キャリアデザインマガジン 第12号

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□    キャリアデザインマガジン 第12号 平成17年3月7日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典 「継続雇用(2)」
2 私が読んだキャリアの一冊 玄田有史「14歳からの仕事道」
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会事務局長交替のお知らせ
・菊地達昭会員((株)NECユニバーシティ取締役、学会常務理事)は2月末
 をもって学会事務局長を退任し、川喜多喬会員(法政大学キャリアデザイン
 学部教授、学会理事)に交替いたしました。菊地会員は引き続き学会常務理
 事として学会運営にあたります。
 なお、学会の連絡先等には変更ありません。

◆中央職業能力開発協会(JAVADA)会員セミナーが開催されます。
 JAVADA会員限定のセミナーですが、日本キャリアデザイン学会会員はとくに
 参加できます
 テーマ:「状況対応(SL)理論とキャリア開発」
     ―リーダーシップスキル理論として著名な状況対応(Situational
      Leadership)理論の解説とキャリア開発―
 日 時:平成17年3月11日(金)13:30~17:00
 場 所:ホテルグランドヒル市ヶ谷
 講 師:今野能志 行動科学研究所代表
     (講師と参加者との間での相互の意見交換やシートなどを活用した
      参加型プログラムを含みます。)
 参加費:2,000円
 申込先:会員番号、会合名、所属・氏名を明記のうえ、
     cdgakkai@hosei.org まで電子メールでお申し込みください。

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1.キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

「継続雇用(2)」

 昨年、老齢基礎年金の支給開始年齢引き上げにあわせて、定年延長、定年制
の廃止または継続雇用制度の導入を企業に義務づける高年齢者雇用安定法改正
法案が成立した。経営サイドがこれに慎重な姿勢を示したのは当然としても、
労働サイドの姿勢も推進を強く主張するというものではなかった。むしろ、た
とえば労働政策研究・研修機構発行の「ビジネス・レーバー・トレンド」2004
年11月号掲載の座談会などでは、労働サイドからも率直な戸惑いが表明されて
いる。これは、今回の法改正に先立って2003年に発表された厚生労働省の「今
後の高齢者雇用対策に関する研究会報告」が、雇用延長のためには現役世代の
労働条件見直しも視野に入れるという、労組にとっても重い内容を含んでいた
ことにもよるだろうが、なにより、(労使ともに)これほど早い時期にこれが
義務化されると考えていなかったことが大きいのではないか。
 過去の経緯をみると、前回、1998年の高年齢者雇用安定法改正で、65歳まで
の雇用延長が努力義務化されている。努力義務というのは、将来的な義務化を
視野に、まずは労使の自主的な取り組みを促そうという性質のものだろうから、
それから6年を経て(これが長いかどうかは議論があろうが)、そろそろ義務
化してもいい時期だ、という判断はあるだろう。しかし、2000年に策定された
「高年齢者等職業安定対策基本方針」には、「向う10年程度の間に65歳継続雇
用制度の普及を図る」と明記されている。さらに、2002年に発表された厚生労
働省の「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」の中間報告でも、
「今後10年間は65歳までの雇用確保を最優先」と記述されている。これをみた
労使が、「義務化は2010~2012年」と考えても不自然ではない。
 また、努力義務というのは、労使をとりまく環境に配慮し、事情の許すかぎ
りなるべく実現するよう努力すべきとの趣旨でもあるだろう。であれば、1998
年以降の日本経済の低迷を考えれば、なかなか努力の余地がなかったのも致し
方なかろう。それでもこの間、雇用延長の導入比率は2割強から3割弱にまで
上昇しているから、努力義務化も一定の効果があったには違いないが、それで
も3割弱という実施率で義務化するのは尚早との感は否めない。
 それでも義務化が行われたのは、同時に審議された年金改革法案との兼ね合
いという政治的意思が働いたものと考えるのが常識的だろう。年金改革の議論
では、年金給付と保険料負担の関係において世代間の公平性が大きな焦点とな
った。しかし、継続雇用などによる雇用延長が「今後の高齢者雇用対策に関す
る研究会報告」がいうように現役世代の労働条件見直しを含むものだとすれば、
ここにも世代間の公平性の問題が発生することになる。さらに、もし高齢者の
雇用が延長されることで若年の新規採用が抑制されるとすれば-それは大いに
ありそうなことだが-そこにはもっと大きな世代間の問題が発生するだろう。
こうしたことに対する議論ははたして十分に行われたのだろうか。
 準備も議論も不十分なままでの義務化は、結局労使双方に大きな負担をかけ
ることになりそうだ。
                        (編集委員 荻野勝彦)

2.私が読んだキャリアの一冊
  ~キャリアに関する本のご紹介です~

 玄田有史著「14歳からの仕事道」 よりみちパン!セ(06)評論社,2005

 この本の「14歳からの仕事道」という書名は、ただちに大ベストセラーの村
上龍著「13歳のハローワーク」を想起させる。中学生をターゲットにした(し
かし大人の読者も十分意識しつつ)「仕事」の本、挿絵をふんだんにまじえた
体裁といった点では、たしかに「13歳」のエピゴーネンであるともいえるかも
しれない。しかし、内容についてはむしろ正反対といえそうだ。
 「13歳」は、仕事の百科全書の体裁をとりながら、むしろ著者の信念の告白
に近い作品であった。その信念のよりどころとなるのは、著者自身のさまざま
な体験や取材の印象、そして独自の倫理観といったものだったといえよう。是
非は別として、少なくともその信念の根拠は科学的なものではなく、したがっ
て大いなる独善ともいえるものであった。
 「14歳」もまた、信念の告白であるかもしれない。しかしそこには、その多
くに著者自身が関与した調査にもとづいた、科学的な根拠がある。それが「14
歳」と「13歳」の決定的な相違であり、作家と社会科学者の違いと言ってしま
えばそれまでだが、どちらがより普遍的な説得力を有するかは明らかであろう。
いずれ「13歳」のブームが去ったあと、「14歳」はますますその輝きを増すに
違いない。
 そのほかにも、この小さな本には優れた特徴がいくつもある。なかでも第一
にあげたいのは、その内容が私のような実務家の実感にもよく一致しているこ
とだ。もちろん、人事管理に非常に近い分野の本でもあり、異論を申し上げた
い点も多々ある。しかし、この本の主要な主張である「やりたいことは簡単に
はみつからない、わからなくてもいい」「わからなくても働こう」「やめたく
なっても粘ろう」などのメッセージは、まことに私のような実務家の実感にあ
う。「13歳」が主張する「早く自分のやりたいことを決めなさい」「自分のや
りたいことを仕事にしなさい」「サラリーマンやOLになることを考えるのは
おやめなさい」といったメッセージが、私のような実務家にはひどい違和感を
覚えさせることとは対照的だ。
 第二にあげたいのは、たしかに大人も意識してはいるだろうが、本気で「14
歳」のために書かれているらしいということだ。それは日本の現実、実情をし
っかりふまえて書かれているということでもある。だからこの本には、「日本
では認められない個性ある若者が海外で飛躍する」などといった陳腐な、それ
でいて多くの人々にとってはおよそ非現実的なお話は出てこない。「日本の労
働市場は、企業の人事管理はかくあるべきだ」といった議論も出てこない。あ
くまで普通の(ということばは著者は好まないようだが)14歳にとって現実的
な対処が述べられる。これは実に誠意ある姿勢といえよう。ちなみに本づくり
においても、平明でくだけた表現が心がけられ、多くの漢字にはふりがなが付
されている。あまり長くないのもよい。著者独特の(悪い表現をお許しいただ
きたい。悪意はない)ちょっと拗ねたような語り口も、14歳にはむしろ自然に
受け入れやすいものではあるまいか。これも、「13歳」が子ども向けを装いな
がら、妙に難解・晦渋な内容が多かったり、現実的でない事例を多用したり、
すぐに社会や企業に対する批判が展開されたりするのとはまことに対照的だ。
 第三に、この本は「キャリア」という用語を避けているという(本文にはそ
うは書かれていないが、「オビ」には、「この本には『キャリア』というコト
バは出てきません。でも、…ほんとうのキャリア教育の本です」と書かれてい
る)。その真意は明らかにされていないので、想像するしかないのだが、しか
しこれはある意味において私もおおいに共感する。「キャリア」というコトバ
には、「職業的成功」というイメージがぬきがたくつきまとう。実際、「キャ
リア官僚」という語を持ち出すまでもない。「丸の内キャリア塾」などといっ
たセミナーの類で語られるのも、だいたいは転職成功者の自慢話ばかりだ。私
は特段キャリアについて見識があるわけでもなんでもないが、しかし本当の意
味での「キャリア」がそんなものではないとは思う。「キャリア」というのは
職業生活だけに限らず、職業をその重要な一部として含む人生全体をいかに生
きるか、ということだろうと思うし、「キャリア教育」もそうした観点から進
められてほしいと思う(これは人事担当者としての願いでもある)。こうした
意味で、私は著者がこの本で「キャリア」というコトバをあえて避けたことに
共感を覚える。
 これらのほかにも、この本にはよい点、共感できる部分が多い(申し上げた
い点も多々あるが)。多くの14歳にとってこの本は、著者のいう、目的も手段
もわからぬままに「頑張る」のではなく、「冷静にファイトする」ための指針
となりうるものではないかと思う。大いに売れて、大いに読まれることを期待
したい。
                        (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆労働政策研究・研修機構 国際フォーラム「少子化問題と働き方を考える
 -仕事と生活の両立に関する欧米の取り組み-」
 3月11日(金)13:30~17:00
 於 大同生命霞ヶ関ビル6階(東京都千代田区)
 http://www.jil.go.jp/event/ko_forum/info/050311.htm

◆法政大学キャリアデザイン学部 第3回地域連携シンポジウム
 「地域活動とキャリアデザイン-神楽坂で働く、生活する-」
 3月12日(土)13:00~17:30
 於 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー26階スカイホール
 講師:研究者のほか、作家(佐野眞一、森まゆみ)、神楽坂老舗経営者など。
 http://cd.i.hosei.ac.jp/index.cfm/4,852,102,html

◆私のしごと館 David A.Jepsen講演会
 「アメリカにおけるキャリア教育と日本におけるキャリア支援課題」
 3月16日(水)14:40~16:30
 於 私のしごと館ワークショップルーム1(関西文化学術研究都市)
 http://www.shigotokan.ehdo.go.jp/watashi/ne050216.html

[編集後記]

 今年もまた、いわゆる「春闘」がスタートしましたが、高齢法改正をうけて
「60歳以降の雇用」を議論する労使も多いようです。また、次世代育成支援法
にもとづく「行動計画」も、4月1日以降速やかに届け出なければなりません
から、これについて話し合いを持つ労使も多いでしょう。このいずれも、働く
人のキャリアに大きな影響のあるテーマです。すでに先進的な労組が取り組ん
でいるように、労働運動もこれからは賃金や労働時間といった労働条件ばかり
ではなく、キャリア支援などへの取り組みが求められることになるのでしょう。
キャリアデザインという観点からも、春闘が注目される時代になったのかもし
れません。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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