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□ キャリアデザインマガジン 第79号 平成20年10月5日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「人間力(4)」
2 私が読んだキャリアの1冊
小島貴子『小島貴子式仕事の起爆力』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆学会ホームページ リニューアルのお知らせ
日本キャリアデザイン学会は学会ホームページをリニューアルし、視認性の
向上、内容の拡充をはかりました。ぜひご利用ください。
なお、リニューアルにともない、アドレスが変更となっておりますので、ご
注意ください。
新アドレス → http://www.career-design.org/
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「人間力」(4)
「人間力戦略研究会」の提言は平成15年4月10日に発表されたが、その直後
の4月25日、フリーター対策や若年無業対策などを主眼とした「雇用対策に関
する関係閣僚会議」が開催された。その経緯をみると主体的に動いたのは経済
産業省であるらしく、文部科学相も会議に参加しているものの、人間力戦略研
究会との関係はさだかではない。この会議は、同年6月10日に開催された第2
回でその名称を「若者自立・挑戦戦略会議」とするとともに、早くも「若者自
立・挑戦プラン」の取りまとめを行った。「ジョブカフェ」や「日本版デュア
ルシステム」などを提唱したこの「プラン」は、若年雇用問題の第一の原因と
して「需要不足等による求人の大幅な減少と、求人のパート・アルバイト化及
び高度化の二極分化により需給のミスマッチが拡大していること」をあげ、需
要不足要因を強調した。続けて第二の原因として「将来の目標が立てられない、
目標実現のための実行力が不足する若年者が増加していること」と、供給サイ
ドの要因もあげているが、「人間力」との語は使われず、人間力は若年雇用対
策の文脈からはいったん姿を消した。
これが本格的に復活したのは、定かではないがどうやら平成16年6月の「経
済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」、いわゆる「骨太の方針2004」
においてらしい。むこう2年間の重点項目のひとつとして『「人間力」の抜本
的強化』が掲げられ、「関係4大臣による若者自立・挑戦戦略会議等の場で、
平成16年中に雇用や教育面での課題を含む「人間力」強化のための戦略を検討
する」などとされた。そして、これを受けて平成16年のクリスマスイブに若者
自立・挑戦会議が発表した「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」で
は「国民各層が一体となって取り組む国民運動の推進」がうたわれ、「若年者
雇用問題についての国民各層の関心を喚起し、若者に働くことの意義を実感さ
せ、働く意欲・能力を高めるため、経済界、労働界、地域社会、政府等の関係
者が一体となった国民運動を推進する。このため、「若者の人間力を高めるた
めの国民会議(仮称)」を開催し、国民に向けたメッセージを「国民宣言」と
して取りまとめるとともに、若年者雇用に関する関心の喚起を図り、国民各層
の自発的取組を促すため、各種セミナー、若者向けミニイベント等の広報・啓
発活動等を展開する。」とされた。これをうけて、平成17年5月には厚生労働
省が事務局となって第1回「若者の人間力を高めるための国民会議」が開催さ
れることとなる。
この「骨太の方針2004」から「若者の人間力を高めるための国民会議」に至
る一連の動きの中では、「人間力」に対する再定義が行われた形跡はない。む
しろ、国民会議の第1回の議事録をみると、ある出席者からは「人間力とは何
かといえば、百人百様ではないか」、それについて「会議自体のコンセンサス
をとっていかないと、議論がぶれていく」という趣旨の発言がなされている。
そしてこれに対し、委員の一人であり、「人間力戦略研究会」の座長であった
市川伸一氏は、研究会での議論を紹介する形で「職業生活、市民生活、文化生
活を営む大人」を「人間力のモデル」とする考え方を示したが、必ずしも全体
で共有されているかどうかは明らかではない。とはいえ、この時点でも一応は
「人間力戦略研究会」での定義は一つのスタンダードであったとはいえそうだ。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『小島貴子式仕事の起爆力』
小島貴子著 インデックス・コミュニケーションズ 2008.6.30
この手のビジネス書というのは、かなりの需要があるのだろう。新聞広告や
書店の平台をみても、かなりのペースで類書が発行されているようだし、発行
されているということは売れてもいるのだろう。これはグローバル化や技術革
新の中、ビジネスパーソンの負荷やストレスが高まっていることの反映かもし
れないし、彼ら・彼女らの旺盛な学習意欲の現れかもしれない。
いっぽうで、こうした本に対して懐疑的なむきもあるだろう。実際、こうし
た本を読めば本当に仕事がうまくいくのであれば誰も苦労はしないし、苦労が
なくなればこれらの本の売れ行きも止まるだろう。まあ、無意味ということは
ないにしても、あまり大きな期待をかけることも難しいに違いない。時と場合
に応じた、自分にフィットする本であれば、それなりに有益なヒントが得られ
る、というのが現実的なところではないか。
そこでこの本である。オビには「やる気に火がつく!一気に差がつく!!」
「あなたのチカラを200%発揮させる最高のやり方・考え方」「ほんのちょっ
と視点をズラすだけであなたの仕事・人生が爆発的にうまくいく!」などの惹
句が並んでいる。まあ、これをまともに真に受ける人もいないだろうが、著者
はキャリア関係者なら知らぬ人のないカリスマ・キャリアカウンセラー、小島
貴子氏である。となると、キャリア関係者であれば中身はいかにと関心はわく
だろう。
類書を読んだことのない私には他との比較はできないが、読みやすい本であ
る。全部で7章、82のトピックスと各章末のコラムとで構成されているが、ト
ピックスはすべて見開き2ページにコンパクトにまとめられ、自身の経験や相
談事例などをもとに具体的に書かれていてまことに読みやすい。通勤電車など
で読むにはおあつらえむきだろう。内容については私には評価できないが、そ
れぞれの読み手が、数多いトピックスの中から、それぞれの個性や状況に応じ
てさまざまなヒントや励まし、気休め、慰めなどを見出していくのだろう。そ
れに1,400円の値打ちがあるかどうかは読み手一人ひとりの判断だとしか言い
ようがない。
それはそれとして、気になるキャリアへの言及は意外にも少なく、最後4つ
のトピックスにとどまる。うち2つは「適職」に関するもので、「適職」にこ
だわったり決めつけたりせず、自ら適応する、変化の可能性をつかむことを訴
えている。「資格」については、取らないと気持ち悪いが取っても食べられな
い「足の裏のご飯粒」だと喝破する。そして本書の最後のトピックスが「未来
の自分のキャリアデザイン」である。紹介が難しいこの2ページをどう読むか、
読む人の読み方によっていろいろだろうが、それはおそらく読み手にとってこ
の本全体の評価にもかかわってくるのだろうか。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆法政MBAセミナー2008「組織カウンセリングとキャリア支援型人材マネジメ
ント」
平成20年11月1日(土) 14:00-16:00
於 法政大学ボアソナードタワースカイホール(東京都千代田区)
http://www.i.hosei.ac.jp/~hbs/
※本学会の川喜多喬会長、渡辺三枝子前会長が出講します。
◆大学生のためのキャリアデザイン講座「学生のキャリアデザインを描く―何
故、社会理解が重要で、好きなことを基準にして職業を選ぶことが問題なの
か―」
平成20年11月1日(土) 16:00-19:30(三部制)
於 法政大学経営大学院・新一口坂校舎401室(予定)
お問い合わせ 事務局(田中):em08015@ns.kogakuin.ac.jp
※本学会の生駒俊樹研究組織委員が出講します。
◆中央職業能力開発協会平成20年度全国職業能力開発促進大会・職業能力開発
推進者経験交流プラザ「生き生きとした職場づくりと企業力向上を目指して」
平成20年11月17日(月)9:30~17:00
於 九段会館(東京都千代田区)
http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/taikai.html
【編集後記】
編集委員出張のため(出張期間は2週間程度だったのですが(汗))、発行
間隔があいてしまいました。申し訳ありません。小島貴子氏とは違って、なか
なか「仕事の起爆力」とはまいらないようです。いや、本当に見習わなければ。
(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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