キャリアデザインマガジン 第75号

■□□—————————————————————-
□□
□    キャリアデザインマガジン 第75号 平成20年6月10日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

——————————————————————□■

 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典「ハローワーク」
2 私が読んだキャリアの1冊 山田昌弘・白河桃子『「婚活」時代』
3 キャリアイベント情報

———————————————————————-
【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
 非会員の方もご参加いただけます。
 先着順ですのでお早めにお申し込み下さい。
 なお、各研究会の詳細は学会ホームページでご確認ください。
 http://www.cdi-j.jp/gyouji/02.html

(第3回研究会)
 日 時:2008年6月27日(金)18:30-20:00
 講 師:大木栄一氏(職業能力開発総合大学校)
 テーマ:「個人(正社員)の能力開発投資行動の特質と課題~正社員、非正社
     員、自営業等の比較を通して~」
 参加費:会員/無料  非会員/3,000円
 会 場:法政大学 ボアソナードタワー25階
     イノベーション・マネジメント研究センターセミナー室
お申し込み https://www.hosei.org/event2/detail/20080627.html

(第4回研究会・交流会)
 日 時:2008年7月26日(土)13:30-15:30
 講 師 生駒俊樹氏(京都造形芸術大学)
 テーマ 「社会理解を重視したキャリア形成支援」
 講 師 安川周作氏(千葉黎明高等学校)
 テーマ 「校長が変われば学校は変わる:高校生のキャリア教育」
 参加費 会員/無料  非会員/3,000円
 交流会 時間 16:00~17:30 会費 3,000円程度(会員・非会員とも)
 お申し込み https://www.hosei.org/event2/detail/20080726.html

———————————————————————-

1 キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

 「ハローワーク」

 公共職業安定所を「ハローワーク」と呼ぶようになったのは1990年のことで
ある。従来「職安」あるいは「安定所」との略称が広く使われていたが、より
明るく親しみやすい愛称を、ということで1989年に一般公募が行われた。その
背景には、「職安=失業」というあまり明るいとはいえないイメージがあるこ
とや、語感の堅苦しさなどに加えて、当時はいわゆる「コーポレート・アイデ
ンティティ」が流行し、多くの企業が通称社名を親しみやすいカタカナ名称に
変更していたこともあるのだろう。言うまでもなく和製英語であり、公共職業
安定所の英文表記は「Public Employment Security Office」とされている。
 厚生労働省のウェブサイトをみると、「全国ハローワーク等の所在案内」と
いうページがあり、そこにはハローワークのほかハローワークプラザ、パート
バンク、人材銀行、キャリア交流プラザ、マザーズハローワーク・マザーズサ
ロン、若年者特別支援実施公共職業安定所(ヤングワークプラザ)、学生職業
センター・学生職業相談室等、外国人雇用サービスセンター、地域職業相談室、
高年齢者職業相談室と10個の「等」が列挙されている。その中の「学生職業セ
ンター・学生職業相談室等」においては、「ヤングハローワーク」という愛称
が用いられている例も少なくない。職業安定法第8条は、公共職業安定所につ
いて「公共職業安定所は、職業紹介、職業指導、雇用保険その他この法律の目
的を達成するために必要な業務を行い、無料で公共に奉仕する機関とする。」
と規定しているが、どうやらハローワークと「等」の違いは雇用保険の業務が
行われるかどうかにあるようだ。なお、公共職業安定所は、同法18条では求人
又は求職の開拓等、第19条では公共職業訓練のあつせんを行うとされている。
 ちなみに第8条は「無料で」と定めているが、これは誰もが職業紹介サービ
スを利用できるよう無料の公共職業安定組織を維持し、全国に事務所を設置・
運営するよう求めるILO第88号条約(職業安定組織の構成に関する条約)に
も即している。昨今では民間の職業紹介サービスも発展し、求人・求職の手法
も多様化しているが、これら民間職業紹介のビジネスに乗りにくい求人も多く、
誰もが無料で職業紹介サービスを利用できるハローワークは、社会のセーフテ
ィネットとして依然として重要な役割を負っている。
                         (編集委員 荻野勝彦)

2 私が読んだキャリアの1冊

 『「婚活」時代』 山田昌弘・白河桃子著
             ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008.2.29

 この本の本文の最初の一行は「「仕事(職)」を持つことと、「結婚」する
ことは、人生の二大イベントです」というものだ。そして、その前に書かれた
小見出しは「ここまで似ている、結婚と就職」となっている。もちろん、この
二つはともに「マッチング」だから、似ているのも当然なのだが、著者がいう
のは、これらがともに近年の「規制緩和」によって「自由化」されたため、新
たに「活動」が必要となった、という点だ。かつては就職でいえば限られた求
人企業の中から進路指導教諭の関与のもとに就職先が決まるとか、結婚でいえ
ば「見合い」や男女交際に係る社会規範などのように、ある種の社会慣行が事
実上の規制となり、なかば強制的・誘導的にマッチングが行われたり、マッチ
ングの場が事実上狭く制約されることでマッチングが容易となっていた実態は
あったが、こんにちではこれら慣行が「規制緩和」「自由化」されたことで、
よりマッチングが成立しにくくなった。そこで必要となる就職のための活動が
「就活」だとすれば、結婚のための活動は「婚活」ということになるわけだが、
この語ははやくもあちこちで使われはじめており、これは、「パラサイト・シ
ングル」や「希望格差」といった流行語を作り出した共著者のひとり、山田昌
弘氏の面目躍如といったところか。
 もっとも、マッチングがうまくいかないのには、需給バランスとミスマッチ
の2つの側面がある。ある時期の「就活」がきわめて厳しいものとなったのは、
規制緩和や自由化というよりは圧倒的な需要不足という需給バランスの崩れに
よるところが大きいだろう(それが結果的に規制緩和や自由化につながった面
はあるにしても)。したがってその対策も需要喚起策が効果的であり、現に経
済環境が好転することで「就活」の厳しさもかなり改善された。もちろん、雇
用においてもミスマッチは存在し、たとえば地理的ミスマッチ、賃金ミスマッ
チ、職種ミスマッチ、年齢ミスマッチなどの存在が指摘されてきた。
 それに対し、結婚は基本的に女性と男性のマッチングであり、供給量はほぼ
同じなのだから、量的なバランスが崩れるということは考えにくい。すなわち、
結婚におけるマッチングの問題点はミスマッチということになる。
 それでは、結婚におけるミスマッチとはどんなものか。この本は、山田氏に
よる研究成果の紹介と、もうひとりの共著者であるジャーナリストの白河桃子
氏による事例の紹介によって、それを縦横無尽に描き出している。もっとも、
本書ではミスマッチという観点ではなく、「出会い格差」「魅力格差」「経済
格差」など、もっぱら「格差」が切り口となっている。いささか違和感はある
ものの、これまた山田氏らしい、あるいは社会学者らしいといえばらしいのだ
ろうか。そして、マッチング促進のためのキャッチフレーズは「女性たちよ、
狩りに出でよ。男性たちよ、自分を磨け。」というものだ。女性たちはすでに
十分に自分を磨いており、結婚市場への主体的・積極的な参加と関与が必要で
あるいっぽう、男性たちには自らの魅力を高めるための「供給サイド対策」が
さらに必要であるという。すでに始まっているこれら「婚活」の実態も紹介さ
れている。一部には必ずしも証拠が十分ではないような印象を受ける部分はあ
るものの、こんにちの日本社会、とりわけ都市部におけるそれの空気をうまく
読み取っていて、まことに興味深いものがある。
 最後にはふたりの共著者が、これら研究成果や事例をふまえた「成功する婚
活」について対談しているのだが、マッチング促進という観点からは、すでに
就職ではかなりの実績のある「民間のマッチングサービス」の活用を促進する
ことが重要ではないか。実際、本書にも紹介があるようにそれはすでに多数が
存在し、かつサービスも高度化しているにもかかわらず、必ずしもそのイメー
ジは良好ではない。しかし、独力での活動に限界があるのは当然であり、結婚
が人生の大イベントである以上は、専門家の支援を活用するのは現実にはきわ
めて合理的な行動であろう。「婚活」という語が普及することで、こうした意
識も変わってくるのかもしれない。そういう意味では、言葉というのも案外大
切なことだという気もする。
                         (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆中央職業能力開発協会(JAVADA)キャリア・シート(CADS&CA
 DI)活用セミナーセミナー 「CADS&CADIを活用した”納得できる
 キャリア形成”支援法セミナー」
平成20年9月24日(水) 9:30-17:00
 於 エル・おおさか 708号室(大阪市中央区)
http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/cads_cadi.html

[編集後記]

 今年もクールビズの季節となりました。2005年からはじまったこの運動もこ
れで3シーズンめを迎えます。上着をとり、ネクタイをはずすとかなりの開放
感ですが、冷房設定温度を上げるということは本当は「クール」ではないわけ
で、いささかの矛盾も感じなくもありません。地球環境のためにできることか
ら、まもなく洞爺湖サミットも開幕します。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

—-[PR]————————————————————–

◆学会監修・菊地達昭編著『キャリアデザインへの挑戦』優待販売のお知らせ

・本学会の菊地達昭・常務理事編により、学会創立期のメンバーなど、有識者
 58人の「私のキャリアデザイン論」(『文部科学通信』に連載)を集大成し
 た図書『キャリアデザインへの挑戦』が、経営書院から出版されました。
 定価1890円(税込み)のところ、会員には特別に3割引(1323円)で販売を
 いたします。
  *経営書院(FAX:0120(73)3641、e-mail:sato-ken@sanro.co.jp)へ直接
   申し込んで下さい。その際、宛名に経営書院『キャリアデザインへの挑
   戦』係と書き、冊数、 宛名、送り先住所、送り先連絡先電話番号、会
   員番号を明記してください。
  なお郵送料はご負担下さい。折り返し振込用紙を同封しますので到着後
   1週間以内にお振込下さい。

□□■—————————————————————-

  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

—————————————————————-□□■