キャリアデザインマガジン 第60号

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□    キャリアデザインマガジン 第60号 平成19年6月11日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典「労働ビッグバン(2)」
2 私が読んだキャリアの1冊
   坂東眞理子『女性の品格-装いから生き方まで』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆現在、日本キャリアデザイン学会は、学会大会での研究発表、実践事例発表
 の申し込みを受け付けています。
 日程等:10月20日(土)-21日(日)於:武蔵野大学
 大会テーマ:「垣根をこえたキャリアデザイン支援」
 申込要領は学会ホームページでご覧ください。
  http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/topics/01.html

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。

 日 時:6月30日(土)13:30-15:30
 テーマ:「高等学校への進学動機と適応的な学校移行の予測に関する研究~
     『高校くらい行っておきなさい』など統制的な言葉がけが意味する
     もの」~」
 講 師:永作稔 筑波大学人間総合科学研究科現代GP専任教員
 コメンテーター:青木猛正 埼玉県立日高養護学校教頭
 会 場:立教大学5号館5階5302教室(東京都豊島区)
 定 員:80名(学会ホームページにて受付を開始しております)
      http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/gyouji/02.html
 参加費:会員無料、非会員3,000円

 日 時:7月26日(木)18:00-20:00
 テーマ:「芸術・造形活動とキャリアデザイン」
 講 師:豊嶋美恵子[作家名:藤田美恵子]新島学園短期大学非常勤講師、
     造形作家
 紹介と解題:山口憲二 新島学園短期大学キャリアデザイン学科教授、本会
       研究組織委員
 会 場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナード・タワー25階会議室B
 定 員:50名(学会ホームページにて受付を開始しております)
      http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/gyouji/02.html
 参加費:会員無料、非会員3,000円

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1 キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

 労働ビッグバン(2)

 経済諮問会議が「労働ビッグバン」を打ち出したのは、昨年(2006年)10月
13日開催の平成18年第22回経済財政諮問会議の有識者議員提出資料(いわゆる
「民間議員ペーパー」)においてであった。この会合は、小泉政権から安倍政
権に代わり、それにともなって小泉政権時代の政策決定に大きな役割を果たし
た経済財政諮問会議も、そのメンバーを一新しての最初の場であった。いわゆ
る「民間議員」についてもそれまでの牛尾治朗氏、奥田碩氏、本間正明氏、吉
川洋氏が退き、新たに伊藤隆敏氏、丹羽宇一郎氏、御手洗冨士夫氏、八代尚宏
氏が就任しており、これはその最初の民間議員ペーパーとして注目されるもの
であった。
 このペーパーは『「創造と成長」に向けて』と題するもので、「イノベーシ
ョンによる生産性向上」など7つの課題を指摘している。その2つめとしてあ
げられたのが「労働市場の効率化(労働ビッグバン)」であるが、具体的な内
容はここでは「経済全体の生産性向上のためには、貴重な労働者が低生産性分
野から高生産性分野へ円滑に移動できる仕組みや人材育成、年功ではなく職種
によって処遇が決まる労働市場に向けての具体的施策が求められているので
はないか。公務員についても公務員制度改革が必要である。」と述べられるに
とどまっている。
 以降、経済財政諮問会議は毎回テーマを決めて集中審議を行うという運営が
行われたが、「労働ビッグバン」がふたたび表舞台に立ったのは同年11月30日
開催の平成18年第27回経済財政諮問会議においてであった。この日は集中審議
の第5回として「再チャレンジ支援・労働市場改革」がテーマとして設定され、
再チャレンジ支援、労働ビッグバン、ハローワーク(の民間開放)について議
論が行われている。
 この日は、「複線型でフェアな働き方に~~労働ビッグバンと再チャレンジ
支援~~」と題する民間議員ペーパーが提出され、労働ビッグバンの具体的内
容が提示された。それによると労働ビッグバンは「複線型でフェアな働き方」
をめざすものであり、「働き方の多様性」「労働市場での移動やステップアッ
プのしやすさ」「不公正な格差の是正」を「3つの目的」としている。そのう
えで、「労働市場に関して検討すべき論点」として「再チャレンジを阻害する
労働市場の問題はどこにあるか」「雇用形態による格差をどう是正するか」
「仕事と育児の両立を図るには何が必要か」「技能をもった外国人労働者をど
のように活用すべきか」の4点を示している。さらに具体的な細目も示されて
いるが、労働市場や人事労務管理全般に幅広く関係するものとなっている。い
かに集中審議とはいっても1回の会議でこれをすべて議論し尽くすことは不可
能ということか、民間議員ペーパーでは「労働ビッグバンの進め方」としてま
ずは「専門調査会の設置」さらにそれを受けて「『骨太2007』に向けた府省横
断的な検討」を行うとされた。
 さらに、専門調査会設置前の12月20日に開催された第30回では「労働市場改
革専門調査会の検討項目についての意見」という民間技員ペーパーが提出され、
正規・非正規、性別、働き方、年齢、国境、官民という6つの「壁」の克服が
主張されるとともに、「均衡処遇の確立(不公正な格差是正)」「多様な働き
方の実現」「高齢者雇用の拡大」「労働市場(の)グローバル化」「職業訓練、
就職斡旋の充実」という検討項目が示された。この「6つの壁」は、「労働国
会」と言われた今次第166通常国会における大田弘子経済財政担当大臣の経済
演説にも盛り込まれることとなる。
 こうして、同年12月28日には「労働市場改革専門調査会」の第1回の会合が
開催され、「労働ビッグバン」の具体的検討が開始された。この専門調査会は
精力的に開催され、翌4月6日の第7回会合において『「働き方を変える、日
本を変える」―《ワークライフバランス憲章》の策定―』と題する第1次報告
がとりまとめられている。ここに至って、「ワーク・ライフ・バランス」とい
う考え方が大きく前面に打ち出されることになった。
                        (編集委員 荻野勝彦)

2 私が読んだキャリアの1冊

 『女性の品格-装いから生き方まで』
  坂東眞理子著 2006.10.3 ちくま新書

 昨年10月に出版された本だが、ここ2~3ヶ月くらい、とみに書店で平積み
されているのが目立つようになってきた感じがする。それもそのはず、先週み
かけたこの本のオビには「55万冊突破」と大きく書かれていた。特段なにかの
きっかけがあったというわけでもなく、さまざまな媒体の書評で取り上げられ、
静かに売上を伸ばしているらしい。実際、いい本だと思う。「女性がいかに生
きるか」はすなわち女性のキャリアデザインであるから、これはキャリアデザ
インの優れた指南書ということにもなる。
 著者は東大卒のキャリア官僚であり、埼玉県副知事、在オーストラリア連邦
ブリスベン日本国総領事(これは初の女性総領事であるという)などを歴任し、
内閣府男女共同参画局長として行政の男女共同参画の責任者を務めた人である。
そうした著者が説く「女性はいかに生きるか」は、単純なジェンダーフリーや
ジェンダーイコールを叫ぶものではない。変わりつつあるとはいえ、まだまだ
旧弊なジェンダー意識が根強く残存する日本社会の現実を踏まえたうえで、し
かし伝統的な女性らしさに回帰するのではなく、今日的な「よき女性らしさ」
を提示しようとしている。この内容を女性がどう読むのかは男性である評者に
は当然ながら理解の及ぶところではないし、読む人の読み方によっても異なっ
てくるだろう。とはいえ、これだけのキャリアを積んできた著者が、自分自身
の反省も率直に述べながら、副題にもあるように「装いから生き方まで」、服
装や話し方、マナーといった身近なものから、恋愛や人生に至るまで、ビジネ
ス・私生活の両面で具体的かつわかりやすく語りかけているところに、おそら
くは類書にはない魅力、説得力があるのだろうという推測は十分にできる。
 いっぽうで、男性にとっては、当然ながらビジネスマナーや服装などについ
ては共通するものがあって、それだけでも役立つ本ではあるのだが、それだけ
ではない。世の中で活躍している女性が男性をどう見ているのか、男性である
自分の言動が女性からはどのように見えているのか、ということが一目瞭然に
わかるという点で、まことに手厳しくも勉強になる本である。正直に白状して、
評者も一読して反省しきりだった。55万部のうち男性読者がどのくらいを占め
ているのかはわからないが、もともと男性向けのメディアとされる新書である
だけに、男性読者もかなりいるのかもしれない。実際、男性が手にとってみて
決して損はない本だし、むしろ積極的におすすめしたい本である。平易で達意
の文章はたいへん読みやすく、通勤電車の中などでもどんどん読み進められる
から、男性諸氏にもぜひカバーをかけて(笑)読んでみてほしいと思う。それ
が男女共同参画社会に向けての一歩である、といっても必ずしも大げさだとば
かりもいえないのではないか。
                         (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆労働政策研究・研修機構労働政策フォーラム
 「企業における外国人留学生の活用」
 平成19年6月27日(水)13:30-17:00
 於 大同生命霞ヶ関ビル6階会議室 (東京都千代田区)
 http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20070627.htm

◆女性の活躍推進協議会・厚生労働省
 「ポジティブ・アクションの成功の鍵を考えるシンポジウム」
 平成19年7月5日(木)13:00-15:00
 於 女性と仕事の未来館ホール(東京都港区)
 http://www-bm.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/dl/h0530-3c.pdf

◆高専連携「チャレンジプログラム」シンポジウム
 (後援:多摩地区高等学校進路指導協議会、多摩地区専修学校協議会、日本
  キャリアデザイン学会)
 平成19年7月30日(月)13:30-17:00
 於 国際文化理容美容専門学校国分寺校(東京都国分寺市)
 http://www.tama-sen.jp/symposium.html
  ※本学会の生駒俊樹理事・研究組織委員(京都造形芸術大学教授)が出講
   します。

◆独立行政法人経済産業研究所政策シンポジウム「ワーク・ライフ・バランス
 と男女共同参画」/経済産業研究所
 平成19年8月28日(火)9:45-17:50 於 経団連会館(東京都千代田区)
 http://www.rieti.go.jp/jp/events/07082801/info.html
  ※本学会の佐藤博樹副会長・研究組織委員(東京大学教授)が出講します。

[編集後記]

 第166通常国会も会期末が近づいていますが、かなり以前から関係者の間で
は今国会は労働関係の法案が多数審議される「労働国会」と言われていました。
「格差」問題がクローズアップされたのは予想外でしたが、その面からも労働
問題に注目が集まりました。残念ながら「労働国会」の成果は所期のものより
かなり縮小してしまいましたが、またぞろ「労働ビッグバン」といった議論も
出てきています。労働政策の行方から目が離せません。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.orange-plaza.com/cdi-japan/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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