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□ キャリアデザインマガジン 第20号 平成17年7月4日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 私のキャリア観 江戸川大学社会学部助教授 小林至(2)
(福岡ソフトバンクホークス取締役・元千葉ロッテマリーンズ投手)
2 キャリア辞典「ディーセント・ワーク」
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆平成17年7月15日(金)の学会研究会(講師:脇坂明学習院大学教授)は、
定員に達しましたので受付を終了いたしました。
◆中央職業能力開発協会(JAVADA)会員セミナーが開催されます。
日本キャリアデザイン学会会員は無料で参加できます。
テーマ:「企業におけるキャリア・コンサルティングの普及について」
=== キャリア・コンサルティングに関する研究会報告を中心に ===
講 師:法政大学 キャリアデザイン学部 教授 桐村 晋次 氏
日 時:7月22日(金) 13:00~16:00
場 所:水道橋グランドホテル(東京都文京区)
参加費:一般 3,000円 セミナー会員、キャリアデザイン学会会員 無料
詳しい内容、申し込み方法はこちらをご覧下さい:
http://www.adds.javada.or.jp/magazine/2005/javada-seminar2005.html
(キャリアデザイン学会員の方は連絡事項欄に会員番号をご記入下さい)
◆日本キャリアデザイン学会大会を以下のとおり開催いたします。
日 時:10月1日(土)・2日(日)
場 所:お茶の水女子大学
※詳細は、追って学会ホームページでお知らせいたします。
http://www.cdi-j.jp/event.html
◆今後の研究会の予定は以下のとおりです。
日 時:11月5日(土)午後
講 師:松下電工株式会社ライフデザインセンター所長 村田充範
法政大学キャリアセンター教授 川喜多喬
※詳細は、追って学会ホームページでお知らせいたします。
http://www.cdi-j.jp/event.html
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1 私のキャリア観
「プロスポーツとキャリアデザイン(2)」(5回連載)
江戸川大学社会学部助教授 小林至
(福岡ソフトバンクホークス取締役・元千葉ロッテマリーンズ投手)
【第2回】プロ入りまでのキャリア
-----ただ、普通はプロになるような選手は野球で大学に入りますよね。
中学から高校に行くのとは違って、高校を卒業するときには、プロ入り、大学、
社会人と選択肢がありますが、これはどうやって決まるのでしょうか。
小林 いろいろな価値観があります。たとえば高校でプロから声がかかったと
して、将来チャンスがあるかどうかわからないから今チャレンジする、という
人もいるし、今プロ入りしても下位指名であまり期待もされず、試合にも出ら
れないだろうから、まずは大学や社会人に進んでさらに実力をつけてから、と
いう考え方もあります。これは本人が考えるというより、高校の監督とか、あ
るいはご両親とかが、身近にある前例を参考にしながら決めるケースが多いで
すね。
-----ちょっと意外というか当然というか、高校の通常の就職の進路指導
と案外似ていますね。担任や進路指導担当教諭の代わりに監督がそれをやる。
小林 そうかもしれませんね。大学行ってダメなら今プロに行ってもダメなん
だから大学に行っておけ、ということを言ったりする。プロは必ずしも高卒選
手を育てるのが上手いわけではないんです。大学や社会人からもいい選手が入
ってきますから、試合出場の機会も少ないし、毎年、新人が入ってくる中でじ
っくり鍛えて、ともなかなかいかない。高卒をていねいに育てるノウハウは大
学や社会人のほうがあるというのが球界の定説です。高卒でプロ入りして活躍
する選手というと、イチロー選手は1年目にウェスタンの首位打者、松井秀喜
選手だって1年めから一軍で試合に出ていました。ライオンズの松坂は一軍で
最多勝。このレベルの選手ならば大学に行くのは時間の無駄で、すぐにプロに
行くのがいい。しかし、そうでない選手の場合、埋もれたまま、退団というこ
とになりがちで、それならば大学に行っておけば将来、つぶしも利くだろうと
いうことになります。こうしたことをを周りがいろいろ考えて決まっていく。
考えるのは本人ではなく周囲のことが多い。もちろん、人脈やおカネもありま
す。
-----言葉は悪いですが、「裏金」といわれているものですね。値打ちの
あるものにおカネを払うことが必ずしも悪いかどうかはわからないですが。
小林 そう思います。プロだけではなく、大学進学でも奨学金という形で少な
からぬおカネが動いているといわれていますが、実力に対して相応のおカネを
払うのは当然だという価値観にしないとおかしくなると思います。ゴルフの宮
里選手にしても、プロになったとたんに契約金が何億円とかで、それでいいわ
けじゃないですか。それを変に制約したりするから、本人に堂々と払えずに周
囲にこっそり払ったりすることになりかねません。
-----高校生は未成年だからとか、高校野球は教育だからとかいう建前は
実態に合っていないということでしょうか。
小林 高校野球といったって、名門校の選手は高校の広告塔の役割を明確に担
っているわけで、プロみたいなものです。
-----小林先生ご自身の話に戻りますが、先生は高校を出て東大に入り、
野球部に入った。試合にも出ましたね。
小林 試合には2年生から出ました。まあ、史上最悪の70連敗を記録して、過
去の50連敗を大幅更新、しかもプラス20は私が4年の時ですから、肩身は狭か
ったですけれどね。当時戦った選手のなかには、さっき話の出たジャイアンツ
にいた大森選手、まだバファローズで活躍している水口選手、それから慶応で
六大学の最多勝利記録を作った志村投手などがいました。
-----それでは、プロとはほとんど無縁の東大が勝てるわけがない。
小林 客観的にみればそのとおりなんですが、自分たちは勝てると信じて頑張
っているのです。ところで、私がいたときはバブル最盛期だったこともあって
面白い現象がいくつかありました。六大学0勝の私がプロに行った一方で、六
大学で31勝した志村投手は、ジャイアンツがドラフト1位指名するといった
のに、それを蹴ってプロ入りしなかったんですよ。三井不動産に就職して、社
会人野球もやらずに野球から足を洗ってしまった。まあ、当時は日本のトップ
企業は世界のトップ企業ですごく元気でしたし、しかもバブルの時期の不動産
ですから、ジャイアンツにドラフト1位で入るより、サラリーマンとして出世
するほうが魅力的だと思ったのかもしれません。志村さんとは今でも親しくし
ているのですが、実に対照的な選択だったと思います。
-----面白いですね。
小林 今考えても、僕の実績でプロに入れたというのは本当に奇跡だったと思
います。普通ならプロにはなれないでしょうが、あちこちでどうしてもプロに
行きたい、ということを吹いていたら、いろいろなことがうまくつながって、
当時オリオンズの金田正一さんが、じゃあお前テストを受けて見ろ、というこ
とになって、拾ってもらえた。運や出会いの大切さを感じましたね。
-----たしかに、キャリアには運や出会いが大きくものをいうことがあり
ますね。しかし、テストでプロになる人というのも少数派なのでしょうね。
小林 少数派でしょうねえ(笑)。各球団ともテストはやっていますが、入団
するのは他球団を戦力外になった人が中心で、アマチュアがテストで入ること
は本当に少ないですね。しかも私の場合は留年してるんです。だから卒業する
までの間、オリオンズの練習生という形で置いてもらいました。そして、卒業
するときにドラフト8位で指名してもらって入ったんです。本当に恵まれてい
ましたね。逆に、プロに入ってしまったらそれだけで達成感があって、プロ入
りしてからはそれ以前ほどには必死に練習しなくなったのが悔やまれます。
-----社会人野球に進むということは考えられなかったのですか。
小林 いや、現実には社会人で野球をやれればそれでいいと思っていたのです
よ。本当にプロになれるとは思っていませんでしたし、3年くらいなら野球を
やらせてやろうという会社はいくつかあったんです。まあ、やらせてやる、と
いう感じですね。その後はちゃんと会社に残って仕事をしろよと。
-----なるほど、引退したあとが目当てで、野球はたいしてあてにしてい
ないわけですね。
小林 全然あてにしてないんですよ(笑)。ただ、ぼくはそんなつもりはなく
てあくまで野球をやりにいく、野球をやめたら会社もやめるかもしれない、と
いったら、ずいぶん採ってくれるという会社が減りましてね。(笑)
東大の選手を取ってくれる社会人野球チームは、その会社に東大野球部のOB
がけっこういるんですよ。野球を何年かやらせるから、その後は会社で頑張っ
てくれ、ということで、それを辞めてもらっては話が違うということです。社
会人野球の選手の多くがプロに入りたい希望を持っていますが、なかにはプロ
入りにはこだわらず、社会人野球で将来の安定を選ぶ人もいます。同志社大学
―日本生命の杉浦投手などがそうでした。ぼくの場合は先の人生のことはなに
も考えていませんでした。でも、僕がちょっと変わっていたのは認めますが、
日本中が「先のことは何とかなる」と思っていた時期だったという時代背景も
あるのかもしれません。(つづく)
(聞き手・文責:編集委員 荻野勝彦)
小林 至(こばやし いたる)
江戸川大学社会学部助教授、福岡ソフトバンク・ホークス取締役。元千葉ロッ
テ・マリーンズ投手。米コロンビア大学MBA。経営学専攻。主な著書に「ア
メリカ人はバカなのか」(2003、幻冬舎)、「合併、売却、新規参入。たかが
・・・されどプロ野球!」(2005、宝島社)など。
2.キャリア辞典
~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~
「ディーセント・ワーク」
「ディーセント・ワーク」ということばを知っている人の割合はどのくらい
なのだろうか?労働行政や労働研究、労働運動(たぶん)の関係者には広く知
られているものと思うが、企業の人事担当者となるとかなり心許ない。ちなみ
に、「日経テレコン21」で過去3年間の5大紙(読売・朝日・毎日・産経・日
経)の記事を検索すると、「ディーセント・ワーク」が出てくるのはわずかに
1回、それも毎日新聞論説委員で労働問題に強い山路憲夫氏のコラムだから、
いかに世間の注目を集めていないかがよくわかる。
これは、国際労働機関(ILO)のフアン・ソマヴィア事務局長が、1999年
に就任した際にILOの理念・活動目標として示したものです。ディーセント
というのは一般的には「きちんとした」というような意味なのだろうが、ディ
ーセント・ワークには手頃な訳語が見当たらなかったようで、そのままカタカ
ナ書きするのが定着している。ちなみに前出の記事で山路氏は「やさしく働け
る仕事」という(意?)訳をあてているが、これが適当かどうかは怪しい。む
しろ、1999年当初の「働く価値のある仕事」「適正な仕事」といった(結局は
定着しなかったが)訳語のほうが近そうだ。より具体的に「権利が保護され、
十分な収入を生み、適切な社会的保護が供与される生産的な仕事」といった注
釈が付されることもある。
ソマヴィア氏自身は、2000年に開催された日本ILO協会の50周年記念式典
における記念講演で「世界の人々が、今、最も望んでいるものは、基本的人権
に次いで、ディーセントな仕事ではないかという結論に到達しました。これは、
子どもに教育を受けさせ、家族を扶養することができ、30~35年ぐらい働いた
ら、老後の生活を営めるだけの年金などがもらえるような労働のことです」と
述べている。現在でも、ILOにとって最重要の課題が各国における労働基本
権の確立であり、生活保障賃金の確保であることには-残念ながら-変わりは
ないわけだが、それだけがILOの役割ではない、その先に新たな目標がある
のだ、と宣言したということなのだろう。
ILOによれば、その背後には「経済自由化政策は国、労働、企業の関係を
変え、雇用形態、労働市場、労使関係の変化は政労使に大きく影響し、グロー
バル化がもたらした繁栄と不平等は集団的社会責任の限界を露呈した。技術と
生産システムの変化は社会意識を変化させ、政治を監視する市場と世論の目が
厳しくなり、人間の安全保障と失業問題が政治課題のトップに復帰し、人間の
顔をしたグローバリゼーションを求める声が方々から聞こえてくるようになっ
た」という情勢認識があるという。そういえば、ソマヴィア氏がこれを打ち出
した1999年3月は、ちょうどアジア諸国が通貨危機とそれに続く経済混乱に見
舞われていた時期でもある。奥田碩日経連会長(当時)が「人間の顔をした市
場経済」と訴えていた時期とも重なる。それから6年を経た現在、ソマヴィア
氏は2期めの任期に入っているが、この「ディーセント・ワーク」は引き続き
ILOの活動の柱のひとつとして位置づけられている。残念ながら、状況はあ
まり改善されたとはいいがたい。
ILOはディーセント・ワークをあまねく普及させるための戦略として、
「労働の基本的原則と権利=人権と労働」「雇用(と収入)」「社会的保護
(と社会保障の強化)」「社会対話の強化」の4つを掲げた。ソマヴィア氏は
「開発の目的をディーセント・ワークの推進とするならば、開発は社会的な進
歩を統合したものと理解される必要が生じる」と述べている。
日本はどうだろうか。私には、戦後日本、あるいは現在の日本は、おそらく
はこの「開発の目的」を、国際的に見れば例外的なほどにうまく成功させたよ
うに思える。もちろん、さらなる改善の余地はあるが。
(編集委員 荻野勝彦)
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆労働政策研究・研修機構労働政策フォーラム・キャリアガイダンスツール
講習会「若者と向き合うキャリアガイダンス」
平成17年7月12日(火)10:00~15:00
於 女性と仕事の未来館4階ホール(東京都港区)
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20050712form.htm
◆東京大学社会科学研究所シンポジウム「希望学宣言!」
平成17年7月15日(金)14:00~17:00
於 東京ウィメンズプラザ ホール(東京都渋谷区)
http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/hope/declaration.html
[編集後記]
先日、中国に出張する機会に恵まれました。天津、北京、成都、上海を4日
間で回るハードスケジュール(仕事ですから文句はいえませんが)でしたが、
この大国でのビジネスの一端に触れる貴重な機会でした。ちなみにキャリアと
いう意味では、沿海部などの工業地帯では急速な開発にともなって現場の監督
者や中堅熟練工の不足が深刻、北京のホワイトカラーは好条件を求めての転職
が多く各企業は定着に頭を悩ませているのだとか。これも日本がいつか来た道、
だったのでしょうか?(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.cdi-j.jp/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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