■□□—————————————————————-
□□
□ キャリアデザインマガジン 第69号 平成20年1月27日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
——————————————————————□■
「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「ダイバーシティ(1)」
2 私が読んだキャリアの1冊
上西充子編著 伊藤文男・小玉小百合・川喜多喬共著
『大学のキャリア支援-実践事例と省察-』
3 キャリアイベント情報
———————————————————————-
【学会からのおしらせ】
◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
非会員の方もご参加いただけます。
先着順ですのでお早めにお申し込み下さい。
(関西地区研究会・懇親会)
日 時:平成20年3月7日(金)
16:30~18:00 工科短期大学の実習場見学
18:00~19:30 研究会
19:45~ 懇親会
講 師:松下電工(株)人材・能力開発センターものづくり人材育成グルー
プ長(兼)工科短期大学校長 小多田正美氏
テーマ:「松下電工のものづくり人材育成の取り組み」
会 場:松下電工株式会社教養会館3階特別A教室(大阪府門真市)
参加費:研究会は会員無料、非会員3,000円
懇親会は会員・非会員とも2,500円
詳細・申し込みはこちらからhttp://www.cdi-j.jp/gyouji/02.html
*定員に達ししだい締め切ります。
◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり北関東地区中間大会を開催いた
します。
非会員の方もご参加いただけます。
日 時:平成20年5月24日(土)10:00-17:00
主 催:日本キャリアデザイン学会・新島学園短期大学(共催)
会 場:新島学園短期大学(群馬県高崎市)
テーマ:「地域社会のキャリアデザイン支援力」
参加費:会員1,000円、非会員2,000円(予定)
内 容:記念講演、パネルディスカッションのほか、エクスカーション、会
員交流会などを計画中
詳細はこちらをご覧ください。http://www.cdi-j.jp/topics/080524.html
(参加申し込みは近日中に開始いたします)
———————————————————————-
1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「ダイバーシティ」(1)
人事管理における「ダイバーシティ・マネジメント」の考え方は、わが国で
はまだそれほど普及しているとはいえないかもしれない。とはいえ、近年では
これを標榜する企業も増えつつあり、グローバル化の時代にあってこれからの
人事管理のキーワードとなりそうな気配もないではない。
もっとも、米国に進出している企業にとっては、ダイバーシティ・マネジメ
ントはすでに周知のものだろう。その背景には米国社会の多様性がある。
米国は、もともと先住民族の居住地に植民した欧州人によって建国されたと
いう歴史を持つ。その後も、アフリカ大陸から多数の人たちが強制的に移住さ
せられるなど、多種多様な移民が移り住んできたし、現在でも多くの移民が流
入している現実もあって、きわめて多様性に富む。これを背景に、米国では少
数者に対する差別、とりわけ人種差別がかねてから大きな社会問題と認識され、
その解決は重大な社会正義であると考えられてきた。1964年の公民権法第七編
は人種差別撤廃を徹底するものとなり、さらには年齢差別禁止法、障害者差別
禁止法などの差別禁止立法によって、人種、皮膚の色、出身地、宗教、性別、
年齢や障害の有無などの理由による雇用差別が禁止された。また、一定の政府
契約業者に対してはアファーマティブ・アクションも義務づけられるなどの法
的措置がとられている。こうした中で、米国企業にとって多様性への取り組み、
とりわけ差別問題への取り組みが重要な課題として定着した。
当初は法令遵守や企業倫理といった側面が重視され、法的規制への対応が中
心であったし、現在でも依然としてその比重は大きいようだ。多くの企業がダ
イバーシティ・コミッティを設置し、従業員や管理職におけるマイノリティの
比率を監視し、あるいはその登用を進めている。また、従業員向けに多様性理
解のためのダイバーシティ研修プログラムを展開する企業も多いという。米国
では差別問題が顕在化すると訴訟に結びつきやすく、企業のリスク・マネジメ
ントとしても重要視されている。
これに対し、多様性を競争優位につなげていこうとするのが、今日的な意味
での「ダイバーシティ・マネジメント」である。この考え方は、1990年代に急
速に拡大したという。
その一つの要因は、1990年代に入って米国企業の事業のグローバル展開が拡
大したことがある。世界各国での最適なマーケティングを実現するためには、
現地従業員の知識やアイデアが不可欠とされるようになった。
もう一つの大きな要因として、米国の人口構成の変化、すなわちマイノリテ
ィ人口の増加が指摘されている。たとえば、すでにカリフォルニア州では2000
年時点ですでに白人の人口比率が過半を下回っている。こうした傾向を逆戻り
させることは不可能に近く、将来的にはこれが全米に拡大することは確実と考
えられるようになった。もはや多様性を受容することは不可避であり、そうし
なければ労働力の確保ができない時代が来ることになる。であれば、単に多様
性の高い組織をうまく運営するというだけにとどまらず、その多様性を競争優
位につなげていくことができるのではないかというチャレンジングな発想が生
まれてきた。
たとえば、IBMは”Valuing Diversity”を標榜し、社内外できわめて幅広
い、多彩なダイバーシティ・プログラムを展開している。これは、1993年に同
社の会長兼CEOに就任したルイス・ガースナーは、世界160カ国、26万人の
IBM社員の30~35%は女性、黒人、ヒスパニック、アジア人であるのに対し、
経営権を持つトップエグゼクティブのほとんどは白人男性、いわゆるWASP
であることに着目した。これは様々な社員が持つ潜在的な力が十分に活用しき
れていないことの現れであると考え、例えばマイノリティーの管理職比率など
の目標値を設定し、3カ月ごとに進捗状況のレビューを義務づけるといった取
り組みを進めたという。この考え方はIBMの日本法人である日本アイ・
ビー・エムでも展開されており、同社はわが国におけるダイバーシティ・マネ
ジメントの代表的先進事例としての地位を確立した。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『大学のキャリア支援-実践事例と省察-』
上西充子編著 伊藤文男・小玉小百合・川喜多喬共著 経営書院 2007.11.6
本書によれば、文部科学省関係の政策文書に「キャリア教育」の語がはじめ
て現れたのは1999年であるという。この年、大学のキャリア支援の先進事例と
して知られる立命館大学の就職部が「キャリアセンター」に改組された。当時
はいわゆる「就職超氷河期」にあり、学生をいかにスムーズに就職させるかは
各大学にとって最大の関心事のひとつであったといっても過言ではあるまい。
とはいえ、大学のキャリア支援に定式があったわけではなく、さまざまな大
学がさまざまなキャリア支援に取り組み、試行錯誤を重ねたというのが実情だ
ろう。そこにはまだ6~7年の歴史しかないし、しかもこの間に経済情勢が大
きく変化したことで、キャリア支援のめざすものもかなりの程度変化を余儀な
くされたに違いない。大学のキャリア支援は現在もかなり混沌とした状況にあ
るといっていいのだろう。
とはいえ、さまざまな取り組みの蓄積はすでに相当の量となり、その中には
他から先進事例として注目され、ベンチマークの対象となるようなものも現れ
はじめている。本書はこうした事例の紹介を中心に、大学のキャリア支援の現
状の概観と今後の展望を試みている。共著者によれば「拙速を覚悟で出そう」
という本であるというが、拙速であればこそまことに時宜を得た出版といえる
のではないか。
序論では、主な編著者である上西氏が大学のキャリア支援の意義を多面的に
解説し、続く第1章ではやはり上西氏が独自調査の結果をもとに現時点での大
学におけるキャリア支援の動向を紹介したうえで、効果的なキャリア支援・キ
ャリア教育について考察されている。これからのキャリアセンターには従来の
就職部とは大きく異なる機能が必要となるという。
第2章から第4章は具体的な実践事例の紹介である。第2章では正課として
キャリア教育に取り組む武蔵野大学の事例が伊藤氏によって紹介される。文科
省の「特色ある大学教育支援プログラム」に選ばれた定評ある先進事例である。
第3章では法政大学のキャリアアドバイザー、キャリアセンターのプログラム
ディレクターを歴任した小玉氏による4年間の実践事例であり、その試行錯誤
の過程と得られた知見が興味深い。第4章は上西氏による高大連携型のキャリ
ア支援の実践事例である。3年間に7回開催された交流イベントを通じて双方
の学生の意識が変容していくプロセスがやはり興味深い。
第5章は川喜多氏による現状の総括であり、未来への提言である。現状は混
沌としているが、ひととおりの整理のもとに将来の方向性を示すことは有意義
であろう。失礼ながら、時折みせる韜晦ぶりには定評のある(?)著者である
だけに、なかなか一筋縄でいかない部分もあるが、しかし現場での豊富な経験
と実地の調査に基づいた所論には説得力がある。
この間、大学のキャリア支援をめぐる環境は大きく変化した。しかし、かつ
てのように大学の就職部が就職支援をしていればすむという時代に戻ることは
おそらくあるまい。今後もさまざまな議論と試行錯誤が続けられていくのだろ
うが、そこに投じられた一石として価値のある本なのだろうと思う。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆中央職業能力開初協会 若年者向けキャリア・コンサルティングセミナー
平成19年9月~平成20年2月
全国12都市(千葉市、立川市、札幌市、仙台市、富山市、福井市、京都市、
大阪市、広島市、徳島市、福岡市、鹿児島市)にて開催
http://www.adds.javada.or.jp/column_info/magazine/cctop.html
◆連合 障がい者雇用シンポジウム「いま、障がい者雇用を進めよう」
平成20年2月5日(火)14:00~17:00
基調講演:障がい者雇用の現状と課題
松矢勝宏(目白大学教授)
障がい者関連団体、労働組合からの問題提起と意見交換
於 全電通労働会館2階「全電通ホール」(東京都千代田区)
http://www.jtuc-rengo.or.jp/info/event/20080205.html
◆神奈川県、21世紀職業財団 「次世代育成支援と女性活躍シンポジウム」
平成20年2月12日(火)13:30~16:35
基調講演:ポジティブアクションと就業継続の取組みについて
内海房子(NECラーニング(株)社長)
パネルディスカッション
於 ワークピア横浜(横浜市中区)
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/rosei/josei/jisedaisympo-chirashi.pdf
[編集後記]
年があけて、ビジネス街に着慣れないスーツ姿の若者が目立つようになって
きました。今年の就職戦線は昨年同様の過熱ぶりとなるのか、景気の先行き不
透明感を反映してやや縮小するのか…。仮に景気が下り坂とすると時期が遅く
なるほど環境が厳しくなるわけで、今年の学生さんは短期決戦、早期決着をめ
ざすのが賢明な作戦かもしれません。いずれにしても、多くの若者がよい機会
に恵まれてほしいものです。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/
—-[PR]————————————————————–
◆学会監修・菊地達昭編著『キャリアデザインへの挑戦』優待販売のお知らせ
・本学会の菊地達昭・常務理事編により、学会創立期のメンバーなど、有識者
58人の「私のキャリアデザイン論」(『文部科学通信』に連載)を集大成し
た図書『キャリアデザインへの挑戦』が、経営書院から出版されました。
定価1890円(税込み)のところ、会員には特別に3割引(1323円)で販売を
いたします。
*経営書院(FAX:0120(73)3641、e-mail:sato-ken@sanro.co.jp)へ直接
申し込んで下さい。その際、宛名に経営書院『キャリアデザインへの挑
戦』係と書き、冊数、 宛名、送り先住所、送り先連絡先電話番号、会
員番号を明記してください。
なお郵送料はご負担下さい。折り返し振込用紙を同封しますので到着後
1週間以内にお振込下さい。
□□■—————————————————————-
□
日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
—————————————————————-□□■