キャリアデザインマガジン 第46号

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□    キャリアデザインマガジン 第46号 平成18年8月7日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典「契約社員」(1)
2 私が読んだキャリアの1冊 中村圭介『成果主義の真実』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
 日 時:9月12日(火)18:30-20:30
 テーマ:「キャリアデザインを著者と語る」
 講 師:上西充子(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
     柳川幸彦(法政大学キャリアデザイン学部)
     きたみりゅうじ(ライター、イラストレーター)
 会 場 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー26階スカイホール
 参加費:日本キャリアデザイン学会会員は無料、非会員は1,000円
 詳細・お申し込みは、学会ホームページをごらんください。
 http://www.cdi-j.jp/event.html

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり大会を開催いたします。
 日 時:10月28日(土)10:30~10月29日(日)13:00
      ※10月27日(金)午後、エクスカーションを実施
 テーマ:「キャリア研究の到達点と課題」
 会 場:立命館大学京都衣笠キャンパス「存心館」
 後 援:財団法人大学コンソーシアム京都

◇10月27日(金)エクスカーション(特別行事)JR京都駅集合
 (1)琵琶湖博物館見学および市民との協同活動のレクチャー 12:30-18:30
  ※この行事は非会員にも開放いたします。
 (2)企業訪問 サントリー山崎工場見学 13:45-

◇10月28日 10:30-12:30 部会
 (M1)大学におけるキャリアデザイン支援 司会/上西充子(法政大学)
 (M2)非典型労働者のキャリアデザイン 司会/脇坂明(学習院大学)
 (M3)学校とキャリアデザイン 司会/山野晴雄(桜華女学院高校)
 (M4)企業におけるキャリアデザイン 司会/桐村晋次(法政大学)
 (M5)キャリアデザイン支援ツールの評価-学校編- 
                       司会/川崎友嗣(関西大学)
◇10月28日 14:00-16:00 部会
 (A1)中学・高校とキャリア教育 司会/渡辺三枝子(筑波大学)
 (A2)大学コンソーシアム京都のインターンシップ事業から見るキャリア教
    育事例報告とパネルディスカッション 司会/河村能夫(龍谷大学)
 (A3)企業におけるキャリアデザイン支援 司会/菊地達昭(横浜市立大学)
 (A4)女性のキャリアデザイン 司会/中村恵(神戸学院大学)
 (A5)博物館と市民のキャリア形成 司会/金山喜昭(法政大学)

◇10月28日 16:15-17:15 総会

◇10月28日 17:30-19:00 交流懇親会

◇10月29日 9:30-13:00 シンポジウム「キャリア研究の到達点と課題」
 司会 小池和男(法政大学)
 報告 中村恵(神戸学院大学)平野光俊(神戸大学)三川俊樹(追手門学院
    大学)児美川孝一郎(法政大学)大内伸哉(神戸大学)
    

◇参加費 2日間    会員4000円、非会員6000円
      ※28日のみ参加の場合も2日間参加費とします
     29日のみ参加 会員2000円、非会員3000円
     交流会    会員・非会員とも5000円

※詳細・お申し込みは、学会ホームページをごらんください。
 http://www.cdi-j.jp/event.html
 なお、エクスカーションは下記に個別にお申し込みください。
 琵琶湖博物館 cdgakkai@hosei.org
 サントリー山崎工場 kikuchi@yokohama-cu.ac.jp

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1 キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

 契約社員(1)

 「契約社員」というのは、考えてみれば妙な言葉かもしれない。雇われて働
いているのであれば、そこには必ずなんらかの雇用契約が存在するはずではな
いか。
 それにもかかわらず、「契約社員」という言葉はごく普通に使われている。
それどころか、契約社員に対して「契約さん」と呼びかける、などというお粗
末な職場も往々にしてあるらしい。
 これは裏返せば、「契約社員」以外の社員(に限らず従業員全般)に、いか
に「契約」という意識が乏しいか、ということなのだろう。たしかに、わが国
のいわゆる「正社員」は、せいぜい入社時に「就業規則を守って誠実に勤務し
ます」というような誓約書を出すくらいのもので、書類に記名押印して労働契
約を交わす、といったことはまず行われていないだろう。この場合でも、法律
的には就業規則を内容とする労働契約が成立していることになるわけだが、と
りわけ日本企業の場合は、正社員に関しては「会社のいうように働き続けてい
けば悪いようにはしない」といった意識もまだ強く、およそ「契約」という感
覚は受けにくいようだ。
 あるいは、パートタイマーの中には、「パート募集、時給1,000円、朝10時
から午後4時まで、週末働ける人歓迎」という貼り紙を見て応募すると、「何
曜日に働けますか?では来週から来てください」くらいの調子で、まったくの
「口約束」しかない状態で働いているという人も少なくないらしい。これまた
法律的には契約には違いないわけだが、やはり「契約」という意識は持たれに
くいのではないか。
 とはいえ、「契約」を意識せざるを得ない場面もあって、たとえば正社員も
「悪いようにしない」はずが悪いようにされたとなると、「約束が違う」とい
う話になるだろう。約束、つまり「契約」違反じゃないか、というわけだ。典
型的なのが意に反して契約を破棄された、リストラ解雇のようなケースだろう
が、それ以外にも、賃金をはじめ、勤務地、職種などさまざまな労働条件の切
り下げ、不利益変更も、90年代以降のいわゆるリストラの拡大にともなって、
多々起きているという。パートタイマーについては、従来から口約束ゆえの
「言った、言わない」のトラブルは頻発していたようだ。こちらも、90年代以
降パートタイマーが増加したことで、トラブルも増加しているらしい。すでに
行政も、パートタイマーに関してはさすがに口約束ではあとあと揉め事のもと
になる、ということで、使用者に対して労働者に「雇入通知書」を交付するよ
う指導している。これは勤務日や労働時間、賃金、残業の有無、契約期間と契
約更新の有無といった基本的な労働条件を書面にしたもので、モデル書式も提
供されている。これに労働者がサインすれば、それはほとんど労働契約の書面
締結に等しいものだろう。
 このように、労働条件変更の増加、非典型雇用の増加、さらにその内容の多
様化の進展という状況の中で、労働契約に関する基本的なルールとして「労働
契約法」が必要だ、という議論が高まり、現在、労働政策審議会労働条件分科
会で検討が進められている。その内容についてはさまざまな意見があり、進捗
状況は必ずしもはかばかしくはないようだが、十分に検討を尽くしてよりよい
ルールができることを期待したい。
                        (編集委員 荻野勝彦)

2 私が読んだキャリアの1冊

『成果主義の真実』 中村圭介著 2006.3.16 東洋経済新報社

 90年代後半、わが国では「成果主義」が大流行となった。「年齢や勤続年数
ではなく、仕事の成果で処遇されるべき」という成果主義の考え方はまことに
正論であり、当初は企業だけではなく、働く人の大方からも支持を集めた。
 ところが、90年代末から21世紀に移る頃になると、働く人や人事担当者の中
から「何かがおかしい」という声があがるようになってきた。理念は正論でも、
実行してみると成果主義はなかなかうまくいかないのだ。やがて働く人の一部
には、「成果主義は私の賃金を減らすもの」という意識すら広がり始めた。
 そこに登場したのが高橋伸夫(2002)『虚妄の成果主義』であった。こうした
多くの人々の実感をうまくすくいあげたこの本はベストセラーとなり、成果主
義に対する論調を一変させた。世間は成果主義擁護派と批判派とに分かれたが、
擁護派の多くは「成果主義の考え方は間違っていないが、やり方が間違ってい
るのだ」ということで、「成果主義を成功させるには」という議論であった。
この本は、「成果主義を成功させよう」と努力した企業労使の事例調査をもと
に、表面的な賛否の論争とは別の次元にある「成果主義の真実」を明らかにし
ようとした本であろう。
 2004年の初頭に刊行された『虚妄の成果主義』が前提にしているのは、おそ
らくは2001年ころの成果主義だろう。であれば、「成果主義と名のつくものは
すべて成功しない」という『虚妄の成果主義』の主張は妥当なものであったと
思われる。それ以降の企業労使の取り組み事例にスポットを当てたこの本の前
半の3章を読むと(実は著者自身は『虚妄の成果主義』に肯定的でないにもか
かわらず)、それがよくわかる。
 たとえば、あるデパートの事例は「プロセス重視型成果主義」として紹介さ
れている。しかし、そもそもプロセスではなく成果をこそ重視すべきだ、とい
う当初の成果主義の主張からすれば、プロセス重視型成果主義というのは実に
矛盾している。このデパートの労組は、最終成果のみを重視するのは成果主義
ではなく「結果主義」であり、本来の成果主義は「各人の能力をベースとした
『行動から結果まで』を評価していくもの」と述べている。『虚妄の成果主義』
が批判しているのはいうまでもなく当時「成果主義」と飛ばれた「結果主義」
のほうである。そして、「能力をベースとした」「プロセス重視型成果主義」
ということになると、これは従来の日本企業の能力主義とほとんど異なるとこ
ろがないように思える。
 さらには、「分離型成果主義」という事例が2例紹介されている。これらの
事例では、ことばでは「成果主義」をうたいながらも、意図したものかせざる
ものかの違いはあるものの、現実の評価は成果とは切り離されている。だから
「分離型」だというのだが、こうしたものまで「成果主義」としてくくること
はいかにも無理なのではないか。ここでは、「成果主義」ということばにはも
はや「非年功」という程度の意味しかない(しかも、それは制度的な一律の年
齢給、勤続給を否定しているだけで、制度運用によって結果的に「年功的」な
賃金実態になることまでも否定しているわけではない)。
 結局のところ、成果主義はさまざまな修正を施され、その多くはもはや「成
果主義」と呼ぶことがためらわれるような実態となって、しかしそれなりに広
まっているわけだ。著者がこうした事例研究をもとに主張するのは、成果主義
は決して万能ではなく、むしろ限界があることは明らかだということ、しかし
全く役立たないというわけではなく、使いようによってはそれなりに役立つと
いうことだ。これはおそらく、成果主義に取り組んできた多くの企業、多くの
人事担当者が、場合によってはかなり大きな代償を支払って学んだことと同じ
だろう。この本の後半の2章は、こうした「成果主義」が広まる中での、これ
からの人事管理、企業経営のあり方の方向性の議論に費やされている。著者は
「これまでの教科書、テキストとはまったく異なる」と述べているが、事例調
査をベースとしているだけに、実は人事管理の実務家からみるとそれほど目新
しいという感はあまりない。一方で、おそらく、一時期書店に山積みされてい
たある種の成果主義指南本、コンサル本(その多くは米国渡来の)とは大いに
異なっているだろう。そういう意味では、実務家に自信を与えてくれるという
点においてもたいへん有意義な本といえそうだ。
                        (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆独立行政法人雇用・能力開発機構「ヤングキャリア塾」
 平成18年9月11日(月)10:00~16:00、12日(火)10:00~16:00
 於 生涯職業能力開発促進センター「アビリティガーデン」(東京都墨田区)

[編集後記]

 まったくの私事で恐縮ですが、今日は私の誕生日です(笑)。残りの人生が
短くなっていくことを感じ、歳相応の分別が身についているやら反省し、あま
り誕生日が楽しくない年齢になったようですが、年齢というものは老若男女、
国籍も人種も関係なく、お金持ちもそうでない人も、誰しも必ず1年で1歳加
齢する、まったくもって平等なもの。定年制のように、年齢を基準とした人事
管理が案外納得を得られやすいのも、このあたりに理由があるのかもしれませ
ん。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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