■□□—————————————————————-
□□
□ キャリアデザインマガジン 第147 号 2020 年4月12日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
——————————————————————□■
「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 学会からのお知らせ
2 キャリア辞典 「一人一社制」
3 私が読んだキャリアの1冊
『嫌われる勇気』
岸見一郎、古賀史健著
4 キャリアイベント情報等
5 学会活動ニュース
———————————————————————-
1 学会からのお知らせ
◆2020年第1回キャリアデザインライブ延期のお知らせ
多くの方にお申し込みいただきました、2020年第1回キャリアデザインライブ
「脳科学者の母が、認知症になる」の著者、恩蔵絢子さんに伺う──認知症の家族
とともに生きること、その人の「その人らしさ」とは何か?(2020年4月24日(金)開催)
ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開催を延期とさせていただくことに
いたしました。
申し込みいただいた皆さまにはご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご了承くださいます
ようお願い申し上げます。
研究会企画委員会委員長 梅崎 修
◆ 5月以降の各種イベントについて
5月以降に開催予定の各種のイベントは、新型コロナウイルス感染防止対策の観点から、
中止または延期など今後の社会的情勢の変化により、日程・内容の変更の可能性があります
ので、ご承知おきください。
変更の際はHPにて告知させていただきます。
◆学会ウェブサイト(http://www.career-design.org/)、フェイスブック
(https://www.facebook.com/careerdesigngakkai)随時更新中です。
ぜひご一読ください。
———————————————————————-
2 キャリア辞典
「一人一社制」
高校生の就職は、高校が職業紹介の一部または相当部分を分担するか、公共職
業安定機関(ハローワーク)の職業紹介を通じて行われ、大学生のように企業が
直接生徒に求人募集をすることはない。そして「推薦指定校制」や生徒は一社し
か受験できない「一人一社制」による、高校と企業との間の信頼関係にもとづく
実績関係の中で生徒が就職していくという「日本的高卒就職システム」によって
行われてきた。
この就職システムは高卒者が学校から職業へスムーズに移行するさいに重要な
役割を果たしてきた。しかし、1990年代後半以降、高卒求人が激減し、就職がで
きずにフリーターになる生徒が増加し、高校生の就職環境は厳しい状況に置かれ
るようになったことから、2002年には「一人一社制」原則の見直しが行われ、秋
田県・沖縄県では9月16日の選考開始から複数応募を可能にし、他の都道府県で
も10月ないし11月以降複数応募を認める申し合わせをするようになった。
それから10数年経ち、学校から接続される産業社会のあり方が大きく変わる中
で、2019年に厚生労働省・文部科学省は「高等学校就職問題検討会議ワーキング
チーム」を立ち上げ、20年2月に報告書をまとめ、公表した。
報告書は、一人一社制の見直しについて、地域の実情に応じて、1.「一次応募
の時点(9月16日)から、複数応募・推薦を可能とする」、2.「一次応募までは
1社のみの応募・推薦とし、それ以降(例えば10月1日以降)は複数応募・推薦を
可能とする」の2つのパターンのいずれかを選択することが妥当としている。
1.については現在、秋田県・沖縄県が1人3社までの応募・推薦が可能としてお
り、2.についてはほとんどの都道府県が10月1日以降2社までなど複数応募を可能
とする仕組みとし、ほぼ現状を追認する内容となっている。ここには、高校側
(進路指導担当教員)に対するアンケートで、「1人複数社応募の利用なし」が
87%、「1人1社のみがよい」13%、「現行のままがよい」74%、合わせて87%が
現行のルールを支持していることが背景にある。
高校側が「一人一社制」を維持しようとする理由としては、就職活動の長期化
による高校教育への影響や生徒への心理的・身体的・経済的な過重な負担を避け
るとともに、地元企業との信頼関係を維持しながら就職につなげている実態があ
るからだと考えられている。
報告書では、一人一社制の見直しのほか、学校推薦による内定先辞退を認めな
い事例に対しては「生徒の意思を尊重した指導を行うべき」こと、また、現在は
ほとんど参入のない民間職業紹介業者による職業紹介の利用も提言されている。
そして、ミスマッチ解消に向けてキャリア教育の充実の取り組みを強化すること
や、高校卒就職者の早期離退職については、高校とハローワークが連携すること
や外部人材を活用することが提言されている。
高校生への就職支援については、1年次からのキャリア教育の充実を図る(産業
社会の変化、多様な雇用形態・働き方、労働世界の実態、労働法などを学ばせこと、
ジョブ・シャドウイングやインターンシップなどの体験活動な行うことなど)とと
もに、求人票や高卒就職情報Web提供サービスの活用による情報の活用、そして教
員だけでなくジョブサポーター等による相談・支援体制の強化などがより重要に
なっている。
編集委員 山野晴雄
———————————————————————-
3 私が読んだキャリアの一冊
『嫌われる勇気』
岸見一郎、古賀史健 著 ダイヤモンド社 2013.12.13
新型コロナウイルスによる社会・経済への深刻な影響が広がっている。日々、
感染者増加の報告や都市閉鎖に関するニュースに触れるたびに、自分自身ができ
ることをしっかりと行うことの大切さを考えさせられる。同時に、医療従事者
による懸命の治療・看護活動には、胸が熱くなる。早期に、人類の英知でこの難
局が収束することを祈る。
さて、人類が多くのことを学ぶとしたら、歴史、それも歴史的な経験が思い浮
かぶ。令和に元号が変わり、新しい時代が始まる今、組織の長には、トラウマを
捨て去り、新しい秩序を創った明治維新のような真のリーダーが必要だと考える。
しかも歴史の登場人物には、一つ共通するものがあった。書評タイトルにある
「嫌われる理由」を備えていたことである。
企業は、新しい製品やサービスを創り出し、社会や私たちの暮らしを豊かにし
てくれている。経済のグローバル化、情報化社会が本格的に進展し、ヒト、モノ、
カネ、コトなどが国境を越えて活発、かつ瞬時に動くようになるなど、社会全体
が変化している。その結果、多くの国、地域が目覚ましい経済成長を成し遂げ、
市場経済からの恩恵は、より堅調になってきている。
その一方で、そうした変化に伴い、貧困や格差の拡大、環境問題、労働環境の
悪化などのグローバルな課題が各国・地域で顕在化。とりわけ、リーマンショッ
クや環境問題を契機に、それらの問題が先進国や途上国を問わずに深刻化し、こ
うした環境変化を背景として、各国で反グローバリズムや保護主義の動きが高ま
り、自由で開かれた国際経済秩序、自由貿易体制の維持・発展が脅かされる懸念
が高まっている。
本書は、アルフレッド・アドラーの哲学を説いた内容が、哲人と青年のリレー
ションで描かれている。哲人は、青年の疑問に対して押し付けるのではなく、
様々な人の関係、その深層を抉り出している。手にしたのは、出版が東日本大震
災からわずか2年後であること。しかも、その後も何十版を重ねてベストセラーを
続けていることは、何故だろうかと思ったからである。
私は、ベストセラーになる理由を「トラウマに引っ張られた一般市民の大衆票
が欲しくて「嫌われる」、本当の主義主張をしない政治家は困る」と真面目に思
い、歯ぎしりしながらこの本を読んでいる識者がたくさんいると考えた。
ソクラテス、プラトン、ユングなど著名な哲学者の思想は一貫している。わか
りやすく言えば、人間は、縦社会、縦意識の強さから、過去の深い失敗や過ちを
ひきずっていて、「人それぞれが持つ性格は変えられない」と言う前提に立つ点。
このため人はトラウマからなかなか抜け出せない。
本書における哲人、いわゆるアドラーの主張は、人間の気質や性格は、確実に
変えられる、と180度反対の哲学を説いている。哲人は、縦よりも横のつながり
を重視し、チームや組織・共同体に自らが貢献しているという意識で行動する、
自主的かつ自発的な行動が一層必要だと、主張している。これこそが、人間本来
の幸せ、つまり幸福感につながると説いている。
今企業や人間一人一人に期待されていることは、持続可能な社会に貢献する事。
しかし、人は、豊かで便利な社会、幸せな暮らしを求めている。顧客課題の解決
に代表される効率化・合理化、利便性、適正価格を追求しており、サプライチェ
ーンを含めた低炭素社会の実現や、リサイクル、省資源化といった循環型社会の
ゴールは、まだまだ遠い。ましてや、生物多様性といわれる自然共生社会の実現
に向けて生態系への影響ゼロに取り組む課題は山積である。
企業活動における成果と課題、私たちのライフスタイルにおける問題は、上記
の通り顕在化している。その上で、「嫌われる理由」を読んだことで、「嫌われ
る勇気」を実践したいと、心が晴れ晴れすることができた。
(編集委員 内田勝久)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
———————————————————————
4 キャリアイベント情報等
◆人文社会学系研究者の男女共同参画実態調査報告書(第1回)
「人文社会科学系研究者の男女共同参画調査のアンケート」の結果報告書が、
下記HPで公開されました。
https://geahssoffice.wixsite.com/geahss
———————————————————————-
5 学会活動ニュース
◆2020年2月19日(水)
2019年度第1回研究誌編集委員会 於 法政大学市ヶ谷キャンパス
-キャリアデザイン研究Vol.16査読について
———————————————————————-
【編集後記】
本誌2月号で新型コロナウイルスの感染拡大について触れたが、その後も感染増大
が止まらず、世界では約165万人、日本でも6000人を超え、その影響が深刻化してい
る(4月11日現在)。イギリスのジョンソン首相やアメリカの俳優・トムハンクス氏な
どが感染。日本では感染による志村けん氏の悲報が社会に大きなショックを与えた。
各国では強制的な外出禁止措置やロックダウン(都市封鎖)などが取られ、経済対策
や失業対策に追われている。日本でも4月に入っての感染爆発(オーバーシュート)
の危険性が高まっており、医療現場の崩壊も懸念されていることから、ついに4月7日、
東京など主要都府県に非常事態宣言が発令された。企業では在宅勤務や休業、フレッ
クス勤務などが推奨され、新卒者の内定取り消し、非正規社員などの解雇等雇用情勢
の悪化も必至といわれている。キャリア関係のイベントも延期や中止が相次いでいる。
出口は見えないが、長期戦を覚悟して、個人・組織のやるべきことを冷静に考え、
行動したい。(s)
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
□□■—————————————————————-
□
日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。
【日本キャリアデザイン学会広報委員会】
石川 了 労務行政研究所
内田勝久 富士電機株式会社
梶田マリ 株式会社モスフードサービス
長島裕子 双日株式会社
平野恵子 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
堀内泰利 慶應義塾大学
松岡 猛 NECマネジメントパートナー株式会社
山野晴雄 元・桜華女学院(現・日本体育大学桜華)高等学校
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@career-design.org
〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
三鷹ビジネスパーク2号館 ぶんしん出版内
—————————————————————-□□■
◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます
※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです
◎キャリアデザインマガジン
の配信停止はこちら
⇒ https://www.mag2.com/m/0000140735.html?l=crm151e634
━━━━━━━━━━━━━━━━━