■□□—————————————————————-
□□
□ キャリアデザインマガジン 第113号 平成26年2月3日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
——————————————————————□■
「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 学会からのお知らせ
2 キャリア辞典「グローバル人材(5)」
3 私が読んだキャリアの1冊
アレックス・マルティン著『大切なことは みんなピッチで教わった
名将グアルディオラ58の教え』
4 キャリアイベント情報
5 学会活動ニュース
———————————————————————-
1 【学会からのお知らせ】
◆第55回研究会
テーマ 「ゲーム産業における開発者のキャリア発達:仕事・生活・学習の
観点から」
講 師 専修大学ネットワーク情報学部講師 藤原 正仁
東京大学生産技術研究所特任研究員 松原 健二
ポリゴンマジック株式会社代表取締役 鶴谷 武親
司会 日本IBM 平林 正樹
日 時 2014年2月22日(土)14:00~16:00 (13:30開場)
場 所 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナード・タワー25階
イノベーション・マネジメント研究センター セミナー室
http://www.hosei.ac.jp/access/ichigaya.html
定 員 先着40名
参加費 会員/無料、一般/3,000円(事前申込み制)
詳 細 http://www.career-design.org/pub/t055.html
———————————————————————-
2 キャリア辞典
「グローバル人材(5)」
この平成26年1月20日に開催された産業競争力会議において「産業競争力の
強化に関する実行計画(案)」が示された。これは、昨年打ち出された成長戦
略、日本最高戦略などをふまえて制定された産業競争力化法に基づき、成長戦
略関連の重点施策の実行を加速化・深化するため策定されたものであり、当面
3年間に実施される、規制・制度改革を中心とする施策について、実施期限や
担当大臣を明示したものであるという。その一項目として「グローバル化等に
対応する人材力の強化」が掲げられており、担当大臣は文部科学大臣とされて
いる。
具体的には、まず「人材・教育システムのグローバル化等の積極的な改革を
進める大学への支援の重点化を行うため、「スーパーグローバル大学」対象校
を平成26年度前半に選定する」とされている。これは日本再興戦略において
「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に我が国の大学が10校以上入る
ことを目指す」「人材・教育システムのグローバル化による世界トップレベル
大学群の形成」などと記載されたことを受けたもので、文部科学省の平成26年
度予算案によれば世界水準の教育研究を進める「トップ型」10件と、積極的な
国際教育によって海外で通用する人材を育てる「グローバル化牽引型」20件を
指定するという。予算額は従来のグローバル人材育成推進事業を組み替えた経
済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援42件とあわせて9,900百万円
となっている。
続けて「グローバル・リーダーを育てる教育を行う新しいタイプの高等学校
を創設するため、「スーパーグローバルハイスクール」指定校を、平成26年度
前半に選定する」とされている。文部科学省の資料によればその目的は「急速
にグローバル化が加速する現状を踏まえ、語学力とともに、幅広い教養、問題
解決力等の国際的素養を身に付け、将来的に政治、経済、法律、学術等の分野
において国際的に活躍できるグローバル・リーダーを、高等学校段階から育成
する」というものであり、事業概要については「国際化を進める国内外の大学
や企業、国際機関等と連携を図り、外国語(特に英語)を使う機会の飛躍的増
加、先進的な人文科学・社会科学分野の教育の重点化等に取り組む高等学校等
を「スーパーグローバルハイスクール」に指定し、質の高いカリキュラムの開
発・実践やその体制整備を支援」するものとされている。すでに公募が始まっ
ており、4月上旬には内定・指定の運びとなるという。文部科学省の平成26年
度予算案では、平成26年度の指定は50校、予算は807百万円となっている。
これらの施策は、すでに実施されているグローバル30やスーパーサイエンス
ハイスクールなどと同様、特定の学校に資源を集中することで成果を得ようと
するものといえようが、より普遍的な施策としては「平成29年度までに学習指
導要領を改訂することを念頭に、小・中・高等学校における指導体制の強化、
外部人材の活用促進、指導用教材の開発など、初等中等教育段階からのグロー
バル化に対応した英語教育の環境・体制整備に平成26年度から所要の措置を講
じる」とされている。現状小学校5年から実施している外国語活動を小学校3年
からに前倒しし、5年からは教科とする、中学校の英語は日本語を使わずに原
則英語のみで実施するなど、小学校からの英語教育を強化するとともに、日本
人としての主体性、アイデンティティーに関わる国語や歴史教育を充実し、高
校日本史の必修化も検討されるという。
その他、「平成30年までに国際バカロレア認定校等を200校へ大幅に増加さ
せるという目標に向け、一部日本語による国際バカロレアの教育プログラム
(日本語DP)を平成28年度から開始する」「平成32年までに「留学生30万人計
画」を実現することを目指し、関係省庁が連携し、優秀な外国人留学生の戦略
的な受入れを推進するとともに、日本人海外留学生数を12万人に倍増させるた
め、日本人の若者の海外留学をきめ細かく支援する官民が協力した新たな仕組
みを平成26年度から創設する」など、国際交流の拡大をめざす政策が掲げられ
ている。日本人留学生の拡大にむけては、すでに「トビタテ!留学Japan」プ
ロジェクトがスタートしている。
職業人として、世界を相手にグローバルに活躍する人材を育成するには、学
校教育だけでは限界があるだろうが、これらの取り組みはそのための素材を育
てるには効果的であろう。もちろん、必ずしもすべての人が職業人としてグ
ローバル人材であることは要しないわけだが、これからビジネス、観光問わず
外国人の来日が増加することが望まれる・見込まれる中では、国内でも外国人
と抵抗なく接することができるような教育も必要であろう。これらの施策が奏
功することが期待される。
(編集委員 荻野 勝彦)
———————————————————————–
3 私が読んだキャリアの1冊
『大切なことは みんなピッチで教わった 名将グアルディオラ58の教え』
アレックス・マルティン著、金子一雄訳 飛鳥新社出版 2013年12月
サッカー、ラグビー、駅伝に関心が高いわけではないが、この季節はチーム
プレーが冴えわたるスポーツ観戦に胸が踊る。けして諦めずゴールを目指す選
手の姿、歯切れの良い言葉から心が動かされることもある。サラリーマンであ
る私にとっては貴重なエネルギー源だ。今年はブラジルでサッカーワールドカ
ップもあることから深夜のTVサッカー観戦は、リフレッシュに一役買っている。
ACミランの背番号10を担う本田選手が、ワールドカップ予選大会中に、チー
ムプレーができるのは生まれながらに持った能力で、勝ち残り上を目指すため
には、どうやって自立した選手として個人の力を高めることが重要だと、冷静
に語っていたことは、今でも私の記憶に深く刻まれている。ここでは、この年
末年始に読んだ本の中から、FCバルセロナの監督として、史上最強ともいわれ
たチームを作り上げ、2013年からはFCバイエルン・ミュンヘンで指揮をとるジ
ョセップ・グアルディオラアの選手時代から現在に至るキャリアの中で大切に
した「哲学」、「信条」を、著者のスポーツライターであるアレックス・マル
ティンが書き上げた(金子 一雄 訳者)「大切なことは みんなピッチで教
わった 名将グアルディオラ58の教え」を紹介したい。
この本は、グアルディオラア氏がサッカー選手として、また、監督として
「スタジアム」の中だけではなく、「キャリア」、「人生」というピッチの中
でも活かせる、物事の捉え方、価値観やストラテジ(戦略)をさまざまな角度、
事例を取り上げて紹介している。人生といった長いリーグ戦には、さまざまな
事態が待ち受けている。「あるとき一つの決断を下すと、そこから次の決断へ
と導かれ、ついには一つの結果を手にすることになる」とあるように、攻撃と
守備への気構え、運命を決する審判とは誰なのか、ベンチを温める身となった
ときどうするか。スポーツマインドは企業で働く私にとっても共感できる。そ
んなメッセージが盛りだくさんだ。きっとこの本を読んだ人は、「敗北ほど人
を育むものはない」といったフレーズに触れた瞬間、心にこみ上げるものを感
じるに違いない。大きな変化や、逆境に直面したときに、安易に危険を避けて
通るほど危険な道はないことも知るはずだ。読後感としては、希望を絶やさな
いこと、謙虚であること、成功を手にするために不可欠な事など、広い世代に
共感できる素材が織り込まれている。
グアルディオラア氏は、1990年からFCバルセロナ(スペイン)で守備的
MFの選手として活躍。リーガ・エスパニョーラ優勝6回、スペイン国王杯優
勝2回、2001年から2006年にイタリア、カタール、メキシコでプレーして引退。
2008年から2012年までFCバルセロナの監督としてリーガ・エスパニョーラ優勝
3回、スペイン国王杯優勝2回、そしてFIFAクラブワールドカップ優勝2回
(2009年、2011年)で、通算116勝25分11敗、2013年からFCバイエルン・ミュン
ヘン(ドイツ)の監督として11勝0敗2分(2013年11月27日現在)と、選手時
代、現監督としても活躍をしている。
さて、本題に入ろう。この本は、8部で構成されている。最初にインパクト
のあるメッセージは「揺るがない「自分の軸」をもつ」ところだ。日々を過ご
す姿勢、日頃の行動について述べられている行から、とにかく慎重で謙虚であ
ることが基軸として繰りえされる。それは戦い、競争あるいは、商談や研究開
発、ものつくりも同じであろうが、勝負は、運命の女神が微笑み、思い通りの
結果が得られた時でも、有頂天になること、手放しで喜ぶことは禁物と示して
いる。努力の賜物、出来不出来の場合もあれど、勝利に浮かれ、紙一重のとこ
ろにあった敗北の可能性が見えなくなることは、とても危険な状態であること
に気づかされる。後段で「反省をしない限り、いつの日かよくない結果をもた
らすことになる。」と冷静に解説している。ある意味、今に満足するな。とい
うところと理解する。
私がよく経験することだが、読者アンケートの分析で、わかりやすかった70%、
普通25%、わかりにくい5%という結果が出たときのこと。チームの議論で70点取
れたから満足だという。普通を合わせれば95点だ。ここで、私の役目は、なぜ、
普通の25%がわかりやすいに○をつけなかったのか、考察を投じることだ。アン
ケートの記述があれば、手を打ちやすいが、読者はそんなに親切ではない。こ
こが知恵の出しどころであり、次へのモチベーション、若手のキャリア形成に
つながると考える。普通でも満足しないことに改めて共感できた。
一方で、逆風に耐え、順風を呼び込む努力が必要になることも、この年にな
って改めて思い知らされた。勝負の敗北のショックを引きずられずに、次の勝
利の糧とする。勝ち続けているときは慢心しないことである。人は、常に勝ち
続けることはできない。人生には、喜びがあり、勝利もある一方で、自分が望
む結果がどうしても得られない場合もけっして少なくない。筆者は、真の勇者
が見せる美徳のひとつは、負け方の心得、敗北を毅然と、そして謙虚に受け入
れる態度であるとメッセージを送っている。2011年のスペイン国王杯の決勝戦
で宿敵レアル・マドリードに敗北を喫した際、監督のグアルディオラア氏と選
手たちが示した姿勢だ。レアルのジョゼ・モウリーニョ監督と選手たちが栄誉
のトロフィーを手にする輝かしい光景を、誰もがその場で毅然と見守っていた。
「いつか勝利することがあれば、それはこの敗北のおかげだ」。痛恨の敗北を
喫した試合のあとで、グアルディオラア氏が語った言葉として紹介されている。
自らの敗北を毅然と受け入れてこそ、人はそれまでの行動やあり方を根本から
見直し、目指すべき真の姿に向けて己を深く改められる。まさに、キャリアの
充電期間だ。戦うものは、皆いい負け方を心がける。それは次の勝利のために
とある。ストレートな物言いが新鮮だ。
私の持論のひとつに、サラリーマンのプロになることがある。この言葉は、
若手やチームの仲間に、機会があるごとに話してしまうフレーズだ。それは、
みな、必ずしも自分が好きな職種につかなくてはいけないわけではないことだ。
自分が就きたい職種、業務やポジションにつけずとも、仕事に対して愛と誇り、
そして情熱を抱いている人は少なくない。誰しも、いつどんなときに思いもし
なかったチャンスに恵まれ、思いもしなかった新たな道を歩めるかもしれない。
だからこそ、私たちは自分がやりたいと思っている仕事に固執するだけでなく、
自分が今取り組んでいる仕事を愛する姿勢が大切なことを次のメッセージで締
めくくっている。それは、グアルディオラア氏が語った言葉「謙虚であること。
人間を豊かに育む源泉。」であることだ。「私の仕事をこなせる人間は、ほか
にもたくさんいると思う。この自分を選んでもらったことが私の唯一の手柄だ」
にも現れている。謙虚(humildad)という言葉は、そもそもラテン語の語源を
たどると、この世界の基となる大地(humus)を意味している。すべてを豊かにし、
肥やし、育む源泉にほかならない。まさに、謙虚は私たち人間、そしてキャリ
アデザインを豊かに育むものと身を引き締める機会になった。
(編集委員 内田 勝久)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
———————————————————————–
4 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆日本人材マネジメント協会(JSHRM) ≪HR Cafe≫
テーマ 「思い」を共有し、組織全体を巻き込めば人は育つ
日本航空(JAL)の復活を支えた「社員の幸福の追求」~私たちが真剣
に取り組んできたこと~
日 時 2014年2月7日(金)18:45開場 19:00開演~21:00
講 師 日本航空株式会社 意識改革・人づくり推進部
教育・研修 グループ長 板谷 和代
詳 細 http://www.jshrm.org/event/hrcafe_5147.html
場 所 日本生産性本部 生産性ビル セミナー室
(JR渋谷駅 徒歩7分、渋谷区渋谷3-1-1)
参加費 JSHRM会員1,000円、一般2,000円、
会員引率による一般参加1,500円 ≪当日現金払い≫
◆産学協働人材育成推進フォーラム「産学が協働した人材育成の新たな鼓動」
主 催 京都産業大学、新潟大学、成城大学、福岡工業大学
日 時 2014年2月7日(金)13:00~16:00
場 所 アルカディア市ヶ谷(私学会館)東京・市ヶ谷
参加費 無料
本フォーラムでは、近年のASEAN諸国での産学協働教育の普及・推進を中心的
に担われたタイにおいて「コーオプ教育の父」と呼ばれ、元文部大臣である
スラナリー工科大学創設者の Prof. Dr. Wichit Srisa-anをお招きします。
タイ及びASEAN諸国における経緯と現状についてお話いただき、日本は何を学
ぶべきなのか、考える機会にしたいと思います。
また、経済産業省産業人材政策室室長補佐 中島大輔氏による講演「今後の教
育的効果の高いインターンシップのあり方」、パネルディスカッションも行
います。
詳細・参加の申込みは以下のURLよりお願いします。
http://www.kyoto-su.ac.jp/more/2014/305/20140207_forum.html
———————————————————————-
5 学会活動ニュース
◆2013年12月7日(土)
第54回研究会 於 法政大学
テーマ 「働きやすい職場の実現」を目指すワークルール教育
講 師 道幸 哲也(放送大学教授、北海道大学名誉教授)
コメンテーター 山本 圭子(法政大学講師)
司 会 平林 正樹(日本IBM)
参加者 約30名
◆2013年12月22日(日)
第5回10周年記念事業委員会 於 法政大学
-10周年記念誌の内容について協議し概要を確定
◆2013年12月23日(月)
2013年度第1回常務理事会・研究委員長合同会議 於 法政大学
-第11回研究大会、役員選挙、研究組織委員会報告、2014年4月以降の
事務局体制、その他
———————————————————————-
【編集後記】
今年の春季労使交渉がいよいよ本格化します。労使とも賃上げの必要性につ
いては一致しており、経団連が6年ぶりにベースアップ容認する方針に転じ、
各業界や主要企業の労組がベースアップを要求する方針を打ち出しています。
ベースアップについては慎重な企業も多いようですが、経済の回復、企業の業
績回復、賃金の上昇の好循環になるよう期待したいものです。一方、今や雇用
者の38%を超える非正規社員の処遇改善が大きな課題であり、賃金上昇の流れ
が非正規社員の処遇改善にも繋がっていくこと期待したいと思います。(H)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
□□■—————————————————————-
□
日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。
編集委員:青木猛正(埼玉県立特別支援学校校長)
荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社渉外部)
山野晴雄(慶應義塾大学講師)
内田勝久(富士電機株式会社社長室広報IR部)
堀内泰利(日本電気株式会社人事部)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail info@career-design.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
—————————————————————-□□■