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□ キャリアデザインマガジン 第76号 平成20年7月7日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「人間力(1)」
2 私が読んだキャリアの1冊 小池和男『海外日本企業の人材形成』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆学会ホームページ リニューアルのお知らせ
日本キャリアデザイン学会は学会ホームページをリニューアルし、視認性の
向上、内容の拡充をはかりました。ぜひご利用ください。
なお、リニューアルにともない、アドレスが変更となっておりますので、ご
注意ください。
新アドレス → http://www.career-design.org/
◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
非会員の方もご参加いただけます。
先着順ですのでお早めにお申し込み下さい。
なお、各研究会の詳細は学会ホームページでご確認ください。
http://www.cdi-j.jp/gyouji/02.html
(第9回研究会・交流会)
日 時:2008年7月26日(土)13:30-15:30
講 師:生駒俊樹氏(京都造形芸術大学)
テーマ:「社会理解を重視したキャリア形成支援」
講 師:安川周作氏(千葉黎明高等学校)
テーマ:「校長が変われば学校は変わる:高校生のキャリア教育」
参加費:会員/無料 非会員/3,000円
交流会:時間 16:00~17:30 会費 3,000円程度(会員・非会員とも)
お申し込み https://www.hosei.org/event2/detail/20080726.html
(関西支部研究会・懇親会)
日 時:平成20年7月13日(日)15:30-18:00
講 師:梶原文子氏(元大阪府立東住吉総合高校キャリアコーディネータ)
椎木美由紀氏(元大阪府立西淀川高校キャリアコーディネータ)
嶋野美知子氏(元大阪府立咲洲高校キャリアコーディネータ)
テーマ:「高校生のキャリアデザイン支援-何が求められているのか-」
コメンテータ:生駒俊樹(京都造形芸術大学芸術教育資格支援センター教授)
参加費:会員/無料 非会員/3,000円
会 場:関西大学第三学舎(社会学部)3号館4階3404教室
懇親会 18:15~20:00 会費3,000円程度
お申し込み https://www.hosei.org/event2/detail/20080713.html
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「人間力」(1)
いったい、「人間力」とはなんだろう。この小文を書くために、「人間力」
をGoogleで検索してみた(平成20年7月7日7:00)。すると、100万件強がヒ
ットした。これが多いか少ないかわからないが、報道などで頻繁に用いられる
「国際競争力」がやはり100万件強のヒットなので、それなりに多いのだろう。
それはそれとして、面白いのは「関連検索」の2番めに「人間力 定義」と
いうのが表示されることだ。そのくらい、「人間力」ということばの定義はは
っきりしていないのだろう。
いきなり余談になるが、Google検索の「関連検索」は最初に「人間力 サッ
カー」が出てきた。これはアテネ五輪サッカー日本代表の山本昌邦氏がこの語
を好んで用いたことによるらしい(ちなみに「関連検索」の4番めはそのもの
ずばりの「人間力 山本昌邦」だ)。アテネ五輪ではサッカー日本代表は予選
リーグBで最下位となって決勝トーナメント進出を逃すなど成績がふるわず、
サッカーファンの間では「人間力」は山本氏を揶揄する意味合いで使われるこ
とが多いのだとか。
さて、日本経済新聞社の新聞記事データベースサービス「日経テレコン21」
で調べてみると、この語が頻繁に用いられるようになったのは2002年に経済財
政諮問会議が「人間力戦略」を取り上げてからのようだ。この時期には、当時
ノーベル化学賞を受賞した野依良治氏が、研究者の資質としてしきりに「人間
力」を強調していたので、それがヒントになったのかもしれない。それ以前は
というと、スポーツ関係、それも高校野球の関係が目立っている。野球の技術
だけではなく不屈さやねばり強さといった精神面、さらには礼儀や生活態度と
いったものも大切だ、といったような意味らしい。サッカーに限らず、「人間
力」はスポーツ関係者に好まれる用語であるらしい。
いっぽう、amazon.co.jpで「人間力」をキーワード検索すると、2002年以前
に出版されたものだとビジネス関連書と教育関連書が多いようだ。こちらはそ
の内容まではわからないが、書名に「人間力」を含むものを抜き出すと『衰退
する子どもの人間力―「学級崩壊」にどう対応するか』『人間力を創る教育―
沖縄尚学の挑戦』『リーダーシップ人間力の鉄則―部下の心に火をつける21の
資質』『本物の生き方・人間力の経営』などがある。そういえば、沖縄尚学は
スポーツ強化にも熱心ではなかったか。
いずれにしても、経済財政諮問会議が「人間力」を提唱するまでは、「人間
力」は「優れた人間性」といったものをなんとなく指す、あいまいで幅広い概
念として、使う人がそれぞれに都合のいい意味で使っていたことばであったよ
うだ。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『海外日本企業の人材形成』 小池和男著 東洋経済新報社 2008.3.6
本書は『海外日本企業の人材形成』だが、著者には『日本企業の人材形成』
という本もある。中公新書の一冊であり、著者が提唱した知的熟練論の廉価で
コンパクトな入門書・解説書として多くの場面で参考文献にあげられている本
である。知的熟練とは事前には十分予測できない(しかし必ず起こる)変化や
問題といった不確実性に対応するノウハウであり、長期にわたるOJTを通じ
て形成される。こうした人材が活躍する日本企業の仕事方式は、海外の日本企
業でも通用するのか、というのが本書の「オビ」に書かれた問題意識である。
著者の多くの研究と同様、この本も多くを現場の聞き取り調査によっている。
具体的には、自動車メーカーの海外工場における生産技術者、製造技術者とそ
の周辺の人々に対する聞き取りと、現場の観察である。製品の設計は日本の親
会社が行うだろうが、生産ラインの設計・構築には現地の事情が反映されざる
を得ない。その局面において、現地人・日本人の生産技術者、製造技術者、さ
らにはラインの構築に発言し関与する高技能な生産労働者がどのような役割を
果たし、その能力はいかに形成されているのかが、アメリカ、イギリス、タイ
のそれぞれの現地工場で調査されている。その聞き取りはいつもながら入念、
周到であり、各地の実態を詳細に明らかにしている。
こうした調査を通じて、著者は「中堅層とそのすぐ下の層の活躍」を海外日
本企業の効率の基盤として指摘する。具体的には製造技術者であり、生産ライ
ンの問題処理はもとより、製品の設計や生産ラインの構想にも参加し発言する。
あるいは技能上位1割の生産労働者、具体的には新規生産ラインの立ち上がり
準備に従事するパイロットチームのメンバーである。さらに、知的熟練を有す
る技能上位の生産労働者がそれを支える。ここは日本企業の仕事方式が海外日
本企業でも大いに有用となっている部分である。米・英・タイを比較すると、
実はタイにおいてもっともよく日本方式が実践されている。これはタイへの投
資が他の二国に較べて古くから行われ、日本方式の移転がより多く進んでいる
ためであろうと著者は指摘する。
いっぽうで、著者は移転が進んでいない部分も指摘する。たとえば、その重
要な一つがキャリアである。日本では技術者の人事異動、担当変更などにより
生産技術、製造技術それぞれの分野内で多くの領域を経験するだけでなく、生
産技術者と製造技術者の交流もごく普通に行われ、互いにそれぞれの領域の経
験を積む。海外では、分野内での経験の拡大は行われているが、分野をこえた
交流は乏しいという。
著者の全体的な評価は、労使関係や人事管理、賃金などの面で日本と異なる
制約がある中で、日本の仕事方式は海外にも比較的よく移転されているという
ことであろう。著者はこれにさらに時間をかけて取り組めば海外日本企業の優
位はしばらくはさらに強まるであろうと予想する。しかし、それは「日本が日
本のよさを失わないかぎり、という制約つき」であるという。従来の、中堅層
に力点をおいた中長期的観点からの人材開発を「年功的」で非競争的と断罪し、
短期的な成果主義に置き換えている日本の現状からは、著者は日本自身が自分
のよさを見失い、それを自ら捨てていく危険性が大きいと危惧している。それ
がこの本を書いた理由であるという。
著者はこの本が自身最後の研究書となるであろうと述べている。わが国労働
研究の泰斗である老碩学が、その最後の著書で示したこの危機意識に、われわ
れは率直かつ謙虚に耳を傾ける必要があるだろう。おそらくは、将来のわが国
では海外における企業活動の成果が国民生活を支える大きな柱となるだろう。
そのときに、その優位をもたらす人材活用、仕事方式はますます貴重なものと
なるに違いないから。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆JSHRMコンファレンス2008「考える人事~成長と変革を支える人と組織のあ
り方を考える~」
平成20年7月30日(水)13:30-19:30
於 東海大学校友会館(霞ヶ関ビル)阿蘇の間(東京都千代田区)
http://www.jshrm.org/4_timetable/pdf/conference/conference2008.pdf
*一般参加費は5,000円ですが、本学会会員は無料で参加できます。
◆中央職業能力開発協会(JAVADA)セミナー
「グループによる語り合い」を通じた学生のキャリア形成支援セミナー
<1回目>平成20年8月19日(火)10:00-18:00~8月20日(水) 8:30~16:30
<2回目>平成20年9月1日(月)10:00~18:00~9月2日(火) 8:30~16:30
於 海外職業訓練協会(OVTA)(千葉県千葉市)
http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/kouza_d.html
◆中央職業能力開発協会(JAVADA)キャリア・シート(CADS&CA
DI)活用セミナーセミナー 「CADS&CADIを活用した”納得できる
キャリア形成”支援法セミナー」
平成20年9月24日(水) 9:30-17:00
於 エル・おおさか 708号室(大阪市中央区)
http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/cads_cadi.html
◆法政MBAセミナー2008「組織カウンセリングとキャリア支援型人材マネジメ
ント」
平成20年11月1日(土) 14:00-16:00
於 法政大学ボアソナードタワースカイホール(東京都千代田区)
http://www.i.hosei.ac.jp/~hbs/
※本学会の渡辺三枝子会長、川喜多喬常務理事が出講します。
【編集後記】
きょうは7月7日、「七夕」です。天気予報は今ひとつのようで残念ですが、
毎年この時期になると人通りの多い場所ではあちこちに笹竹が置かれ、思い思
いに短冊が結ばれているのを目にします。小さいこどもは将来の職業の夢を、
すこし長じると入試合格の祈りをと、みずからのキャリアに願いをこめて短冊
を書く人も多いことでしょう。多くの人のキャリアが天候に恵まれたサニーサ
イドであることを祈りたいものです。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
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◆学会監修・菊地達昭編著『キャリアデザインへの挑戦』優待販売のお知らせ
・本学会の菊地達昭・常務理事編により、学会創立期のメンバーなど、有識者
58人の「私のキャリアデザイン論」(『文部科学通信』に連載)を集大成し
た図書『キャリアデザインへの挑戦』が、経営書院から出版されました。
定価1890円(税込み)のところ、会員には特別に3割引(1323円)で販売を
いたします。
*経営書院(FAX:0120(73)3641、e-mail:sato-ken@sanro.co.jp)へ直接
申し込んで下さい。その際、宛名に経営書院『キャリアデザインへの挑
戦』係と書き、冊数、 宛名、送り先住所、送り先連絡先電話番号、会
員番号を明記してください。
なお郵送料はご負担下さい。折り返し振込用紙を同封しますので到着後
1週間以内にお振込下さい。
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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