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□ キャリアデザインマガジン 第43号 平成18年6月26日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「ミスマッチ」(2)
2 私が読んだキャリアの1冊 上西充子・柳川幸彦『キャリアに揺れる』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
【学会からのお知らせ】
◆日本キャリアデザイン学会大会(10月28日・29日、於・立命館大学)の企画
案がまとまりました。
・10月27日(金)午後 会員向け特別エクスカーション
(1)企業見学コース サントリー山崎工場
(2)博物館見学コース 滋賀県立琵琶湖博物館
※いずれも会場整理の都合上、eメールにて仮申し込みをお願いします
(本受付は別途必要となりますのでご注意下さい)。件名に「エクスカー
ション仮登録」として、本文に希望コース、会員番号、会員氏名を記載
のうえ、cdgakkai@hosei.org宛送付ください。
・10月28日(土)
10:30~12:30、13:30~15:30 自由論題および企画部会
本部企画部会(すべて仮題。応募・審査によって再編成します)
「大学のキャリア支援と企業からの評価(1)・(2)」
「博物館と市民のキャリア形成」
「企業におけるキャリアデザイン支援」
「学校とキャリア教育:中学と高校を中心に」
「博物館と市民のキャリア形成」
「女性のキャリアデザイン」
「マッチングとカウンセラーの役割:結婚・就職・派遣」
「キャリアデザイン支援ツールの評価」など
16:00~17:00 総会、17:30~ 懇親会
・10月29日(日)
9:00~13:00 シンポジウム「キャリア研究の到達点と課題」
◆以下のとおり研究会(関西地区)を開催いたます。
日 時:7月15日(土) 16:00~18:00
テーマ:「日本型企業文化とワークモティベーション」
講 師:八木隆一郎 国際経済労働研究所統括研究員
コメンテータ:川崎友嗣 関西大学社会学部教授
会 場:関西大学第三学舎(社会学部)
http://www.kansai-u.ac.jp/Guide-j/access.html
定 員:60名(定員になり次第締切をいたします)
参加費:会員は無料、非会員3,000円
その他:研究会終了後、懇親会を開催いたします。
詳細・お申し込みは、学会ホームページをご覧ください。
http://www.cdi-j.jp/event.html
なお、申込みの際は、会員・非会員の区別と懇親会への出欠もお知らせくだ
さい。会場への経路は個別にご連絡いたします。
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「ミスマッチ」(2)
日経連政策調査局編『改訂新版人事・労務用語辞典』には「雇用のミスマッ
チ」という項があり、簡単な解説が掲載されている。それによると、雇用のミ
スマッチが発生する要因は「産業構造の転換、技術革新の進展、高齢化や女子
の職場進出などの経済的構造の変化や若年労働者の勤労観の変化、さらには不
況地域の存在」であるという。「女子」という表現は最近ではジェンダー的に
あまり好まれないが、これは平成7年の本ならばであろう。
産業構造の転換が起きれば、旧来の産業に適合した技能を持つ労働者は過剰
となり、新規の産業に適合した技能を持つ労働者は不足することになる。これ
は「技能のミスマッチ」あるいは「能力のミスマッチ」ということになる。従
来、多くのわが国企業、とりわけ大企業においては、企業の新規分野への進出
によって産業構造の転換が進められ、企業内の教育訓練によって、雇用を安定
させつつ技能のミスマッチに対応するというケースが見られた。その典型例が
繊維産業や電機産業などであろう。同様のことは技術革新によっても起こる。
その典型が往年のME革命であり、やはり企業内の教育訓練を中心としてこれ
に対応することで雇用の安定がはかられた。
このとき、旧来技能を持つ労働者がいったん離職してしまうと、当然ながら
前職と同程度の労働条件で再就職することは難しい。これは「賃金のミスマッ
チ」ということであろうが、90年代にはこれが雇用問題の主要な一つと考えら
れていた。
高齢化や女性の社会進出によっても雇用のミスマッチは起こり得るだろう。
たとえば、未熟練ではあるが体力に優れているといった若年労働力の特性に合
わせて設計された職場は、高齢化によって人材の確保が難しくなる。やはり技
能や職種のミスマッチが発生することになろう。あるいは、女性が傾向的に短
時間就労や柔軟な労働時間を希望しているときにそうした働き方が十分供給さ
れなければ、そこには勤務形態のミスマッチが発生する。近年指摘されている
のはむしろその逆で、妊娠や出産などを機にいったん退職した女性が再就職し
ようとした際に、良好な雇用機会が不足していることが問題視されている。高
学歴の女性においては再就労しないケースも多いといわれる。これは勤務形態
あるいは職種のミスマッチであると同時に、「賃金のミスマッチ」ということ
にもなろう。
若年労働者の勤労観の変化によっても、雇用のミスマッチは起こり得る。た
とえば、いわゆる「3K」職場の人手不足問題などはそのひとつであろう。さ
らに、最近あらためて注目されているのが不況地域の存在による「地域のミス
マッチ」である。日本経済は全体としては堅調だが、地域差が大きいといわれ
る。地域経済が好調で労働需給が逼迫している地域があるいっぽうで、依然と
して高失業率、求人不足に苦しんでいる地域もある。労働力の広域移動が容易
であれば、こうしたミスマッチは転居などによって解決できようが、しかし、
労働者にもさまざまな事情があり、そう簡単に遠隔地で就職できるものではな
いだろう。
ひと口に「雇用のミスマッチ」といってもその内容は多様であり、複合的で
あろう。雇用対策の難しさの一端はここにもある。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『キャリアに揺れる』
上西充子・柳川幸彦 2006.6.20 ナカニシヤ出版
この本はブックガイドで、要するに本の紹介の本である。著者は法政大学キ
ャリアデザイン学部の教員と学生で、表紙カバーには「自分の将来にゆっくり
向き合おう 迷えるあなたに贈るブックガイド30」とある。
ブックガイドだから、読者が紹介されている本を読みたくなることが第一の
趣旨であろう。想定される読者は就職活動を控えた大学生と思われる。残念な
がら、年齢が想定される読者の2倍以上に達している私には、この本を読んだ
彼らが「読みたくなる」のかどうか見当がつかないが、現役の学生が著者に加
わっていることは、読者に視線をあわせたブックガイドづくりのための工夫な
のだろう。
そして、ブックガイドである以上もう一つ重要なのは、何のためのブックガ
イドなのか、そのために適切な本が選ばれているのか、ということだろう。
就職活動に臨む大学生はたしかに「キャリアに揺れる」時期であり、職業キ
ャリアのみならず人生キャリアについて考えることを迫られる時期でもある。
とはいえ、キャリアを考えるということは人生を考えることだから、そうそう
容易なことではない。この本では、「ゆっくり向き合おう」との惹句にあるよ
うに、この時期に自分の将来キャリアについての考えを確立すべきとの立場は
とっていないようだ。だから、就職や転職の指南書、「こんな資格が将来役立
つ」といったノウハウ書は紹介されていない。そのいっぽうで、人生を考える
にあたって多くの示唆と刺激に富むであろう本、たとえば優れた哲学書や歴史
書、古典文学といったものも紹介されていない。本来なら大学生は大いにこう
した良書に親しんでほしいところではあるが、さすがにそれほど悠長なことも
言っていられないというのが現代の大学生の現実というところだろうか。
そこでこの本では、大学生がキャリアに「ゆっくり向き合う」ための本、自
分をとりまく環境とその大きな流れを知り、その中での自分の「立ち位置」を
確かめ、先行きを考えていくための参考となる本を取り上げているようだ。私
自身、不勉強にして既読書は全30冊の半分以下なので、本の取捨選択について
論評することはできない。とりあえず、村上龍『13歳のハローワーク』や日経
新聞の『働くということ』といった、人口に膾炙してしまった悪書が採用され
ていないことは評価できる。いっぽうで、残念ながら私としてはあまり推奨で
きない本も含まれているし、これらの本以上にお奨めしたい本もある。当然な
がら本の選択には選者の価値観が反映されるから、こうした違いがあるのはむ
しろ自然なことだろう。読んだかぎりでは、かなり多様な本を選びながら、
「ゆっくりと向き合う」という趣旨は一貫しているように感じられる。それほ
ど読みにくそうな本も含まれていない。そもそも万人にとって完璧なブックガ
イドなど存在しようもないのだから、この先は読み手次第なのだろう。
「就職超氷河期」以降、就職やキャリアについては非常に雑多な、玉石混交
の情報が大量に流通している。関連書もきわめて多いが、悪書をうのみにして
貴重な人生の一時期を無為に過ごしてしまったというような話もたびたび耳に
するのも残念な現実だ。こうした中で、大学キャリアセンターの責任者である
教員と、その教え子である大学生という、切実な当事者によってこうした本が
出されたことはまことに有意義なことであろう。これから、社会環境や雇用失
業情勢、就職戦線の変転はさらに速くかつ大きくなるとの見方もある。これか
らもタイムリーに改訂版を出して本を入れ替えることで、多くの人の信頼を集
めるブックガイドとしてさらに充実させていくことを期待したい。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆独立行政法人労働政策研究・研修機構 労働政策フォーラム
「未来を拓く雇用戦略-30代社員が挑戦する仕事の世界」
平成18年7月5日(水)13:30~17:00
於 大同生命霞ヶ関ビル6階会議室 (東京都千代田区)
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20060705.htm
◆内閣府・高齢社会NGO連携協議会 高齢社会研究セミナー
「社会参加に取り組むシニア」
平成18年7月18日(火)10:00~16:30
於 日本都市センター会館(東京都千代田区)
http://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/18_seminar.html
◆独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 平成18年度職業リハビリテーショ
ン実践セミナー
平成18年8月3日(木)~6日(日)
於 高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター(千葉市美浜区)
http://www.jeed.or.jp/disability/supporter/research/seminar/h18_seminar.html
[編集後記]
サッカーW杯、日本代表は残念ながらグループリーグで敗退となってしまい
ました。4年に1度のW杯、代表選手のなかには年齢的に次回の出場が難しそ
うな人も見受けられます。競技生活の絶頂期に大舞台を迎える人、そうでない
人、これもキャリアの難しさの一例なのかもしれません。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
—-[PR]————————————————————–
◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。 (厚生労働省)
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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