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□ キャリアデザインマガジン 第52号 平成18年12月4日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「ワーク・ライフ・バランス(1)」
2 私が読んだキャリアの1冊
川喜多喬・菊地達昭・小玉小百合『キャリア支援と人材開発』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆以下のとおり関西地区第3回研究会を開催いたします。
日 時:12月9日(土)16:00-18:00
テーマ:「生涯発達と生涯学習-教育老年学の視点から」
講 師:堀 薫夫氏(大阪教育大学教授)
コメンテータ: 三川俊樹(追手門学院大学心理学部)
会 場:新大阪丸ビル新館 6F 602会議室(大阪市東淀川区)
定 員:70名(定員になり次第、締切をいたします)
参加費:会員 無料 非会員: 3,000円
※学会ホームページの参加申込フォームから参加申込を受け付けています。
http://www.cdi-j.jp/event.html
※研究会終了後、懇親会(立食形式)を開催いたします(参加費3,000円、定
員40名)。
※お申込みの際は、会員・非会員の区別と、懇親会への出欠もお知らせくださ
い。
◆日本キャリアデザイン学会が協力するシンポジウムが12月13日に名古屋市で
開催されます。
参加は主催者(中部経済同友会・愛知県経営者協会)の会員限定ですが、日
本キャリアデザイン学会会員は特別に聴講できます。
日 時:12月13日(水)14:00-17:00
テーマ:「働き方の多様化と活力ある職場づくり」
基調講演・事例報告・パネルディスカッション
講 師:佐藤博樹 日本キャリアデザイン学会副会長(東京大学教授)
内田幸雄 メイテック労働組合中央執行委員長
公文節男 イオン(株)人事本部人事企画部長
佐野嘉秀 東京大学社会科学研究所客員助教授
宮崎直樹 トヨタ自動車(株)人事部長
会 場:ウェスティンホテルナゴヤキャッスル2階「青雲」
定 員:若干名(会員に限る)
参加費:無料
※お申し込みは、会員番号と氏名を明記の上、GZB03344@nifty.comまでメール
でお願いします。本メールマガジンへの返信でも受付可能です。
※お申し込み多数の場合は、参加をお断りすることがありますのでご了承くだ
さい。
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
ワーク・ライフ・バランス(1)
日本経済新聞の記事検索サービス「日経テレコン21」を使って、「ワーク・
ライフ・バランス」が日経新聞に何回登場したかを調べてみよう。初出は2002
年10月8日で、同年に発表された「少子化対策プラスワン」に関する記事だ。
「プラスワン」が「男性の育休取得率10%」や「男の出産休暇5日間」など男
性を含めた働き方、意識の見直しを求めたことを受けて、『少子化対策といえ
ば従来は、共働き女性の仕事と家庭の両立に力点を置いた「ワーク・ファミリ
ー・バランス」型が中心。今後は男性も巻き込んだ「ワーク・ライフ・バラン
ス」型への転換が図られることになりそうだ』という書き方になっている。
さて、「ワーク・ライフ・バランス」の登場は、2002年はこの1件だけにと
どまる。翌2003年も1件だけで、企業の育児支援に関する記事の中で、代表的
な先進事例である資生堂について『9月に東京本社に保育所を開いた資生堂も、
単に制度をそろえるだけでなく、生活と家庭の両立を重視する概念「ワーク・
ライフ・バランス」を大切にする企業文化を構築しようとしている』と書いて
いる。2004年には8回とかなり増えたが、登場はまだ夕刊の生活欄に限られて
いる。一気に増えたのが2005年で、登場は22回にのぼり、社説でも取り上げら
れている。使われ方としては、その社説が「出生率改善に企業も努力を」であ
るように、少子化対策との関連が多いのではあるが、2005年なかば以降になる
と、個人の生活全般の改善、充実といった観点からの使われ方も増えているよ
うだ。そして今年(2006年)は11月末までに29回登場し、まあ月に2回は日経
で「ワーク・ライフ・バランス」の語をみる、という状況になっている。労働
契約法の議論が進められていることもあり、朝刊での登場も増えている。
訳語はどうだろうか。直訳すれば「仕事と生活の均衡」とでもなるのだろう
が、いささかニュアンスが違いそうだ。そこでまたしても日経新聞への登場回
数をみると、「仕事と生活の調和」が33回と、「仕事と生活の両立」の22回を
しのいでいる。ちなみに「仕事と生活の均衡」は1回も登場しない。2003年に
は厚生労働省が「仕事と生活の調和に関する検討会議」を設置し、2004年には
その報告書も出されているので、訳語としては「仕事と生活の調和」が一応の
決定版といえるだろうか。
この報告書には「仕事と生活の調和」の定義は出てこないが、文中に「仕事
と、生活すなわち仕事以外の活動との調和の判定は、最終的には個々の働く者
の主観によることになるとしても、第一義的には、それぞれの活動に配分でき
る時間(労働時間と生活時間)によって行われることになる。その意味で、仕
事と生活の調和が図られている状態とは、一定の制約のある時間帯の中で働く
者が様々な活動に納得のゆく時間配分ができるような状態であるということが
できる。」という記述がある。一応これが、霞ヶ関的な「仕事と生活の調和」
の定義と考えていいのだろう。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『キャリア支援と人材開発-先進企業の挑戦』
川喜多喬・菊地達昭・小玉小百合著 2006.11.11 経営書院
「企業によるキャリア支援」がわが国でもたびたび言われるようになったの
は1990年代の後半くらいからだろうが、これはどうにも「うさんくさい」印象
をともなうものだったように思う。ありていに言えば、「出て行ってほしいか
らキャリア支援します」というリストラの発想が見え見え、という例も多かっ
たのではないか。実際、その当時には「雇用を保障できないかわりに他社でも
雇用されうる能力を付与する」という米国流の考え方を輸入した「エンプロイ
アビリティ」という言葉も流行し、これが企業によるキャリア支援とセットで
語られることも目に付いたように思う。過剰な人材を社外に転進させる「アウ
トプレースメント」という商売もかなり流行ったようだ。もっとも、こうした
「キャリア支援」が企業に、あるいは働く人にどれほどのメリットをもたらし
たのだろうか。私は不勉強にして知らないが、大いに疑わしいものだという感
想は持っている(人減らしそのものは足元の業績に対する効き目はあったのだ
ろうけれど)。
一方で、これと同時に働く人や働き方の多様化が進展した。それとともに、
キャリアのあり方も多様化し、さまざまな人たちの多くがよりよいキャリアを
実現していくためには、企業によるキャリア支援が強く望まれると考える企業
もあった。リストラのためではなく、自発的な転職は否定はしないものの、基
本的には定着・勤続を前提としての人材育成に取り組む「前向きな」キャリア
支援である。
この本の中心は、共著者3人が調査した「前向きな」キャリア支援に取り組
む企業11社の事例であり、「企業と人材」誌で連載されたものであるという。
これを第2章におき、第1章には菊地氏による体験的キャリア論、第3章には
小玉氏による別のアンケート調査の結果の紹介が配置され、まとめの第4章に
は川喜多氏によるキャリア支援の歴史・現状・展望の概観をおくというユニー
クな構成となっている。単なる事例集にとどまらず、将来の企業によるキャリ
ア支援、ひいては人事管理、人材戦略全般を考えるにあたっての有益な材料を
提供している。
とはいえ、やはり最も興味深いのは11社の事例だろう。こうした変化の影響
を強く受ける企業、あるいは変化を戦略的に生かそうという企業が先進企業と
なる。ニチレイや西京銀行、日本GEなどの事例は女性のキャリアを強く意識
したものだろうし、日立システムや東京ヒルトンなどの事例は転職をともなう
キャリア形成の増加を念頭においているだろう。また、変化の中にあってこそ
企業内における長期的な人材育成とキャリア形成を重視しようというのがかん
ら銀行や東レなどの事例ではないか。企業によるキャリア支援のさまざまなタ
イプが幅広く紹介されており、これらを探索、選択した著者らの鋭いアンテナ
と優れたバランス感覚に敬意を表したい。さらに、企業という枠にとらわれず、
人材派遣会社メイテックの労組による派遣社員のキャリア支援の事例や、非営
利の中間法人であるJリーグ選手協会による引退後のプロサッカー選手のキャ
リア支援の事例なども掲載されている。特殊な事例ではあるが、その考え方な
どには企業としても学ぶべき点は多いだろう。
この本も指摘しているが、能力向上やキャリア支援がどれほど業績に貢献す
るかの測定は難しいし、すぐにも目に見える効果が現れるというものでもない
だろう。キャリア支援に前向きに取り組みながらも、業績不振を克服できなか
った企業も(たぶん)あるに違いない。とはいえ、企業の業績如何はその人材
如何による部分が大きいことは大方のコンセンサスだろうし、働く人の側にも
働く企業を選ぶ際に人材育成のあり方を重視する人が増えているという。経済
の回復にともない、すでに新卒採用はかなり逼迫しているというし、今後若年
人口は減少していくことを考えると、やはりこの本も指摘するように、従業員
のキャリア支援の取り組みが人材確保に影響することは避けられないだろう。
将来のために、まずは関心のあるところだけでも拾い読みしてみてはどうだろ
うか。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆(財)女性労働協会 働く女性のあゆみ講座「メディアは女性労働をどう
取り上げてきたか-均等法ビフォー・アフター20年」
平成18年12月8日(金)18:30~20:00、12月15日(金)18:30~20:00
於 女性と仕事の未来館第1セミナー室(東京都港区)
http://www.miraikan.go.jp/tenji/065.html
◆大阪雇用対策会議 若者の雇用・育成を考えるフォーラム
「次代の大阪を担う人づくり」
平成18年12月19日(火)18:30~21:00
於 クレオ大阪東(大阪市城東区)
http://osaka-rodo.go.jp/staff/topic/forum/forum.htm
[編集後記]
ドーハで開催されているアジア大会で、野球の日本チームが韓国に勝ちまし
た。日本チームは社会人を中心に全員がアマチュアなのに対し、韓国はプロ選
手のオールスターチームです。今年はじめのWBCでは日本もプロ選手のチー
ムで臨みましたが、韓国には1勝2敗だったわけですから、今回の勝利はなか
なかの快挙といえるでしょう。もっとも、今年の武田勝(シダックス→日本ハ
ム)、藤岡(JR九州→ソフトバンク)、松永(三菱重工長崎→西武)、佐藤
充(日本生命→中日)、梵(日産自動車→広島、新人王)らのように、社会人
野球からプロ入りした新人が毎年何人も活躍していますし、晩成型で、プロ入
り適齢期を過ぎてからプロ並の水準に達する選手もいるでしょうから、社会人
野球が韓国のプロに勝っても不思議はないのかもしれません。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
—-[PR]————————————————————–
◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。 (厚生労働省)
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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