キャリアデザインマガジン 第137号

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□ キャリアデザインマガジン 第137号 平成30年4月6日発行
  日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/

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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 学会からのお知らせ

2 キャリア辞典 「RPA」

3 私が読んだキャリアの1冊 アン=マリー・スローター『仕事と家庭は両
立できない??「女性が輝く社会」のウソとホント』

4 キャリアイベント情報

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1 学会からのお知らせ

◆2018年4月 キャリアデザインライブ!を開催します。

 日 時 2018年4月20日(金)19:00-30:30
 場 所 法政大学市ヶ谷キャンパス 58年館2階 キャリア情報ルーム
    (東京都千代田区)
 テーマ 児童養護施設を知っていますか?
     ~「頼れる大人がいない子」のキャリア支援を考える~
 ゲスト 村上綾野 NPO法人HUG for ALL代表理事
 参加費 会員/無料 一般/3,000円

 詳細はこちら
 http://www.career-design.org/pub/t080.html
 お申込みはこちらから
 https://www.event-u.jp/fm/10866

◆関西支部第22回研究会を開催します。

 日 時 2018年5月12日(土)14:30-17:30
 場 所 (公財)関西生産性本部 会議室(大阪市北区)
 テーマ 働き方改革に向けて「働きやすい職場づくり」とは何かを考える
     -法改正の視点から-
 講 師 谷口勉 口勉社労士事務所所長(元京都上労働基準監督署長)
     山下裕 大和ハウス工業(株)人事部次長
 参加費 会員/無料 一般/3,000円

 ※終了後、懇親会を実施します(参加費:会員/無料 一般/3,000円)

 詳細はこちら
 http://www.career-design.org/pub/kan2005.html
 お申込みはこちらから
 https://www.event-u.jp/fm/index.cgi?id=854

◆2018年5月 キャリアデザインライブ!を開催します。

 日 時 2018年5月18日(金)19:00-30:30
 場 所 東京家政学院大学千代田三番町キャンパス1号館7階1707教室
     (東京都千代田区)
 テーマ 食卓から見たキャリアデザイン-料理は人生を変える-
 ゲスト 阿古真理 作家・文化史研究家
 参加費 会員/無料 一般/3,000円

 詳細はこちら
 http://www.career-design.org/pub/t081.html

◆2018年度研究大会の参加申込受付がはじまりました。

 日 時 2018年9月15日(土)・16日(日)
 場 所 関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市)
 テーマ 「人材育成とキャリア形成-伝統と革新の調和-」

 詳細はこちら
 http://www.career-design.org/eve/index.html
 お申込みはこちらから
 https://www.event-u.jp/fm/index.cgi?id=384

◆学会ウェブサイト(http://www.career-design.org/)、フェイスブック
 (https://www.facebook.com/careerdesigngakkai)随時更新中です。
 ぜひご一読ください。

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2 キャリア辞典

 「RPA」

 日本は、2060年には、国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者になるという、
世界でも類を見ない超高齢化社会を控える。総人口は、減少傾向が継続してお
り、主力の労働力を担う15歳以上65歳未満の生産年齢人口も1990年代をピーク
に減少の一途を辿っている。我が国経済に与える影響をできる限り軽減するた
めに、主力の労働力を補う取り組みは、喫緊の課題だ。未就業者への就業支援
や、他国の外国人労働者の受け入れだけでは解決はできない、それほど早く進
行している人手不足をいかに速やかに補完するか。工場やプラントの生産ライ
ンは、ロボットの導入やオートメーション化が浸透し、最近では、AIやIoTな
どを活用し更に生産性の高度化が進展している。一方、間接部門の定型的な事
務業務の生産性を高める効果が期待でき、注目されているのがRPA(Robotic
Process Automation)だ。RPAは、その範囲を事務業務全般から拡大し、営業
や分析など広範な業務に対応できる技術として大きな可能性を秘めている。

 このRPAとは、事務用ロボットによる定型業務自動化を示す言葉で、Digital
Labor(デジタルレイバー)とも言い換えられ、私たち人の知能をコンピュー
ター上で再現しようとするAIや、「機械学習」といった技術を用いて、主に
バックオフィスにおける間接部門業務の代行を担うものだ。人が行う業務の処
理手順を操作画面上から登録しておくだけで、ソフトウェアが手順通り処理し
ていく。膨大な情報の入力作業をはじめデータの変換作業や集計作業、そこか
ら抽出される成果物を自動的に作成するなど、間接業務分野における業務革新
として大きな可能性を秘めてた分野である。 人と共存し、業務を分担するこ
とによって、作業ミスの低減・撲滅、労働生産性の向上、そして収益拡大に寄
与する働きが期待される。

 身近なものでいえば、決算集計、旅費経費の精算、勤怠管理などが、人手か
らRPAに置き換わってきている。部品や製品の発注では、設定した時間に取引
先の注文サイトでIDやパスワードを入力してログインし、品目と数量を指定し
てボタンを押せば、注文が完了する。導入した職場では、単純な作業が少なく
なってミスも減り、業務効率が上がっているという。人への作業負担が大きく、
楽しくなくても、ミスが許されない仕事でも、RPAはそれを間違いなくこなし
て人を助けてくれる。RPAが普及していけば、人はいずれ判断業務が主体にな
ると想定されるが、それ以上に時代や環境の変化に対応するため、人が創造的
に働いて仕事の付加価値を高められるような人材教育や制度の整備が不可欠に
なっていくと考えられよう。つまり、定型業務時間を削れば、企画や営業など
知恵や感性を組み合わせる分野に人材を配置することが可能となる。

 グローバル競争に勝ち残るためにもRPAの本格的の導入、AIの活用はもは
や欠かせない。日本は高学歴化が進展してきたが、企業労働者の生産性の改善
は不十分だ。製造業の雇用は1992年の1,400万人が足元で1,000万人に減る一方、
管理・間接部門は3,000万人弱と就業者の半分を占める。

 日本生産性本部によると、日本の付加価値額(国内総生産)を労働者数で
割った労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中、21位にとどまる
という。残業してまで働いても1人が生み出す価値額は欧米に及ばない。OECD
は日本の労働力人口の7%が携わる仕事が2020年までに自動化により消え、さ
らに22%の仕事の内容が大幅に変わると予測している。今日、第1次産業、第2
次産業そして第3次産業と、幅広い産業分野で人手が不足し、機械に仕事が奪
われる心理不安は表面化していない。しかし、景気が後退して雇用が悪化する
局面を迎えれば、求人は付加価値の高い仕事に集中するようになるだろう。RP
AやAIが普及していくと、結果に応じてお給料を決める「脱時間給」のような
制度は欠かせなくなるかもしれない。管理間接部門の生産性向上を促す業務改
革、そして働く人の意識改革は、待ったなしであろう。

                        (編集委員 内田勝久)

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3 私が読んだキャリアの一冊

 『仕事と家庭は両立できない??「女性が輝く社会」のウソとホント』
         アン=マリー・スローター著 関美和訳 NTT出版 2017.8.3

 本書の著者は、米国名門大学のプリンストン大学教授で、オバマ政権でヒラ
リー・クリントン国務長官のもと、2010年から2年間、国務省の政策企画本部
長を務めたアン=マリー・スローター氏である。同氏は激務の外交の仕事・キ
ャリアと家庭生活との葛藤を経験し、最終的に家庭を選び、国務省を退職しプ
リンストン大学の教職に戻る決断をした。この経験をまとめ2012年米誌『アト
ランティック』に寄稿した「Why Women Still Can’t Have It All」(女性は
なぜすべてを手に入れることができないのか?)は大きな反響を呼んだ。この
論考は、輝くキャリアを築いてきたエリート女性の視点から書かれたものであ
り、多くのワーキングマザーや若い女性から賞賛を受けた一方、贅沢な悩み、
特権階級の問題、すべてを手に入れるという考えが問題、先人が長年苦労して
手に入れた職場での女性の地位向上に逆行しているなどの批判も受けた。その
後、スローター氏が自身の思い込みも自問、内省し、さまざまな環境の多くの
人からの意見や批判も踏まえ3年をかけて書かれたのが本書である。先の論考
では見落とされていた恵まれない環境にある女性の問題なども含めたより深い
レベルの論考と問題提起となっており、より説得力のあるものとなっている。

 スローター氏は、すべての人に充実した働き方の機会が開かれている社会、
仕事と同時に、家族や友人を愛し気遣う生き方が尊重され、そこから深い満足
を得られるような社会が理想であるとし、その理想に向けてはじめの一歩を踏
み出そうと述べている。そのためには、女性だけでなく男性もステレオタイプ
や思い込みから解放されるべきで、それが女性の前進につながるとしている。

 本書は、Part1 決まり文句を超えて、Part2 色眼鏡を捨てる、Part3 平等へ
の道の三部で構成されている。

 まずPart1でこれまでの常識や決まり文句に対して疑問を投げかけている。
女性神話のウソとして、「必死に仕事に打ち込んでいれば、すべてを手に入れ
ることができる」「協力的な相手と結婚すれば、すべてを手に入れることがで
きる」「順番を間違えなければ、すべてを手に入れることができる」を、男性
神話とウソとして、「男性もすべてを手に入れることができない」「子供には
母親が必要だ」「家族を養うのが男性の仕事」を、職場のウソとして、「それ
は女性の問題だ」「柔軟な働き方が解決策になる」「誰よりも長時間働く人が
一番仕事ができる」を取り上げている。これらの社会通年と、多くの女性が置
かれている現実、家庭の役割にコミットしたい男性の存在、調査研究の結果な
どを対比しながら問題提起をしている。そしてこれらは「女性の問題」ではな
く、「育児や介護の問題」であり、「職場の問題」でもあると主張している。

 続くPart2では、Part1で取り上げた問題は、競争に高い価値を置き、家族や
他者をケアすることに正当な評価を与えていないことに問題の根源にあるとし、
それが社会のさまざまな側面に歪みと差別を生み出していると主張している。
競争と他者をケアすることはどちらも等しく本源的な人間の活動であり、育児
と介護は意義のある大切な人間活動であるが、アメリカ社会はこのケアには価
値を認めていないと指摘している。そして競争とケアのバランスを見直すこと
により、課題を解決することを提案している。スローター氏は、女性だけでな
く、男性も社会に隠れた偏見や暗黙の性的な役割分担から解放され、男性も収
入を得ることと家族をケアすることの両方の機会が与えられなくてはならない
と述べ、男性の平等が達成されなければ女性の平等もない、男性の平等には、
その役割を作り直し、養い手であると同時にケアの担い手として大切な存在に
なることが欠かせないとしている。そしてPart3では、真の男女平等を達成す
るために、家庭、キャリア、職場、社会において一歩踏み出すためのアイデア
を提案している。

 日本でも女性活躍推進を掲げ、女性役員・管理職の増加、長時間労働の是正
などの働き方改革、同一労働同一賃金など非正規雇用の改善、子育て・介護等
と仕事の両立支援の改善・充実への取り組みが展開されているが、本書からの
示唆について考察してみたい。アメリカは、自由主義路線のもと女性の社会進
出、会社役員・管理職などリーダー的地位への女性の進出が進んでいるが、本
書で指摘されているようにいまだに性別役割分担、ステレオタイプや思い込み
が根強く残っており、これらは日本における問題と極めて似通っているのでは
ないだろうか。スローター氏が指摘するアメリカ社会が競争に高い価値を置く
一方、ケアに対して低い価値しか与えない価値観は、日本においても根強くあ
るのではないか。

 女性の活躍推進を真に進めるには、スローター氏が提言するように、あらた
めて私たちの思い込み・ステレオタイプについて自問し見直すこと、ケアの価
値を認め、女性と男性がそれぞれの役割を見直し、ともにケアの担い手となる
ことが必要であると考える。

 本書の中でも指摘されているが、アメリカにおいては育児や介護に関わる公
的支援は最小限でありケアは市場によって提供されている。そのため経済的に
恵まれない多くの女性が家庭か仕事の選択の余地もなく、ワークライフバラン
スとは無縁の世界に置かれている。スローター氏は、ノルウェーでは国として
子育ては本物の仕事だと認め、この仕事は社会全体に価値のあるものだと認定、
ケアサービスに社会がお金を払っていることを紹介し、こうした国々ではすで
にその努力が報われていると述べている。そしてケアのインフラを作ることを
提案している。

 ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランドなどの北欧諸国は、
社会民主主義レジームのもと、育児・介護といったケアの責任は国家とし、家
族や市場による福祉サービスの供給に頼らず、ケアサービスに社会がお金を払
う政策を採っている。ノルウェーでは、女性の指導的立場への進出と男性の家
事・育児への参画は表裏一体であるとして、育児休暇の一定期間を父親にも割
り当てる「パパ・クオータ制」を導入し、スウェーデンでは父親・母親にそれ
ぞれ一定期間の育休を割り当て、双方に取得を義務付ける「パパ・ママ・ク
オータ制」を導入している。この面では、日本は北欧諸国から学ぶことが多く
あると考える。

 本書は、ぜひ多くの方に読んでいただきたい書籍である。

                        (編集委員 堀内泰利)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
 日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

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4 キャリアイベント情報
  -キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します-

◆東京商工会議所労働セミナー「働き方改革の推進~多様な人材の確保に向け
 て~」

 日 時 2018年4月27日(金)15:300-17:30
 場 所 丸の内二丁目ビル3階会議室5-7(東京都千代田区)
http://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-85821.html

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【学会活動ニュース】

◆2018年3月10日(土)14:00-16:30

 出張キャリアデザインライブ!新潟開催
 於 新潟市万代市民会館4階大研修室
 テーマ 「新たな就職氷河期世代を生まないために 地域における若者支援
 のチームプレー」

◆2018年3月24日(土)14:30-17:00

 第13回中京支部研究会(きゃりあ“ミニ”りゃーぶ)
 於 名古屋大学東山キャンパス教育学部第3講義室
 テーマ 「「キャリアコンサルティング属性別ツール」開発と体験」

【編集後記】

 本年9月開催の研究大会のテーマが「人材育成とキャリア形成-伝統と革新
の調和-」に決まりました。わが国のOJT重視・長期雇用による人材育成はす
でに「伝統」の域に近く、一方で本号の「キャリア辞典」でも取り上げられた
ように、今後一層の技術革新が人材育成にも革新をもたらす可能性があります。
その調和ある発展の道筋とはなにか、みなさまとともに考える場になるものと
思います。多くの人のご参加と、積極的な自由論題応募をお待ちしております。
(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
  http://www.career-design.org/

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   日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
   オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】

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行しています。
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 このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。

【日本キャリアデザイン学会広報委員会】

 青木猛正 埼玉福祉・保育専門学校長
 石川 了 労務行政研究所
 内田勝久 富士電機株式会社社長室CSR・広報部
 荻野勝彦 トヨタ自動車株式会社渉外部
 平野恵子 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所
 堀内泰利 慶應義塾大学SFC研究所
 松岡 猛 NECマネジメントパートナー株式会社人事サービス事業部
 山野晴雄 中央学院大学講師

  日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
   e-mail info@career-design.org
  〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
  三鷹ビジネスパーク2号館 ぶんしん出版内

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