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□ キャリアデザインマガジン 第3号 11月1日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。
※等幅フォントでごらんください。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典 「古典に出てくるキャリアという言葉2」
2 キャリアの1冊 三村隆男著『キャリア教育入門』
3 キャリアイベント情報
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1 キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「古典に出てくるキャリアという言葉2」
『ピーター・パン』の作者として名高い、サー・ジェイムス・バリーはス
コットランド生まれである。そのせいか、ある戯曲にこういう言葉が出てくる
・・・「君はね、スコットランド人の立派な気質、すなわち『自分のキャリア
を損なう可能性のあることことはやらない』という精神を忘れたのだよ、マ
ギー。」(『女なら誰でも知っていること』)。この戯曲が書かれたのは1908
年で、その頃には、いったんキャリアを得たら、それを損なってはならない特
権的な道という意味ができあがっていた。しかし、キャリアを守るに汲々とし
ている者を蔑視する言葉、キャリアイスト(出世主義者)という言葉も生まれ、
第一次大戦後にはキャリアイズム(出席主義)という言葉も生まれた。とくに
政治家の道を歩まんとするものを言うようになった。
政治家と「キャリア組」が仲良くするのは自然の成り行きだったのである。
そうした大人になることを拒否して子供のままでいたいという気持ちは理解で
きるものの、「ピーターパン症候群」、「ウエンディ症候群」にかかってしま
う最近の若者も困ったものである。
(法政大学キャリアデザイン学部教授 川喜多喬)
2 キャリアの1冊
~キャリアに関する本のご紹介です~
三村隆男『キャリア教育入門』(実業之日本社)
キャリア教育という用語が公の文書に初めて登場したのは1999年に発表され
た中教審のいわゆる「接続答申」であったが、その後、2003年に内閣府「平成
15年版国民生活白書」でフリーター417万人という数字が発表されると同時に、
フリーター問題が大きな社会問題として注目され、その改善方策としてキャリ
ア教育が脚光を浴びるようになった。文部科学省は、初等中等教育におけるキ
ャリア教育を推進していくための基本的な方向を総合的に検討するため、キャ
リア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議を立ち上げ、2004年に入り
報告書をまとめ、さらに、新キャリア教育プラン推進事業に着手し、推進地域
を指定し、小・中・高等学校における組織的・系統的な指導内容・方法を開発
したり、キャリア教育を普及・啓発するためのフォーラムの開催などの事業を
実施している。
このように学校現場でキャリア教育の推進が提唱されている中で、この9月
に発刊されたのが三村隆男氏の『キャリア教育入門』である。本書は、キャリ
ア教育の理念とその内容や方法への理解を深め、キャリア教育を推進する教師
の実践力を身につけることをねらいとして書かれている。第1章の理論編では、
キャリア教育の歴史や理論がコンパクトにまとめられている。第2章の実践編
では、キャリア教育での6つの活動(自己情報の理解、進路情報の理解、啓発
的経験、キャリア・カウンセリング、卒業後の進路選択・決定の支援、卒業後
の追指導)を通して「人間関係形成能力」「情報活用能力」「将来設計能力」
「意思決定能力」を育成するための方法が説明されている。また、第3章の組
織編では、キャリア教育を進めていくうえでの具体的なキャリア教育計画の立
案、キャリア教育委員会の設置、キャリア教育の評価などについて説明し、
小・中・高12年間の学習プログラム例が紹介されている。
本書は、文部科学省が推進しようとしているキャリア教育の理論と実践の解
説書ともいうべき内容となっている。したがって、これから学校現場でキャリ
ア教育を実践していくさいにはまずは読んでおくべき書物といえる。
ただ、問題点として指摘しておきたいのは、キャリア教育と従来の進路指導
との関係をどのようにとらえるべきなのか、ということである。三村氏は、
「キャリア教育」は「本来の進路指導とは同義と考えてよい」とし、これまで
進路指導の理論として紹介されてきたパーソンズやスーパーの理論もキャリア
教育の理論として紹介し、学習指導要領での進路指導の扱いの変遷も、キャリ
ア教育の変遷として紹介している。(ただし、キャリア教育の評価で紹介され
ている評価シートの例は「進路指導評価シート」のままとなっている。)本書
でも引用されている協力者会議の報告書は「進路指導の取り組みは、キャリア
教育の中核をなす」としており、キャリア教育は進路指導そのものではないと
いえる。その理論的関連をきちんと整理しておく必要がある。
ここにきてキャリア教育が登場した社会的背景としては、深刻化している若
年雇用問題があり、従来の進路指導では不十分な面があったことがあげられる。
したがって、小・中・高12年間を通じて一貫した取り組みの系統性を追求し、
産業界をはじめとした学校外との連携を図る観点から、新たにキャリア教育と
いう概念が必要とされた(児美川孝一郎「キャリア教育の動向」)ことをふま
えて、文科省の提唱するキャリア教育をとらえるべきであり、そこに進路指導
ではなくキャリア教育が登場した固有の意味がある。本書の刊行をきっかけに、
今後、キャリア教育の概念を再吟味し、どのような実践を進めていくことが必
要なのか、議論していく必要があろう。
(桜華女学院高等学校 山野晴雄)
3.キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆日本インターンシップ学会研究部会
11月13日(土)13:30~17:00
於 東京国際大学早稲田サテライト205教室、206教室
おもな内容 「国際インターンシップと経験学習」
中央大学総合政策学部特任講師 和栗百恵
「台北の海外インターンシップ事例」
日本インターンシップ学会事務局長 宮原隆史
参加費 3,000円(学会会員無料、当日学会入会可)
問い合わせ 学会事務局 03-5850-3444
miya-ruijb@rapid.ocn.ne.jp
◆労働政策研究・研修機構労働政策フォーラム「ニート~若年無業者の実情と
支援策を考える」
11月17日(水)13:30~16:00 於 大手町サンケイプラザ
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20041117_form.htm
[編集後記]
「キャリアデザインマガジン」第3号をお送りします。
本号より、日本キャリアデザイン学会研究組織委員会から、児美川孝一郎
(法政大学キャリアデザイン学部助教授)と荻野勝彦(トヨタ自動車(株)人
事部企画室担当課長)の2人が編集委員として編集にあたります。
キャリアに関心のある人が楽しく読める情報誌をめざして、隔週刊で編集に
あたってまいります。読者各位のご意見、ご感想をお待ちしております。
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当課長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@cdi-j.jp
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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