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□ キャリアデザインマガジン 第29号 平成17年11月21日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 私のキャリア観 (株)資生堂取締役執行役員 岩田喜美枝(5・最終回)
2 キャリア辞典「正社員」(3)
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆来年度の日本キャリアデザイン学会大会の日程が決まりました。
開催日:平成18年10月28・29日(土・日)
開催校:立命館大学衣笠キャンパス(京都市北区)
※テーマ、自由論題募集などの詳細は決まり次第学会ホームページなどで
お知らせいたします。 http://www.cdi-j.jp/
◆今後の研究会の予定は以下のとおりです。
(関西地区)
日 時:12月10日(土)18:30~20:30
講 師:大阪大学社会経済研究所教授 大竹文雄
テーマ:「賃金格差及び成果主義賃金の実態と将来」
コメンテータ:神戸学院大学経済学部教授 中村恵
場 所:関西学院大学大阪梅田キャンパス
K.G.ハブ スクエア大阪 1408会議室
http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/
申込み:下記のいずれかにお申し込みください(先着40名)。
中村恵 nakamura@eb.kobegakuin.ac.jp
川崎友嗣 tomo@ipcku.kansai-u.ac.jp
※終了後、懇親会を予定しております。懇親会への出欠もお知らせください。
※今回に限り、非会員の方も無料で参加できます。
※定員まであと数名だけの余地しかございませんので、お申し込みお断りする
ことがあるかもしれません。ご容赦ください
◆第2回日本キャリアデザイン学会大会資料集をおわけします。
さる10月1日・2日に開催された大会の資料集(発表要旨などを含む)を実
費(1部1,000円)+郵送料にて頒布しております。
学会事務局cdgakkai@hosei.orgまでeメールにてお申し込み下さい。
◆研究誌「キャリアデザイン研究」創刊号が発行されました。
実費(1部1,500円)+郵送料で頒布しております。
学会事務局cdgakkai@hosei.orgまでeメールにてお申し込み下さい。
◆学会研究組織委員長の交代について
研究組織委員会委員長は3月から臨時に渡邉三枝子常務理事が兼務しており
ましたが、11月15日から佐藤博樹委員(東京大学社会科学研究所教授)が就
任することになりました。よろしくお願いします。
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1 私のキャリア観
「ワーク・ライフ・バランスとキャリアデザイン(5)」(5回連載・最終回)
(株)資生堂取締役執行役員 岩田喜美枝
【第5回】ワーク・ライフ・バランスとキャリアデザイン
-----日本キャリアデザイン学会では、キャリアデザインを狭義の職業キ
ャリア、職業的な成功といったことだけではなく、ワークだけでなくライフま
で含めた人生全体のデザインとして考えようとしています。キャリアデザイン
をワーク・ライフ・バランスの観点から豊かにしていくためには、むしろ職業
キャリア、職業的成功を重視しすぎる風潮を改める必要があるのではないでし
ょうか。
岩田 生活が充実している人にこそ、会社でも活躍してほしい、というのが基
本です。そういう人がいい仕事ができるだろうと思うのです。仕事一筋の人で
も、それで成功する人もいればそれほどでもない人もいるのと同じように、ワ
ーク・ライフ・バランスをとった人でも、仕事で成功する人もそうでもない人
もいる、ということになるのだと思います。仕事をとるか生活をとるか、とい
う二者択一にしてはいけません。
-----私たちの考えていることもまさに同じことです。仕事人間も必要だ
けれど、仕事人間だけの組織ではうまくいかないということには、企業経営者
も人事担当者も気づいています。
岩田 現代はありがたいことに豊かになって、生き方の選択の幅が広がってき
ました。昔は選択の余地がありませんでした。選択肢が増えたのはいいのです
が、自分がどういう選択をするか、選択する力をつける教育が、家庭でも学校
でもあまりされていないのではないでしょうか。特に女性の場合は選択肢が増
えている。職業だけではない生涯設計、キャリアデザインを、自分にとってな
にが大事か、という観点から現実的に考える力をつけることを支援していかな
ければなりません。親が教えられることもあるでしょうし、学校の授業、進路
指導、企業にもできることはあります。
-----キャリア教育というのは流行語のようになっていますが、やはり職
業キャリアが中心です。何に向いているか、何をやりたいか、それにはどんな
勉強が必要かとか、もっと現実的にどうすれば就職試験に通るかとか。おっし
ゃられたような生涯設計としてのキャリア教育はまだこれからではないでしょ
うか。
岩田 そういう指導のできるカウンセラーも不足しているのではないでしょう
か。企業にもできることはあると思います。かつては、生活の場と仕事の場が
近くて、農林水産業や自営の商工業だと、子どもの生活の中から大人が働く
姿が見えていました。そういう時代なら、なにも教えなくても子どもは自然と
生活と仕事の関係を学びます。現在は職住が離れてしまい、仕事は工場や事務
所の中に入って見えなくなってしまいました。そうした中で、企業は子どもた
ちに仕事の場を見せてあげることが大事なのではないか。ワーク・ライフ・バ
ランス塾のメンバー企業の中にも、職場を家族に見学してもらう機会を設ける
ことを次世代育成行動計画に盛り込んだ企業はたくさんありました。それから、
実際に体験してもらう。中学2年生全員に1週間の就労体験をしてもらおうと
いう政策が関係省庁にあるそうですが、とてもいいことだと思います。
-----「キャリア・スタート・ウィーク」ですね。
岩田 受け入れる企業には負担になるわけですが、社内でも、資生堂のファン
を増やす、いずれお客様になっていただけるという効果もあるし、社会貢献に
もなるから、ぜひ協力しましょうと言っています。地方にも工場もあるし支社
もありますから。
-----なるほど、資生堂のお店はキャリア・スタート・ウィークにぴった
りかもしれませんね。興味を持つ子どもも多そうです。
岩田 そういうことで、人生設計をする力をつけてあげなければ。かつてのよ
うに、いろいろと考えなくても高校の先生の進路指導に従って就職したり進学
したり、進学すれば大学によってだいたい就職先も決まっていて、就職すれば
企業がキャリアを考えてくれる、そんな時代ではなくなりましたから。これか
らは自分で人生全体をデザインして、そのひとこまが会社だ、という時代です。
確実性は下がったかもしれませんが、それ以上に選択肢が増えて、自分の人生
を自由に選べる。それがキャリアデザインではないかと思います。多くの人が
キャリアデザインの力をつけて、選択肢の多い豊かな人生を送ることができれ
ばすばらしいと思います。(おわり)
(聞き手・文責:編集委員 荻野勝彦)
岩田 喜美枝(いわた きみえ)
(株)資生堂取締役執行役員。元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長。32年に
わたり労働行政に携わる。退官後、(株)資生堂に転身。映画「ベアテの贈り
もの」制作にボランティアとして尽力。
2.キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「正社員」(3)
近年になって、「正社員」と「非正社員」をめぐる就労構造が大きく変化し
ている。総務省の「労働力調査(詳細結果、旧特別調査)」によれば、80年代
には10%台だったいわゆる非正規雇用比率は1995年には21%となり、最近では
30%を突破している。厚生労働省の「平成15年就業形態の多様化に関する総合
実態調査」によれば、平成11年調査で27.5%だった非正社員比率が34.6%に上
昇している。これらの調査結果は、裏返せばそれだけ正社員比率は低下してい
ることを示している。
そのおもな要因は、企業の組織拡大が停止した結果、景気変動などに対する
雇用量の柔軟性を確保するため、従来は正社員のキャリアの一部として担われ
てきた業務の一定部分が非正社員に置き換えられたことにあるといえそうだ。
たとえば、いわゆる「一般職」については、これを非正社員に置き換える動き
が急速に進んでいる。専ら補助的、定型的な業務に携わる「一般職」正社員の
新規採用は、機密保持など業務の特性上必要とされる場合を除けば非常に少な
くなったのではないだろうか。そもそも、もともとかつての「一般職」はほと
んどが女性で、かつては結婚や出産を機に退職することが当然視される風潮も
あったわけで、正社員とはいいながらも「総合職」正社員とはかなり性格の異
なるものだったのかもしれない。ところが、近年になって男女雇用機会均等が
進展し、「一般職」の勤続も長くなってきたことで、これを非正社員に置き換
えていく必要が発生した、ということも考えられる。そうだとすれば、「正社
員」に関しては、長期にわたって勤続し、基幹的な業務を中心に担いつつ経験
を蓄積し、能力を向上して、企業と共通利害のもとにその活動に強く関与する
という「正社員的な働き方」がより純化してきているのかもしれない。
いっぽうで、非正社員比率の上昇によって、非正社員が基幹的な業務を担う
ことも増えてきている。非正社員が幹部や管理職となるケースはこんにち決し
て珍しくはないだろう。人事管理面でも、チェーン展開しているスーパーマー
ケットなどでは、正社員と非正社員の人事制度を一本化するといった先進的な
取り組みもみられるようになってきた。最近では、企業にも非正社員比率が高
くなりすぎたとの反省が広がりつつあるようで、非正社員を正社員登用する事
例も増えている。とはいえ、人事管理面ではまだ多くの企業が試行錯誤してい
る段階にとどまっているようにみえるし、そもそも正社員と非正社員の望まし
い比率はどの程度なのか、といった問題意識も、ようやく広まってきたという
段階のように思われる。今後の方向を予想することは難しいが、企業の競争力
の源泉となる「正社員的な働き方」の重要性はおそらく変わらないにしても、
「正社員」と「非正社員」の境界はますます曖昧になっていくのではないか。
(編集委員 荻野勝彦)
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆独立行政法人労働政策研究・研修機構国際シンポジウム
「労働紛争・解決システム・労使関係」
平成17年12月2日(金)14:00~17:30
於 イイノホール(東京都千代田区)
http://www.jil.go.jp/event/symposium/info/051202.htm
◆労働政策研究・研修機構、日本ILO協会 海外社会労働事情研究会
「OECDの労働・社会政策研究の現状-OECDをめぐる最近の動向-」
平成17年12月5日(月)15:00~17:00
於 大同生命霞ヶ関ビル6階(東京都千代田区)
http://www.jil.go.jp/event/society/info/051205.htm
◆経済産業省キャリア教育シンポジウム「子供たちを骨太の大人に育てるため
に‥地域と民間の活力が生み出すキャリア教育について~地元産業界と学校
との連携による、地域に根ざしたキャリア教育推進~」
平成17年12月5日(月)14:00~18:00
於 六本木ヒルズ49Fタワーホール(東京都港区)
◆神奈川県地域労使就職支援機構
多様就業型ワークシェアリングシンポジウム
平成17年12月6日(火)14:00~16:30
於 ワークピア横浜3F(横浜市中区)
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/rosei/josei/ws-sympo.pdf
◆埼玉県地域労使就職支援機構「多様な生き方・働き方」フォーラム
平成17年12月15日(木)14:30~16:50
於 大宮ソニックシティ 小ホール(さいたま市大宮区)
http://www.saitama-roudou.go.jp/event/data/event20051108.pdf
[編集後記]
大阪大学の筒井義郎教授らによる「幸福感」に関する調査によれば、「最も
幸せな日本人像」は「都市部在住の30代女性で文系大学卒。職業は専業主婦か
事務職、専門職で転職は考えていない。健康で配偶者にもめぐまれ、社宅か一
戸建てに住む。所得や資産もしっかりあり…」というものだそうです(平成17
年11月18日付産経新聞大阪朝刊)。性格的には、「他の人の生活水準を意識し
ている人ほど、できるだけ質素な生活をしたいと考える人ほど、お金を貯める
ことが人生の目的だという人ほど、有意に不幸」で、「利他的な人は有意に幸
福」なのだとか。さて、読者のみなさまはいかがでしょう。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
—-[PR]————————————————————–
◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。 (厚生労働省)
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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