キャリアデザインマガジン 第120号

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□    キャリアデザインマガジン 第120号 平成27年6月*日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 学会からのお知らせ

2 キャリア辞典「オワハラ」

3 私が読んだキャリアの1冊
  安藤至大著『これだけは知っておきたい働き方の教科書』
  
4 キャリアイベント情報

5 学会活動ニュース

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1 【学会からのお知らせ】

◆学会監修『キャリアデザイン支援ハンドブック』好評発売中!

 キャリアデザイン学会が総力をあげた解説書!
 近年大きく広がっているキャリアデザイン支援、その基礎知識と理論・手法、
実践におけるポイントを解説し、先進事例を紹介した関係者・実務家必携の文
献です。2014年10月刊。B5判260ページ・本体3,000円+税。学会会員は20%割
引で購入できます。

 ご購入はこちらから http://www.career-design.org/maga/04.html

◆「キャリア・デザイン・ライブ!」第3回開催!

 キャリアデザイン学会研究会は、本年度からそのスタイルを一新し「キャリ
ア・デザイン・ライブ!」をお送りしています。第1回は学習院大教授の今野
浩一郎氏、第2回はジャーナリストの溝上憲文氏を講師にお招きし、司会者・
参加者が一体となった臨場感あふれるトークライブが繰り広げられました。

 第3回は「精神科産業医が語る『キャリアに囚われる人』の特徴-社員の多
様化とキャリア」をテーマに、のべ3万人もの豊富なカウンセリング経験を持
つ精神科医の野口海氏をお招きして開催します。ふるってご参加ください。

 日 時:2015年6月26日(金)19:00~20:30
 講 師:野口海 メンタルコンシェルジュ代表(医学博士)
 会 場:法政大学市ヶ谷キャンパス 58年館2階 キャリア情報ルーム
     東京都千代田区富士見2-17-1
     http://www.hosei.ac.jp/access/ichigaya.html
 参加費: 会員/無料、一般/3,000円
 定 員:30名(先着順)
 詳細・お申し込みはこちらから
     http://www.career-design.org/pub/t060.html

◆2015年度第12回研究大会のご案内

 日 時:2015年9月5日(土)・6日(日)
 会 場:北海学園大学 豊平キャンパス
     〒062-8605 札幌市豊平区旭町4丁目1番40号
     札幌市営地下鉄東豊線学園前駅3番出口直結
 テーマ:地域社会におけるこれからのライフスタイルとキャリア形成

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2 キャリア辞典

「おわハラ(オワハラ)」

■おわハラ(オワハラ)とは

 「就活終われハラスメント」の略。就職活動の終了を強制したり、それと引
き替えに内定出しを打診したりする行為のことをさす。衆議院議員の小林史明
氏が自身のオフィシャルブログで使用したのがはじまりと考えられる(※1)。
小林氏は、動画を通じて学生への留意もうながしている(※2)。

※1/就職活動の問題解消にむけて STOPオワハラ・リシュ面推進
http://ameblo.jp/fumiakikobayashi/entry-11970486709.html

※2/「就活終われハラスメント」とは?

■新スケジュールが拡大に拍車

 この言葉の流布には、2016卒採用からの新スケジュールが影響している。広
報スタート(12月→3月)と、選考スタート(4月→8月)は共に繰り下がっ
たが、その拘束力は限定的だ。特に面接時期は分散し、内定出しが五月雨化し
ている。

 いつ他社にひっくり返されるか分からない、辞退率が読み切れない、採用計
画の進捗状況がハッキリしない…。採用担当者は、厳しい状況に立たされてい
る。また、昨年度よりも増加した採用人数を達成しなくてはならないプレッシ
ャーも強い。「本当に入社してくれるのか、態度をハッキリさせてほしい」。
彼らの想いは切実だろう。結果として、入社の意思確認が例年以上に丁寧に
(執拗に?)行なわれている。

 8月選考スタートをみんなが守れば、掛け持ち面接がしにくくなり、入社の
意思確認もスムーズになる。確かにその通りだろう。しかし、より優秀な学生
(この定義もあいまいなのだが…)を採用するには、他社よりも早く内定出し
する必要があると考える企業は多い。6~7割の企業が8月以前に内定出しを
行なうという予測データもあり、新スケジュールで足並みをそろえるのは困難
だと言わざるを得ない。

■警戒心を強める大学と国

 「おわハラ」への懸念が高まるにつれ、大学も警戒を強めている。就職問題
懇談会は、『大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期変更に係る企業等
への要請に関する申合せ(※3)』のなかで、具体例を挙げてハラスメント的
な行為を慎むよう明言している。

※3/大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期変更に係る企業等への
要請に関する申合せ
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/02/1355477.htm

 文部科学省は2月に要請文を発表し、周知徹底をはかっている。学生へのハ
ラスメントを含む就職活動の実態調査を全国の82大学・短大で実施して、6月
中旬をメドに結果を公表する予定にもなっている。

 東洋経済オンライン『就活の「おわハラ」、学生は従わなくていい』(※4)
では、労働問題に詳しい笹山尚人弁護士が「就職活動は、憲法22条が保障する
『職業選択の自由』から、自由に行うことができます。(…)採用内定を受け
た場合でも、いつでも自由に内定を辞退することができます(民法627条)。
(…)採用内定を出したからと言って、他社への就職活動を行うことを禁止す
ることはできません」とコメントをよせている。

※4/就活の「おわハラ」、学生は従わなくていい(東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/68933

 採用担当者の厳しい立場は分かるが、だからといって「おわハラ」が正当化
されるわけではない。学生の自由な職業選択を阻害することのないよう、対応
には充分な配慮が必要だろう。

■守るだけが大人の役目ではない

 一方で、学生(とその周囲)に問題がないとも言えない。「オヤカク(親へ
の確認)」をおこなう企業が増えているが、要因の1つには、自分で入社の意
思決定ができない学生の存在がある。

 学生と接していて感じるが、自分自身で意思決定をしない、もしくは、する
必要がなかった学生は意外なほど多い。親の介入と教育サービスの充実により、
本人が考えるよりも先に、周囲が選ぶべき道を用意してしまう。意思決定とい
うトレーニング機会が少なかった学生は、いつまで経っても態度を明確にする
ことができない。それが「おわハラ」を助長してしまう遠因にも感じる。

 病名ができれば病人は増える。意思決定できない自分と向き合うことなく、
「おわハラ」されたと言う学生は増えるだろう。「おわハラ」をなくすために、
規制や制度を整えることは必要だ。同時に、社会人として身につけるべき態度
や能力を得る機会として活用することもできる。

 学生として、舗装された安全な道を歩ける時期はもうすぐ終わる。守るだけ
が大人の役目ではないだろう。円滑に社会生活を送るために必要なチカラとタ
フさを身につけさせることは、「おわハラ」防止にもつながるはずだ。

                        (編集委員 平野恵子)

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3 私が読んだキャリアの1冊

『これだけは知っておきたい働き方の教科書』
                  安藤至大著 ちくま新書 2015.3.10

 日本人の約半数は現に働いている。そしてその8割以上は雇われて働いてい
る。いまは働いていない人も、大半はかつては働いていたか、これから働くこ
とになるか、いずれかだろう。だれしも、自分自身や周囲の経験や見聞を通じ
て自分なりに「働くこと」への理解があるはずだ。学校を卒業して就職すると
きや、転職を考えるときなどはもちろんのこと、将来のキャリアに向けてなに
を学ぶか、といったことを考えるときなどにも、自分なりの「働くこと」に対
する理解をもとに考えたり判断したりしているに違いない。

 しかし、現実をみれば仕事も働き方もその実態は多様であり、自身の限られ
た経験だけをもとにした判断は、往々にして「こんなはずではなかった」とい
うことになりかねない。もちろん、「働くこと」に関する人々の関心は高く、
関連する情報もあふれている。ところが、世間で有識者として尊敬されている
ような人であっても、こと「働くこと」に関しては自身の狭い経験や見聞に頼
った情報を発信していることも少なくないようで、的確な情報を選別し収集す
ることは想像以上に難しい。

 この本は、まさに書名のとおり、「働くこと」や働き方について「これだけ
は知っておきたい」情報が的確かつコンパクトにまとめられた本だ。「いま、
この国で、雇われて働く」とはどういうことなのか、主に経済学と法律の観点
から平明に解説されている。

 第1章「働き方の仕組みを知る」では、働くことの意味・目的から説き起こ
し、企業をつくって人々が雇われて分業することの意味や、働く時間や賃金が
どのように決まるのかを、経済学の基本的な知識をもとに解説される。短期の
収入とともに、長期的なキャリアの重要性が強調される。

 第2章は「働き方の現在を知る」と題され、日本における働き方とそのルー
ルがどのようなものであり、なぜそうなっているのかを、法律の観点を中心と
しつつ、それがいかに形成されてきたのかという歴史もひもときながら解説さ
れている。

 第3章の「働き方の未来を知る」は、今後確実に進展する人口減や技術革新
の進展などをふまえ、働き方やそのルールがどのように変化していくかが予測
されている。現状の仕組みは縮小しつつも維持されるいっぽう、働き方のさら
なる多様化が進み、そのルールもそれに応じて変わるという。

 そして最後の第4章は短いもので「いま私たちにできることを知る」とされ
ている。労使という当事者の立場の違いが大きい中でバランスのとれた視点を
持つこと、法律や自分自身の労働契約について正しい知識・情報を持つこと、
そして今後の変化に備えた学びや人間関係に留意することの重要性が説かれる。

 このように、この本の内容は書名のとおりきわめて基礎的なものだし、将来
予想についてもかなり抑制的なものだ。とはいえ、おそらく多くの人にとって、
この本の内容と自分自身が持っている「働くこと」のイメージとの違いはかな
り大きいのではないかと思うし、世間にあふれる情報にも不適切なものがかな
りあることにも気づくに違いない。

 自分のキャリアを考えるときにはもちろんのこと、キャリア支援を考える際
にも、あるいは公共政策や社会問題を議論する際にも、およそわが国での「働
くこと」について論じるにあたっての必須の知識を与えてくれる本だと思う。
文章も平明でわかりやすいし、実は経済学の入門にもなっている。ぜひ広く読
まれてほしい良書だと思う。

                        (編集委員 荻野勝彦)

※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
 日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

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4 キャリアイベント情報
  -キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します-

◆RIETI(経済産業研究所)政策シンポジウム「正社員改革と多様な働き方実
 現を目指して」

 日 時:2015年7月2日(木)13:30-17:35
 場 所:東海大学校友会館(霞ヶ関ビル35階・東京都千代田区)
https://rieti.smktg.jp/public/seminar/view/24

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5 学会活動ニュース

◆2015年 4月24日(金)
 第58回研究会 於 法政大学市ヶ谷キャンパス  
 テーマ:社員の多様化とキャリア
 講 師:今野浩一郎教授(学習院大学経済学部)

◆2015年 4月25日(土)
 関西支部第17回研究会 於 公益財団法人関西生産性本部 会議室
 テーマ:新卒採用のあり方を考える
 講 師:綾井博之 ロート製薬株式会社 人事総務部 部長

◆2015年 5月22日(金)
 第59回研究会 於 法政大学市ヶ谷キャンパス  
 テーマ:労働時間から考える働くこととキャリア形成
 講 師:溝上憲文氏(ジャーナリスト)

◆2015年 5月31日(日)
 第2回常務理事会 於 学習院大学

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【編集後記】

 産業能率大学は毎年、同大学が実施する新入社員研修の受講者を対象に「理
想の上司」をたずねるアンケート調査を実施していますが、今年の新入社員が
選んだ理想の上司の第一位は男性が元プロテニス選手の松岡修造さん、女性が
女優の天海祐希さんだったそうです。松岡さんは「やる気を引き出してくれそ
う」「自分の強み・弱みを見抜いてくれそう」ということで、かつて指導した
錦織圭選手の活躍も好印象なのでしょう。天海さんは6連覇ということで、こ
ちらは過去に黒木瞳さんが5連覇、真矢みきさんも1位を獲得したことがあり、
宝塚歌劇団強しという感じです。同大学のウェブサイトで結果が公開されてい
ますが、過去の結果なども見るとその当時の雰囲気などが反映されているよう
にも思えて興味深いものがあり、望まれる上司像も時代とともに、というとこ
ろなのでしょうか。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.career-design.org/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
 このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。

【日本キャリアデザイン学会広報委員会】

 青木猛正 埼玉県立特別支援学校校長
 石川了  労務行政研究所
 内田勝久 富士電機株式会社社長室広報IR部
 荻野勝彦 トヨタ自動車株式会社渉外部
 平野恵子 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所
 堀内泰利 慶応義塾大学SFC研究所
 山野晴雄 慶應義塾大学講師

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail info@career-design.org
   〒181-0012 東京都三鷹市上連雀1-12-17
   三鷹ビジネスパーク2号館 ぶんしん出版内

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