一億総活躍やダイバーシティが叫ばれて久しいですが、厚労省が目標を掲げ従業員101名以上企業に公表を求めて旗を振るも日本の女性管理職比率は依然として低水準、活躍しているはずの女性からの「ワンオペ」の悲鳴が鳴りやみません。ビジネスケアラー(仕事と介護を両立する個人)も現在300万人を超えると言われていますが、法整備としても各企業の動きとしても十分な対策と取られているとは言えない状況です。先行研究でも指摘される通り、出産後の就業継続や介護と仕事の両立においては、家庭・職場・制度的要因が複合的に影響するため、一個人、一企業の取り組みでは対応に限界があります。以上のような問題意識を背景に、本研究会では、ハウス食品グループの「ダイバーシティを“社員と会社の”力に変える」ための取り組み(介護支援施策を中心に)を事例として、ファミリー・キャリア(個人ではなく、家族としてのキャリア)の視点から話題提供いただき、個と組織が共に栄える持続的で明るい社会を築くために、キャリアデザインができることを考えます。

2026年3月29日(日)14:00~17:00(受付13:30~)
対面(会員限定)
公益財団法人関西生産性本部 会議室
〒530-6691 大阪市北区中之島6-2-27 中之島センタービル28階
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根耒伸至(ハウス食品グループ本社 人材戦略部/関西支部役員)
加藤淳子(ハウス食品グループ本社 ダイバーシティ推進部)
吉見弓子(京都美術工芸大学キャリアサポートセンター/関西支部役員)
無料(会員限定の開催です)
50名(事前申込制)
締切延長 2026年3月23日(月)
*先着順(定員になり次第、締切らせて頂きます)
[報告者:村田 州央(株式会社アソウ・ヒューマニーセンター他・関西支部役員)]
3月29日(日) 関西生産性本部にて、日本キャリアデザイン学会関西支部第30回研究会が開催され、22名の会員が参加されました。講師として、ハウス食品グループ本社㈱人材戦略本部の根耒伸至氏、同社ダイバーシティ推進部の加藤淳子氏にご登壇いただきました。
根耒氏の発表では「ファミリー・キャリア」の概念が紹介され、個人だけでなく家族単位でキャリアをとらえる視点から、会社の取り組みをご報告いただきました。介護や育児は個人の問題として扱われがちですが、ハウス食品グループ様では「個人が職場や会社だけでなく、家庭にも所属している」という視点に立って介護・育児支援の課題を検討されていました。取り組みのきっかけは社内グループワークにおいて、女性社員から「様々なキャリアに挑戦したいが、夫のキャリアもあり自分一人の意思では決められない」という声が挙がったことでした。この気づきを起点に、Avivah Wittenberg-Cox(2018)の「ファミリー・キャリアモデル」や、Jennifer Petriglieri(2022)の「デュアルキャリア・カップル」の理論を基として、社内での実践を検討されたとのことです。
ハウス食品グループ様では、全ての活動の根幹となる考え方として「3つの責任」が掲げられており、その内の一つである「社員とその家族への責任」を果たすための中期計画の中でダイバーシティを推進されています。育児休暇制度の利用促進は、休暇取得者が制度を知っているだけでは十分ではなく、上司の制度理解を促すことで、職場で計画的な取得ができるよう本人・上司・人事部の3者面談制度などを拡充されています。育児休暇取得の「経験」が多様性につながり、製品開発のアイデアにつながった事例もご紹介いただきました。
加藤氏からは、介護支援制度の取り組みについてご紹介がありました。介護支援制度も中期計画の中に位置づけられており、介護を理由にした休職・離職の防止をリスク回避のための先行投資とされています。まだ介護に直面していない社員に対しても、将来の課題を「自分ごと」として捉えられるよう啓発が行われていました。介護は多くの社員の身近に発生しうる話題にもかかわらず、個人の問題と認識されがちな背景には、業務との密接度が低いことや、話題の性質上、職場で口にしにくいといった側面があるのではないか、との考察も示されました。
質疑応答では踏み込んだ議論が展開され、登壇者両氏の立場から深い洞察をいただく実りある時間となりました。特筆すべきは、ハウス食品グループ様が掲げる「社員と家族への責任」という理念です。採算や利得といった短期的視点ではなく、経営理念を根幹に据えた取り組みである点が強調されました。労働者本人だけでなく、その家族までを包括した「ライフキャリア」の視点に立つ環境づくりは、家族間の相互作用を肯定するものです。個人の問題として抱え込まれがちな介護や育児を社会全体で取り組むべき課題と捉え直す、画期的な事例報告となりました。



関西支部第30回研究会担当役員
吉見弓子(京都美術工芸大学キャリアサポートセンター)
堀越ひとし(関西生産性本部)