■□□—————————————————————-
□□
□ キャリアデザインマガジン 第167号 2023年8月20日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
——————————————————————□■
「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでご覧ください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 学会からのお知らせ
2 キャリア辞典 「エンゲイジメント/エンゲージメント(engagement)」
3 私が読んだキャリアの1冊
『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』
海老原嗣生著
4 キャリアイベント情報等
———————————————————————-
1 学会からのお知らせ
◆第19回 研究大会 (申込期限:8月27日)
テーマ : 「地域発!暮らし方のシフトチェンジ:根ざす・越える・繋げる」
開催日時:2023年9月2日(土)・3日(日)
開催方法: 九州産業大学(ハイフレックス形式)
【詳細】
・既に100名を超える方に参加お申し込みをいただいています。
・1日目のお昼休みに、九州産業大学キャリア支援センターの皆様に、
開催校紹介企画をご準備していただくことになりました。
こちらも、昼食を取りながら是非ご参加ください。
・新型コロナの流行等により変化したのは働き方だけではありません。
第19回大会では、第18回大会で取り上げた「働き方」からもう一段
視野を広げ、「暮らし方」について、「地域」というキーワードを元に考
えていきます。
・特別講演ならびにシンポジウムでは、多様性と柔軟性
高まる暮らし方により展望される、地域の在り方、地域との関わり方に
ついて、多角的に議論を進めていきます。
・今大会は、ハイフレックスでの開催となります。九州産業大学大学に
て直接、またオンラインにて多くの皆様にお会いできますことを楽し
みにしております。
大会1日目午後
〇特別講演およびシンポジウム
テーマ:「地域発!暮らし方のシフトチェンジ-根ざす、越える、繋げる」
多様性と柔軟性高まる暮らし方により展望される、地域の在り方、
地域との関わり方について、特別講演とシンポジウムを通じて多角的に議論を進めていきます。
〇特別講演
司会:小田部貴子(九州産業大学基礎教育センター 講師)
登壇者:遠矢弘毅(株式会社北九州家守舎 代表取締役)
〇シンポジウム
司会・コーディネーター:石山恒貴(法政大学大学院政策創造研究科 教授)
パネリスト ※50音順
大谷直紀(合同会社こっから 代表社員)
小田淳史(福徳長酒類株式会社 久留米工場)
遠矢弘毅(株式会社北九州家守舎 代表取締役)
申込期限:8月27日
参加費:会員5,000円/非会員8,000円
今大会は当日の参加申し込みを受け付けておりません。
期日までの参加申し込みをお願いいたします。
詳細:https://career-design.org/conference/nationwidetokyo019/
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◆2023年 第4回キャリアデザインライブ!報告
報告者:吉見弓子(京都美術工芸大学)
テーマ:「不登校児母親のコミュニケーションスキル支援事業としての社会的起業
-当事者の問題意識からNPO活動の展開へ-」
2023年第4回キャリアデザインライブが7月22日(土)公益財団法人関西生産性本部
において関西支部との共催にて開催されました。
今回は臨床心理士、公認心理師として活動されながら
NPO法人ファミリーコミュニケーション・ラボ代表として不登校児の母親をサポート
する取り組みを実践されている谷田ひとみさんを講師にお迎し、ご自身の子どもさん
の不登校をきっかけにはじめられた「学習型親の会」ピアサポートクラブの活動内容
やそこで感じておられる不登校児を取り巻く課題、これからの活動などについてお話
を伺いました。
2008年にSNS mixiで出会った4名の母親から始まった活動が、傾聴勉強会の継続や
全国大会の実現を経て、現在では全国に350名の会員が所属するNPO法人となり、
2023年大阪市の市民活動表彰を受けるまでの活動になるまでに広がりを見せているの
は、「三次予防」「子ども達の未来を大丈夫にするために」という目的を軸に柔軟に
サービス提供されている支援が、本当に母親達に必要とされているものであるからこ
そであると感じました。
また、講演後のディスカッションでは、会場14名、オンライン14名、合計28名の多様
なメンバーでの議論がなされ、不登校児童の対応に介護休業制度の利用が可能か、企業
においてそのような事例があるかという話題では、これからの働き方や企業の従業員へ
の対応について、また、不登校児のキャリアのみならず母親のキャリアへの影響の検討
も必要であるという議論がなされ、谷田代表の「不登校のその後」という現実を多くの
人に知ってもらいたいという思いは、
不登校の課題解決には、今後一層、教育分野、心理分野、福祉分野を超えた社会学や
経営学などとの連携が必要であることを認識させられる有意義な時間となりました。
◆第5回企業人交流会(23年7月29日)参加報告
報告者:乾喜一郎(学会員/リクルート進学総研)
「はじめまして、私は…」。名刺交換のたびに交わされる言葉。
そう、皆さん、「はじめまして」のはずなのです。なのになぜ、こんなに「安心安全な
場」であると感じられるのでしょう?
ここは東京・赤坂のとあるお店。7月29日の夕刻より開始された「第5回企業人交流会
企業におけるアフターコロナの現状を語ろう!」に集まったのは20名ほどの企業人。
多くの方が初対面どうしであり、所属業界も違えば、企業規模も職種も職位も年齢も
異なっています。
しかしここには、ひとの話をさえぎって大声で持論をがなりたてる者も、
自社の価値観をふりかざして否定の言葉を繰り返す者もいません。
途中で席替えをしながら各所で繰り広げられる会話からは、誰もが聞く技術と、
自らが持つ知見を惜しまず提供しようとする姿勢を持っていることが感じられます。
さらに、皆、「働き方」や「キャリア支援」に関心を持ち、継続的に学習している人
ばかり。シャインやクランボルツといった名前だって、説明なしに使うことができて
しまいます。
コロナ5類移行後、たしかにリアルでの他者との語りの機会は増えてきましたが、
ここまで心地よく、また刺激のある場に身をおくことができたのは本当に久しぶりで
した。私はリカレント教育やリスキリングなど社会人学習の推進を専門としていますが、
まさにこの場の雰囲気こそ、学びの場の心地よさだと思います。でも、それを知り、
日常的に学ぶ社会人は決して多数派ではなく、むしろマイノリティ。
一人でも多くの人にこのような場を味わってほしい、そのために明日からもがんばろう。
そんなふうに感じさせられた夜でした(読むべき本も何冊も教えていただきましたし、ね)。
最後に、松岡さんをはじめ、このようなすばらしい場を用意していただいた運営の皆さんに
お礼申し上げたく思います。ほんとうにありがとうございました。
◆学会ウェブサイト(http://www.career-design.org/)、フェイスブック
(https://www.facebook.com/careerdesigngakkai)随時更新中です。
ぜひご一読ください。
———————————————————————-
2 キャリア辞典
エンゲイジメント/エンゲージメント(engagement)
近年、「エンゲイジメント」という言葉が注目されている。エンゲイジメントは
約束、契約、婚約などを意味する言葉であるが、1990年代に学術的な領域と経営・
人事領域で用いられるようになった。Kahn(1990) は、「パーソナル・エンゲイ
ジメント」という名称を用いて、「組織構成員の自己と「仕事上の役割」との結び
つきの度合い」と定義し、こうした状態にある従業員は、自身と仕事を同⼀化し、
それゆえ多大な労力を注ぐと指摘した。パーソナル・エンゲイジメントという概念
は、従業員エンゲイジメント(employee engagement) という概念に発展する。
<従業員エンゲイジメント>
従業員エンゲイジメントという言葉は、1990年代に米国の世論調査・コンサルタ
ントを手掛けるギャラップ社によって初めて使用されたとされているが、人事領域
の実務の世界で広く用いられ、従業員エンゲイジメントが向上すれば従業員の生産
性も向上すると喧伝されることになる。
従業員エンゲイジメントについては、様々な定義があるが、共通要素として、
(1)組織に対するコミットメント(組織に対する情動的愛着や組織にとどまっていた
いという願望)と(2)役割外行動(組織が効果的に機能できるようにする任意の行動)
の2点が挙げられるとされている。ギャロップ社は、従業員エンゲイジメントを
「組織に対して強い愛着を持ち、仕事に熱意を持っている状態」としている。
同社の調査(2017年)では、日本企業のエンゲイジメントは世界各国と比較して
著しく低く、調査対象139カ国中132位という結果となっている。世界有数の組織人事
のコンサルティング会社であるウィリス・タワーズワトソン社は、従業員エンゲイジ
メントを「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自
発的に貢献しようという意識を持っていること」を指すとし、組織の目指すゴールに
対する「自発的貢献意欲」を意味しているとしている。そして従業員エンゲイジメン
トに必要な3つの要素として、(1)理解度:組織の目指す方向性を理解し、それが正し
いと信じている、(2)共感度:組織に対して、帰属意識や誇り、愛着の気持ちを持って
いる、(3)行動意欲:組織の成功のために、求められる以上のことを進んでやろうとす
る意欲がある、を挙げている。
同社の調査では、従業員エンゲイジメントの高い企業は低い企業の約1.5倍も営業利
益率が高いという結果が示されている。現在提唱されている人的資本経営では、人材
戦略の具体的な5つの共通要素の一つとして、従業員エンゲイジメントが挙げられてお
り、今後ますます従業員エンゲイジメントが注目されることが予測される。
<ワーク・エンゲイジメント>
従業員エンゲイジメントは、組織コミットメント、役割外行動などの既存の概念と類
似しており、「古いワインを新しいボトルに詰めたもの」という批判もある(Macey and
Schneider,2008 )。この批判を乗り越えるために学術的な領域で定義された概念がワーク
・エンゲイジメントである。従業員エンゲイジメントが「組織」に関連した情動、認知、
行動についての概念であるのに対して、ワーク・エンゲイジメントは「仕事上の役割、
あるいは仕事自体」に関連した情動、認知、行動についての概念であると言える。ワーク
・エンゲイジメントは、仕事が複雑化しストレスが増大する社会環境において、バーンア
ウト(燃え尽き)の反対概念として提唱されたものである。
オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli教授らは、ワーク・エンゲイジメントを「仕事
に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭などによって特徴づ
けられ、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」とし、ワーク・エンゲ
イジメントの高い従業員は、活力にあふれ、仕事に積極的に関与するという特徴を持つと
している。「活力」は、身体的に精神的にもエネルギッシュであり、ストレスからの回復
力があり、疲弊しにくく、粘り強いなどの特徴がある状態を指す。「熱意」は、仕事に対
する高いコミットメント、誇り、有意味感などを自覚している状況を指す。「没頭」は、
仕事に集中してのめり込んでいる状態を指す。ワーク・エンゲイジメントは、離職意図や
欠勤頻度の低下、組織コミットメントの促進、仕事のパフォーマンスの向上など仕事や組
織に対するポジティブな関連があること、身体的・精神的健康と正の相関があることがこ
れまでの研究で明らかになっている。
一方、ワーク・エンゲイジメントを高める要因として、自己効力感、自尊心、楽観性、
レジリエンスなどの個人の資源と仕事の裁量権、仕事の意義、上司・同僚の支援などの仕
事の資源が挙げられている。なお、国際比較をすると日本のワーク・エンゲイジメントは
他国に比べ低い状況にあることが示されているが、ポジティブな態度や感情の表出は、各
国の文化等にも影響が受ける可能性があることが指摘されており、それを踏まえて解釈を
することが重要とされている。
(編集委員 堀内泰利)
———————————————————————-
3 私が読んだキャリアの一冊
『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』
海老原嗣生著 星海社 2017.4.26
本書はリクルートグループで20年以上の雇用の現場を見てきた経験があり、サッチモ代表
取締役、政府労働政策審議会人材開発分科会委員、中央大学大学院戦略経営研究科客員教授、
大正大学表現学部特命教授である海老原嗣生氏の著書である。海老原氏は『エンゼルバンク-
ドラゴン桜外伝-』(「モーニング」連載、テレビ朝日系でドラマ化)の主人公、海老沢康生
のモデルでもある。内容は「夢はあきらめると、けっこうかなう」という一見矛盾した結論
をキャリア論の古典である「グランボルツ理論」について解説している。グランボルツの計
画的偶発性理論はキャリアを学ぶ方へのバイブルと言える理論である。その理論を誰もが知
る有名人のキャリアや、名経営者の至言、歴史上の人物の足跡などをまじえ、わかりやすく
まとめられている。
本書の構成は5章から成り立っている。第1章では「夢はいつだってまた見つかる」とある。
「夢はかなわない」という論調があるが、夢は日々変化している。また夢の多くは偶然の出会
いから生まれている。そしてキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されている。
そこで夢の種が手に入る5つの習慣について述べられている。ここでグランボルツは5つの条件
を示している。好奇心を持つこと(好奇心)、飽きずに続けること(持続性)、他人の意見も
聞くこと(柔軟性)、くよくよし過ぎないこと(楽観性)、失敗を恐れないこと(冒険心)で
ある。
第2章では「夢はけっこうかなう、という事実」とある。誰もが認める売れっ子芸人のたち
の才能レベルの例があり、成功は運ではなく、持続であると述べられている。第3章は「仕事で
の成功は難しくない」。どの仕事でも2~3割が成功を収め、その「仕事」という勝負の賭け金
は「一生懸命頑張る」ことと述べられている。第4章では「夢の代謝サイクル」である。夢の生
煮えはやっかいとあり、夢はチャレンジしなければ葬ることができない。その結果、夢は終わり、
次の夢へ進めるとされる。つまり夢は消化しない限り、次の夢には行けない。よって新陳代謝を
促す必要があると述べられている。
第5章は「5条件取り扱い上の注意」。「冒険心」「楽観性」「好奇心」の過剰を「戒める役割」
として「柔軟性」がある。周囲の意見に「柔軟」に耳を向ければ、「冒険心」「楽観性」「好奇
心」の過剰で起きがちな、無謀な行動は戒められるとする。この判断基準となりうるのが「相手
が与えてくれた無謀な機会」であると述べられている。そして著者は「楽観的に構想し、悲観的
に計画し、楽観的に実行しろ」と述べている。
私が本書を読んで印象的なフレーズは「夢はかなわない」ではなく、「賭け金を払い、代謝し
ろ」である。グランボルツの計画的偶発性理論は3幕で構成され、1つ、夢はまた見つかる、2つ、
夢はけっこうかなう、3つ、だからきちんと代謝すべしとある。ここでは夢を消化しなさい、
と述べられている。今、夢に描いていることにチャンレンしているのか?そのチャンレンジの
結果、停滞していないか?と問われている様でだった。この暑い8月に今の自分の夢点検をする
意味で本書を手に取っていただくのはいかがだろうか。是非ご検討ください。
(編集委員 高橋基樹)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
———————————————————————
4 キャリアイベント情報等
◆セミナー「どうする現場の安全管理」/大原記念労働科学研究所
主 催 大原記念労働科学研究所
日 時 8月28日(月)
方 式 オンラインセミナー
参加費 無料(要事前申し込み:https://www.isl.or.jp/service/seminar/2023.php)
詳 細 https://www.isl.or.jp/service/seminar/file/seminar202308.pdf
◆シンポジウム「ベトナムの最新の労働事情とこれからの人材戦略」/海外産業人材育成協会
主 催 海外産業人材育成協会
日 時 8月30日(水)
場 所 東京・足立区
詳 細 https://www.aots.jp/hrd/ibe/employment/report20230830/
———————————————————————-
【編集後記】
本文の報告にもあるように、去る7月29日夕方、第5回企業人交流会が3年ぶり
に開催され、約20人の実務家が参加しました。自分の経験から言うと、人事・総務
の実務家は、社内人事に携わるだけになかなか自分の本音を社内では言いにくいの
ではと思っていますが、こうした場でミクロの課題から人的資本経営の実務課題
まで、幅広く、気軽に意見交換できるのは、とても良いなあ、との感想を持ちました。
広報委員会は主催者側として準備から当日運営までを担当。有意義な「場」になった
と思います。(s)
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
□□■—————————————————————-
□
日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。
【日本キャリアデザイン学会広報委員会】
石川 了 労務行政研究所(株式会社労務行政)
内田勝久 富士電機株式会社
荻野勝彦 トヨタ自動車株式会社
梶田マリ
小室銘子 株式会社パーソル総合研究所
高橋基樹 日本無線株式会社
平野恵子 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
堀内泰利 慶應義塾大学
松岡 猛 NECライフキャリア株式会社
山野晴雄 元・桜華女学院(現・日本体育大学桜華)高等学校
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@career-design.org
〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
三鷹ビジネスパーク1号館
—————————————————————-□□■