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□ キャリアデザインマガジン 第59号 平成19年5月28日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「労働ビッグバン(1)」
2 私が読んだキャリアの1冊
山田昌弘『少子社会日本-もうひとつの格差のゆくえ』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆現在、日本キャリアデザイン学会は、学会大会での研究発表、実践事例発表
の申し込みを受け付けています。
日程等:10月20日(土)-21日(日)於:武蔵野大学
大会テーマ:「垣根をこえたキャリアデザイン支援」
申込要領は学会ホームページでご覧ください。
http://www.cdi-j.jp/oshirase070427.html
◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
日 時:6月30日(土)13:30-15:30
テーマ:「高等学校への進学動機と適応的な学校移行の予測に関する研究~
『高校くらい行っておきなさい』など統制的な言葉がけが意味する
もの」~」
講 師:永作稔 筑波大学人間総合科学研究科現代GP専任教員
コメンテーター:青木猛正 埼玉県立日高養護学校教頭
会 場:立教大学5号館5階5302教室(東京都豊島区)
定 員:80名(学会ホームページにて受付を開始しております)
http://www.cdi-j.jp/event.html
参加費:会員無料、非会員3,000円
日 時:7月26日(木)18:00-20:00
テーマ:「芸術・造形活動とキャリアデザイン」
講 師:豊嶋美恵子[作家名:藤田美恵子]新島学園短期大学非常勤講師、
造形作家
紹介と解題:山口憲二 新島学園短期大学キャリアデザイン学科教授、本会
研究組織委員
会 場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナード・タワー25階会議室B
定 員:50名(学会ホームページにて受付を開始しております)
http://www.cdi-j.jp/event.html
参加費:会員無料、非会員3,000円
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
労働ビッグバン(1)
ここ数ヶ月、経済諮問会議を中心として「労働ビッグバン」というキャッチ
フレーズが展開されている。多くの人には、わかったような気もするが今ひと
つわからない、不思議なことばなのではないか。
そこで、三省堂のWeb辞書を利用して、デイリーコンサイス国語辞典の「ビ
ッグバン」の項を調べてみると、「宇宙の始めに起こったとされる大爆発.
∥ 金融制度の大改革. *1986年の英国証券制度大改革の称から.」となって
いる。本家本元は天体物理学(?)の「ビッグバン」だが、それが英国の「証
券制度大改革」の称として使われ、それが日本の「金融制度の大改革」の意と
して使われた、という事情のようだ。
それでは英国の「ビッグバン」だが、これは1986年に行われたもので、証券
売買手数料の自由化、銀行資本への証券取引市場の開放などをはじめとする大
幅な証券取引の規制緩和だ。これは単に「ビッグバン」と呼ばれ(日本の「金
融ビッグバン」も英訳されると「Japanese “Big Bang”」となるらしい)、英
国の金融取引市場を大いに活性化すると同時に、市場はメリルリンチなどの米
国資本に席捲されて英国資本が一掃されてしまう、いわゆる「ウィンブルドン
現象」が起きた。
これを念頭に、1996年以降に進められたわが国の金融制度改革が「金融ビッ
グバン」とか「日本版ビッグバン」と呼ばれた。その内容は銀行・保険・証券
の相互参入の規制緩和や、金融持株会社の解禁、銀行の個人向け外貨預金の規
制緩和、インターネット証券の解禁などであり、必ずしも英国のビッグバンと
重なり合うものではない。そしてその結果、持株会社を活用したメガバンクの
出現など、わが国の金融業界が激変したことは記憶に新しい。
そこで「労働ビッグバン」だが、当然ながらこれは「金融ビッグバン」を念
頭においたネーミングであろう。したがって、その含意するところは「改革」
であろうし、より具体的には「規制緩和」であるに違いない。もっとも、英国
のビッグバンであれば民間の職業紹介手数料の自由化とか、かなり無理はある
が外国人労働者の解禁とかいった政策の比喩にはなりそうだが、日本の「金融
ビッグバン」の内容が具体的な労働政策の比喩になるとはやや考えにくい。実
際、現在行われている「労働ビッグバン」の議論をみると、要するに威勢のい
い、使われた実績のある(しかし、いささか安易で安っぽい印象があるのでは
ないかとも思うが)言葉を持ってきただけという感は否めない。問題提起が派
手なことは必ずしも悪いことではないかもしれないが、派手に「ビッグバン」
すればいいというものではもちろんないわけで、手段を目的化せずに、具体的
な議論を詰めていくことが必要だろう。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『少子社会日本-もうひとつの格差のゆくえ』
山田昌弘著 2007.4.20 岩波新書
少子化問題がキャリアデザイン問題であることは論を待たないだろう。学校
を卒業して就職し、「適齢期」を迎えたら結婚し、男性は職業を、女性は家庭
を中心に生きて何人かの子どもを育てるというキャリアは、一時期の日本では
ごく一般的なものであり、典型的な「幸福なキャリア」として人々に広く受け
入れられてきた。もちろん、これはそれを望まない一部の人には大きな迷惑だ
ろうが、とはいえ現在でも多くの人がこれを支持していることも事実であるら
しい。
ところが、今日ではこうしたキャリアを選択しない人、選択できない人が増
えている。それが少子化問題であり、これまでに多くの議論が積み重ねられて
きた。この本はその上に、例えば「低所得、低学歴の男性ほど結婚しにくい」
といった、「できれば避けて通りたい、おおっぴらには口にしにくい」しかし
多くの人が「実はそうなんじゃないか」と感じていることを率直に指摘しなが
ら議論を展開している。もちろん、すべてが実際に明白な証拠がある指摘ばか
りではないから、単なるオカルトである可能性もあり、とりわけそれを信じた
くない人たちからはその点の批判はあるだろう。しかし、今日の社会的な雰囲
気や気分によくなじんでいるので、妙に説得力がある。
本書によれば、日本で少子化が進んだ要因は4つに整理できるという。まず
経済的要因として、第一に結婚や子育てに期待する生活水準が上昇して高止ま
りしていること、第二にその反面で、若者が稼ぎ出せると予想する収入水準が
低下していることがあげられている。次に社会的要因として、第三に結婚しな
くても男女交際を深めることが可能になったという意識変化、および第四に魅
力の格差が拡大していること、があげられている。とはいえ、期待水準の低下
や収入の大幅増加は現実には困難だし、社会的に時計の針を逆に回すこともで
きないとすれば、「夫婦共働きをして、将来の生活見通しをたてる」ことを考
える必要がある。
こうした観点から、本書が提案する少子化対策はやはり4点示されている。
第一が全若者に、希望がもてる職につけ、将来も安定収入が得られる見通しが
持てるようにすること、第二にどんな経済状況の親のもとに生まれても一定水
準の教育が受けられる保証をすること、第三に格差社会に対応した男女共同参
画(低スキルの女性が出産後も無理なく働いて家計に貢献できる安定した職の
保障)を実施すること、第四に若者にコミュニケーション能力をつける機会を
確保すること、である。
いずれももっともな提案であり、特に第三の提案はこれまでのわが国ではか
なり思い切ったもので、高く評価できるように思う。人々が結婚や子ども、家
庭に一定以上の価値を見出しているのであれば、効果も見込めるだろう。とは
いえ、これらが本当に現実的かといえば心配もないではない。第一の提案には
現実には相当程度の経済成長を必要とするだろうし、第二の提案にも大規模な
財源の裏付けがいる。著者が旧日本軍の例をひいて「戦力の逐次投入」の愚を
説くが、既存財源の集中投下だけでは限界がありそうだ。著者の意図がそこに
あるのかどうかはわからないが、結局のところはまずはなにより経済成長が必
要であり、そのための政策にこそ集中すべきだというのが、この本の議論から
導き出される結論になるような気がする。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆独立行政法人経済産業研究所政策シンポジウム「ワーク・ライフ・バランス
と男女共同参画」/経済産業研究所
平成19年8月28日(火)9:45-17:50 於 経団連会館(東京都千代田区)
http://www.rieti.go.jp/jp/events/07082801/info.html
※本学会の佐藤博樹副会長・研究組織委員(東京大学教授)が出講します。
[編集後記]
編集委員に事故があり、発行が滞りましたことを読者のみなさま、学会関係
各位に深くお詫び申し上げます。これに限らずさまざまなところでキャッチア
ップの必要に迫られていますが、これもキャリアデザインというところでしょ
うか、といったらいかにも無理があるでしょうか。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。 (厚生労働省)
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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