本学会は、研究者と実務家がそれぞれの枠を越えて交流しているところに特徴があります。現場の知恵を「現場の経験則」の中で閉じずに、社会に向けて発信する方法の一つが「論文を書くこと」です。一方で、働きながら論文を書くことには、さまざまな壁があるのも事実です。これまで本セミナーでは、量的研究・質的研究などの研究手法、資料論文・事例紹介論文の書き方などを扱ってきました。
今回はあらためて、「働きながら研究の入り口に立つ」とは何かを、実際の経験に即して掘り下げます。講演者は、経済団体に所属して、実際に働きながら論文執筆に取り組んでいる 佐藤憲 さんです。
『働きながら論文を書くということ』というテーマのもと、次の点などを中心にお話しいただきます。
・どのような問題意識から研究をしてみようと思ったのか(研究のモチベーション)
・仕事と研究の両立について
・二次分析のススメ

19:00~19:05 趣旨説明(田澤)
19:05~19:45 講演(佐藤)
①自己紹介
②これまでの研究の概要
③働きながら論文を書くということ
19:45~20:30 質疑応答
2026年3月19日(木) 19:00-20:30 (会員限定)
佐藤憲(経済団体所属/当学会研究組織委員会委員)
大学卒業後、経済団体に入所し、中小企業支援に従事する。その後、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科を修了。勤務の傍ら、企業家のキャリア研究およびアントレプレナーシップ教育の効果に関する研究を行っている。現在は博士後期課程に在籍中。主な論文に、「性別の差が後継者選抜と事業承継後のパフォーマンスに与える影響」(『キャリアデザイン研究』No.16、2020年)、「大学生の企業家的志向性と就職活動の結果」(『企業家研究』No.21、2023年)などがある。
田澤 実(法政大学キャリアデザイン学部教授/当学会研究組織委員会委員長)
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2026年第1回研究・実践力向上セミナーでは、「働きながら論文を書くということ」をテーマに、実務と研究を両立しながら論文執筆に取り組むことの意義や方法について考える機会となりました。
当日は、経済団体に所属しながら研究活動を継続している佐藤憲氏を講師に迎え、田澤実氏が聞き手を務めました。講演では、佐藤氏ご自身がどのような問題意識から研究を始めたのか、また、実務経験をどのように研究テーマへと結びつけてきたのかについて、具体的な経験を交えながらお話しいただきました。
特にテーマ設定において、『入り口は狭くとも、本質的な問題に繋がる奥行きの深いテーマ(10年考え続けられるテーマ)』を持つことの重要性が伊丹敬之氏の言葉を引いて語られました。現場での小さな違和感や矛盾を学術的な問いに昇華させ、さらに学会誌の厳しい査読を経て批判に向き合う『苦楽しい』経験自体が、社会人のキャリア形成や思考力の鍛錬に直結するという指摘は、大きな説得力を持っていました。
あわせて、仕事・生活・研究を両立させるうえでの時間管理の工夫や、限られた時間の中でも研究を継続するための習慣づくりについて、実践的な示唆が数多く示されました。たとえば佐藤氏は、「時間は見つけるものではなく、あらかじめ割り振るものだ」という考え方を紹介し、通勤時間を文献講読に充てることや、締切から逆算して手帳に予定を書き込むことの重要性を指摘しました。
こうした工夫は、これから研究を始めようとする社会人にとっても、具体的な手がかりとなる内容でした。さらに、社会人研究者にとって有効な方法として、既存の公開データを活用する二次分析の意義や可能性も紹介され、実証研究に取り組むハードルを下げる具体的な手立てが提示されました。
質疑応答では、実務経験の中からどのように研究課題を見いだしていくのか、子育てや仕事と研究をどのように両立していくのかといった点について、参加者との間で活発な意見交換が行われました。たとえば、子育てと研究の両立に関する質問に対しては、土日の午前中などを夫婦で事前に調整し、それぞれが研究や自分の時間を確保することの大切さが語られました。また、その際には単に時間を確保するだけでなく、「なぜ自分が研究をするのか」「それがどのような社会的意義につながるのか」を身近な相手にも丁寧に伝えることが、理解と協力を得るうえで重要であるという指摘もありました。
こうしたやり取りは、研究継続の条件を考えるうえで、参加者にとって大きな示唆となりました。働きながら研究の入り口に立つことの難しさだけでなく、その中にある可能性や広がりについても具体的に共有される、示唆に富んだセミナーとなりました。


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