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□ キャリアデザインマガジン 第100号 平成22年8月16日発行
日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/
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「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。
□ 目 次 □———————————————————–
1 キャリア辞典「セーフティネット」(3)
2 私が読んだキャリアの1冊 生駒俊樹『実践キャリアデザイン』
3 キャリアイベント情報
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【学会からのおしらせ】
◆第7回研究大会・総会の参加募集を開始いたしました。
テーマ:キャリア・ルネサンス-逆境からの挑戦-
日 時:平成22年10月23日(土)・24日(日)
場 所:神戸学院大学ポートアイランドキャンパス(主宰校)
〒650-8586 神戸市中央区港島1-1-3 Tel.078-974-1551(代表)
http://www.career-design.org/content/view/187/1/
◆関西支部では、以下の要領にて、関西支部研究大会を開催する予定です。
日 時:平成22年11月23日(火)13:00~17:00
場 所:関西大学千里山キャンパス第三学舎
※詳細は決定次第学会ホームページなどでご案内します。
◆2010年度第4回研究会
日 時:平成22年8月28日(土)14:00~16:00
テーマ:「いっしょに働きたくなる人」の育て方
マクドナルド・スターバックス・コールドストーンの人材育成研究
講 師:見舘好隆 北九州市立大学キャリアセンター准教授
参加費:会員/無料 非会員/3,000円
会 場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階
http://www.career-design.org/content/view/186/1/
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1 キャリア辞典
「セーフティネット」(3)
2008年、サブプライム問題や原油価格の高騰などを受けて日本経済の原則が
鮮明となった。9月にはリーマン・ショックもあり、雇用失業情勢も急速に悪
化した。年初に3%台だった完全失業率は年末には5%台半ばに達し、1倍近か
った有効求人倍率も0.7倍に急落した。
これを受けて、当時の自公連立政権は8月に「安心実現のための緊急総合対
策」、10月には「生活対策」、さらに12月には「生活防衛のための緊急対策」、
そして翌2009年4月には「経済危機対策」と矢継ぎ早に4次にわたる総合経済対
策を打ち出したが、雇用対策、さらには雇用のセーフティネットは、はその重
要な項目として注目された。
「安心実現のための緊急総合対策」で注目されるのは、訓練期間中の生活保
障給付制度の導入だろう。これは、失業給付が終了してなお再就職できない、
あるいはそもそも失業給付が受けられない失業者が、生活保護の対象とならな
ければ収入が途絶してしまうという問題に対応するものだ。また、収入を確保
するために低技能・低賃金の仕事を掛け持ちし、求職活動や職業訓練にあてる
時間が確保できないという問題にも対応している。これは、失業者に対する第
一のセーフティネットである雇用保険に続くものという意味で「第二セーフテ
ィネット」と称された。当初、「安心実現のための緊急総合対策」には直接的
な言及はなく、そこでうたわれた「ジョブ・カード制度の整備・充実」の一環
として技能者育成資金制度を拡充するという変則的な方法で導入されたが、そ
の後政権交代の前後を通じて拡充がはかられ、現在ではこれを「求職者支援制
度」として恒久化することが検討されている。
続く「生活対策」では「雇用のセーフティネット強化対策」が一項目として
掲げられた。その記述をみると「景気後退による雇用の影響が最も出やすい非
正規労働者、中小企業や地方企業を中心にセーフティネットを強化し、60万人
分の雇用下支え強化を行う」とされており、具体的には年長フリーター等(25
~39歳)を正社員雇用する事業者に対する特別奨励金の創設や「非正規労働者
就労支援センター」の増設、ジョブ・カード制度の拡充(ここでは雇用型訓練
に対する助成の拡充とあわせて「訓練期間中の生活保障給付の返還免除対象者
の拡大」も明記されている)などが実施に移された。さらに、雇用調整助成金
の要件緩和・助成率引上げや、中小企業を対象に雇用維持をさらに手厚く支援
する中小企業緊急雇用安定助成金の拡充も掲げられた。さらには、「ふるさと
雇用再生特別交付金」の創設とそれを活用した雇用機会の創出といったものも
含まれている。
しかし、リーマン・ショック後の雇用調整は従来になく急速なものとなり、
雇用失業情勢も一段の悪化が余儀なかった。雇用不安が拡大し、年末の「生活
防衛のための緊急対策」では雇用対策を具体的施策の最初に掲げるに至ること
となる。
(編集委員 荻野勝彦)
2 私が読んだキャリアの1冊
『実践キャリアデザイン-高校・専門学校・大学』
生駒俊樹編著 ナカニシヤ出版 2010.7.10
「多摩地区高等学校進路指導協議会」という団体をご存知だろうか。その名
のとおり多摩地区の国・公・私立の高等学校約120校が参加し、進路指導に関
わる情報交換や実践報告、企業・大学のヒヤリング・見学などを行う研究会を、
50年近く(!)にわたって毎週(!)継続しているという。まことに驚くべき
勤勉さだが、編著者の生駒俊樹氏は長年にわたってこの会の事務局長を務め、
自身も進路指導の実践を蓄積してきた。
進路指導にはこのように長い歴史があるわけだが、90年代後半の「就職超氷
河期」を境目に、その役割や期待は大きく変化した。もちろん、新卒就職を果
たせなかった人は従来からいたし、将来の夢を実現するためにあえて時間的・
空間的な自由度の高いアルバイトなどの働き方を選択する人もいた。新卒就職
後三年の退職率(中卒7割・高卒5割・大卒3割=いわゆる七五三)も実は長期
的にそれほど変動していない。その一方で、不本意ながら新卒で正社員就職が
できない、あるいは正社員就職しても退職し、その後正社員として再就職でき
ない若年者が増加した。その多くは非正規雇用での就労となり、雇用が不安定
なだけではなく、技能蓄積やキャリア形成が進みにくく、したがって労働条件
も向上しにくいという問題を抱えた。あるいは、就労もせず、教育訓練も受け
ないという状況に追い込まれる例も増加した。こうした中で、まず正社員就職
させること、さらに容易に退職させないこと、そのための指導や教育が強く要
請されるようになった。
とはいえ、それが極めて困難な営みであったことも想像に難くない。確立さ
れた手法があるわけではなく、試行錯誤を余儀なくされただろうし、他方には
さまざまなツールを売り込んでくる業者やコンサルタントもいる。それらには
有益なものも多いだろうが、しかし彼らは結果に責任を持つわけではない。
この本は、編著者自身の高校・大学それぞれでの経験を含めた、進路指導・
キャリア教育の実践事例集と言ってよいだろう。副題にあるように、第1部が
高校、第2部が専門学校、第3部が大学にあてられていて、高校については実践
事例が2例とハローワーク所長からのヒヤリング記録、専門学校は実践事例が2
例、そして大学については実践事例が3例と研究者による解説記事が2本という
構成になっている。
とりわけ興味深いのが、実践事例の紹介であることは言うまでもない。専門
学校はもとより、高校・大学もそれぞれに個性を有する学校において、その個
性に応じたキャリア教育が行われているようすを、具体的な生の事例を交えな
がら紹介している。文体は書き手の個性が現れつつもおしなべて抑制的だが、
しかし実践の背後にある苦心は窺われて余りあるし、個別事例の一般化には慎
重であるべきだが、しかしその見解には説得力がある。いずれの事例もさらに
詳細・多数の具体例を知りたいと思わされるし、実践者の苦闘振りをもっと伝
えてほしいとも感じさせられるが、それはコンパクトな本なので致し方のない
ところなのだろうか。
逆に、コンパクトにまとめられているだけに、進路指導担当教諭やキャリア
センターのスタッフが多忙の中を縫って通読し、さまざまなヒントを得るには
好適といえるのだろう。また、非常に読みやすい本だけに、進路指導やキャリ
ア教育を受ける側である学生や保護者にも一読をすすめたい。指導する側の考
え方や努力を周知した上で指導を受けることは、その効果を大いに高めるので
はないかと思う。
最後に私個人の感想を述べると、民間企業の一人事担当者として、進路指
導・キャリア教育に携わる人たちの熱意と苦心をこの本を通じて再確認し、こ
うした苦労を通じて送り込まれた新入社員をしっかり育成し、定着させていき
たいものだとあらためて感じた。同業の諸氏にもぜひ手にとってもらいたい本
だと思う。
(編集委員 荻野勝彦)
※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。
3 キャリアイベント情報
~キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します~
◆日本生産性本部メンタルヘルス研究所第32回メンタルヘルス大会「働きがい
のある職場・希望が持てる組織」
平成22年9月2日(木)13:00-17:20、3日(金)9:30-16:30
於 ホテル ラングウッド(東京都荒川区)
http://www.js-mental.org/images/04/taikai32.pdf
◆学習院大学経済経営研究所(GEM)第3回公開ワーク・ライフ・バランス(WL
B)カンファレンス「勤務医・看護師におけるWLB」
平成22年9月9日(木)13:30-17:00
於 学習院大学 目白キャンパス 西2号館 2F 201教室(東京都豊島区)
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/eco/gem/wlb_20100909.html
【編集後記】
おかげさまをもちまして、本「キャリアデザインマガジン」は本号でめでた
く?第100号となりました。創刊が平成17年9月ですので、ほぼ5年を要した計
算になります。隔週刊の建前からすればもう1年早く到達しているはずだとい
うツッコミは御容赦いただいて(笑)、今後ともご愛読のほどお願い申し上げ
ます。(O)
【日本キャリアデザイン学会とは】
・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。
学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
http://www.career-design.org/
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日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
無断転用はお断りいたします。
編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
e-mail cdgakkai@hosei.org
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
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