キャリアデザインマガジン 第74号

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□    キャリアデザインマガジン 第74号 平成20年5月12日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典「ダイバーシティ(6)」
2 私が読んだキャリアの1冊
     佐藤博樹・連合総研編『バランスのとれた働き方』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆北関東地区中間大会が、いよいよ間近となりました。
                 (会場 群馬県高崎市 新島学園短大)
 後援者などのご厚意で会員・非会員とも参加費無料になりましたので、ぜひ
 お誘いあわせて、ご参加下さい。
 (※昼食費、2日目のエクスカーション参加費は除きます)
 後 援:群馬県、群馬県教育委員会、宇都宮大学、群馬県経営者協会、
     群馬テレビ、上毛新聞社、群馬経済新聞社
 日 時:平成20年5月24日(土)10:00-17:00
 主 催:日本キャリアデザイン学会・新島学園短期大学(共催)
 会 場:新島学園短期大学(群馬県高崎市)
 テーマ:「地域社会のキャリアデザイン支援力」
 内 容:記念講演、パネルディスカッション、エクスカーション(伊香保温
     泉宿泊など)、会員交流会など
 *詳細・お申し込みは学会HPからhttp://www.cdi-j.jp/gyouji/02.html

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
 非会員の方もご参加いただけます。
 先着順ですのでお早めにお申し込み下さい。
 なお、各研究会の詳細は学会ホームページでご確認ください。
 http://www.cdi-j.jp/gyouji/02.html

(平成20年度第1回研究会)
 日 時:平成20年5月21日(水)18:30-20:00
 講 師:竹内英二氏(国民生活金融公庫総合研究所主席研究員)
 テーマ:「キャリア教育における中小企業の役割」(仮題)
 参加費:会員/無料  非会員/3,000円
 会 場:法政大学 ボアソナードタワー25階 
     イノベーション・マネジメント研究センターセミナー室
お申し込み https://www.hosei.org/event/detail/20080521.html

(第2回研究会)
 日 時:2008年6月4日(水)18:30-20:00
 講 師:大山雅嗣氏(社会経済生産性本部HRDコンサルタント)
 テーマ:「キャリア・コンサルティングとは何か~キャリア・コンサルタン
     トの可能性~」
 参加費:会員/無料  非会員/3,000円
 会 場:法政大学 ボアソナードタワー25階
     イノベーション・マネジメント研究センターセミナー室
 お申し込み https://www.hosei.org/event2/detail/20080604.html

(第3回研究会)
 日 時:2008年6月27日(金)18:30-20:00
 講 師:大木栄一氏(職業能力開発総合大学校)
 テーマ:「個人(正社員)の能力開発投資行動の特質と課題~正社員、非正社
     員、自営業等の比較を通して~」
 参加費:会員/無料  非会員/3,000円
 会 場:法政大学 ボアソナードタワー25階
     イノベーション・マネジメント研究センターセミナー室
お申し込み https://www.hosei.org/event2/detail/20080627.html

(第4回研究会・交流会)
 日 時:2008年7月26日(土)13:30-15:30
 講 師 生駒俊樹氏(京都造形芸術大学)
 テーマ 「社会理解を重視したキャリア形成支援」
 講 師 安川周作氏(千葉黎明高等学校)
 テーマ 「校長が変われば学校は変わる:高校生のキャリア教育」
 参加費 会員/無料  非会員/3,000円
 交流会 時間 16:00~17:30 会費 3,000円程度(会員・非会員とも)
 お申し込み https://www.hosei.org/event2/detail/20080726.html

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1 キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

 「ダイバーシティ」(6)

 近年、わが国では、性別や年齢、国籍といった働く人の属性の多様化に加え
て、非正規雇用の拡大にみられるように、働き方の多様性も高まっているとい
えるだろう。もっとも、それらを統合した人事管理の体系としての「ダイバー
シティ・マネジメント」は、まだまだ普及していないというのが実情のように
思われる。ダイバーシティに関する比較的新しい調査として(株)三菱総合研
究所が経済産業省からの委託で2007年に実施した「高度外国人の活用方針と実
態に関する調査」があるが、その結果をみると、ダイバーシティに関する基本
方針について「以前から重要課題として取り組んできている」が4.7%、「喫
緊の課題として目下積極的に取り組み中である」が6.7%となっており、あわ
せても11.4%に過ぎない。「中長期的な課題として受け止めている」が37.2%
あるが、「とくに課題として認識していない」が38.9%と最多となっている。
 また、具体的な取り組みをみると「インターンシップの受け入れ」が32.5%
で最多、次いで「障害者の法定雇用率の達成」が31.8%、続いて「採用時期の
複数化」が25.9%、「中途採用の年齢制限の非設定」が24.6%、「オープン採
用の実施」が24.1%となっており、比較的高い実施率となっている。いっぽう、
より高度なダイバーシティ・マネジメントに関わる「女性社員・女性管理職比
率の目標設定」や「ダイバーシティ委員会・検討会等の開催」、「ダイバーシ
ティ関連研修の実施」といった施策となると、それぞれ3.7%、2.7%、1.5%
ときわめて低い実施率にとどまり、上記でダイバーシティに積極的に取り組ん
でいると回答した11.4%の企業においても、それぞれ15.2%、19.6%、10.9%
と低率である。経済産業省はこの調査結果を紹介した報告書において、日本企
業のダイバーシティ・マネジメントについて「女性を含め、多様な人材の能力
を最大限に引き出し、活用していこうという社内的な意識統一まで到達してい
る企業は極めて少ない」と結論づけているが、それが実態なのだろう。
 もっとも、歩みは遅いながらも進んではいるようだ。今年(2008年)3月31
日付日本経済新聞によれば「最近、日本の大企業で「女性活躍推進室」を「ダ
イバーシティ(多様性)推進室」へと変更する例が相次いでいる」という。記
事は続けて「多様な人材を生かし企業の活力につなげる「ダイバーシティマネ
ジメント」の考えは米国で生まれ、日本ではまず女性活用から始まった。その
対象が外国人や高齢者、若者、障害者などに広がりつつある。女性などに雇用
機会を均等に与えるのが第一段階。それが今や、多様化する市場に対応しグ
ローバル競争を勝ち抜くために多彩な人材を生かす、第二段階を迎えた。」と
述べている。紹介されている事例は日産自動車や松下電器、日本アイ・ビー・
エムなど、おなじみのあの会社、この会社なのは残念といえば残念だが、こう
した記事が出ること自体、事態は少しずつ進展しているということだろう。
 今後、一段の高齢化と人口減が避けがたいとされるわが国では、多様な労働
力の活用の巧拙が企業経営のパフォーマンスに結びついていく可能性がある。
いっぽうで、非正規雇用など働き方の多様性に対する政策的関心が高まってい
る現実もある。こうした中で企業の人事管理がどう展開していくのか、注目さ
れるところだ。
                         (編集委員 荻野勝彦)

2 私が読んだキャリアの1冊

 『バランスのとれた働き方-不均衡からの脱却-』
 佐藤博樹・(財)連合総合生活開発研究所編 エイデル研究所 2008.4.1

 連合総研は、2001年から年2回、「勤労者の仕事と暮らしについてのアン
ケート調査」を継続して実施している。当初はそうではなかったと記憶してい
るが、いつからかその報告書の表紙には「勤労者短観」と大書されるようにな
った。首都圏・関西圏に働く勤労者を対象として、調査会社のモニターを利用
した調査であり、毎回のテーマのほかに、景気や雇用情勢、物価、消費動向な
どについては定例の調査項目として毎回調査されている。企業経営者にこれら
を尋ねた「日銀短観」にならって、働く人に尋ねる「勤労者短観」を標榜して
いるのであろう。遠慮なく「連合短観」と称してもいいと思うが、いずれにし
てもまことに有意義な調査であるには違いない。
 この本は、その「勤労者短観」6年間のデータを利用して、この調査に関係
してきた研究者がさまざまな観点から仕事や勤労者生活、政策動向などについ
て分析したものを集めている。具体的には、まず「はじめに」でデータと調査
対象者の概況が紹介され、続いて第1章は雇用に対する不安感、第2章は長時
間労働と不払い残業、第3章は女性労働、第4章は男性の家事参加、第5章は
勤労者の景気判断、第6章は労働者の権利理解と組合考課、第7章は小泉政権
下における勤労者の政党支持がそれぞれ分析されている。各章の最初にはその
サマリーが、最後には筆者のメッセージが配され、さらに各章に関連したテー
マのコラムもおかれており、まことに読みやすい親切な構成となっている。
 そして、「おわりに」は編者の佐藤博樹氏による解題であり、各章を一貫し
た主張として「ワーク・ライフ・インバランスの解消」が訴えられる。各章の
分析を通じて明らかになった「不均衡」を解消するには、「仕事中心の男性モ
デルの働き方」を改革し、多様なライフスタイルを受容できる「ワーク・ライ
フ・バランス職場」を構築することが求められているという。この結論が、従
来型の「仕事中心の男性モデルの働き方」をも引き続き多様なライフスタイル
を実現する選択肢のひとつとして容認し包含する寛容なものであるならば、大
いに同感できる部分が多い。
 いっぽう、率直に申し上げて、労働組合系のシンクタンクということもあっ
てか、各章ともに政策的含意に関しては限界があると感じざるを得ない。企業
の人事管理に対する理解が必ずしも十分ではないのではないかと思わせる部分
もある。たとえば、特に前半の各章において労働時間の短縮を強く求める記述
が多くみられるが、それによって収入やキャリア、現在や将来の生活水準や生
活の質がどのように変わるのかということに対する考慮は見受けられず、むし
ろ労働時間が減って自由時間が増える以外のことはなにも変わらないという非
現実的な前提を暗黙のうちに置いているのではないかとすら感じられる部分も
ある。これではあまり説得的な議論にはなるまい。
 いっぽうで、データは興味深いものだし、分析も堅実であって、大都市圏で
働く人たちの意識の実態やその変遷をたどるという点ではなかなか面白い読み
物であるという点は高く評価できるだろう。実際、第5章の分析はこの調査の
特徴をいかんなく生かしたもので興味深いし、第7章の分析も労働組合系シン
クタンクらしいもので面白く読んだ。
 繰り返しになるが、この調査自体は貴重で有意義なものではないかと思うし、
また、個票データを東大社研のSSJデータアーカイブに寄託して研究者など
に公開しているというのも好ましい。こうした調査を継続できるのはおそらく
連合総研ならではだろう。中断することなく続くことを期待したい。
                         (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆法政大学キャリアデザイン学部連続シンポジウム第9回「キャリア教育と高
 大連携・産学連携」
 平成20年6月6日(金)14:00-17:30
 於 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナード・タワー26階スカイホール
   (東京都千代田区)
 http://www.hosei.ac.jp/careerdesign/news/shosai/news_490.html
 
◆労働政策研究・研修機構 労働政策フォーラム「いくつになっても働ける社
 会の実現を目指して-高齢者雇用の現在と今後」
 平成20年6月2日(月)13:30-16:45
 於 ベルサール九段イベントホール(東京都千代田区)
 http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20080602.htm#

◆中央職業能力開発協会(JAVADA)キャリア・シート(CADS&CA
 DI)活用セミナーセミナー 「CADS&CADIを活用した”納得できる
 キャリア形成”支援法セミナー」
平成20年9月24日(水) 9:30-17:00
 於 エル・おおさか 708号室(大阪市中央区)
http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/cads_cadi.html

[編集後記]

 4月26日に連合の「メーデー」中央大会が開かれました。今年は連合会長の
あいさつやメーデー宣言などで繰り返し「ワーク・ライフ・バランス」が登場
しているのが目をひきます。ワーク・ライフ・バランスはある意味キャリアデ
ザインそのものですから、労働運動のキャリアデザインへの関心も高まってく
ることが期待されます。そういえば、「メーデー」中央大会が5月1日に開か
れなくなって久しいわけですが、これもこの時期に大型連休を設定する企業が
増え、5月1日がその間に入ってしまうと連休の計画の制約になるから、とい
う理由だったと思います。考えようによっては、これもワーク・ライフ・バラ
ンスの考え方の先駆けといえるかもしれません。メーデー参加が「ワーク」だ
というのもおかしな話ではありますが…。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆学会監修・菊地達昭編著『キャリアデザインへの挑戦』優待販売のお知らせ

・本学会の菊地達昭・常務理事編により、学会創立期のメンバーなど、有識者
 58人の「私のキャリアデザイン論」(『文部科学通信』に連載)を集大成し
 た図書『キャリアデザインへの挑戦』が、経営書院から出版されました。
 定価1890円(税込み)のところ、会員には特別に3割引(1323円)で販売を
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  *経営書院(FAX:0120(73)3641、e-mail:sato-ken@sanro.co.jp)へ直接
   申し込んで下さい。その際、宛名に経営書院『キャリアデザインへの挑
   戦』係と書き、冊数、 宛名、送り先住所、送り先連絡先電話番号、会
   員番号を明記してください。
  なお郵送料はご負担下さい。折り返し振込用紙を同封しますので到着後
   1週間以内にお振込下さい。

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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