キャリアデザインマガジン 第30号 

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□    キャリアデザインマガジン 第30号 平成17年12月5日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 私のキャリア観 「自立したキャリアとはなにか」学会理事 荻野勝彦
2 キャリア辞典「終身雇用」(1)
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆来年度の日本キャリアデザイン学会大会の日程が決まりました。
 開催日:平成18年10月28・29日(土・日)
 開催校:立命館大学衣笠キャンパス(京都市北区)
  ※テーマ、自由論題募集などの詳細は決まり次第学会ホームページなどで
   お知らせいたします。 http://www.cdi-j.jp/

◆関西地区研究会(講師:大竹文雄阪大教授)は、定員に達しましたので、申
 し込みを締め切らせていただきました。多数のご参加ありがとうございます。

◆第2回日本キャリアデザイン学会大会資料集をおわけします。
 さる10月1日・2日に開催された大会の資料集(発表要旨などを含む)を実
 費(1部1,000円)+郵送料にて頒布しております。
 学会事務局cdgakkai@hosei.orgまでeメールにてお申し込み下さい。

◆研究誌「キャリアデザイン研究」創刊号が発行されました。
 実費(1部1,500円)+郵送料で頒布しております。
 学会事務局cdgakkai@hosei.orgまでeメールにてお申し込み下さい。

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1 私のキャリア観

「自立したキャリアとはなにか」
                   学会理事・研究組織委員 荻野勝彦

※本稿は、「生産性新聞」第2149号(平成17年11月15日付)に掲載された記事
 を、(財)社会経済生産性本部のご厚意により転載したものです。

 編集部から与えられたテーマは「自立したキャリアとはなにか」というもの
だ。だが、のっけからで申し訳ないが、私はこの「自立」ということばがあま
り好きではない。
 もっとも、常識的には、「自立」といえば職につき、親の経済的支援なしに
生活していくことを指すだろう。これについては、私ももちろん大切だと思う
し、嫌いでもない。
 ところが、この10年くらいというもの、「自立」ということばにはやや異な
るニュアンスがこめられることが増えているように感じる。たとえば、日本経
済新聞が2003年から2004年にかけて連載した「働くということ」という特集記
事があり、単行本にもなっているが、そのなかで「自立」ということばがどう
使われているかをみてみよう。
 たとえば、2003年7月15日の「働くということ」の見出しは「依存脱却 自
立に備え」となっていて、本文をみると、「会社にもたれず、懸命に自立を探
る」などの記述がある。「「会社の辞め方講座」。今年4月、営業支援ソフト
開発、ソフトブレーンの高橋美和(23)は新入社員研修の冒頭のプログラムに
面食らった。退職の申請の仕方や転職の仕方を丁寧に説明、転職支援制度まで
用意してあるというのだ。/発案者は中国人会長の宋文洲(40)。「会社と社
員は平等。能力に応じて会社を移ればいい」と社員に即戦力としての自立を促
す。」という事例も紹介されている。もうひとつあげれば、2004年1月23日の
「働くということ」の見出しはずばり「自立と歯車」だ。「自分が主役の創業
者から巨大企業の「歯車」へ逆戻り。」「組織を離れ自立して生きるか、歯車
として働くか。」という記述が踊る。
 これらに共通しているのは、「自立」とは「会社に依存しない」ことであり、
「転職、起業、独立できる」ことだ、というメッセージだろう。率直なところ、
「自立したキャリア」ということばにも、私はこれと共通したものを感じる。
 しかし、こうした「自立したキャリア」を生涯通じて歩むことができるのは、
おそらくは才能と幸運に恵まれた例外的な人にかぎられるのではないか。もち
ろん、自立したキャリアを歩むことはすばらしいことだし、そういう人が増え
ることは望ましいことだ。しかし、多くの働く人にとってはそれはあまりに高
いハードルだろう。ところが、2003年5月27日の「働くということ」は、「米
国で起業して成功した若者」を自立の事例としてあげたあとに、「自立しなけ
れば共に沈み、日本の停滞はさらに深刻になる。」といっている。「自立」で
きる少数の人以外は「共に沈む」のだ、ということになると、私が「自立」と
いうことばを好きになれないというのもご理解いただけるものと思う。
 もちろん、「自立」を促すことは大切だろう。ただ、実も蓋もない言い方だ
が、「自立」できる人は、たいていは放っておいても「自立したキャリア」を
歩むのだ。もっと大切なのは、働く人と、働く場を提供する企業とが互いに
「支えあうキャリア」をいかに充実させていくことのほうなのではないか。
 すでに、社内キャリアについて自己申告や社内公募、社内FAといった制度
を設けている企業は数多い。今後さらに、企業はさまざまなチャンスを提示し、
社員がそれを生かしていくことで、社員と企業の共同作業でキャリアをつくっ
ていくという取り組みが進展するだろう。これに主体的に参加する、という意
味での「自立」なら、その重要性は高いと思う。
 また、近年、派遣や請負で働く人も増えている。こうした人のキャリア形成
には、派遣会社や請負会社による意識的な対応が欠かせないし、派遣先や発注
者の協力も必要だろう。難しい課題だが、急いで取り組む必要のある問題では
なかろうか。

2.キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

「終身雇用」(1)

 以前から、日本企業の労使関係の特徴として「終身雇用」「年功序列」「企
業別組合」が「三種の神器」と称されてきた。近年では、「年功序列」は(少
なくとも民間企業では)ほぼ過去のものとなり、「終身雇用」も「崩壊しつつ
ある」といわれ、「企業別組合」についても「考え直すべき」との意見が労働
界の一部にあるようだ。
 本当にそうなのか、というのにはいろいろと議論もあるだろう。とはいえ、
こうした労働慣行が本当に変化しているのであれば、それは職業キャリアのあ
り方にも影響を与えるのではないか。
 さて、「終身雇用」、あるいは「終身雇用制」ということばは、かなり長期
にわたって使われてきた。初めて使われたのがいつかは不明だが、有名なアベ
グレンの「日本の経営」が1958年だから、すでに50年近く前には認識されてい
たことになる。しかし、今日では「終身雇用制」ということばは二重に間違っ
ており、「長期雇用慣行」と呼ぶのが実態を反映して妥当であろう。
 なにが間違っているのか。第一に、現状の日本の長期雇用は大多数が定年ま
での雇用に過ぎず、「終身(死ぬ直前まで)」という意味ではない。来年4月
からは改正高齢法によって老齢基礎年金支給開始年齢まで原則として希望者全
員の継続雇用が義務づけられるが、それにしても最長65歳まででしかない。ア
ベグレンが「日本の経営」を書いた1950年代後半には男性の平均寿命は60歳台
だったから、当時の55歳定年はそれなりに「終身」に近かったかもしれないし、
高度成長期には、熟練工不足、管理職不足という背景もあって、定年を超えて
も65歳、70歳まで何らかの形で就労したり、会社に籍があったりすることも多
かったため、それなりに「終身雇用」的であったかもしれない。しかし、人生
80年時代をむかえ、高度成長も、ひょっとしたら安定成長も過去のものとなっ
たこんにち、65歳までの雇用ではおよそ「終身」とはいえまい。
 第二に、これはなにも法制化された「制度」ではなく、広く行なわれている
「慣行」に過ぎない。もっとも、定年を定めるなら60歳以上でなければならな
いことは法制化されているし、前述のような継続雇用の義務化も行われたので、
そのかぎりにおいては「制度」に近い部分もある。日本の法制度や企業経営、
人事労務管理が雇用の維持・確保を相当程度念頭においていることも間違いあ
るまい。とはいえ、働く人が退職・転職することはもとより自由だし、趨勢的
には増加傾向にある。また、必ずしも長期に雇用されない有期雇用や派遣労働
といったスタイルも拡大している。長期雇用を「制度」と言い切るのはやはり
難しいだろう。
 マスコミなどでは、なじみがあるからか、あるいは「派手」だからか、依然
として「終身雇用」という用語が使われることが多く、「終身雇用の崩壊」な
どという扇情的な表現もしばしばみられる。しかし、上記のように考えれば、
終身雇用は高度成長の終焉とともにとっくに終わっているともいえる。そろそ
ろ、「長期雇用」という実態にあった冷静な表現に改めていきたいものだ。
                         (編集委員 荻野勝彦)

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆神奈川県地域労使就職支援機構
 多様就業型ワークシェアリングシンポジウム
 平成17年12月6日(火)14:00~16:30
 於 ワークピア横浜3F(横浜市中区)
 http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/rosei/josei/ws-sympo.pdf

◆埼玉県地域労使就職支援機構「多様な生き方・働き方」フォーラム
 平成17年12月15日(木)14:30~16:50
 於 大宮ソニックシティ 小ホール(さいたま市大宮区)
 http://www.saitama-roudou.go.jp/event/data/event20051108.pdf

◆経済産業研究所(RIETI)政策シンポジウム「日本の年金制度改革」
 平成17年12月15日(木)9:30~16日(金)11:50
 於 経団連会館(東京都千代田区)
 http://www.rieti.go.jp/jp/events/05121501/info.html

[編集後記]

 マンションやホテルの耐震強度を偽った問題が世間を騒がせています。騒動
の主役?のひとりである構造計算書を偽造した一級建築士は、不正行為につい
て「仕事がなくなると困ると思った」などと述べているのだとか。一級建築士
といえばそうそう簡単に取れる資格ではありませんが、そんな資格でも「取れ
ば安泰」とはなかなかいかないという実態も明らかになったのではないでしょ
うか。いっぽうで資格の効用をうたう人材ビジネス業者も多いわけで、資格に
どこまで頼れるか、というのはキャリアデザイン学の課題のひとつになるのか
もしれません。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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