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□ キャリアデザインマガジン 第4号 11月15日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。
※等幅フォントでごらんください。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典 「フリーター(1)」
2 私のキャリア観 法政大学キャリアデザイン学部教授 川喜多喬
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆以下のとおり研究会を開催する予定です。
平成17年1月28日(金)夕刻
「ひきこもりとキャリアデザイン」
講師:尾木直樹 臨床教育相談研究所「虹」 所長
※詳細は、後日学会ホームページ等でご案内いたします。
◆設立大会のもようが、「教育新聞」に掲載されました。
http://www.kyobun.co.jp/topics/2004/t_10.html
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「フリーター(1)」
「フリーアルバイター」にかわって「フリーター」ということばが使われは
じめたのは、1987年にリクルートが制作した映画「フリーター」が最初で、そ
の生みの親は同社「フロム・エー」誌の編集長の道下勝男(当時、現道下裕史)
氏であるという。この映画は「アルバイト収入でリッチな生活を楽しんでいる
学生の姿を描く。実話を題材に、現代の世相を浮き彫りにしようという試み」
(1987年8月31付日本経済新聞朝刊)であり、そこで描かれた「フリーター」
の姿は「主人公たちは次々にアルバイト先を変え、稼いだ金の大半は外車購入
のローンなどに消費してしまう。特に今、打ち込んでいることや将来設計もな
いが、自分の人生は何ものにも縛られたくないと思っている。一見、刹那(せ
つな)的でいい加減だが、世の中を渡るしたたかさは十分に持っている」とい
うもので、「これまでとは異なった仕事観、生活観を持った新しい人種の誕生
を予感させた」という(1988年2月6日付日経流通新聞)。道下氏自身は「映画
制作会社から定職につかずアルバイトで生活するフリーアルバイターを映画の
題材にしたいという相談を受け、データやエピソードを提供したんです。ただ
フリーアルバイターでは響きが悪いので、自分の気持ちに正直に生きる人とい
う意味をこめて『フリーター』とつけました」(1987年11月24日付日経産業新
聞)「時間を有効に使い、お金も稼いで、自分のやりたいことをやる――こん
な(フリーアルバイターの)ライフスタイルは今後ますます増えてくるでしょ
う」(1986年11月7日付読売新聞朝刊)などと述べている。
当初「フリーター」ということばは、「カッコいいことば」として生まれた
のだ。実際、当時の新聞記事をさらに見ていくと、「仕事にそこそこの満足感
を覚えながら束縛をきらって自由にはばたく“フリーター気質”」(1988年2
月29日付日本経済新聞夕刊)「趣味やその時の興味、好奇心に従い、やって楽
しい仕事・暮らし方を選ぶ。福田さんの仕事観に生活のにおいはない」(1988
年2月6日日経流通新聞)など、「自由」で「仕事以外のやりたいことを大切」
にし、仕事には「やりがい」を求めるといったポジティブなイメージの記事が
目立つ。「三日やったらやめられないのが、不定期の就業で口に糊(のり)す
るフリーター稼業とか」(1988年6月29日付日本経済新聞夕刊)。
しかし、フリーターというキャリアデザイン(これも一種のキャリアデザイ
ンだろう)は、決してそんな甘いものでもカッコいいものでもなかった。結局
のところ、フリーターのカッコよさはバブル経済下の異常なまでの人手不足が
前提だったのだ。新卒採用のピークは1990年。「広告製作会社を手伝い始めた
フリーターの岡田は言う。『一度身につけたライフスタイルは変えられない。
不況になっても職場がなくなるなどということがあるのだろうか。日本経済っ
てそんなに弱くないのでしょう』」(1991年5月3日付日本経済新聞朝刊)。そ
れから「就職氷河期」に突入するのに5年もかかっていない。平成12年版労働
白書によれば、「フリーター」ということばが生まれた1987年に79万人だった
フリーターが、10年後の1997年には151万人に増加した。そういう意味では、
「不況になっても職場がなくなるなどということ」はたしかになかった。しか
し、労働条件は大幅に低下し、仕事も「やりがい」とはほど遠いものへとシフ
トした。「フリーター」というキャリアはもっぱら自ら選ぶものではなく、や
むを得ず選択するものとなった。そしてフリーターは「カッコいい存在」から
「政策的支援を必要とする存在」となっている。
もちろん、フリーターと一口に言ってもその中身は多様であり、とりわけ近
年の「就職超氷河期」にフリーター選択を余儀なくされた若者たちのなかには、
磨けば光るダイヤの原石が多く含まれている可能性が高い。とはいえ、バブル
期に「フリーター」を「カッコいいもの」としてデザインしてしまったことの
罪は軽くはないだろう。それはひょっとしたら、当時のわが国における「キャ
リア」への意識の低さ、未熟さを示しているのかもしれない。
フリーターのなかには、「脱フリーター」を志向する人も多いという。その
ためにどのような道筋があるのか、「キャリアデザイン」の一つの課題ではな
いかと思う。(編集委員 荻野勝彦)
2 私のキャリア観
~有識者からキャリアに関する考えを寄せていただきます~
『日本キャリアデザイン学会の理念と私の立場』
法政大学キャリアデザイン学部教授 川喜多喬
さる9月25日の設立総会で、無事、発起人会事務局長の大役を務め終え、
業務のバトンタッチを済ませた。新事務局長、常務理事会、研究組織委員会な
どの役員の方々に舵取りはお願い済みのことではあるが、あえて日本キャリア
デザイン学会の趣意書にそって、私の意見と希望を書かせて頂く。
日本キャリアデザイン学会趣意書によると、学会の趣旨の第一は「キャリア
を設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織」であるところにある。
ここで大事なのは、キャリアの設計・再設計が持続的な事業であるということ
ではないか。一度、設計したらそれと決めて脇目もふらず邁進するというもの
ではないということである。世の中の変動は激しく、今後ともそうであろう。
早めに自分の人生を決めろと人を追い込めば、柔軟に対応できぬ人材を育てる
ことになるかもしれない。このように計画書にこだわることはいけないが、し
かし設計する姿勢とか能力の育成は重要なことだろうと思う。
第二は「キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場」
である。ここで重要なことは、今までの世代別輪切りでの交流では不十分であ
ろうということである(学校の進路指導担当者だけ、大学短大などの就職指導
担当者だけ、企業の人事教育部署の担当者だけ、職業安定の窓口職員だけ、人
材ビジネスのコンサルタントだけ、などを横で組織した学会や協会はあちこち
にあるが、キャリアは一生かけて築きあげていくものであろうから基本的な考
え方は共通であるかもしれない。学校が家庭教育の悪口を言い、大学・短大が
学校の悪口を言い、企業が大学・短大の悪口を言い、労働組合が企業の悪口を
言い・・・ということは人材育成については、ごく普通にありがちなことであ
るが、まずもってそれぞれの世界での努力を知り、おたがいに建設的な助言を
することが大切なことであろう。例えば、学校のキャリア教育担当者だけが集
まっても、産業社会の人材需要の動向がわからなければ職業指導に画竜点睛を
欠くであろう。
第三は「多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場」
であるということである。経営学、教育学、心理学、社会学、行政学・・・さ
らには例えばものづくり人材の後継者を考えるならば工学、建築学・・などの
助けも必要であろう。だからと言って何でもキャリアに関わると雑談・放談を
して、クレープのように、ひたすら広いがまことに薄い、というような学会に
なってはならないと思われる。したがって「求心力」が大事であって、それに
は高い水準ののキャリア研究をしっかりやっているはずの研究者の貢献が求め
られよう。
第四は「キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場」であるとい
うことである。机上の空論、美辞麗句を言っていてもしかたがないことだとい
うことは言うまでもない。そもそもキャリアデザイン研究が始まる前から、多
数の人々が自分や他人のキャリア支援をやってきており、いまもやっている。
またキャリア支援の前に、そもそも人々の職業経歴、人生経歴はあったことで
あり、あることである。現実をきちんと見て、そこから不合理なこと、合理的
なことをよりわけていくことが大切なことであって、その結果は実務家に受け
入れられるものでなければならない。
第五は「誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場」
であるということである。上の主張にもかかわらず、実務家が全て立派だとは
私は思わないと、あえて言いたい(実務家からの反発はあえて覚悟の上であ
る)。キャリアデザインが重要であるとの認識の急速な普及から、また拙速に
これに関わる行政の施策展開、あるいはまた社員の職域開発や転身支援に悩む
組織による予算化によって、あるいはとまどう個人の強い需要があって、
「キャリアを掲げれば儲かる」と思って参入する実務家は、しばしばふさわし
い訓練を受けていないことがある。誤解がないように言っておきたいが、私は
最近まで経営学部に身をおいていたこともあるが「利益をあげる」ことに反対
ではないし、キャリアに関わる様々な産業や職業が成長するのは時代の要請だ
と思っている。しかし科学の目を通されていない各種のキャリア支援技法・施
策が横行することを看過するべきではないと思う。
ゆえに第六の、「キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準
化の努力の場」と学会がなることが大切なことだと思っている。標準化といっ
ても、別に画一化である必要はない。ましてや、学会がいわば技法や教説の独
占販売人になることはあってはならない。安易な資格商売の道具にもなっては
ならないだろう。
最後に学会は「人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場」
でありたいと思う。急激な変化に翻弄される人々にキャリアセルフマネジメン
トのスキルを持ってもらうために努力する団体でありたいが、そうは言っても
逆にキャリアデザインは全部自己責任だ、俺は知らないよ、というような雇用
者や教育者には疑問の声を持って当然であろう。豊かなキャリアとは何か、そ
れは人知を超える可能性のある、永遠のテーマであるので、そう簡単に結論を
出せるとは思ってはいない。しかし、とまどい悩む個人への同情、あるいは共
感の気持ちが多少ともないと、こういう学会は長続きしないのではないかと私
は思う。
以上、「 」内は学会趣意書から引用・要約したが、それ以外はまったくの
私見である。また上の全てに私が何を貢献できるかとなると大山鳴動して鼠一
匹程度のことしかできないであろう。が、中堅企業の人材育成に関わる調査屋
として、ささやかな貢献は今後もさせていただきたいと思っている。
※今回の「私のキャリア観」は、学会員向けニュースレターからの転載です。
会員向けニュースレター(毎月発行)では、各界における実践報告などを
発信しております。
3.キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆厚生労働省・国際労働機関(ILO)・国連大学(UNU)
グローバル化と若者の未来に関するアジア・シンポジウム
「今、若年雇用問題をグローバル化の中で考える」
12月2日(木)14:00~17:45、12月3日(金)10:00~18:00
於 国連大学3階ウ・タント国際会議場
http://at-now.co.jp/asia/index.html
◆労働政策研究・研修機構労働政策フォーラム
「共に働き、共に生きる社会づくりをめざして
~障害者の就労支援に関する有識者懇話会「共働宣言」が伝えたいこと~ 」
12月3日(金)13:30~16:30
於 朝日新聞東京本社・新館2F 浜離宮朝日ホール・小ホール
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20041203_form.htm
◆東京都・東京経営者協会シンポジウム
「もっと活かそうポジティブ・アクション
~これからの企業経営と男女平等参画~」
12月9日(木)14:00~16:30
於 東京ウィメンズプラザ・ホール
http://www.metro.tokyo.jp/INET/BOSHU/2004/10/22eat100.htm
[編集後記]
本号では、学会の会員向けメールマガジン「ニュースレター」から、川喜多
喬法政大学教授の一文を転載しました。学会誕生に中心的な役割を果たした川
喜多教授のほとばしる熱意を感じていただければと思います。会員向けニュー
スレターには、キャリアデザイン研究に関する実践報告、エッセイ、書評など
の本格的な記事が掲載されています。本メールマガジンでも、その一部を紹介
していく予定です。お楽しみに。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当課長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@cdi-j.jp
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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