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□ キャリアデザインマガジン 第68号 平成19年11月26日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「テレワーク(4)」
2 私が読んだキャリアの1冊
福井秀夫・大竹文雄編著『脱格差社会と雇用法制』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
非会員の方もご参加いただけます。
先着順ですのでお早めにお申し込み下さい。
(第1回)
平成19年12月6日(木)18:30-20:00
講 師:内藤義治 氏(レジャーサービス産業労働情報センター・事務局長)
テ-マ:「旅行業の業界変動と働く人のキャリアの変化」(仮題)
会 場:法政大学 富士見坂校舎(富士見校舎・図書館の東側・飯田橋より)
1F 遠隔講義室(定員60名)
http://www.hosei.ac.jp/hosei/campus/annai/ichigaya/access.html
(ニュースレター記載の場所から変更になっておりますのでご注意下さい)
申込み:https://www.hosei.org/event/detail/20071206.html
*定員に達ししだい締め切ります。
(第2回)
日 時:平成19年12月21日(金)18:30-20:00
講 師:氏家麻夫氏 (元 日本労働研究機構研究主幹)
テ-マ:「著名人のキャリア選択と私のキャリア研究」(仮題)
会 場:未定(東京都心の予定。申込者には決まり次第、お伝えします)
申込み:https://www.hosei.org/event/detail/20071221.html
*定員に達ししだい締め切ります。
◆日本キャリアデザイン学会は関西支部を設立することとなり、以下のとおり
設立総会を開催いたします。
支部会員は関西在勤・在住者に限られますが、支部行事には関西地区にかぎ
らず参加できますので、多数のご参加をお待ちしております。
「招徳酒造」は、正保2年(1645)洛中で創業、現在も京都伏見で日本古来
の酒造り「純米酒」にこだわる蔵元です。懇親会でも、こだわりの純米酒を
ご提供いただきます。
日 時:2007年12月15日(土)15:00-19:30
於 神戸学院大学ポートアイランドキャンパス
内 容:記念講演会(15:00-17:00)
講師/追手門学院大学教授 三川俊樹(学会理事・研究組織委員)
招徳酒造(株)代表取締役 木村紫晃
設立総会(17:00-17:30)
懇親会(17:30-)渡辺三枝子会長出席予定
参加費:講演会の参加費は無料(会員・非会員とも)
懇親会費は会員・非会員とも3,000円の予定です。
※詳細内容、および申込みは学会ホームページにて近日中に公開します。
http://www.cdi-j.jp/
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「テレワーク」(4)
この9月に発表された経済財政諮問会議の労働市場改革専門委員会の第2次
報告は、外国人労働に関わる制度改革とともに「テレワーク(在宅勤務)促進
のための労働法制の見直し」が取り上げられている。
実際、労働法制がテレワークの普及を妨げているとの意見は往々にしてみら
れるところだ。たとえば労働時間法制について、テレワークについては労働時
間の算定が難しいため、労働基準法の「事業場外労働のみなし労働時間制」に
よることになることが多い。これは「労働者が労働時間の全部又は一部につい
て事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所
定労働時間労働したものとみなす」「通常所定労働時間を超えて労働すること
が必要となる場合」においては「当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働
したものとみなす」が、そのみなし時間は労使協定で定めるというものだ。
ただし、テレワークならすべてみなし労働時間制が適用できるというわけで
はない。これを適用するためには「当該業務が、自宅で行われること」(した
がって、広義のテレワークには含まれてくるサテライト・オフィス勤務にはみ
なし労働時間制は適用できない)に加えて「情報通信機器が、使用者の指示に
より常時通信可能な状態におくこととされていないこと」「当該業務が、随時
使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと」が必要であるという行
政解釈がある。これを厳格に解釈すれば、たとえば「勤務時間中は携帯電話の
電源を入れておいてください」という指示をしただけでみなし労働時間制は適
用できないということになる。これはさすがに現実的ではないので、専門調査
会の第2次報告では「仮に終日、情報通信機器が接続可能な状態にあっても」
「労働者が自由に持ち場(端末の前)を離れることのできるような状況にあれ
ば」みなし労働時間を適用できることを明確化すべきだ、としている。「随時
使用者の具体的な指示に基づいて」についても、「一般的な指示(業務目標や
期限など)ではなく」「例えば朝夕に指示があるだけであれば、具体的な指示
があったとはいえ」ないことを明確化すべきとしている。さらに、第2次報告
では「今後の検討課題」として、健康確保措置も含めて、在宅でより柔軟な勤
務が可能となるような制度的な工夫が必要だと述べている。実際、現行法制を
みると、なるべくみなし労働時間制を使わせたくない、従って在宅勤務もさせ
たくないと考えているような印象すら受けるほどであり、在宅勤務を普及させ
るにはこうした労働時間法制の見直しは不可欠であろう。
また、第2次報告ではとりたてて取り上げられてはいないが、在宅勤務にお
ける労働法制面での課題として、実務的に難しいものとして労働災害の問題が
ある。厚生労働省が出している「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導
入及び実施のためのガイドライン」には「業務が原因である災害については、
業務上の災害として保険給付の対象となる。したがって、自宅における私的行
為が原因であるものは、業務上の災害とはならない」という当たり前の記述が
あるだけだが、現実には自宅での災害の原因が業務なのか私的行為なのかは判
然としないケースも多いだろうから、わかりやすい整理が望まれる。安全配慮
義務などについても、自宅には使用者の施設管理が及ばないことなどへの配慮
が必要と思われる。
他にも課題は散見され、労働者保護に欠けることがあってはならないが、在
宅勤務の普及の妨げとならない法制度の構築が望まれよう。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『脱格差社会と雇用法制-法と経済学で考える』
福井秀夫・大竹文雄編著 2006.12.25 東洋経済新報社
この本が昨年末の発刊以来、多くの論争を呼んだことは周知であろう。論争
的な本であるだけに興味深い内容を多く含んでいるが、それだけにまことに毀
誉褒貶が多い本でもある。
この本には「法と経済学で考える」という副題がある。近年、わが国では労
働法学者と労働経済学者のコミュニケーションを通じた労働分野における法と
経済学の展開が本格化しており、その成果としては、たとえば日本労働研究機
構(2001)『「雇用をめぐる法と経済」研究報告書』や日本労働研究雑誌491号
(2001年6月号)の特集、あるいはそれをもとにした大竹文雄・大内伸哉・山
川隆一編(2002、増補版2004)『解雇法制を考える―法学と経済学の視点』など
がある。
ただし、この本はそうした流れの上に位置づけられるものではなさそうで、
むしろ法と経済学の本家・米国流に近い、「経済学の手法による法学の(一方
的な)批判」といった色彩が強いように思われる。これはおそらく、編者のひ
とりである福井秀夫氏の先鋭的な市場主義・自由主義志向が強く反映したもの
と推測されるが、となると法学者からの反発が強いのも当然であろう。
さて、この本に対する批判は大別して2つあるようで、ひとつは執筆者が労
働問題の専門家でなく、したがってわが国の労使関係や労働市場に関する理解
を欠いているというものであり、もうひとつは労働法に関する誤解や知識不足
を指摘するものである。前者に関しては、実務家の立場から読むとこの本の著
者たちが人事管理や内部労働市場に対して著しく過小評価にしているのはまこ
とに実感にあわない。たしかに、内部労働市場は外部労働市場に較べて効率性
の面で劣るところはあるかもしれないが、人材育成などの面で優れている部分
も大きい。そうした中でなるべく効率的に人事管理を進めようという実務家の
多大な努力が一顧だにされていないに近い扱いを受けていることはなかなか納
得できないというのが率直なところだ。まあ、序章から9章までの全10章のう
ち、労働問題の専門家が執筆しているのは半数に満たない4章しかないのだか
ら、それはそれでこの本の特徴として受け止めるべきものなのかもしれないし、
それゆえに興味深い内容も豊富なのだが(たとえば、私には「最終提案択一的
手続き」について紹介した太田論文はたいへん勉強になった)。
いっぽう、後者はといえば、たしかに誤解や知識不足にもとづく議論は好ま
しいものではないが、この論法が行き過ぎると法学者でなければ法律の議論は
できないという閉鎖性に陥りかねない。法学者としては八田論文が「解雇規制
はすでに雇われている人の既得権を守るという意義があり」と述べていること
に憤懣やるかたないだろうが、一流の経済学者がそう「誤解」しているという
ことは、世間に広くそうした「誤解」があるのだということをきちんと受け止
める必要はあるだろう。あるいは、「はじめに」で福井氏が述べているように、
法学者が「「正義」や「弱者」といった反証不能な基準」によって経済学を批
判するときに、経済学者もまた類似の感情を持っていることも受け止める必要
があるのではないか。
大切なのは、一方による他方の一方的な批判を応酬することではなく、対話
を通じて相互理解を進め、互いの専門性を補完しあうことを通じて、「法と経
済学」のより実りある議論を深めていくことだろう。この本にはそうしたスタ
ンスがあまり感じられないのが残念なところだが、これはこれとして、法学者
と経済学者の対話の気運自体は衰えてはいないだろう。度量と寛容をもって建
設的な議論が進むことを期待したいところだ。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆中央職業能力開初協会 若年者向けキャリア・コンサルティングセミナー
平成19年9月~平成20年2月
全国12都市(千葉市、立川市、札幌市、仙台市、富山市、福井市、京都市、
大阪市、広島市、徳島市、福岡市、鹿児島市)にて開催
http://www.adds.javada.or.jp/column_info/magazine/cctop.html
◆キャリア・コンサルティング協議会 キャリア・コンサルタント全国大会
「社会が求めるキャリア・コンサルタントのチカラ~キャリア・コンサルタ
ントの社会化に向けて~」
平成19年12月23日(日)10:00~16:30
於 エル・おおさか(大阪市中央区)
http://www.career-cc.org/2007zenkokutaikai.pdf
※本学会の川崎友嗣理事・研究組織委員(関西大学教授)、宮城まり子理
事(立正大学教授)が出講します。
[編集後記]
現在進められている独立行政法人改革の一環として、労働政策研究・研修機
構が廃止・民営化の候補にあがっているとの報道があります。しかし、同機構
がキャリア関係をふくむ労働分野において、研究成果そのものにとどまらず、
研究者の輩出という面でも非常に豊富な実績をあげていることを考えると、十
分に慎重な検討が必要なように感じます。公費で運営されている機構ですから、
もちろん無駄は省かれるべきですし、民営化もできるのであれば検討すべきで
しょうが、非効率だから廃止というのはいかにも短絡的ではないでしょうか。
東京大学の玄田有史教授が中心になって存続を求める働きかけが進められてい
ます(http://www.genda-radio.com/2007/11/jilpt.html)。多くのキャリア
関係者のご賛同を得られれば幸甚です。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/
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◆学会監修・菊地達昭編著『キャリアデザインへの挑戦』優待販売のお知らせ
・本学会の菊地達昭・常務理事編により、学会創立期のメンバーなど、有識者
58人の「私のキャリアデザイン論」(『文部科学通信』に連載)を集大成し
た図書『キャリアデザインへの挑戦』が、経営書院から出版されました。
定価1890円(税込み)のところ、会員には特別に3割引(1323円)で販売を
いたします。
*経営書院(FAX:0120(73)3641、e-mail:sato-ken@sanro.co.jp)へ直接
申し込んで下さい。その際、宛名に経営書院『キャリアデザインへの挑
戦』係と書き、冊数、 宛名、送り先住所、送り先連絡先電話番号、会
員番号を明記してください。
なお郵送料はご負担下さい。折り返し振込用紙を同封しますので到着後
1週間以内にお振込下さい。
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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