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□ キャリアデザインマガジン 第61号 平成19年6月25日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「労働ビッグバン(3)」
2 私が読んだキャリアの1冊
大久保幸夫『キャリアデザイン入門[1]基礎力編』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆現在、日本キャリアデザイン学会は、学会大会での研究発表、実践事例発表
の申し込みを受け付けています。
日程等:10月20日(土)-21日(日)於:武蔵野大学
大会テーマ:「垣根をこえたキャリアデザイン支援」
申込要領は学会ホームページでご覧ください。
http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/topics/01.html
※締め切り(6/30)が迫っております。
◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
日 時:6月30日(土)13:30-15:30
テーマ:「高等学校への進学動機と適応的な学校移行の予測に関する研究~
『高校くらい行っておきなさい』など統制的な言葉がけが意味する
もの」~」
講 師:永作稔 筑波大学人間総合科学研究科現代GP専任教員
コメンテーター:青木猛正 埼玉県立日高養護学校教頭
会 場:立教大学5号館5階5302教室(東京都豊島区)
定 員:80名(学会ホームページにて受付を開始しております)
http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/gyouji/02.html
参加費:会員無料、非会員3,000円
日 時:7月26日(木)18:00-20:00
テーマ:「芸術・造形活動とキャリアデザイン」
講 師:豊嶋美恵子[作家名:藤田美恵子]新島学園短期大学非常勤講師、
造形作家
紹介と解題:山口憲二 新島学園短期大学キャリアデザイン学科教授、本会
研究組織委員
会 場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナード・タワー25階会議室B
定 員:50名(学会ホームページにて受付を開始しております)
http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/gyouji/02.html
参加費:会員無料、非会員3,000円
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「労働ビッグバン」(3)
「労働ビッグバン」の具体的な内容と進め方を検討している「労働市場改革
専門調査会」は、この4月に『「働き方を変える、日本を変える」-《ワーク
ライフバランス憲章》の策定-』と題する第1次報告をとりまとめた。その内
容は非常に多岐にわたり、それぞれに多くの論点を含んでいる。
報告書はまず第1章で民間議員ペーパーが提示した「6つの壁」について述
べ、現状の問題点を列挙している。そのあとに第2章として「目指すべき労働
市場の姿-多様で公正な働き方を保障-」が続いている。その目指すところは、
(1)生涯を通じて多様な働き方が選択可能になること、(2)外部労働市場
が整備され、合理的根拠のない賃金差が解消されること、(3)多様な働き方
に対して横断的に適用される共通原則が確立すること、(4)税制・社会保障
制度が働き方に中立的になっていること、(5)職業紹介・職業訓練が充実し
ていること、(6)セーフティーネットが就労機会促進型になっていること、
(7)労働条件が高い透明性を有していること、(8)国と地方の間に連携が
とれていること、という8項目に整理されている。「働き手が、多様で公正な
働き方の選択肢から、ライフスタイル、ライフサイクルにあわせて選択できる
ようになることが鍵」なのだという。
そして、続く第3章が「《ワークライフバランス憲章-働き方を変える、日
本を変える-》の策定」となっている。ここでは、「若年者、女性、高齢者の
就業率を向上させるために、それぞれに明確な数値目標を掲げて、これに取り
組む」「フルタイム労働者の年間実労働時間を短縮するため、完全週休二日制
の100%実施、年次有給休暇の100%取得、残業時間の半減に取り組む」
「《ワークライフバランス憲章-働き方を変える、日本を変える-》を策定す
る」の3つが提言されている。
とりわけここで「目玉」として意識されているらしいのが「明確な数値目標
を掲げ」たことのようだ。具体的には、10年後の数値目標として「15~34歳の
既卒男性の就業率を89%から93%に4%引上げ、15~34歳の既卒未婚女性の就
業率を85%から88%に3%引上げ」「25~44歳の既婚女性の就業率を57%から
71%に14%引上げ」「60~64歳の高齢者の就業率を53%から66%に13%引上げ、
65~69歳の高齢者の就業率を35%から47%に12%引上げ」「完全週休二日制の
100%実施、年次有給休暇の100%取得、残業時間の半減、フルタイム労働者の
年間実労働時間を1割短縮」が掲げられた。
こうした景気循環の影響を大きく受ける指標を労働政策の目標とすることに
いかほどの意味があるのか疑念は大きいが(経済政策全体の目標としてはある
いはふさわしいかもしれないが)、こうした形で意気込みを示すことには意味
があるということなのだろう。また、この目標の根拠はそれぞれ若年者、女性、
高齢者の「就業希望者が就業できるようにする」ことであるらしい。もちろん、
国民の希望を実現することは政府の大切な役目だろうから、それを政策の目標
とするのはもっともな話かもしれない。しかし、いうまでもなく重要なのは、
どのような政策がどのような効果を発揮することでその目標を達成できるのか、
という政策の整合性だろう。
残念ながら、第1次報告は個別政策の羅列にとどまっており、誇張した表現
をすれば「思いつきを並べただけ」という感も否めない。「第1次」報告とい
うからには「第2次」以降もあるのだろうから、おそらくはこれから議論が深
められていくのだろう。今後の展開が注目される。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『キャリアデザイン入門[1]基礎力編』
大久保幸夫著 2006.3.15 日経文庫
日経文庫の「入門シリーズ」に「キャリアデザイン入門」が追加された。著
者の大久保幸夫氏はリクルートのワークス研究所長を長年務めており、わが国
キャリア研究の第一人者の一人といっていいだろう。もとより、キャリアデザ
インは各国固有の社会風習や雇用慣行といったものと深くかかわるものだから、
それぞれの国にはそれぞれの「キャリアデザイン入門」が必要だろう。この本
は、基本的にはシャインのキャリアアンカー論に依拠しているが、リクルート
の豊富なキャリア研究の蓄積のもとにわが国の実情にフィットした内容となっ
ている。キャリアデザインに関してはいささか心許ない「入門書」も散見され
るだけに、本格的な入門書の登場はまことに歓迎すべきことだろう。
さて、この本は内容豊富で、「1・基礎力編」と「2・専門力編」の2分冊
となっている。ここでも、それぞれを2回にわけて取り上げたい。
そこでまず「1・基礎力編」だが、そもそも「基礎力編」「専門力編」とい
う2分冊となっていることが、キャリア形成の実情によく一致しているものと
いえる。
近年の一時期、若年雇用対策として「社会人基礎力」の向上が主張されたこ
とがあった。これは、若年雇用問題の本質が需要不足である中ではいささか的
外れな議論であったことは否定できないし、また、一部では「社会人基礎力」
そのものを統制的なものとして感情的に否定する不毛な議論もあったが、やは
り職業人として(さらにいえば成人として)社会生活を送っていくうえにおい
ては、身についていることが望ましいさまざまな資質があることは否定しても
しかたのない事実だろう(その程度やバランスは多様だろうが)。この本では、
キャリアデザインの時間軸の上で、学生時代から概ね30代なかばまでをもっぱ
ら「基礎力」を形成・伸長する時期、30代なかば以降をもっぱら「専門力」を
蓄積する時期ととらえる「筏下り・山登り」モデルを提唱している。前半期の
「筏下り」の時期は、それほど意識的にキャリアデザインを考えず、与えられ
た仕事、求められる役割を、筏で急流を下るように、全力をあげて遂行してい
く時期であり、それを通じて「基礎力」が形成されていくとしている。それに
続く「山登り」の時期は、自ら選択した専門分野のキャリアを自律性を持ちな
がらひたすら登りつめていくことで、専門性が高まっていくとしている。その
中で、「筏下り」から「山登り」に移行する「山探し」、すなわち自分の専門
分野を選択する時期を、キャリアデザインの最重要ポイントとして強調する。
これはわが国におけるキャリアデザインのかなり一般的なモデルといえるので
はないか。
「1・基礎力編」は、まずキャリアデザインの理論を簡単に整理し、「筏下
り・山登り」モデルを提示する。そのうえで、「筏下り」の時期におけるキャ
リアデザインの考え方と、「基礎力」の具体的な内容とその形成のための心構
えなどについて説明している。「自分探し」や「即戦力」といった、依然とし
て広く蔓延している思い違いについてもていねいに誤解を解いている。正社員
就職を勧め、キャリア中断を強く戒めるなど、わが国の実情をきちんとふまえ
た適切な記述も多い。ともすれば混乱しがちな「基礎力」の解説も非常によく
考えられた、整理されたものとなっている。文章も平明でわかりやすく、全体
として理解が進みやすいだけでなく、読者が「やる気」を持てるような本にな
っている。入門書としてはまことに優れたものといえるだろう(もちろん、現
実に書いてあることを実行するのは容易ではないわけだが、入門書というもの
はそういうものだ)。
いっぽう、やや不満が残るのは、かなりの程度職業キャリアに特化した内容
となっており、人生キャリアのデザインとの関係についての記述が希薄な点だ。
一応、「節目」や「トランジション」といった考え方にも言及はされているし、
出産とキャリアデザインについても簡単に触れられてはいる。しかし、一貫し
て「筏下り・山登り」モデルが強調されているため、結婚・出産や介護、転勤、
あるいは勤め先の倒産などといったイベントにともなうキャリアデザインの描
き直しという側面が軽視されすぎているという印象があり、やや単線的で均衡
を欠く感を受ける。
もっとも、現在のわが国におけるキャリアデザインをめぐる状況がかなり混
乱していることを考えると、入門書としてはまずは一般的なモデルを提示して
さまざまな誤解を解くことが優先されるべきで、それ以上踏み込むのは現状で
は難しいという判断なのかもしれない。そういう意味ではその目的は十分に達
成されていると思われる。
(編集委員 荻野勝彦)
※『キャリアデザイン入門[1]基礎力編』の「1」はローマ数字です。
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆労働政策研究・研修機構労働政策フォーラム
「企業における外国人留学生の活用」
平成19年6月27日(水)13:30-17:00
於 大同生命霞ヶ関ビル6階会議室 (東京都千代田区)
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20070627.htm
◆女性の活躍推進協議会・厚生労働省
「ポジティブ・アクションの成功の鍵を考えるシンポジウム」
平成19年7月5日(木)13:00-15:00
於 女性と仕事の未来館ホール(東京都港区)
http://www-bm.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/dl/h0530-3c.pdf
◆高専連携「チャレンジプログラム」シンポジウム
(後援:多摩地区高等学校進路指導協議会、多摩地区専修学校協議会、日本
キャリアデザイン学会)
平成19年7月30日(月)13:30-17:00
於 国際文化理容美容専門学校国分寺校(東京都国分寺市)
http://www.tama-sen.jp/symposium.html
※本学会の生駒俊樹理事・研究組織委員(京都造形芸術大学教授)が出講
します。
◆独立行政法人経済産業研究所政策シンポジウム「ワーク・ライフ・バランス
と男女共同参画」/経済産業研究所
平成19年8月28日(火)9:45-17:50 於 経団連会館(東京都千代田区)
http://www.rieti.go.jp/jp/events/07082801/info.html
※本学会の佐藤博樹副会長・研究組織委員(東京大学教授)が出講します。
[編集後記]
1年以上「積読」になっていた『キャリアデザイン入門』1・2をようやく
読みました。感想は本号と次号とでご紹介します(次号はかなり辛口になりま
す)が、平易な入門書であっても、あらためて読んでみるといろいろな発見や
ヒント、「思い出し」があるものだと妙に感心しました。それもまた、すぐれ
た入門書の証明なのかもしれません。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/
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◆産業技術総合研究所 キャリア・アドバイザー公募情報
機関名 :独立行政法人産業技術総合研究所
タイトル :キャリア・アドバイザー
研究分野 :社会科学 – 経営学
総合領域 – 科学教育・教育工学
その他 – キャリア・カウンセリング
公募終了日 :2007年07月17日
公募URL :
http://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=4&id=D107060659&ln_jor=0
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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