キャリアデザインマガジン 第44号

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□    キャリアデザインマガジン 第44号 平成18年7月10日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典「ミスマッチ」(3)
2 私が読んだキャリアの1冊 武石恵美子『雇用システムと女性のキャリア』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆10月28・29日 日本キャリアデザイン学会「立命館大会」に関する詳報

◇会場が立命館大学衣笠キャンパス「存心館」に決まりました。

◇10月27日(金)エクスカーション(特別行事)JR京都駅集合
 (1)琵琶湖博物館見学および市民との協同活動のレクチャー 12:30-18:30
  ※この行事は非会員にも開放しますのでお誘い合わせてお越し下さい。
 (2)企業訪問 サントリー山崎工場見学 13:45-

◇10月28日 10:30-12:30 部会
 (M1)大学におけるキャリアデザイン支援 司会/上西充子(法政大学)
 (M2)非典型労働者のキャリアデザイン 司会/脇坂明(学習院大学)
 (M3)学校とキャリアデザイン 司会/山野晴雄(桜華女学院高校)
 (M4)企業におけるキャリアデザイン 司会/菊地達昭(横浜市立大学)
 (M5)キャリアデザイン支援ツールの評価-学校編- 
                       司会/川崎友嗣(関西大学)
◇10月28日 14:00-16:00 部会
 (A1)中学・高校とキャリア教育 司会/山野晴雄(桜華女学院高校)
 (A2)大学におけるキャリアデザイン支援(2)(仮題)
 (A3)大学コンソーシアム京都による人材育成事業(仮題)
 (A4)企業におけるキャリアデザイン支援 司会/菊地達昭(横浜市立大学)
 (A5)女性のキャリアデザイン   司会/中村恵(神戸学院大学)
 (A6)博物館と市民のキャリア形成 司会/金山喜昭(法政大学)

◇10月28日 16:15-17:15 総会

◇10月28日 17:30-19:00 交流会

◇10月29日 9:30-13:00 シンポジウム「キャリア研究の到達点と課題」
 司会 小池和男(学会常務理事・法政大学)
 報告 中村恵(経済学 神戸学院大学)/平野光俊(経営学 神戸大学)
    三川俊樹(心理学 追手門学院大学)/大内伸哉(法学 神戸大学)
    児美川孝一郎(教育学 法政大学)

◇参加費 2日間    会員4000円、非会員6000円
     29日のみ参加 会員2000円、非会員3000円
     交流会    会員・非会員とも5000円

◇申込み 近日中に、学会ホームページに受付フォームを設置いたします。
     エクスカーションは下記に個別にお申し込みください。
     琵琶湖博物館 cdgakkai@hosei.org
     サントリー山崎工場 kikuchi@yokohama-cu.ac.jp

◆以下のとおり研究会を開催の予定です。
 日 時:9月上旬 18:30-20:30予定
 テーマ:「キャリアデザインを著者と語る」
 講 師:上西充子(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
     柳川幸彦(法政大学キャリアデザイン学部)
     ほかに、キャリアデザイン関連図書の著者2人程度
 詳細・お申し込みは、近日中に学会ホームページに掲載いたします。
 http://www.cdi-j.jp/event.html

◆法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻より、ホワイトカラー
 のキャリア管理や大学のキャリア教育の論考などを掲載した研究広報誌『キ
 ャリアデザイン学研究調査報告』を日本キャリアデザイン学会会員に200部
 ご提供いただけることとなりました。
 希望する会員の方は、法政大学大学院事務課(hgs@i.hosei.ac.jp)まで会
 員番号、お名前、送付先(郵便番号、住所、所属組織等、連絡電話番号)を
 明記のうえお申し込みください。

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1 キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

「ミスマッチ」(3)

 2003年末、厚生労働省は全国12ヵ所の職安で「労働力需給のミスマッチの状
況に関する調査」を実施した。それによると、当時の労働市場においては、求
職者側についてはミスマッチの主たる要因は「職種」であり、賃金の要因は比
較的少なかったという。この場合、従来、「職種」のミスマッチとは、その職
種に必要な技能、能力等が不足していることによるととらえられていたが、今
回の調査では、求職者の「職種」に対する選好からもミスマッチが生じている
ことが明らかになったという。さらに、求職者側を年代別にみると、若年層は
能力や経験面で不安を抱えることから求人に応募できない者が多いこと、中高
年齢層は、求人の募集年齢にあわないことや賃金面を条件として重視するため
求人に応募できない者が多いことが判明したという。男女別にみると、男性は
能力や経験、賃金面を理由に応募できない者が相対的に多いのに対し、女性は、
就業場所を理由に応募できない者が相対的に多いという結果が出たという。
 なかなか面白い調査結果といえそうだ。もちろん、求職者が求人に応募する
かしないかは、必ずしも賃金あるいは職種といった個別要素のみで決まるわけ
ではなく、「職種は希望どおりではないが、これだけの賃金が提示されている
なら応募してみようか」といった総合的な判断で決まっているものだろうから、
特定のミスマッチだけに注目するのは適当ではないかもしれない。それでもな
お、「賃金の要因は比較的少なく、求職者の職種に対する選考からもミスマッ
チが生じている」という結果には非常に興味深いものがある。これは、「いか
に賃金が高くてもこの職種にはつきたくない」とか、「この職種になら賃金が
低くてもつきたい」という求職者の選考が存在することを示唆しているのでは
ないか。であれば、それなりの高賃金を提示しても日本人では求人が充足され
ず、外国人の労働力に依存している職種が存在しているという現実、あるいは
一部の「クリエイティブな職種」において顕著な低賃金・長時間労働にもかか
わらず相当数の若年者が就労しているといった現実と平仄が合っているという
印象がある。年代別、男女別の結果もなかなか実務実感に合っている。ただし、
募集年齢は調査結果に記されているような「職場の年齢構成上の問題、定年制
との関係」ばかりではなく、多くの場合は別の何かの代理指標であることも考
慮に入れる必要があるだろう。
 いっぽうで、求人者側については、能力、経験を求人条件として重視する傾
向がみられ、応募者を不採用にするに当たっても、能力(技能)や経験が不十
分であるケースが大半であることが判明したという。
 こうした調査ではこのような結果が出るだろうが、しかしこれは相当割り引
いて考える必要がありそうだ。ごくありていに言ってしまえば、不採用とする
場合にその理由として能力、経験、あるいは適性不足をあげることが、紛争を
避けるという意味では「無難」であろう。したがって、不採用の理由をそのま
まうのみにしてしまうことは、実態把握にやや踏み込みを欠くのではないか。
 企業では、本当に人手が逼迫してくれば、能力や経験、適性に多少の不足は
あっても、採用して入社後に訓練しようという傾向が高まるように思われる。
この調査時点では、まだそうした状況には立ち至っていなかったということだ
ろう。                     (編集委員 荻野勝彦)

2 私が読んだキャリアの1冊

『雇用システムと女性のキャリア』
武石恵美子 2006.4.20 勁草書房

 長年にわたって女性労働研究に携わってきた著者の、現時点での集大成とで
もいうべき本であろう。男女雇用機会均等法の施行をうけて、おもに1990年代
以降に女性労働がどのように変化してきたかを多面的に解き明かしている。
 それによれば、均等法をはじめとする女性就労促進策が進められた結果、ミ
クロでみると、均等施策、両立支援策は女性のキャリアに概ね有意義な影響を
与える傾向を示している。非正規雇用は拡大したが、同時にその基幹労働力化
も進んでいる。にもかかわらず、マクロでは実態は大きくは変わっておらず、
いわゆる「M字型カーブ」や非正規雇用の多さといった特徴も維持されている。
わが国における女性のキャリア展開は、さまざまな施策にもかかわらず、いま
だに十分とはいえない。
 著者は、その原因は、均等施策や両立支援策の浸透が不十分であることだけ
ではなく、内部労働市場が深化したわが国の雇用システムそのものにあると述
べる。拘束度の高い正規労働者はより高拘束・高処遇となるいっぽうで非正規
労働が拡大するという二極化した労働市場においては、女性のキャリア展開に
は重大な制約が存在するが、従来の施策はこれに対し、女性にも拘束度の高い
正規労働者としてのキャリアを可能とすることに重点を置いてきたところに限
界があったと指摘する。
 こうした認識のもとに、著者はまず二極化を阻止する政策、具体的には正規
労働者と非正規労働者の仕事内容や責任、キャリアに応じたバランスのとれた
処遇制度の構築、とりわけ正規労働に転換できる仕組みづくりの必要性を訴え
る。そのうえで、現状の二極化した働き方の間に、さまざまな就労の自由度と
処遇の組み合わせを可能とする、働き方の多様化、柔軟な雇用システム構築の
重要性を主張する。これは男女労働者に幅広いニーズがあるだけでなく、企業
にとってもその組み合わせによって雇用の柔軟性を確保できるというメリット
があるという。そして、雇用システムのほか、税制や社会保障制度などにおい
ても、女性が働くことを前提とした社会システムへと転換していくべきである
と提言している。
 著者の提言は、自身による多くの実証研究と、企業経営や労使関係に対する
正しい理解に基づいた説得力あるものになっており、日本社会の未来像として
多くの人が共感できるものではないかと思われる。とはいえ、たとえば通勤に
長時間を要する都市部でどこまで働き方の多様化が意義あるものになりうるか
とか、多様な働き方のそれぞれを選択したときの生活水準や暮らしぶりなどが
どのようなものになるのかといったことには若干の不安もなくはない。社会シ
ステムだけではなく、国民の意識や価値観といったものも、女性が働くことを
前提としたものへと変えていくことが求められるのではなかろうか。
                        (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆内閣府・高齢社会NGO連携協議会 高齢社会研究セミナー
 「社会参加に取り組むシニア」
 平成18年7月18日(火)10:00~16:30
 於 日本都市センター会館(東京都千代田区)
 http://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/18_seminar.html

◆独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 平成18年度職業リハビリテーショ
 ン実践セミナー
 平成18年8月3日(木)~6日(日)
 於 高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター(千葉市美浜区)
 http://www.jeed.or.jp/disability/supporter/research/seminar/h18_seminar.html

[編集後記]

 先日、この「キャリアデザインマガジン」でも情報を取り上げたJILPT
の労働政策フォーラム「未来を拓く雇用戦略-30代社員が挑戦する仕事の世界
-」を聴講してきました。30代社員5人によるパネルでは、企業人全員が「そ
のときの能力を上回る仕事を与えられ、それにチャレンジすることを繰り返し
て能力を高めてきた」ということで共通していました。日本企業のOJTはま
だまだ健在のようです。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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