キャリアデザインマガジン 第106号

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□    キャリアデザインマガジン 第106号 平成24年10月22日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □———————————————————–

1 キャリア辞典「グローバル人材」(1)

2 私が読んだキャリアの1冊 佐藤博樹『人材活用進化論』

3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会中京支部は、以下のとおり研究会を開催します。

 日 時:平成24年11月4日(日) 13:30~16:30
 場 所:ウインクあいち 1001号室
 テーマ:「静岡方式でいこう!
            行動療法を学ぶ180分情熱・愛あふれる実践体験」
 講 師:静岡県立大学教授 津富宏氏
 定 員:先着100名
 参加費:会員 無料 / 一般 1,000円
      ※終了後、交流会を実施します(会費4,000円)。
 概 要:http://www.career-design.org/content/view/290/41/
 申込み:https://www.hosei-web.jp/fm/10239

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり北陸・新潟地区交流会キャリア
 教育シンポジウムを開催します。

 日 時:平成24年12月1日(土) 13:00~17:00
 場 所:福井県国際交流会館 2階研修室
 テーマ:「キャリア教育の方向性と効果を考える」
 講 師:京都大学高等教育研究開発推進センター准教授 溝上慎一氏
     新潟大学キャリアセンター准教授 西條秀俊氏
     福井大学教育地域科学部准教授 遠藤貴広氏
 参加費:会員・一般とも無料
      ※終了後、懇親会を実施します(会費4,000円)。
 概 要:http://www.career-design.org/content/view/291/1/

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1 キャリア辞典

「グローバル人材」(1)

 もはややや旧聞に属するが、この(平成24年)7月11日の国家戦略会議に提
示された「日本再生戦略(原案)」をみると、多岐にわたる記載の中に「豊か
な語学力・コミュニケーション能力等を身につけ、国際的に活躍できるグロー
バル人材への需要はますます増加しており、グローバル人材育成戦略を踏まえ、
国際的に誇れる大学教育システムを構築するとともに、日本人学生等の海外交
流促進と質の高い外国人学生の戦略的獲得、国際化対応ビジネス人材の育成を
図る。」との記載がある。この「グローバル人材育成戦略」は新成長戦略実現
会議のグローバル人材育成会議がとりまとめたものであり、さらにそれに先立
って経済産業省は2010年に「産学人材育成パートナーシップグローバル人材育
成委員会」の報告を発表し、文部科学省は、2011年に「産学連携によるグロー
バル人材育成推進会議」の報告を発表している。いまや「グローバル人材」は
わが国の人材戦略の中核となっているかのようにも見える。

 しかし、「グローバル人材」とはどのような人材なのだろうか。それぞれの
定義をみてみよう。

 まず、経済産業省の委員会は「グローバル化が進展している世界の中で、主
体的に物事を考え、多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、顧客等に自
分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する
価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更には
そうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、
新しい価値を生み出すことができる人材」と定義している。

 次に、文部科学省の推進会議では「グローバル人材とは、世界的な競争と共
生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、
広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越え
て関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造
する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間」とい
う定義が与えられている。

 そして、国家戦略室のグローバル人材育成戦略では、「豊かな語学力・コミ
ュニケーション能力や異文化体験を身につけ、国際的に活躍できる「グローバ
ル人材」」という記述があり、さらに「「グローバル人材」の概念を整理する
と、概ね、以下のような要素が含まれるものと考えられる。要素I:語学力・
コミュニケーション能力 要素II:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調
性・柔軟性、責任感・使命感 要素III:異文化に対する理解と日本人として
のアイデンティティー」と整理されている。

 記述のスタイルが異なるので比較・共通化は難しいが、これらから「グロー
バル人材」の要素を最大公約数的に取り出すとすれば「日本人としてのアイデ
ンティティを持つ」「言語・文化・価値観の違いを受け入れ、コミュニケーシ
ョンする」「それらの違いから新しい価値を生み出す」といったものになろう
か。主体性や協調性といった職業人としての徳目はこれらのバックグラウンド
として要請されるということであろう。これらはグローバル企業の多くが重視
しているダイバーシティ・マネジメントの考え方、多様性を価値に結びつける
という戦略に非常に近いものがある。

 今後、ビジネスに限らずグローバルな活動が増加していけば、こうした人材
もおのずと増えるには違いない。いっぽう、ビジネスのグローバル化に人材供
給が追いついていないとの指摘もある。たとえば、経済産業省が委員会にあた
り実施した「グローバル人材育成に関するアンケート調査」によれば、企業の
海外展開にあたっての課題として「グローバル化を推進する国内人材の確保・
育成」をあげた企業は全体の74.1%にのぼり、最多となっている。であれば、
グローバル人材の育成はたしかに国家的な課題と言えるのだろう。

                        (編集委員 荻野勝彦)

2 私が読んだキャリアの1冊

『人材活用進化論』     佐藤博樹著 日本経済新聞出版社 2012.5.22

 長期にわたる経済成長の停滞を「失われた20年」と呼ぶことがあるが、この
20年はわが国の労働市場や人事管理が大きく変動した時期でもあった。企業は
長期にわたる停滞への対応を迫られ、それによる人事管理の変化は必然的に労
働市場へと波及していった。

 本書では、人事管理研究の第一人者である著者がこの間を通じて積み重ねて
きた調査・研究の成果がまとめられている。内容は序章とI~IVの4部からなり、
Iの「日本型雇用処遇」では1960年代から70年代にかけて形成された日本型雇
用システムと、その近年の動向が概観される。IIの「人事管理」では、雇用区
分の多元化、成果主義人事、および企画型裁量労働制などのトピックについて
掘り下げて論じられる。IIIの「就業形態と働き方」においては、就業形態の
多様化について多様な視点から分析されている。そしてIVの「労使関係」では、
この時期における集団的労使関係について述べられている。わが国人事管理の
激動期を多角的に捉えた総合的総括としてきわめて貴重な業績といえるだろう。

 本書の特徴としてまず第一に挙げなければならないのは、ともすれば情緒的
に論じられがちなこのテーマにおいて、事実ベースで冷静に議論されているこ
とであろう。実際、「成果主義」「非正規雇用問題」「就職超氷河期」などな
ど、この時期の人事管理・労働市場をめぐるキーワードは往々にしてジャーナ
リスティックに語られ、あるいは政治的に弄ばれてきた。「年越し派遣村」と
その後の派遣法改正論議に典型的にみられるように、少数のセンセーショナル
な目立つトピックばかりが着目され、政策論もそれに引きずられて近親眼的な
印象論、感情論に傾きがちであった。そうした中で、本書にあるような事実
ベースで現実を明らかにする調査研究は、ともすれば軽視され、ときに敵視さ
れることすらあった。それにもかかわらず、地道に調査を継続してきた著者ら
の貢献はまことに大きいように思われる。

 第二に、調査の視野の広さを挙げたい。もとよりすべてを網羅することは期
待すべくもないが、まえがきにあるように「就業者の価値観など労働サービス
の担い手に着目」していることも特徴だろうし、この間労働研究の関心が個別
的な人事管理や労働市場におけるマッチング、あるいは教育・職業訓練などに
急速にシフトしていった中で、集団的労使関係にもしっかりと目配りがされて
いることも特筆されるべきだろう。その観点も未組織企業、苦情処理、権利理
解といった今日的なものである。

 第三に、充実した調査にもかかわらず政策インプリケーションは抑制的であ
り、かつ現実的で多様性を重視した建設的なものであることが挙げられよう。
それは書名の『人材活用進化論』にも端的に表明されている。もちろん、人事
管理や労働市場の現状はおよそ理想的な状態に近いとはいえないし、本書も指
摘するとおり多くの問題点が残されているのが現実だろう。身近な経験を踏ま
えた個人の立場からは本書のような統計的な調査への違和感もあろう。しかし、
この現状が労使関係の当事者である政労使三者が、それぞれに内外の環境変化
に対応すべく生き残りをかけて真摯な努力を傾けてきた結果であることも間違
いない。進化論を提唱したダーウィンの『種の起源』”On the Origin of
Species”には”by Means of Natural Selection, or the Preservation of
Favoured Races in the Struggle for Life”という長い副題がついていて(実
際にはこのすべてが書名らしい)、有名な「強いものではなく環境変化に対応
するものがよりよく存続する」という考え方が示されているが、著者の人事管
理や労使関係、労働市場の変化に対する理解もそのようなものなのだろう。環
境変化に異をとなえることはたやすいが、それを止めることは事実上できない。
時計の針を逆に回すことはできないし、多様性を否定することにも意味はなか
ろう。今後も続くであろう変化に対して、いかによりよく対応していくのか、
著者の観点は常にそこにあり、それゆえその提案は建設的である。

 政策は事実をもとに立案・実行されるべきであり、またその効果も事実をも
とに評価され、次の施策に生かされなければならない。そこにおける本書のよ
うな調査研究の重要性は言うまでもない。加えて、わが国企業労使は変化への
即応、あるいは変化を先取りしての対応を志向するが、その上で目先の派手な
事象に惑わされずに的確な対応をとるためにもこれら事後的な調査とその含意
は有益であるに違いない。著者の衰えぬ研究意欲に今後も期待したい。

                        (編集委員 荻野勝彦)

 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。

3 キャリアイベント情報
  ~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~

◆独立行政法人労働政策研究・研修機構政策フォーラム「経営資源としての労
 使コミュニケーション 」

 日 時:平成24年11月9日(金)13:30~17:00
 場 所:大阪国際交流センター大会議室さくら(大阪市天王寺区)
 http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20121109/info/index.htm

【編集後記】

 ロンドン五輪での日本代表選手の活躍を応援された方も多いことと思います
が、実はあの中のかなりの選手が高校・大学卒業後に就職が決まっておらず、
フリーターをやりながら強化に取り組んでいるケースも多いのだとか。日本オ
リンピック委員会(JOC)は日本代表候補の就職支援活動に取り組んでおり、
強化費用は原則として国や競技団体が負担するため就職先企業の負担は「基本
的に賃金だけ」とのことです。JOCのウェブサイトをみると就職先は必ずし
も大企業とは限らないようで、「会社の同僚が五輪代表選手」ということで、
企業の知名度のみならず、職場の一体感や企業に勤める誇りが高まる効果も非
常に大きいとのこと。トップアスリートのキャリア支援が広がることを期待し
たいものです。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.career-design.org/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
 
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
 このメールマガジンの文責はすべて執筆者にあり、日本キャリアデザイン学
会として正確性などを保証するものではありません。

 編集委員:青木猛正(埼玉県立特別支援学校塙保己一学園教頭)
      荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社渉外部)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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