キャリアデザインマガジン 第5号

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□    キャリアデザインマガジン 第5号 11月29日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典 「フリーター(2)」
2 キャリアの一冊 村上龍『13歳のハローワーク』(幻冬社)
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆以下のとおり研究会を開催する予定です。
 平成17年1月28日(金)夕刻 於:法政大学(予定)
 「ひきこもりとキャリアデザイン」
 講師:尾木直樹 臨床教育相談研究所「虹」 所長
  ※詳細は、後日学会ホームページ等でご案内いたします。

◆中間研究集会の日程・場所が決まりました。
 平成17年6月5日(日) 於 野田市役所(千葉県野田市)
 なお、研究集会前日の6月4日(土)には、工場見学、市民向け講演会などを
 開催する予定です。
  ※詳細は、後日学会ホームページ等でご案内いたします。

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1 キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

 「フリーター(2)」

 平成12年6月に発表された同年版「労働白書」は、いわゆる「フリーター」
が1997年には151万人に達したと推計した。その3年後、平成15年5月に発表さ
れた同年版「国民生活白書」は2001年のフリーター数を417万人と推計した。
 もちろん、この間にフリーターが200万人以上も増えたというわけではない。
「労働白書」のフリーターの定義は「年齢が15歳~34歳で、(1)現在就業して
いる者については、勤め先における呼称が『パート』または『アルバイト』で
ある雇用者で、男性については継続就業年数が1~5年の者、女性については未
婚で仕事を主にしている者(2)現在無業の者については、家事も通学もしてお
らず「パート・アルバイト」の仕事を希望する者」であり、「国民生活白書」
のフリーターの定義は「学生、主婦を除く若年(15~34歳)のうち、パート・
アルバイト(派遣等を含む)及び働く意志のある無職の人」となっている。使
われている統計が違うので大雑把にしかいえないが、「国民生活白書」の定義
では、「労働白書」の定義と較べて「派遣・嘱託などで働く人」「正社員の仕
事を希望する無業者」および「非労働力(今は職探しをしていない)だが働く
意志のある人」が加わっている分だけ人数が多くなっているといえるだろう。
「国民生活白書」の定義には、常用派遣で働く設計技術者のような「フリータ
ー」の自覚がない人まで含まれるいっぽう、「労働白書」の定義では、正社員
の仕事を希望してはいるが、現実にはパート・アルバイトでの就職も困難、と
いった人が含まれていない可能性がある。前者は政策的支援の必要となる可能
性がある人を幅広く包含し、後者は政策的支援の必要性の高いコア部分を取り
出しているといえそうだ。どちらの定義が適切かは一概にはいえないだろうが、
「国民生活白書」によれば「労働白書」の定義による2000年のフリーター数は
193人、平成16年版「労働経済白書」によれば2003年のフリーター数は217万人
なので、増加していることには間違いはないようだ。
 行政官庁による定義がこれほどまでに異なるということは、フリーターの多
様性の現れとみることができるだろう。労働政策研究・研修機構の小杉礼子主
任研究員らが、首都圏のフリーター94人からの聞き取り調査をもとにおこなっ
た「モラトリアム型」「夢追い型」「やむを得ず型」という分類はよく知られ
ているし、厚生労働省の「若年者キャリア支援研究会」は必要な政策を念頭に
「目標既設定型」「職業探索型」「組織不信等モラトリアム型」「能力不足型」
「意欲欠如型」という分類を行っている。ひとことで「フリーター」というが、
その内実はきわめて多様なのだ。
 ところが、ともすれば世間では「フリーター」と一括りにして「困ったもん
だ」という見方がされがちなのではないか。とりわけ、企業経営者や人事担当
者にそうした意識があるとしたら問題であろう。厚生労働省が2004年に実施し
た「雇用管理調査」によれば、採用の際にフリーター経験を「プラスに評価す
る」企業は3.6%にとどまるのに対し、「マイナスに評価する」企業は30.3%
にのぼっている。その理由はといえば「根気がなくいつ辞めるかわからない」
というのが70.7%、「責任感がない」が51.1%と、画一的な先入観がかなりの
程度存在することをうかがわせる。こうした企業サイドの意識がフリーターの
キャリア形成のチャンスを失わせている可能性は高いし、企業にとっても優れ
た人材をみすみす見逃す原因になっているかもしれない。
 日本経団連の奥田碩会長はさる11月11日に青森市で講演し、フリーターにつ
いて「派遣やアルバイトの仕事でも、それを通じて有益な知識やノウハウを獲
得している人材もいる。こうした人はフリーターと言っても厳しい逆風の中を
懸命に生きている」「『フリーター』ということだけで先入観をもって一律に
みるのではなく、人物を見極めて採用すれば思いがけない優れた人材が確保で
きる可能性もある」などと述べたという。こうした意識が広がるとすれば、そ
れはフリーターにとっても企業にとっても有益なことだろう。
                        (編集委員 荻野勝彦)

2 キャリアの1冊
  ~キャリアに関する本のご紹介です~

 村上龍著『13歳のハローワーク』(幻冬社)

 この本はちょうど1年くらい前に出て、ものの半年で100万部を売り上げる
という大ベストセラーとなった。いまだに書店で平積みになっているのを見か
けるから、まだ売れつづけているのだろう。内容については申し上げたいこと
が多々あるが、タイミングの良さも含めて、商品としてはまことに優れた本で
あることは間違いないのだろう。
 それはそれとして、この本を「キャリアデザイン」という観点から読んでみ
るとどうだろう。この本は、「いい大学を出て、いい会社や官庁に入ればそれ
で安心、という時代が終わろうとしています」というメッセージを強力に発し
ている。現実には、そうしたキャリアが成功する確率がこれまで95%だったの
が、80%くらいに低下している、というくらいのところではないかと思うが
(数字は根拠なし)、これはそれなりにわが国におけるキャリアのあり様の一
側面を捉えているのかもしれない。しかし、「わたしが伝えたいのは、『社会
に出る前に自分がやりたい仕事を見つけておくべきだ』という『アドバイス』
ではない。『社会に出る前に自分がやりたい仕事を見つけた人のほうが人生を
有利に生きる』という『事実』だ」とか、「できるだけ多くの子どもたちに、
自分に向いた仕事、自分にぴったりの仕事を見つけて欲しいと考えて、この本
を作りました」とかいうメッセージには、首をひねらざるを得ない。
 いま、仕事に向かい合おうとしてうまくいかない多くの若者たちが「やりた
いことがわからない」と悩んでいる。それをみて「やりたい仕事を見つけずに
社会に出たから損をしているのだ」というのはあまりに短絡的にすぎよう。そ
れは今にはじまったことではないからだ。離職の「七五三現象」(中卒の3割、
高卒の5割、大卒の3割が新卒就職後3年以内に離職する)が問題視されてい
るが、これとてかなり以前から似たような状況が続いているのであり、最近だ
けの話ではない。むしろ、新卒直後の若者が転職や企業内での人事異動などを
通じて適職探しをするのは、今も昔も変わりのないことと考えるべきだろう。
 「やりたい仕事」というものは、そんなに簡単に見つけられるものではある
まい。少なくとも、多数の職業の説明が並んだ本を読めば見つかる、というも
のではないはずで、最終的には経験を通じてでなければ見つけられないもので
はあるまいか。だからこそ、昔から若年期にはいくつかの仕事を経験し、その
なかから「これ」という仕事を見出してくるというステップが踏まれてきたの
ではないか。たしかに、現在は若年の雇用情勢は非常に厳しく、このステップ
を踏むことが難しい状況がある。だからといって、社会に出る前にやりたい仕
事を見つけておけというのは無茶な話だ。
 くわえて、「やりたい仕事」が生涯変わらない、という保証もどこにもない。
仮に13歳の時点で(あるいは18歳、22歳の時点で)「やりたい仕事」が見つけ
られたとしても、30歳のときにもそれが「やりたい仕事」であるとは限らない。
むしろ、「やりたい仕事」とは生涯をかけて探求し続けるものであり、それこ
そが「キャリアデザイン」の大切な一部なのかもしれない。
 同じように、「何らかの方法で生活の糧を得なければならないとしたら、で
きれば嫌いなことをいやいやながらやるよりも、好きで好きでしょうがないこ
とをやるほうがいいに決まっています。」というのも、まことに牧歌的なメッ
セージだが、キャリアという観点からはあまりにナイーブに過ぎないか。現実
には、クルマの運転が大好きな青年が全員F1ドライバーになれるわけではな
く、タクシー運転手になるのが幸せかどうかも一概にはいえないだろう。
 キャリアとは職業に限ったものではないはずだ。仕事はお金のためと割り切
って、週末のドライブに人生の喜びを見出すという生き方だってあっていいし、
それはそれで立派な「キャリアデザイン」ではないだろうか。最初はいやいや
やっていた仕事がいつの間にか面白くなった、という経験を持つ人も多いだろ
う。そもそも、「好きで好きでしょうがないことを仕事にする」といった「職
業的成功」だけでキャリアを考えるのはいかにも淋しいではないか。人生、仕
事がすべてではないことは言うまでもない。一度しかない人生をいかに生きる
かという骨太な観点からキャリアを考えたいものだ。
 これは作家の本だから、内容が科学的でなくてもかまわないのだろうが、こ
の本が100万部以上売れたということは、キャリアに対するわが国における認
識がこうしたものにとどまっている可能性を示していると考えるべきなのかも
しれない。であれば、わが国の現実をふまえたキャリア研究の充実が望まれる
ところである。
                        (編集委員 荻野勝彦)

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆日本経団連・経済広報センター シンポジウム
 「多文化共生社会を目指して~外国人受け入れ問題を考える~」
 (基調講演:奥田碩日本経団連会長)
 12月1日(水)14:00~16:00 於 経団連ホール(経団連会館14F)
 問い合わせ先:経済広報センター国内広報部 03-3201-1412

◆厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会
 「知的障害者入所施設の地域移行・本人支援の在り方・地域生活支援システ
  ムの構築に関するセミナー」
 12月5日(日)9:15~17:00 於 大阪人間科学大学庄屋学舎OHSホール
 http://www.normanet.ne.jp/sintyaku/hapyo/happyo041205.htm

◆日本産業カウンセリング学会第10回研修会
 「“職場”と“うつ”を見直す」
 12月12日(日)10:00~16:30 於 立正大学大崎キャンパス334教室
 http://www.jaic.jp/01/04_12.html

◆国立社会保障・人口問題研究所 厚生セミナー
 「社会保障制度を再考する-国際的潮流と日本の将来像-」
 12月16日(木)10:00~16:45 於 国連大学3F 国際会議場
 http://www.ipss.go.jp/seminar/index.html

[編集後記]

 最近、講談社現代新書のカバーが新デザインになりました。お札の切り替え
は偽造防止のためだそうですが、こちらは創刊40周年を機に装幀を一新、とい
うことだそうです。見慣れないせいか、どうもこれまでのほうがよかったよう
な気がしてしまいますが、単に見た目を変えただけというのは淋しいですから、
これを機に飯田経夫「『豊かさ』とは何か」や、黒井千次「働くということ」
(人事担当者必読!)といった名著を新装幀で再版してもらえないものでしょ
うか。どちらも、キャリアを考える上でのヒントをたくさん含んでいます。
(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
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無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当課長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail info@cdi-j.jp 
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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