キャリアデザインマガジン 第11号

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□    キャリアデザインマガジン 第11号 平成17年2月21日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 私のキャリア観 大阪大学社会経済研究所教授 大竹文雄(4)
2 キャリア辞典 「継続雇用(1)」
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆平成17年3月4日(金)開催予定の学会研究会(講師:玄田有史 東京大学
 社会科学研究所助教授)は、定員に達しましたので、受付を終了させていた
 だきました。多数の申し込みありがとうございました。

◆中央職業能力開発協会(JAVADA)会員セミナーが開催されます。
 JAVADA会員限定のセミナーですが、日本キャリアデザイン学会会員はとくに
 参加できます
 テーマ:「状況対応(SL)理論とキャリア開発」
     ―リーダーシップスキル理論として著名な状況対応(Situational
      Leadership)理論の解説とキャリア開発―
 日 時:平成17年3月11日(金)13:30~17:00
 場 所:ホテルグランドヒル市ヶ谷
 講 師:今野能志 行動科学研究所代表
     (講師と参加者との間での相互の意見交換やシートなどを活用した
      参加型プログラムを含みます。)
 参加費:2,000円
 申込先:会員番号、会合名、所属・氏名を明記のうえ、
     cdgakkai@hosei.org まで電子メールでお申し込みください。

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1.私のキャリア観
  ~「キャリア」をめぐる有識者インタビューです~

「所得格差とキャリアデザイン(4)」(4回連載・最終回)
                 大阪大学社会経済研究所教授 大竹文雄

【第4回】幸福度とキャリア

---その人さまざまということなのですが、先生は幸福度についても関心を
お持ちとのことですが、幸福度というのはまさに人さまざまで、研究も難しい
のではないかと思うのですが。

大竹 まあそうかもしれませんが、それでも客観的な指標で、世界的に共通な
特徴があることもわかっているのです。日本でも同様な特徴がみられます。若
年は高齢者より幸福、高所得者は低所得者より幸福、女性は男性より幸福、と
いったものです。あるいは、所得が同じ人で比較しても、失業者は有業者より
不幸だ、というのも世界的に共通しています。ただ、女性でも、世帯主で一家
の生計を支えている人の幸福度は男性並みであるというのも各国共通です。家
庭責任を負うということは不幸の源泉なのですね(笑)。

---しかし、所得が同じなら、失業者は仕事をしなくていいわけですし、自
由時間も多いのですから、働いている人より幸福でもいいはずですね。

大竹 経済学的には、今だけ考えれば理屈ではそうなるはずですよね。失業者
が不幸だというのは、以前の自分と比較しているからではないかと思います。
以前働いているときにはもっと所得があって、それと比べると今は不幸だ、と
いう心理が働いているのでしょう。

---なるほど、働いて同じ所得を得ている他の人と比較してどうか、ではな
いのですね。

大竹 そうです。これは、実はキャリアを考えるうえでとても大切なことなの
です。つまり、人間には過去にこだわってしまうという心理的な特性があると
いうことを、あらかじめ予期しておくことがキャリアを考えるうえで重要なの
です。たとえば、技術革新がおこってそれまで蓄積した技能がある程度無駄に
なってしまった、あるいは不幸にして失業してしまった、というときですね。
そうなると、前はどうだったからとか、これだけ技能を蓄積したのにもったい
ないから、同じ仕事に就きたいと思ってしまうのが心理的には自然です。しか
し、客観的に考えたらこの先どうか、ということしか意味がないわけですね。
これまで技能形成に投資してきたとしても、それが不良債権になってしまって
いたら、それにこだわるのは無駄なことです。将来この技能はどれだけ役にた
つのか、将来どういうキャリアを形成するか、ということだけを考えればいい
わけです。

---企業経営でも、サンクコストにこだわって判断を誤る、ということはあ
りがちですし。

大竹 そうなんです。そこはだれでも間違うのです。大事なことは、間違うと
いうこと、間違う傾向にあるということを知っておく、ということです。当然、
人間ですから後悔を重くみますが、そこから離れて客観的に物をみれば、いま
の技能で得られる賃金はどれだけか、それを上げるためにはどういう訓練をし
たらいいか、を知ったうえで、その後悔のコストと折り合って、この先のキャ
リアをどうしていくのがいいのか、考えることができると思います。

---あるコンサルタントに、失業者はコンサルタントにこれまでの経験を生
かすにはどうすればよいかを相談にくるが、コンサルタントは失業者にこれま
での経験をいかに忘れさせるかに労力の大半を費やす、という話を聞いたこと
があります。

大竹 それはありそうな話ですね。それが大事なのだと思います。私も、いま
は絶対に読まないけれど、捨てられない本というのがある。それは学生時代の
とても貧乏なころに苦労して買った本で、いまは本棚の場所をふさいでいるだ
けで、二度と読まないとわかっているけれど、それでもあれだけ苦労して買っ
た、ということを思うと捨てられない。それとまったく同じことがキャリアに
ついてもいえます。あれだけ苦労して腕を磨いてきたのにと思うと、なかなか
それ以外の仕事ができない。キャリアは一冊の本よりはるかに重いですから、
なかなか簡単には割り切れないでしょうが、しかし、これからのキャリアは、
これまでのキャリアよりもっと重いのだということに目を向けることが大事な
のだと思います。

 大竹 文雄(おおたけ ふみお)
 大阪大学社会経済研究所教授。経済学博士。労働経済学専攻。
 著書に「労働経済学入門」(1998、日経文庫)、「労働問題を考える」(2001、
 大阪大学出版会)、「解雇法制を考える-法学と経済学の視点」(2002、共編
 著、勁草書房)ほか多数。
                 (聞き手・文責:編集委員 荻野勝彦)

2.キャリア辞典
  ~「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです~

 「継続雇用(1)」

 昨年の高齢法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)改正により、「継
続雇用」がキーワードとなっている。今年のいわゆる「春闘」でも、ホットイ
シューのひとつとなりそうだ。
 この「継続雇用」という言葉、高齢法ではすでに今回の改正前から定義され
ている。改正前の同法第9条は「定年(65歳未満のものに限る。以下この条に
おいて同じ。)の定めをしている事業主は、当該定年の引上げ、継続雇用制度
(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も
引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入又は改善その他の当該高
年齢者の65歳までの安定した雇用の確保を図るために必要な措置(以下「高年
齢者雇用確保措置」という。)を講ずるように努めなければならない。」と定
めている。これによれば、継続雇用制度とは「現に雇用している高年齢者が希
望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」という
ことだから、継続雇用は「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該
高年齢者をその定年後も引き続いて雇用すること」ということになる。これだ
けだと定年後に何歳まで雇用するのかがはっきりしないが、同条は「当該高年
齢者の65歳までの安定した雇用の確保を図る」としているから、当然65歳まで
ということになるだろう。この努力義務が一部例外付きで段階的に義務化され
たのが今回の法改正ということになる。法文上は「継続雇用」の定義は改正前
と変わっていないが、今回は義務化ということで、その解釈が通達で示されて
いる(平16.11.4職高発第1104001号)。それによれば「雇用の形態については、
必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものでは
なく、本措置を講じることを求めることとした趣旨を踏まえたものであれば、
常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含めて多様な雇用形態を含
むものであること。」となっている。つまり、「希望者全員」の「雇用」が確
保されるのであれば、その形態は幅広く認められるということだ。したがって、
厚生労働省の継続雇用のPR用パンフレットなどをみると、登録型派遣会社に
登録しているだけでは継続雇用とは認められないが、子会社への転籍出向であ
っても雇用が確保されるならば(その担保のために子会社に対する明確な支配
力や雇用確保の労使慣行の存在などが求められている)継続雇用と認めようと
いうのが行政の見解のようだ。
 さて、改正前の第9条をもう一度見てもらうと、「当該定年の引上げ、継続
雇用制度」となっている。改正法の9条は、「当該定年の引上げ」「継続雇用
制度の導入」に加えて、「当該定年の定めの廃止」も上げられている。という
ことは、定年延長や定年制の廃止は継続雇用とは別だということになる。字面
だけをみれば、定年延長や定年の廃止でも継続して雇用されるには違いないか
ら、これらも継続雇用に含まれるのではないかと思うのが普通だと考えられそ
うなものだが、そうではない。となると、高齢法上は「継続雇用」はいったん
定年退職してからあらためて雇用される、すなわち通常は「再雇用」と称され
るものに限られるということになりそうだ(理屈上は「希望者全員の定年延長」
というのもありうるだろうが、これは実質的には希望者に限らず全員を定年延
長するのと同じことだろう)。それをあえて「継続雇用」と呼んだ理由は不明
だが、勝手に想像すれば、努力義務規定が定められた当時は再雇用というと希
望者全員ではないものが一般的だった(現在も、努力義務化の成果もあってそ
れなりに増加はしているが、多数ではない)ので、あえて異なる用語を使用し
たものだろうか。
                        (編集委員 荻野勝彦)

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆中央職業能力開発協会 人材育成戦略講座
 「地域企業の活性化と主体的キャリア形成」
 3月1日(火)10:20~16:15
 於 新潟東急イン(新潟県新潟市)
 http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/jinzai/jinzai_2004_4.html
 日本キャリアデザイン学会会員は、参加費15,000円のところを13,000円にて
 参加できます。会員番号、会合名、所属・氏名および受講証等の送付先を必
 ず明記のうえ、cdgakkai@hosei.org まで電子メールでお申し込みください。

◆高齢・障害者雇用支援機構 平成16年度エイジフリーシンポジウム
 「年齢にかかわりなく働くことができる社会の実現を目指して」
 3月1日(火)13:00~16:40
 於 東京ドームホテル「オーロラ」(東京都文京区)
 http://www.jeed.or.jp/activity/festa/symposium_agefree.html

◆こども未来財団・日本フィランソロピー協会
 次世代育成における「企業」と「NPO」の協働推進フォーラム
 3月2日(水) 11:30~18:30
 於 弘済会館4階(東京都千代田区麹町)
 http://www.philanthropy.or.jp/training/seminar/jisedai.html

◆労働政策研究・研修機構 国際フォーラム「少子化問題と働き方を考える
 -仕事と生活の両立に関する欧米の取り組み-」
 3月11日(金)13:30~17:00
 於 大同生命霞ヶ関ビル6階(東京都千代田区)
 http://www.jil.go.jp/event/ko_forum/info/050311.htm

◆法政大学キャリアデザイン学部 第3回地域連携シンポジウム
 「地域活動とキャリアデザイン-神楽坂で働く、生活する-」
 3月12日(土)13:00~17:30
 於 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー26階スカイホール
 講師:研究者のほか、作家(佐野眞一、森まゆみ)、神楽坂老舗経営者など。
 http://cd.i.hosei.ac.jp/index.cfm/4,852,102,html

[編集後記]

 今回の「キャリア辞典」には、これまでと大きく?違うところがあるのです
が、お気づきでしょうか。実は、「外来語・カタカナ言葉」以外のことばを取
り上げたのは今回が初めてなのです。最近では、意味のわかりにくい外来語が
多すぎるということで、その一部を日本語で言いかえようという動きもありま
すが、キャリアデザイン(これもカタカナ言葉です。外来語といえるかどうか
は疑わしいところもあるようですが)関係の用語も、けっこうカタカナ言葉が
多いようです。もちろん、外来語だからよくないということはないでしょうが、
「日本」キャリアデザイン学会というからには、外来語を使うにしても単なる
舶来品の輸入ではなく、日本の社会・経済の実態にあったものにしていきたい
ものだと思います。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
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このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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