設立趣旨

生涯学習社会とキャリアデザインの必要性

生涯学習社会とキャリアデザインの必要性
今日、社会を構成する諸分野の急速な変化とその影響に伴い、家庭、学校、職場、地域、ひろく一般社会における、従来からの生き方のモデルの不適合が顕著になってきている。 多様な生き方、働き方が容認され、広がる一方で、新しい選択肢、多くの選択肢を前にとまどい、選び方に迷い、また間違った選び方によって自分の能力、適性、意欲を生かせず、キャリアの発達に問題をかかえ、人生の設計図が描けずに悩む人々も多い。 こうしたキャリアをめぐる混乱を整理し、社会において現在生じているさまざまな問題を解決するためには、個人の側でも、またそういう個人を受け入れたり 支援したりする組織や機関、ひろくコミュニティの側でも、従来の古いキャリア観を再点検し、新しい時代に対応したキャリア観を模索し、そのために必要な知 識を得て、健全なキャリアの設計、再設計を行う姿勢を持ち、見識を深めることが必要である。

キャリアに関する学際的な研究の必要性

キャリアに関する学際的な研究の必要性
キャリアを取り巻く環境変化は広範囲にわたり、また変化の速度は急である。変化によって生じる問題の発見や問題解決に必要な知識・技法も、性、世代、産業や職業、地域など、様々な要因により、きわめて多様である。 このため、これに対処するには、既存のひとつの学問分野だけでは不十分であり、教育学、経営学、文化学、社会学、心理学など、さまざまな分野にわたる研究者が枠を超えて、問題意識を共有し、研究することが必要である。 とりわけ、学校卒業までのキャリア発達と、卒業後の職業生活におけるキャリア発達、また引退後や職業以外の生活におけるキャリア発達を別々の学問が取り 扱う状況を克服する必要があると考えられる。すなわち、キャリアデザインというコンセプトを焦点とする新たな学問的領域の樹立とその深化が不可欠である。

生涯学習時代のキャリア発達に関わる研究者と実務家の交流の必要性

生涯学習時代のキャリア発達に関わる研究者と実務家の交流の必要性
キャリアデザインは、人の一生をかけてのキャリア発達プロセスの様々な段階に関わることである。したがって、家庭や地域など様々なコミュニティにかかわ る場で、また学校教育や生涯学習の場で、あるいは企業や様々な組織・団体で、さらに行政やNPOなどで、様々な機会に、キャリアの形成・開発・支援・助 言・相談など、生涯学習時代のキャリアデザインに直接、間接に関わって行動している実務家が、研究者とともに経験や知見を交流し、議論し、理論と実践をと もに豊かにしていくことが必要である。

日本キャリアデザイン学会の使命

日本キャリアデザイン学会は、こうした観点から、研究者、学生、実務家、専門家や関心のある市民が参加し、それぞれが自らの枠を越え、共同して新しい学 の形成に参画することを通じ、キャリアの転換期にあり、新しいキャリアを模索する人々に対し、キャリアデザインの科学を提示することを目的として組織する学会である。

日本キャリアデザイン学会が持つべき性格

日本キャリアデザイン学会は、以上のような使命から、次のような性格を持つべきである。
  • 生涯学習が社会のあらゆる領域で求められる時代にあって、常に自分と環境、自分に必要なスキルと知識を問い直し、自分のキャリアを設計・再設計し続けて軌道修正しうる人々の育成を考えようとする非営利組織である。
  • キャリアを狭義の職業キャリアにとどまらず、個人の一生を通じて様々な人生を選択し、それらの結果あゆむライフコースを含めて広く考えるものであり、キャリアデザインを、質の高い生き方の計画的な選択であると考える。 したがって学会は、公教育における進路指導・就職指導・カウンセリングその他、児童・生徒・学生のキャリア設計に関わる者から、官民の各種機関・組織・ 企業・団体等におけるメンバーからクライアントなどの関係者のキャリア設計に関わる者、コミュニティにおける住民・市民のライフデザインに関わる者、さら に豊かに生きるための文化・教養の場の設計に関わる者など、幅広い実務家や市民と、キャリアデザインに関わる基礎研究・応用研究を行っている人々との出会 い・交流・相互啓発の場である。
  • 教育学、経営学、文化学、心理学その他、キャリアに関わって専門を持つ学際的な研究交流の場とするが、学際の名のもとに議論が拡散せぬよう自戒し、焦点を定め、徹して深い知見を示しうるキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場である。
  • キャリアデザインとその支援の実務の場で得られた知見を、上記のような深い知的活動でもって検証し、理論化し、また、そのような最先端の理論を学んで、現場で実証し、生かす、理論と実践の連携の場である。
  • 学問の精神にのっとった知的活動によって、キャリアデザインの技法から論説に至るまでの誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立しようとする、誠実な知的営為の場である。
  • キャリアデザインに関わる様々な資格、必要な知識、技法、専門について実態に即して検証し、より高い品質の規格を設定する、標準化の努力の場である。
  • さまざまな関連団体、学会、協会等との連携を行いながら、実務的ニ-ズに即して調査研究を受託し、自ら行い、実務家に有益なプログラム、技法等を開発し、あるいはまた公共政策を検討し、提言活動を行う、21世紀の日本の現実に関わり、変えようとする運動の場である。
以上に賛同する各位の学会への参加を広く呼びかけるものである。