&スキルアップセミナー」
日 時 2022年6月29日から7月19日
形 式 オンライン開催
参加費 無料。定員200名。
主 催 東京都労働相談情報センター
詳 細 https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/seminarform/index/detail?kanri_bango=seminar-zchuo-001226
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5 学会活動ニュース
◆2022年5月16日(日)
2021年度 第2回 地域連携・支部活動推進本部 於オンライン
-組織体制の件、地域連携の件、その他
◆2022年5月20日(金)
第5回 キャリアデザインライブ! 於オンライン
テーマ:「産業構造転換に直面した石炭の街を、珈琲と生の音楽で支
え続けてきた、大牟田の母、上野由幾恵さんと、その人生の志を受継
ぐ冨山博史さんに伺う–人と地域をつなぐ!一隅に灯し続ける希望、
その現場に立ち会おう!」
ゲスト:上野由幾恵、冨山博史
聞き手:坂口慶樹 当学会研究会企画委員会委員
◆2022年5月21日(土)
2021年度 第7回 理事会 於オンライン
-奨励研究対象者案の件、支部設置等に関する規程改定案の件、
入会時の推薦人の署名の件、その他
◆2022年5月29日(日)
2021年度 第3回 研究大会企画委員会 於オンライン
-審査の件、大会運営の件、シンポジウムの件、抄録・プログラムの
件、その他
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【編集後記】
本号冒頭でも紹介したように、キャリアデザイン学会「第18回 研究大会」の
参加申し込みの受け付けが始まりました。テーマは「時空を超えた自律的な働き
方に向けた挑戦」。withコロナ時代で多様化する働き方とキャリア形成の在り方、
方向性や可能性を模索する挑戦の場です。皆さまふるってご参加ください(s)
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。
【日本キャリアデザイン学会広報委員会】
石川 了 労務行政研究所(株式会社労務行政)
内田勝久 富士電機株式会社
荻野勝彦 トヨタ自動車株式会社
梶田マリ 株式会社モスフードサービス
小室銘子 株式会社パーソル総合研究所
高橋基樹 日本無線株式会社
平野恵子 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
堀内泰利 慶應義塾大学
松岡 猛 NECマネジメントパートナー株式会社
松原光代 近畿大学
山野晴雄 元・桜華女学院(現・日本体育大学桜華)高等学校
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@career-design.org
〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
三鷹ビジネスパーク2号館 ぶんしん出版内
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