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□ キャリアデザインマガジン 第165号 2023年4月20日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 学会からのお知らせ
2 キャリア辞典 「職業生活」
3 私が読んだキャリアの1冊
『早期退職時代のサバイバル術』小林祐児著
4 キャリアイベント情報等
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1 学会からのお知らせ
◆第19回研究大会
第19回研究大会は、「地域発!暮らし方のシフトチェンジ:
根ざす・越える・繋げる」を大会テーマとして、9月2日(土)・3日(日)
に開催いたします。今大会は、九州産業大学を会場として4年ぶりの
対面での開催を中心に、オンラインも含めたハイフレックスでの開催となります。
大会に関する詳細な情報は、学会HPにてお知らせします。
HPは随時更新いたしますので、是非ご覧ください。
(1)日 時 2023年9月2日(土)・3日(日)
(2)会 場 九州産業大学(ハイフレックス開催)
(3)大会テーマ 「地域発!暮らし方のシフトチェンジ:根ざす・越える・繋げる」
第19回大会では、第18回大会で取り上げた「働き方」からもう一段視野を広げ、
「暮らし方」について、「地域」というキーワードを元に考えていきます。
大会初日の特別講演・シンポジウムでは、大会統一テーマである
「地域発!暮らし方のシフトチェンジ-根ざす、越える、繋げる」について議論を
深める時間にして参ります。特別講演では、今大会主催校である九州産業大学で
オープンイノベーションセンター シニア・インキュベーションマネジャーを務められる
遠矢弘毅氏(株式会社北九州家守舎 代表取締役)にご登壇いただきます。
続くシンポジウムでは、遠矢氏のほか、福岡県糸島市を拠点にコミュニティスペース、
人材育成プログラムの運営、地域での本屋活動を取り組まれている大谷直紀氏
(合同会社こっから代表社員)、九州産業大学のご卒業生であり、博多の華など
九州を代表する酒類生産に携わられている小田淳史氏(福徳長酒類株式会社久留米工場)
をお招きし、地域との関わりや他の地域との繋がりにより生じた暮らし方の変化について
議論を深めます。
本特別講演、シンポジウムを通じて、第18回シンポジウムで検討された
「人が集まる、離れる意味を問い直す」の内容をより発展させ、地域に『根差す』暮らし方、
地域を『越える』暮らし方、そして他の地域と『繋がる』暮らし方について皆様と共に考える
時間にして参ります。
今大会は、ハイフレックスでの開催となります。九州産業大学大学にて、
またオンラインにて多くの皆様にお会いできますことを楽しみにしております。
(4)参加費 会員5,000円/非会員8,000円
◆自由研究発表の募集について
大会に際して自由研究発表の募集中です。
募集の締め切りは、2023年5月7日(日)です(締め切り厳守)。
なお、第19回大会はハイフレックスでの開催となりますが、自由研究発表をされる方は、
九州産業大学にお越しいただき、対面での発表が必須となります
(オンライン上での発表はできません)。
予め、ご了承ください。皆様の申し込みをお待ちしております。
詳細に関しましては学会HPをご覧ください。
◆学会ウェブサイト(http://www.career-design.org/)、フェイスブック
(https://www.facebook.com/careerdesigngakkai)随時更新中です。
ぜひご一読ください。
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2 キャリア辞典
職業生活
デジタル庁が提供している法令データベースサービス「e-Gov」を使って、
「キャリア」という言葉をキーワードにして法律を検索してみると、法律名に
「キャリア」を含むものはないことがわかる。条文の中に含まれる法律は、6件
ヒットした(これとは別に工業用語としての「キャリア」を含む法律がひとつ
ある)。現状、全部で2102本の法律が登録されているのに対して、ずいぶん少
ないように感じないだろうか。昨今、キャリアが政策的にも重点課題の一つと
なっていることを考えればなおさらだ。
これには理由があり、実はこれらの法律で登場する「キャリア」はすべて、
キャリアコンサルタントまたはキャリアコンサルティングについて定めたもの
なのだ。それでは、私たちが通常使っている意味での「キャリア」はどのよう
に表現されているのか。実はそれが「職業生活」だ。古くは1969年の職業訓練
法(現:職業能力開発促進法、能開法)に「職業生活」の語が見えるが、増え
てきたのは2001年の雇用対策法と能開法の改正以来であるという。雇用維持か
ら労働移動促進へと政策の転換が進む中、キャリア関連の法整備がなされたも
のだ。
実際、「e-Gov」で「職業生活」を検索してみると、法律名にそれを含むもの
がすでに2本ある。労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業
生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)という長い名前の法律と、
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)だ。前者は
数年前にパワハラに関する規定が追加されたことでパワハラ防止法などとも言わ
れているようだが、これは以前は雇用対策法という法律で、雇用政策の基本法で
ある。そこに「職業生活」の語が含まれていることには大きな意義があるといえ
そうだ。
後者については、単に女性の活躍とのみ言ってしまうと以前から女性は家庭や
地域の分野では大活躍していたわけだから、それらではない「職業生活」におけ
る活躍を推進するのだということを法律名に明示することは必須だっただろう。
さらに、条文の中に「職業生活」を含む法律となると、その数は一気に51件に跳
ね上がる。全2102本の2.4%であり、かなりの占拠率といえそうだ。
ここで、具体的な条文を一つ見てみよう。労働施策総合推進法の第一条はこの
法律の目的として「この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経
済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策
を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様
な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進し
て、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通
じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及
び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。」と定めている。
非常に意欲的な内容で結果として長文になっているが、注目してほしいのは
「職業生活の充実」という部分だ。私たちは普通、キャリアといえばcareer
divelopmentであり、「発達」ないし「開発」するものだと思っていないだろう
か。ところが法律ではそうではないようで、「職業生活の発達」や「職業生活の
開発」で検索してみても1件もヒットしない。それに対して、ここで見た「職業
生活の充実」は労働政策総合推進法の法律名にも含まれているし、条文にこれを
含む法律は同法を含め37件ある。法政策的には開発、発達より充実のほうが適合
するのだろうか。
ちなみに「職業生活」以外の「〇〇生活の充実」が条文に出てくる法律は一昨
年成立したデジタル社会形成基本法(地域生活の充実)と昨年成立したこども基
本法(家庭生活の充実)だけしかない(なお後者は「職業生活及び家庭生活の充
実」と併記されていて職業にとどまらない広義のキャリアに該当するようだ)。
もちろん職業キャリアの充実は望ましいことであり政策目的としても適切だろう
が、表現の面では少し不思議な感は残る。なお余談にわたるが「職業能力の開発」
は24本、「職業能力開発」に至っては199本に上っており、法律的には開発するの
はキャリアより職業能力であるらしい(もっとも後者が多数に上るのは職業能力
開発促進法という法律名が随所で頻出するためと思われるが)。
さて、われらが「キャリアデザイン」はどうだろう。実はこちらには「職業生活
設計」という語があてられている(まずまず直訳である)。登場回数はぐっと減っ
て「職業生活の設計」が4本、「職業生活設計」が2本の計6本だが、こちらは能開法
で明確に定義が与えられていて、「この法律において「職業生活設計」とは、労働
者が、自らその長期にわたる職業生活における職業に関する目的を定めるとともに、
その目的の実現を図るため、その適性、職業経験その他の実情に応じ、職業の選択、
職業能力の開発及び向上のための取組その他の事項について自ら計画することをい
う。」とされている(第二条4項)。
「この法律において」なので能力開発が強調されている感はあるが、全体にキャ
リア開発と親和性の高い内容といえそうだ。労働施策総合推進法の第三条では法の
基本的理念(すなわち雇用政策の基本理念)として「労働者は、その職業生活の設
計が適切に行われ、並びにその設計に即した能力の開発及び向上並びに転職に当た
つての円滑な再就職の促進その他の措置が効果的に実施されることにより、職業生
活の全期間を通じて、その職業の安定が図られるように配慮されるものとする。」
と定められており、キャリアデザインの適切な実施が政策的配慮の対象として明確
化されている。
さらに2015年の働き方改革では、能開法では「労働者は、職業生活設計を行い、
その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるものとする」
(第三条の三)、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する
法律(同一労同一賃金推進法)では「労働者は、職業生活設計を行うことの重要性
について理解を深めるとともに、主体的にこれを行うよう努めるものとする。」
(第三条3項)と、労働者にもキャリアデザインに努めることを法的に求めるよう
になった。その重要性は政策的にも高まっていることが伺われる。
(編集委員 荻野勝彦)
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3 私が読んだキャリアの一冊
『早期退職時代のサバイバル術』
小林祐児著 幻冬社 2022.3.30
「早期退職」。社会人になってしばらくは遠い存在だった。しかし徐々に私自身が
年齢を重ねていき、やがて身近な友人にも早期退職する人が出てきたりして、ようや
くリアリティをもって考えられるようになってきた。しかし定年はどんどん延長され
ていく様相だ。長く働いて欲しいのか、早く辞めて欲しいのか、戸惑う方も多いので
はないだろうか。今日は、そんなことを考えていた時に出会った本をご紹介したい。
本書は全9章で構成されており、最初に中高年男性が抱えがちな4つの問題について
取り上げる。ここではキャリア自律が求められる世の中で、自分の価値を考えた結果、
市場価値が低いほど会社に残ろうとする、という事実が浮き彫りにされる。一方で、
市場価値が高いほど転職しやすいことも示されており、なんとも微妙な気持ちへと促
される。
第2章では、70歳まで働くことが求められつつある世の中において、年功序列や役職
定年といった仕組みが、どのような影響を及ぼしているのかを説明する。ここでは
「マネジメントにおけるアンコンシャス・バイアス測定調査(パーソル総合研究所)」
も紹介されており、部下が高齢になるほど人事評価が低くなることが示されている。
中高年層が、いかに厳しい環境に置かれているかが窺える内容だ。
第3章では、会社主導の異動や年功序列を原因としたミドル期のモチベーションの欠如
を解説し、構造的な課題を明らかにする。続く第4章では、「居場所のなさ」を、第5章
では人との交流が質的にも量的にも減少する、といった、日本の中年男性が抱えやすい
問題に触れていく。
ここからは将来を見据えた話題に転換していく。第6章では、「変化適応力」を身に
つけることの重要性について説明がされ、同時に変化適応力が高い人こそ、パフォーマ
ンスを出しているという分析結果も提示する。また、年齢が上がるほど、活躍の見込み
よりも変化適応力の方が求められることや、変化適応力が高いほど、定年再雇用後の仕
事の満足度が高いなど、いかに重要な能力かが示される。
第7章では、「企業はどうすれば良いか」をテーマにして、社員の意志と仕事をマッチ
ングさせる「社内の流動性確保」や、それを促進する対話の重要性を説いている。続く
第8章では、中高年の4つの強みと、活躍する因子となる行動特性(P E D A L)を紹介
し、その実践を推奨している。
最終章となる第9章では、転職について言及する。転職するためのポイントのみなら
ず、「後悔する転職」についても触れていく。また転職後のアンラーニングや職場外
(サード・プレイス)での活動など、視野の拡大の重要性も記されている。
最後になるが、これは中高年だけではなく、幅広い世代の方にお勧めしたい。当事者
になる前の心構えとして活用できることはもちろん、より広い視野から世の中の構造と
キャリアの複雑な関係性が分かりやすく紐解かれていると考える。
(編集委員 梶田マリ)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
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4 キャリアイベント情報等
◆労働セミナー「働くときのルール『労働契約』ポイント解説」
主 催 東京都労働相談情報センター
日 時 2023年4月25、27日
方 式 オンライン開催
参加費 無料(定員75名)
詳 細 https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/seminarform/index/detail?kanri_bango=seminar-zchuo-001314
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【編集後記】
本号の記事を編集している最中に、和歌山県で選挙の応援演説に訪れていた
岸田総理大臣を狙ったとみられる爆発事件が起きた。昨年7月の安倍元総理大臣
の暗殺事件が起きてから、まだ1年も経過していない中での事件。NHK以外、
マスコミの報道も遅かったが、再び平和な雰囲気が戻った中での出来事だった。
幸い大きな被害は出なかったようだが、このような一方的な「力による現状の
変更」、いわゆるテロや暴力は、例えどんな事情があろうとも絶対にあってはな
らない。それは大国が隣国を侵略する行為も同様で、民主主義の根幹を揺るがす
ものだ。そして、こうした行為は、個々人の生活やキャリアの将来を奪ってしま
う。断じて許されるものではない。(s)
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。
【日本キャリアデザイン学会広報委員会】
石川 了 労務行政研究所(株式会社労務行政)
内田勝久 富士電機株式会社
荻野勝彦 トヨタ自動車株式会社
梶田マリ
小室銘子 株式会社パーソル総合研究所
高橋基樹 日本無線株式会社
平野恵子 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
堀内泰利 慶應義塾大学
松岡 猛 NECライフキャリア株式会社
松原光代 近畿大学
山野晴雄 元・桜華女学院(現・日本体育大学桜華)高等学校
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@career-design.org
〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
三鷹ビジネスパーク1号館
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