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□ キャリアデザインマガジン 第153号 2021年4月21日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 学会からのお知らせ
2 キャリア辞典 「企業行動憲章(1)」
3 私が読んだキャリアの1冊
『統計で考える働き方の未来-高齢者が働き続ける国へ』
坂本貴志著
4 キャリアイベント情報等
5 学会活動ニュース
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1 学会からのお知らせ
◆第17回研究大会自由研究発表の募集について
第17回研究大会は、「不測の事態への対応とキャリアデザイン―研究と実践
の統合を通じて」を大会テーマとして、9月11日(土)・12日(日)にオンライ
ン大会として開催いたします。詳細に関しましては学会HPをご覧ください。
現在、研究大会における自由研究発表の募集を行っております。
発表種別は「研究報告」「実践報告」、発表区分は「キャリアデザン学」
「キャリア教育」「企業内キャリア」「労働市場とキャリア」
「多様なキャリアデザイン」「支援者のキャリア」「その他」です。
2021年5月6日締め切りとなっておりますので、遅れることのないように
お願いいたします。
なお、大会に関する情報につきましては、随時HPを更新いたします。
◆2021年度奨励研究について
本学会では研究助成事業規程に基づいて、若手研究者等の研究を奨励し支援
するための助成事業の一貫として、「奨励研究」として研究助成をさせてい
ただいております。
奨励金は、1件につき20万円以内、上限3件で、今年度は5月6日まで申請を
受け付けております。
応募資格は「大学院生」もしくは「研究を目的とする機関に正規雇用の研究
者として所属している者以外の者」で、以下のいずれかに該当しない方です。
a.応募時点において本学会以外の機関から研究費の助成を受けている者
b.過去2年間に本事業に応募し、奨励研究として採択された者
なお、詳細に関しましては学会HPをご覧ください。
◆学会ウェブサイト(http://www.career-design.org/)、フェイスブック
(https://www.facebook.com/careerdesigngakkai)随時更新中です。
ぜひご一読ください。
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2 キャリア辞典
「企業行動憲章(1)」
日本経団連が、2017年に改定した企業行動憲章。これは、企業の責任ある行動原
則を定めている。豊かで活力ある社会の実現には、公正かつ自由な市場経済の下で、
企業が健全な競争を通じて付加価値を創出、適正な利益を享受し、ステークホルダ
ーに還元していくことが重要である。同時に、企業、そしてそのサプライチェーン
を含めた人々が高い倫理観と責任感を持って行動し、社会から信頼と共感を得るこ
とができなければ、企業の成長基盤である世界の市場、そして経済そのものの存立
が危機に直面する可能性がある。
その起点は、1973年の日本経団連・総会決議「福祉社会を支える経済とわれわれ
の責任」に遡る。1991 年、行動原則「経団連企業行動憲章」を制定し、企業の社会
的責任への取り組みを会員企業とともに推進。1996年には日本企業の海外進出や自然
保護・社会貢献への取り組み推進に向けて改定するとともに、憲章の精神を具体的に
実践する方法を例示した「企業行動憲章 実行の手引き」を策定。2002年には、経済
団体連合会と日本経営者団体連盟の合併に伴い、名称を「企業行動憲章」と改めると
ともに、法令遵守の徹底や不祥事に対する経営トップが果たすべき役割・責任の明確
化のために改定した。その後、企業のグローバル化や情報化社会の進展、「ISO26000
(組織の社会的責任に関する国際規格)」などの国際ルール・規範の尊重への対応な
ど時代の変化に応じ、過去5回の改定を行っている。
企業行動憲章のルーツ
高度経済成長を経て、バブル崩壊後を契機に、企業の行動が内外に多大な影響を与
えることが改めて認識されだした。そもそも企業は、自らの行動に極めて重大な責任
を有している。それだけに、当時の証券・金融業界の一連の難局後、企業は、ステー
クホルダーに信頼され、国際的にも通用する企業行動の確立が求められていた。とり
わけ企業行動の展開における経営トップの役割の重大さが改めて認識され、その自省
・自戒とともに自社の高いモラルの維持に対するリーダーシップの発揮が、強く望ま
れていた。
企業と消費者・生活者との共生の必要性、企業にあっては個人の尊重、株主の権利
への配慮、さらには国際化の進展といった企業を取り巻く社会環境の変化とともに、
社会が企業に求める役割も変化している。企業は、公正な競争を通じて適正な利益を
追求するという経済的存在であることと同時に、人間が豊かに生活していくために奉
仕する、広く社会全体にとって有用な存在であることが求められている。そのために
企業は単に法を遵守するにとどまらず社会的良識を持って行動しなければならない。
企業の構成員は消費者・生活者としても社会と関わりを持っており、企業は社会の一
員として社会の理解と信頼をより確かなものにしなければならない。
こうした観点から、改めて商慣行と自らの行動を厳しく見直す必要を示した。「日
本企業の商慣行は閉鎖的かつ不透明である」との批判に根拠を与えることなく、自由
・透明・公正な市場の実現に努め、国の経済システムに対する国際的な信頼を確立す
ることこそ喫緊の課題。特に留意すべきことは、「企業行動の原理が社会の意識と乖
離し、外部からわかりにくいものとなっている」との批判がなされている点。こうし
た批判に応え、企業としても自己規律のあり方が外部からも見える形にする努力を払
うなど、3つの柱にした行動憲章を制定した。
経団連企業行動憲章(1991年)
1.企業の社会的役割を果たす7原則
(1) 社会的に有用な優れた財・サービスの提供に努める。
(2) 社員のゆとりと豊かさの実現に努め、社員の人間性を尊重する。
(3) 環境保全に配慮した企業活動を行う。
(4) フィランスロピー活動等を通じて積極的に社会貢献に努める。
(5) 事業活動を通じて地域社会の福祉の向上に努める。
(6) 社会の秩序や安全に悪形響を与える団体の活動に関わるなど、社会的常識に反す
る行為は、断固として行わない。
(7) 広報・広聴活劾等を通じて常に消費者・生活者とのコミュニケーションを図り、
企業の行動原理が社会的常識と整合するよう努める。
2.公正なルールを守る5原則
(1) すべての法令およびその精神を遵守する。
とりわけ自由市場経済の基本ルールである独禁法の趣旨を社内に徹底し、独禁法遵守
プログラムを作成する。また、社員が事業活動上の法律的疑問点について助言を得ら
れる体制を整える。
(2) 企業行動全般を公正かつ透明なものとする。
違法な行動はもちろん、経済的合理性を欠く過当な競争あるいは不当な手段による利
益の追求や、国際的に説明のできないような不透明な行動をしない。
(3) 自己責任原則を徹底する。
公正・透明・自由な競争を通じ、ビジネス機会を開拓する際の市場行動の結果は各経
済主体の利益・損失に公正に反映されるべきであり、自らが負うべきリスクや損失は
他者に転嫁しない。
また、いやしくも行政との癒着という誤解を招かないよう行政依存を慎む。
(4) 情報は公正に入手・使用する。
情報は合法的な手段で入手し、適正な管理基準の下に保管・使用する。
(5) 国際的に通用する商慣行の形成に努める。
長年にわたって当然のことと考えてきた諸制度・諸慣行も、公正性・透明性の観点
から積極的に見直し、国際的に通用するものとなるよう努力する。
3.経営トップの責務3原則
(1) 企業の経営トップは自らの責務として本憲章の趣旨実現に取り組む。
(2) 関係する諸法令の遵守と本行動憲章の趣旨を社内に徹底する。
社員が企業人としても社会的常識を逸脱した行動をしないよう、社員教育等の制度
を充実し、企業の社会的役割に対する理解を深める。
その際、社会貢献活動や企業の社会的評価の向上に寄与する活動を積極的に評価する。
(3) 企業行動に関する社内チェック機能を持つ部門を設置し、担当役員を置くなど、企
業の実態に応じた社内体制を整備する。
監査機能を強化し、違法・不公正あるいは社会的常識に反する企業行動は、事実の
確認により処分対象とする。
(編集委員 内田勝久)
※次回は、「企業行動憲章(2)」を掲載します
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3 私が読んだキャリアの一冊
『統計で考える働き方の未来-高齢者が働き続ける国へ』
坂本貴志著(ちくま新書) 2020.10.10
この4月1日、改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳継続就業の努力義務が企業
に課されることとなった。今後一段と高齢化が進むわが国において、これまで65歳だ
った高年齢者雇用政策のターゲットが70歳に変わることになる。「就業意欲の高い日
本の高齢者が年齢にかかわりなく働ける生涯現役社会」という理念は理念として、一
方には「引退後は月5万円の赤字、2000万円の貯蓄が必要、だから貯蓄だけでなく投
資を」との金融庁の報告書が炎上したという現実もある。今回の法改正に当たっては
「現在65歳となっている年金支給開始年齢の引き上げは検討しない」とのことだが、
この先ずっとそれで済むと思う人は多くないだろう。超高齢社会の先行きを見通すこ
とは難しいし、不確実であることが不安を助長する。そこに政治的な意図が入り込み、
ともすれば根拠の乏しい楽観や過度の悲観が語られがちでもある。
この本は、わが国の豊富な統計データを駆使して、超高齢社会の将来像を科学的・
客観的に検討し、希望的観測でも絶望的観測でもない等身大の見通しを描き出してい
る。本書の前半部分は、検討の前提としての現状の把握に当てられる。高齢化と人口
(特に生産年齢人口)減少が進んだことによる就業構造の変化、それに伴う賃金や格
差、生活実感などがどう変化したかが述べられる。女性と高齢者の就業が拡大するこ
とで得られた原資を社会保障給付に充当することで従来とそれほど変わらない暮らし
が実現しているという、まさに等身大の日本社会が描かれる。
後半部分では、将来の見通しが考察される。まずは政府の年金財政検証を検討し、
2050年の年金額は現在の水準から1割から2割程度減るとの見通しを示す。これは、年
金を受給し始めてからも、生計を維持するために働き続ける高齢者が増えることを意
味し、それに適応する形で、フリーランスなどの多様な、高齢者に適した働き方が拡
大するだろうと著者は予想する。その萌芽は新型コロナウイルス感染症が拡大する以
前から見られたし、実際に改正高齢法も雇用でない就業を織り込んでいるわけなので、
妥当な予想であろう。
もう一つの著者の重要な指摘は、高齢者が現場労働を担うというものだ。昨今、技
術革新によって従来の雇用が大幅に失われるとの言説が見られるが、著者はこれまで
の就業構造のデータからそのような急速な仕事の代替の発生については否定的な見解
を示す。一方で、常に技術革新が進む中で、先進分野の仕事は人材育成の観点からも
若手~中堅が担うことが望ましく、高齢者はそれ以外の労働需要、すでに不足してい
て今後も不足するであろう現場労働の需要を満たすことが求められるという。こうし
た分野で、長時間労働ではなく、重い責任を負うこともなく、人から命令されること
もなく「無理なく役に立つ」ことが重要であり、本書ではすでにそのような働き方で
それなりに暮らしている実例も示されている。
かつてはそれなりに現実的だった「定年後は悠々自適」は、今や多くの人にとって
は見果てぬ夢となった。そうした中で、これからは従来のような、山登りのように高
めてきたキャリアを定年とともに飛び降りるキャリアではなく、高齢期には「職業人
生の下り坂を味わいながら下る」「細く長く働き、納得して引退する」キャリアの考
え方を大切にすべきだという。
その結論はそれほど明るくもないし希望が持てるものでもないが、まるっきり絶望
的だというものでもない。しかし、それが等身大の姿というものなのだろう。統計デ
ータをふまえた現実的な分析には説得力があり、その誠実な姿勢には好感が持てる。
「改革」を唱道する俗書とは一線を画した好著として広くお薦めしたい。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
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4 キャリアイベント情報等
◆テーマ 第4回「オープンセミナー」/連合総研
「『人生100年時代』における勤労者の老後不安をなくすために」
日 時 2021年5月21日(金) オンライン開催
参加費 無料 申込期限5月13日
主 催 連合総研
詳 細 https://www.rengo-soken.or.jp/info/2021/04/091545.html
◆テーマ 「育休パパ・ママの職場復帰セミナー」/東京都労働相談情報センター
日 時 2021年9月30日までオンライン開催(期間中は何度でも視聴可能)
参加費 無料
主 催 東京都労働相談情報センター
詳 細 https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/sodan/seminar/ikukyu_online/
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5 学会活動ニュース
◆2021年3月20日(土)
第1回選挙管理委員会 於 Web会議
委員長選出の件、選挙日程の件、その他
◆2021年3月27日(土)
2020年度第4回研究大会企画委員会 於 Web会議
第17回研究大会運営について、その他
◆2021年4月8日(木)
2021年度第2回広報委員会 於 Web会議
キャリアデザインニューズレター200号記念について、その他
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【編集後記】
新型コロナウイルスの感染拡大の防止策として、2020年4月16日に緊急事態宣言
が発出されてから、早1年以上が経過した。東京はじめ大阪など“第四波”とも言
われる感染拡大が続く主要都市では、「まん延防止等重点措置」が適用され、さら
なる感染防止施策が実施されている。変異ウイルスの拡大も懸念される中、高齢者
や医療関係者を対象としたワクチン接種も一部の自治体では始まった。政治、経済、
教育、経営、雇用、そしてキャリアなど、人間のあらゆる活動の場面にウイルスの
まん延が影響を及ぼしている。まだ出口が見えない中、どこまでこの「新しい日常」
は続くのか。慣れと慢心も生じる今日この頃、もう一段気を引き締めることを自ら
に課さねばならないだろう。(s)
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。
【日本キャリアデザイン学会広報委員会】
石川 了 労務行政研究所(株式会社労務行政)
内田勝久 富士電機株式会社
梶田マリ 株式会社モスフードサービス
長島裕子 双日株式会社
平野恵子 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
堀内泰利 慶應義塾大学
松岡 猛 NECマネジメントパートナー株式会社
山野晴雄 元・桜華女学院(現・日本体育大学桜華)高等学校
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@career-design.org
〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
三鷹ビジネスパーク2号館 ぶんしん出版内
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