私のキャリアデザイン

「人材育成とマーケティング体質の実現輝く一粒の麦を育てる」
寺師産業株式会社 管理マネージャー
篠田 信
「人材育成とマーケティング体質の実現輝く一粒の麦を育てる」

ようやく、「企業は人」
これまで企業の多くが、市場の環境変化がおこりはじめると、マーケティング戦略の強化、人材育成が重要、それに適合する人事管理の改革だ、と口々に言ってきました。しかし、風向きがフォローになるや一転して、理論で飯が食えるか、即戦力が欲しい、と方針が変わる。

「目標管理」「業績評価」「能力開発」「CDP」などは、昭和40年代の初め既に、これからの企業のやるべき新しい人材育成、労務管理改革として提唱され ていました。例えば、「これからの労務管理」森五郎、田中慎一郎「これからの教育訓練」中山三郎、「労務管理」笛木正治、各先生の著書があります。ぜひ皆 さんに、お勧めしたい著書です。

その後40数年たって企業はようやく、人材マネジメントを「人の視点」からとらえ経営戦略上の要と気づいたようです。

私は、生産財の商社と販売会社で営業職、人材育成部門を経験し、2007年12月に定年退職、2008年1月にこの会社のトップの熱い想いに魅かれ、再度経験を生かせる場を得ることができました。
この稿は、これまでの実践と想いをまとめ、職場の後輩にも伝えたいと思っています。


生産財流通業界の人材育成とマーケティング課題

工業部品・機械の専門商社・販売会社は、特定の産業分野や地域を対象として特化し、自社のもつ経営資源をそこに集中的に投入して、顧客に対して商品ときめ細かい専門的サービスを提供し「日本のモノづくりを支える流通業」として貢献してきました。

今日まで一通りの環境適応という成功をとげて、内部にモノやノウハウや成功事例を蓄積し続け、かつ「商社・販社としての専門知識と信頼」という強いブラ ンド力に支えられて、その方式を制度化、組織化して、組織や経営の拡大を行なってきました。このことが、かえって保守化を生み、現状への妥協を生み、革新 への意識を摘みとってきたといえます。

従って、環境変化が起これば実行部隊は何をすべきかがわからず、じり貧的に衰退する可能性をつくりだしています。「商社・販社は人」といわれながら、 「売り方」中心の人材マネジメントであったといえます。その意味では、売りのエキスパートたるよりも、顧客の立場から市場を発見・獲得していく市場密着の 体質を人材育成の段階から仕組みとして定着させることが存続と成長の条件だと思います。

そのためには、顧客の真の声を聴くための柔軟な新しい業態づくりに取組むことでこれまでの企業風土を変えていくことが必要です。

改革課題をいくつかあげてみます(紙面の関係上、項目のみ)。

1.企業風土の問題
戦略策定が経験豊富な一部の取締役やマネージャーの直感によって
決められ、それが末端に押し付けられる環境

2.組織の問題
個人のやる気とか、リーダーの意図が重要視

3.評価の問題
売上げ達成基準が主体

4.人材の問題
シェアと販売高を上げていれば会社も存続・成長してきた結果、
マネジメント人材が育っていない、育てるシス テムも確立されていない

5.メーカー(仕入れ先)のマーケティング戦略に依存による問題
成功体験のみが蓄積され、組織力強化もおざなりにされてきた

人材マネジメント改革の要点
(1)人の視点に立つ
働きがい、成長の支援

(2)求める人材像を明確に
自らが新たな市場・需要を創造できる「営業のプロ人材」が必要
顧客からはより高いQCDSを求められ、差別化が勝負の決め手
(Q:Quality 品質、C:Cost 価格、D:Delivery :納期、S: Serviceサービス)

(3)経営トップの強い想いが大切
トップと経営幹部は自らが率先して風土改革を、繰り返し、継続的に、徹底を図る
これがなかなかできていないので頓挫する

(4)「○○○会社式(わが社式)」人材育成システムを創る
・研修機関に丸投げをしない・・・わが社の意思を講師に共有してもらう
・社内講師の育成と自社テキストの編纂・・・育成対象者に想いを共有してもらえる

おわりに
“輝く一粒の麦を育てる”、 わが母校の学生募集のキャッチコピーですが、輝く人材が一人でも育ってくれたら、風土改革は成功だと思います。

『あなたともう一度、一緒に仕事がしたい』『あなたと一緒に仕事がやれてよかった』
この言葉が、社員の間からから聴ける会社になれば、マーケティングが唯のスローガンに終わることがなくなると思います。

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