私のキャリアデザイン

「学生と共に歩む道」
筑紫女学園大学 学生課 係長
井上 奈美子
「学生と共に歩む道」

私は十三年間、福岡県の太宰府に位置する筑紫女学園大学において延べ4千人近くの学生に対する進路相談とキャリア支援企画に数多く取り組んできた。それらの活動を通じて、私の人生の使命はキャリア支援の役割を大学教育の中に見出すことであり、支援活動の積み重ねが若年者雇用問題に何らかの貢献を齎してくれると信じてきた。

数々の 企画 を展開する中で、特に、先輩ゼミ,就職合宿,一日インターンシップ、保護者同伴ガイダンス、卒業生座談会は、学生が気持ちを比較的楽にして体験できる短期間のキャリア支援プログラムとして、長い時を経て大学に定着していった。

プログラムでは、学生自身が主体的学習意欲の醸成を目指すような教育設計を行い、その過程には、課題作成,情報収集・分析,プレゼン,議論,内省化といった流れを組み込んだ。その過程で、多くの学生達は「大学4年間のいかなる学びも自分の姿勢次第で興味深いものとなり、更に自分を成長させる糧になると気付いた」と話してくれた。

また、進路相談では、自分の短所を悲観する多数の学生が訪れる。そのような時は、学生が自分の課題を見つめたことによって抱いた苦しみの感情を傾聴し、その後の活動について共に考えるように努めてきた。その成果、学生それぞれの就職活動状況や精神状態を把握した上で、求人情報を提供することが可能となった。

求人に関しては、新規開拓を展開しながら採用前後の情報共有を重ねていったところ、徐々に経営者や人事担当者の方々から採用と教育に関するご相談やご提案を受けることが増えていった。それは企業の人材ニーズを的確に把握することを可能とし、学生と企業のマッチングの成立という副産物を生んだ。

学外では、各大学の就職部課長様の若手育成への配慮を頂「九州地区大学就職指導研究協議会」事務局長を5年間拝命した。その間、新企画が次々と生まれ、特に大学と企業と行政が共同企画した合同面談会や求人サイトの発足では、数百社の企業様と仕事をさせて頂いた。経験を通して、人事採用と教育とは「企業力の源」なのだと確信した。

そして平成16年、私は「学生と労働市場、双方のニーズに確かに応えるキャリア教育の実現のためには、自分自身のスキル向上が必要不可欠だ」と考え、九州大学大学院経済学府産業マネジメントコースに入学した。そこで修得した、企業分析やグローバルビジネス、人事管理、マーケティング、金融市場、九州・アジア経済等に関する知見の数々は、業界や企業分析のキャリア講座で大いに役立った。この修士課程での2年間は寝食を忘れるほどに多忙な毎日だったが、学ぶことの楽しさを改めて実感する非常に良い機会でもあった。また昼夜を問わず親身なってご指導をいただいた先生方や社会人学生の仲間との交流は、私自身のキャリア・人間形成にも影響を与えてきた。それはまさに緒方洪庵の適塾を連想させる日々であった。

仕事面では、昨年学生課に移動となり、聴覚に障がいを抱える学生の学習支援を含め、幅広い層の学生支援を担当することになった。これを契機に、私は在学生全体を対象とするキャリア支援のあり方を追求するようになった。

現在、私は博士課程に在籍し、塩次喜代明教授の指導の下で組織学の研究に取り組んでいる。昨年、実証的研究の成果として「 気付きを生むキャリア教育の実践–MBAホルダーらを講師として 」を 『人材育成研究』(2008年2月号)に投稿した。この中で社会人MBAホルダーによるキャリア教育が学生に与えた影響について述べさせて頂いた。また「若年者雇用政策ジョブカフェに関する基礎的研究」を『九州大学大学院経済論究』(2008年7月号)に投稿し、大学就職担当部局が若年者雇用政策の有効活用のために果たすことができる役割について考察することを目指した。

直近の研究では、学生アドバイザー制度やノートテイク活動団体といった、学生による学生のための支援活動が、双方の学生たちにどのようなキャリア教育的効果を生むのか、そのような活動の場においてキャリア支援を意識したファシリテーターの役割はいかなるものかについて実証的に観察を行っている。この研究の動機は、組織を個人の相互作用の学習の場と捉えると、組織の方向を示し、相互作用が活発になるように基礎的教育を行い、場をマネジメントしていくことが、今後のキャリア支援者の重要な役割であると考えたことに起因する。引き続き、学生と共に実践したケースに軸足を置きながら、学生の意欲向上や自己への気付きを目指したキャリア支援、或いは、若年者の就労について大学教育と労働市場の視点から研究を積み重ねていく所存である。そのためには、日本キャリアデザイン学会員の皆様に広く御教示頂くことが必要不可欠であると確信している。

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