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□ キャリアデザインマガジン 第139号-2 平成30年10月12日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 学会からのお知らせ
2 キャリア辞典 「定年延長」
3 私が読んだキャリアの1冊 澁谷智子『ヤングケアラー』
4 キャリアイベント情報
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1 学会からのお知らせ
◆2019年度の研究大会は、2019年9月7日(土)・8日(日)に学習院大学目白
キャンパス(東京都豊島区)にて開催の予定です。
◆学会ウェブサイト(http://www.career-design.org/)、フェイスブック
(https://www.facebook.com/careerdesigngakkai)随時更新中です。
ぜひご一読ください。
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2 キャリア辞典
「定年延長」
この8月10日、人事院は国会と内閣に対し、人事院勧告とともに「定年を段
階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」
を行った。これについてはすでに10年前の国家公務員改革基本法で「定年を段
階的に六十五歳に引き上げることについて検討すること。」(10条3項ロ)と
定められており、これを受けて7年前の2011年9月には今回と同じ名称の「定年
を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申
出」を実施している。そこでは「平成25年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を
引き上げ…平成37年度には、65歳定年とする」とされていたがそのとおりには
進まなかったところ、今年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2018」、い
わゆる「骨太方針」においても「公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる方
向で検討する」との文言が織り込まれ、それを受けて今回改めて意見の申出と
なったものだ。当分の間、60歳で役職定年として非管理職(専門スタッフ職や
課長補佐級ポストなど)に任用換し、給与は60歳前の7割水準に設定するとさ
れている。
民間の実態を厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査」でみると、定年制
を定めている企業割合は95.5%、うち97.8%が職種などに関係なのない一律定
年制となっている。定年年齢は60歳が79.3%と大多数だが、65歳も16.4と相当
の割合にのぼり、65歳を上回る例も1.4%みられる。内訳をみると企業規模や
産業によってかなりの違いがあり、従業員数1,000人以上の大企業では60歳定
年が90.6%と圧倒的なにに対し、30~99人規模では65歳以上定年が20.5%に達
している。産業別にみると、65歳以上の割合が最も高いのは宿泊・飲食サービ
スの29.8%であり、建設、運輸・郵便、医療・福祉と言った人手不足産業にお
いては22.2%、25.4%、26.1%と高い傾向にある。
賃金の状況については、人事院の「平成30年職種別民間給与実態調査」でみ
ることができる。こちらの調査では65歳以上定年または定年制のない事業所は
全体の13.0%であり(調査対象が厚労省調査とは異なる)、うち一定年齢で給
与を減額している事業所は課長級で37.5%(うち60歳で減額24.4%)、非管理
職で32.3%(うち60歳で減額20.4%)となっていて、60歳で減額された水準は
課長級で60歳前の75.2%、非管理職は72.7%となっている。人事院の申出では
60歳で任用換を行うこととしていることから、減額を実施している事業所の水
準を参考としたものであろう。
現状の評価としては、前述したとおり平成29年度の厚労省調査では65歳以上
定年を定める企業は17.8%にとどまっているわけだが、65歳継続雇用を原則義
務化した改正高年齢者雇用安定法施行前の平成17年度調査では6.5%にとどま
っていたので、それなりに進展しているという見方も可能ではあろう(もっと
も、定年の定めのない企業はそれぞれ4.5%、4.7%と横ばいだ)。とはいえ、
昨年5月に自由民主党の一億総活躍推進本部が取りまとめた提言に公務員の65
歳定年延長が盛り込まれた際には「民間企業への波及効果を狙」うものだとさ
れていたように、やはり現状は物足りないと考えるべきなのだろう。
人生100年時代と言われる中にあっては、人口減少社会における労働力の確
保という観点からも、持続的な社会保障制度の維持という観点からも、高年齢
者雇用の一層の拡大が望まれることは間違いないだろう。これらの観点からは、
すでに65歳を超えて70歳までの就労促進が議論されている。60歳から65歳まで
は再雇用で対応できるとしても、70歳までの10年間となるとかなり難しいよう
にも思われる。さらに、技術革新が急速に進む中では、生涯を通じて新たなス
キルを獲得していけるしくみも必要になるだろう。将来が見通しにくい中では
相当の困難をともないそうだが、今後、民間企業労使にとって、避けては通れ
ない課題のひとつになりそうだ。
(編集委員 荻野勝彦)
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3 私が読んだキャリアの一冊
『ヤングケアラー-介護を担う子ども・若者の現実』
澁谷智子著 中公新書 2018.5.25
筆者は、企業の人事部門にて人事制度の運用に携わり、管理職として働くう
ちに、個人が充実したキャリアを歩もうとするためには、家族との関係を踏ま
えた行政や企業の支援のあり方が当たり前のことではあるが改めて重要である
との実感を持つようになってきた。そんな中で、「ヤングケアラー」という表
題に惹かれ、本書を手にしたのには理由があった。というのは、ちょうど20代
の部下の一人が、介護問題でプライベートの時間をかなり割かれ、仕事との両
立に悩んでおり、上司として何がしてあげられるのか、と自分なりに思い悩ん
でいたからだ。
さて、本書では家族の介護を行っている18歳未満の子どもを「ヤングケア
ラー」と定義し、「ヤングケアラー」が抱えている問題状況、解決のための行
政や学校の支援のあり方について提言している。なお、18歳以上30代くら
いまででケアラーを「若者ケアラー」と定義して区別している。その理由は、
支援を管轄する行政が、年齢により異なってくることから、政策立案を前提と
すると区別しておいたほうよいということである。
まず、子どもが家族の世話をすることについて、日本社会の家族のあり方が
変わってくる中で、何が変わってきたのかを踏まえておく必要がある。一つに
は、共働き世帯が増えてきたことによって、世帯当たりの人数が減少し、家庭
内の人手不足が進展してきたことが統計データにより示される。もう一つは、
社会の制度は、「夫婦と子ども」いう標準家族を前提としているため、母子世
帯、父子世帯では仕事と家事を担う人数が減ってしまい、こうした中で自身の
ケアができず健康を損ねていく人が増えてきたのではないかということである。
こうした状況のなかで、子どもが親の介護や食事、洗濯、買い物、兄弟の世話
などの家事を過度に分担せざるを得ない状況が発生しているという。しかしな
がら、現状では日本の「ヤングケアラー」の実態が十分に把握されておらず、
行政の支援のあり方も整備されていない。そのため、課題自体が顕在化されて
おらず、対策を講じるに至っていないと著者は警鐘を鳴らす。
次に、世界に目を転じる。イギリスの大学が、1995年にヨーロッパ数か
国を対象とした調査を行った。翌年にはイギリス政府による初のヤングケア
ラー調査が実施された。当時のイギリスでも13万9千人のヤングケアラーが
いることが示され、行政による支援が徐々に開始され現在に至っている。これ
に対して、日本でのヤングケアラー調査は、著者が研究者として参画し、20
15年に新潟県南魚沼市の公立小中学校、総合支援学校の教職員に対して実施
され、更に2016年には藤沢市の公立小中学校の教職員に対して実施された。
本書ではイギリスと日本での実地調査を踏まえて、期せずして家族の介護を担
わざるを得なくなった子どもたちの心境や不登校になっていく過程が丁寧に紹
介されている。
さらに、構造的な問題も指摘されている。行政による介護支援は要介護者本
人に向いているのに対して、学校の教職員は要介護者の家族である子どもに向
いており、お互いの管轄する範囲が異なることから、家族を取り巻く課題を総
合的に見て支援することが現状では難しいようだ。こうした「ヤングケア
ラー」の抱える問題に気づき、行政や教育機関が連携して支援をしていくこと
が今後は求められるのだろう。
一例として、イギリスでのウィンチェスターやハンプシャー州での支援活動
から得られた支援のポイントを紹介する。
(1)ヤングケアラーがケアについて安心して話せる相手と場所をつくること
(2)家庭でヤングケアラーの担うケアの作業や責任を減らしていくこと
(3)ヤングケアラーについて社会の意識を高めていくこと
著者は、こうした取り組みを通して、不登校や学業中断などを余儀なくされ
る子どもを一人でも多く助け、もし一旦学業から離れることになったとしても、
また学び直す機会が開かれていることが必要と説く。さらに、何歳で高校を卒
業、大学を卒業、何歳くらいで働き出すものといった社会全体の横並び意識に
対しても著者は疑問を呈しており、個人の状況に応じたキャリアデザインのあ
り方を深く考えさせられる。
最後に、更に欲を言えば、本書では触れられていなかったが、20代から
30代の「若者ケアラー」の実態についても、調査に基づいた知見が報告され
ることが待ち遠しい。おそらくは、職業選択や就職後の組織への適用、能力形
成についても少なからず影響があるように思われる。また、企業や団体におけ
る管理職は、こうした若者にどのような働き方を提供し、限られた時間の中で
育成を図っていけばよいのだろうか。人材開発の視点からは、介護によって失
った時間は、見方を変えれば、家族と過ごした貴重な時間であり、若くして介
護に携わったが故に獲得することができた能力もあるし、何よりも人格形成の
場だったと捉えることもできよう。「ヤングケアラー」の問題は、一部のかわ
いそうな子どもや若者を行政が助けるという視点だけで捉える問題ではなさそ
うである。
(編集委員 松岡猛)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
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4 キャリアイベント情報
-キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します-
◆中央大学専門職大学院 CBS NExT 10 シンポジウム「ビジネスパーソンは、
今なぜ学ぶ必要があるのか?」
日 時 2018年11月17日(土)16:20-
場 所 中央大学後楽園キャンパス 3号館11階(東京都文京区)
http://www.chuo-u.ac.jp/academics/pro_graduateschool/business/event/2018/09/74437/
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【学会活動ニュース】
◆2018年7月14日(土)
2018年 キャリアデザインライブ!夏のスペシャル
於 法政大学市ヶ谷キャンパス58年館2階キャリア情報ルーム
テーマ 能楽師に聴く、演じること、育てること、生きること
ゲスト 御厨誠吾 能楽師(ワキ方下掛宝生流)
https://www.facebook.com/careerdesigngakkai/posts/1776583105789198
https://www.facebook.com/careerdesigngakkai/videos/1776585959122246/
◆2018年7月28日(土)
第14回中京支部研究会(きゃりあ“ミニ”りゃーぶ)
於 名古屋大学東山キャンパス教育学部2F第3講義室
テーマ 性的マイノリティから多様なキャリア形成支援のあり方を考える
講 師 久保勝 NPO法人AST共同代表理事ほか
◆2018年9月15日(土)・16日(日)
2018年度研究大会・総会
於 関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市)
テーマ 「人材育成とキャリア形成-伝統と革新の調和-」
【編集後記】
このところ「キャリアセンター」を「キャリアデザインセンター」と称して
いる大学をみかけるようになりました。当学会の設立は2004年、「キャリアデ
ザイン」の語が広まりはじめたのは金井壽宏先生が2002年に書かれた『働く人
のためのキャリア・デザイン』(PHP新書)からかな、と思っていたのです
が、転職サイトの「@type」を運営している「株式会社キャリアデザイン
センター」の創立は1993年。その先見性に感心します。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。
【日本キャリアデザイン学会広報委員会】
青木猛正 立教大学
石川 了 労務行政研究所
内田勝久 富士電機株式会社
梶田マリ 株式会社モスフードサービス
平野恵子 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
堀内泰利 慶應義塾大学
松岡 猛 NECマネジメントパートナー株式会社
山野晴雄 元・桜華女学院(現・日本体育大学桜華)高等学校
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@career-design.org
〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
三鷹ビジネスパーク2号館 ぶんしん出版内
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