キャリアデザインマガジン 第35号 

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□    キャリアデザインマガジン 第35号 平成18年2月27日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 私のキャリア観 法政大学教授 諏訪康雄(3)
2 キャリア辞典「完全失業率」(1)
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり勉強会を開催いたします。
 テーマ:「インターシップ活性化のための課題:大学、学生、企業、受け入
      れ担当者の4者への調査から」
 日時等:3月17日(金)18:30~20:30 於 東京大学社会科学研究所
 講 師:堀有喜衣 労働政策研究・研修機構研究員
     堀田聰子 東京大学社会科学研究所助手
 コメンテーター:小島貴子 立教大学大学教育開発・支援センター
         松岡猛 NECラーニング(株)
  ※下記アドレスからオンラインで参加のお申し込みを受付中です。
   https://www.hosei.org/event/detail/20060317.html

◆来年度の日本キャリアデザイン学会大会の日程が決まりました。
 開催日:平成18年10月28・29日(土・日)
 開催校:立命館大学衣笠キャンパス(京都市北区)
  ※テーマ、自由論題募集などの詳細は決まり次第学会ホームページなどで
   お知らせいたします。 http://www.cdi-j.jp/

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1 私のキャリア観

「法とキャリアデザイン(3)」(7回連載)
              法政大学大学院政策科学研究科教授 諏訪康雄

【第3回】「キャリア権」と自己選択

----個人が負担するリスクが大きい、重要な判断ほど、個人の意思を強
く反映すべきだという考え方は、経済学的にも納得いくものがあります。ただ、
企業としては、当然自社のビジネスのニーズに応じたキャリア形成をしてほし
いわけで、あまり個人の選択が強くなると不都合かもしれません。

諏訪 それはもちろん、企業と個人との間で一定の調整は必要になります。漢
文ではなく英語が必要になっている時代に、漢文しかできない人には相変わら
ず漢文で仕事をさせなければいけない、ということではありません。そうでは
なく、漢文から英語、衰退産業から成長分野へと、キャリアをいかにして転換
し、発展させていくか、それにできるだけ個人の納得を得ながらコミットさせ
ていき、転換を促進したり、支援したりすることが大切なのです。

-----企業としては、社内でのキャリア転換や、転進支援、早期退職優遇
といったさまざまな選択肢を準備して、それを働く人に主体的に選んでもらう
ということでしょうか。

諏訪 そういった調整は必要ですが、大事なのは社内でどのようにキャリア転
換させるかにも、本人にコミットさせることです。それによって納得が得られ
るだけでなく、いろいろな知恵を出そうとか、創意くふうをしようとかいう意
欲も高まるでしょう。

-----それは変化が来てから急にやれと言っても無理ですね。ふだんから
それに近いことをやっていないと。

諏訪 そのとおりです。この変化の激しい時代に、10年後、あるいは5年後に
どのような能力が必要かということは、誰にも正確に予測することはできませ
ん。だとすると、企業の人材に一定の多様性が必要です。生物学的にも、気候
変動が激しくなったりすると、どのように変化してもどれかの種は生き延びら
れるように生物の多様性が高まるそうですが、それと同じです。企業が一方的
かつ計画的に多様性を高めようというのは、社会主義国が失敗したのと同じこ
とを繰り返すことになります。個人の自由度を高めて、そこから多様性を生み
出すことで、企業内のキャリアに「揺れ」が出てきます。この「揺れ」が変化
への対応力や、創造性につながっていくのではないでしょうか。

-----多様性を活力や創造性に結び付けていこうという考え方は、経団連
も提唱していますし、経済界に拡がりつつあります。

諏訪 それから、企業の人事管理も変化していて、成果主義、個人や部門の業
績を処遇に反映する傾向が強まっています。かつては処遇に大きな差がつくこ
とがなく、誰しもそれなりに社内で昇進していたのですが、それは働く人のキ
ャリアを企業が決めることの代償でもあったわけです。ところが、時代が変わ
ってそれができなくなった。いまでは、新入社員でもどの部門に配属されるか
によって、労働条件にも、その後の社内キャリアにも差がついてしまうような
制度があちこちで導入されていますし、現実にある時点から昇進が期待できな
い人もたくさん出てきます。企業が自分の都合で働く人をあちこち異動させて
おいて、10年か20年たったところで「あなたにはもう上はありません。雇用は
守りますが、飼い殺しです」ということではおかしいでしょう。そのときに、
仕方なく組織に残るだけではなく、自らの意思で組織の外に出ることもできる
ように、キャリア形成に配慮する必要があります。

-----それにあたっては、本人も参加し、判断するということですね。そ
ういう意味では、多くの企業がすでに自己申告制度や社内FA制度のようなも
のを導入し、本人の意思をキャリア形成に反映させるしくみを持っています。

諏訪 働く人にそういう意識が広まってきたからでしょう。外資系企業が採用
を活発化したこともそれを促進したと思います。優秀な人には良好な転職先が
あるようになってきたので、この会社にいたのではキャリアの先が見えない、
チャンスがつかめないと思えば転職してしまう。

-----社内でいいコースに乗っている人は転職しませんが、優秀ではある
けれどチャンスに恵まれない、たまたまポストがない状態が続いているという
人が転職していますね。で、やめられてみてから、そういえば彼はずいぶんノ
ウハウや技術を持っているな、ということになる。

諏訪 ヘッドハンターが狙うのもそこですね。チャンスを与えればすばらしい
仕事ができる可能性のある人です。そういう人を活性化していくためにも、や
はりキャリアに自己決定を取り入れることが望ましい。キャリア支援をしたら
優秀な人がやめてしまうのではないか、という心配をするのはおかしな話で、
やめられたら困る人には企業はきちんとした社内キャリアを提示するべきなの
です。

-----近年では、企業がキャリア形成支援というと、転出してほしいから
支援するという話が多かったのではないかと思いますが、そうではなくて、社
内で意欲的に働き続けてもらうためにキャリア形成が必要ということですね。

諏訪 企業活動にはいろいろな人材が必要で、今後はやはりある段階で止まっ
てしまう人も出てこざるを得ないわけですね。企業はそういう人にも元気で働
いてもらわなければ困る。しかし昇進や昇給はできないとなると、仕事の中身
やキャリア形成などで動機づけするしかないでしょう。昇進はしなくても、自
分の希望が反映された仕事、やりがいの感じる仕事をするのなら、モティベー
ションは高まります。

                  (聞き手・文責:編集委員 荻野勝彦)

 諏訪 康雄(すわ やすお)
 法政大学大学院政策科学研究科教授。労働法専攻。主な著書に『雇用と法』
(1999、放送大学教育振興会)、『判例で学ぶ雇用関係の法理』(1994、総合
労働研究所、共著)など。

2 キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

「完全失業率」(1)

 毎月月末になると、夕刊各紙で「完全失業率」「有効求人倍率」が報じられ、
上がった、下がったと言ってはあれこれ論じられる。実際、この二つのデータ
は、労働市場の動向や雇用情勢を示すもっとも基本的な指標として定着してい
るといえるだろう。
 多くの場合セットで使われるこの二つの指標、実はまったく異なる調査にも
とづいている。ともに公的な統計だが、実施主体も異なり、完全失業率は総務
省の「労働力調査」、有効求人倍率は厚生労働省の「職業安定業務統計(一般
職業紹介状況)」によっている。もちろん発表も別々だが、毎月のように同じ
日に発表されているのは、両省の担当官が示し合わせているのだろうか。まあ、
これだけセットにされることが定着していると、報道の便宜や、あるいはマー
ケットへの影響(もっとも、マーケットは事前に織り込むことが多いようだが)
という面でもそろっての発表が望ましいのかもしれない。
 完全失業率ということばはごく普通に使われているが、「完全」というのは
なにが「完全」なのか、と考えると少し不思議な感じがしないでもない。完全
失業というのがあるのなら不完全失業というのもあるのだろうか。
 もちろんこれは定義の問題で、単に「失業」といったのではあいまいなので、
「把握すべき失業者」を明確に定義して、それを「完全失業者」と称している
わけだ。ちなみにその定義はかなり厳格?で、(1)仕事がなくて調査週間中に
少しも仕事をしなかった、(2)仕事があればすぐ就くことができる、(3)調査週
間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結
果を待っている場合を含む)、という3つの条件を満たさなければならない。
なお、「調査週間」というのは毎月の末日に終わる1週間をいう。
 なるほど、これならば、回答する人が「自分(や家族など)が完全失業者に
該当するかどうか」で迷うことはほとんどなさそうなので、正確で継続性のあ
る統計という意味ではかなり満足のいくものになっていそうだ。一方、行政の
実施する調査だから、当然行政上の活用が意図されているわけで、この場合は
「なんらかの政策的な対応が必要な失業者」という趣旨で定義されているので
あろう。そうした意味でこの定義が満足なものかどうかは議論もありそうだ。
 もっとも、十分に正確な定義は現実には困難だろう。たとえば勤め先が倒産
して失職し、新しい仕事を探している人が、たまたま「月末の一週間」のある
日に半日だけ親戚の店を手伝ってアルバイト代をもらった、といった場合は、
本人の意識としては完全に「失業者」だろうが、この統計の「完全失業者」に
はあたらないことになる。いっぽうで、退職して事実上引退した人が、失業給
付を受けるために形式的に求職活動を実施している場合は、統計上の「完全失
業者」ではあるが、本人の意識として「失業者」かどうかはかなり疑わしい。
こうした誤差は、統計上避けがたいものとして受け入れるしかないのだろう。
                         (編集委員 荻野勝彦)

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策フォーラム
 「仕事と生活-企業における両立支援と女性の活用-」
 平成18年3月8日(水)14:00~17:00
 於 全電通ホール(東京都千代田区)
 http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20060308.htm

◆東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センター
 創立10周年記念シンポジウム「社会科学研究とSSJデータアーカイブ」
 平成18年3月8日(水)13:30~
 於 東京大学本郷キャンパス内 山上会館(東京都文京区)
 http://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/sympo20060308.html

◆国土交通省「『長期家族旅行』を考えるフォーラム」
 平成18年3月8日(水)14:00~16:30
 於 メルパルクNAGOYA(名古屋市東区)
 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010208_.html

◆外務省・国際移住機関(IOM)共催シンポジウム
 「外国人問題にどう対処すべきか-外国人の日本社会への統合に向けての
  模索-」
 平成18年年3月9日(木)9:30~17:00
 於 UNハウス(国連大学ビル)3階ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)
 http://www.iomjapan.org/news/symposium2006.cfm

[編集後記]
 トリノで冬季五輪大会が開催されました。全世界の注目が集まる大会ですが、
多くの競技で必ずしも実力どおりとはいえない結果も出たようです。考えてみ
れば、ウィンタースポーツは天候やコース設定などの競技コンディションが一
定せず、しかもその影響が大きいという種目が多いので、一発勝負で実力をは
かるのは難しそうです。だからこそ、世界選手権では1シーズンかけて各地を
転戦し、その通算成績でその年のチャンピオンを決めたりしているのでしょう。
これはキャリアデザインにも通じるところが多いような気がします。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
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このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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