2024年、「日本の伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本酒は嗜好品やアルコール飲料という枠を超え、今や“継承すべき文化“として世界的に認められる存在となりました。今回のキャリアデザインライブでは、「SAKEから観光立国 伝統と革新をつなぐキャリアデザイン」をテーマに、日本酒を通じた文化発信・地域活性・国際交流の第一人者である平出淑恵氏をお招きします。
平出氏は、日本航空(JAL)国際線客室乗務員として勤務する傍ら、ソムリエの資格を取得。「日本酒をワインのように、世界に誇れる存在へ」との思いから、日本酒の国際化と評価向上に尽力されてきました。世界最大級のワイン品評会「IWC」にSAKE部門を創設し、日本酒の世界的評価基準づくりにも関わるなど、グローバルな舞台で活躍されています。現在は、株式会社コーポ・サチの代表取締役として、「SAKEから観光立国」をスローガンに掲げ、教育・品評・プロモーションの三位一体による「SAKEの国際戦略」を展開。世界70か国以上で展開されるワイン教育機関WSETにSAKE講座を導入し、国際的な専門家育成にも力を注いでいます。また、外務省の在外公館長赴任前研修では日本酒講座の講師を務め、文化外交の一翼も担っていらっしゃいます。
当日は、平出氏のこれまでのキャリアの歩みをたどりながら、日本酒を通じて「伝統」と「革新」をどうつなぎ、地域と世界をどう結びつけてきたのかを語っていただきます。日本酒の試飲も予定しており、五感で文化を味わいながらのライブとなります。「日本酒は日本そのもの」――この言葉に込められた思いとともに、キャリアの可能性を探るひとときを、ぜひご一緒に。

2025年11月25日(火)19:00~20:45
※終了後、有志による簡単な懇親会を予定しています。
参加希望の方は、下記申込フォームにて(ライブ+懇親会)の項目を選択ください。あくまでも有志による懇親会ですので、支払いは当日割り勘とし、領収証の発行などはできませんのでご承知おきください。
VORT SPACE 茅場町 9F オープンスペース
東京都中央区日本橋茅場町1-11-3 (東京メトロ 茅場町駅 3番出口から徒歩0分)
>アクセスはこちら
30名(先着順)
【平出淑恵】(ひらいで としえ)
株式会社 コーポ幸(コーポサチ) 代表取締役
<略 歴>
1962年4月27日、東京生まれ。 1983 年、日本航空入社、国際線担当客室乗務の傍ら1992年日本ソムリエ協会認定ソムリエ、1997年シニアソムリエ資格取得。
JAL在職中の2006年に、社外活動として若手の蔵元の全国組織「日本酒造青年協議会」の酒サムライ活動に参画し、世界最大規模のワインコンペティション(IWC)に日本酒部門創設。2010年希望退職。翌2011年、日本酒の国際化から観光立国を目指す「株式会社コーポ・サチ」代表取締役に就任。
<主な役職>
・酒サムライコーディネーター(日本酒造青年協議会)
・IWC (インターナショナルワインチャレンジ)アンバサダー
・昇龍道大使(中部・北陸インバウンド推進)
・外務省 在外公館長赴任前研修 日本酒講座講師
・総務省地域力創造アドバイザー ほか
【稲垣 久美子】
東京成徳大学特任教授/当学会研究会企画委員会委員
会員/1,000円、非会員/3,000円(利き酒費用含む)
※いずれも事前の申込みが必要です。
※ライブ後の懇親会へ参加希望の方は、当日実費をお支払いいただきます。
※学会員の方は、会員サイトにログインの上お申込みください。
(ログイン前の申込みの場合は会員料金が適応されませんのでご注意ください)
※定員に達し次第申込は締め切らせていただきます
※申込期限:11月21日(金)までにお支払いが確認できない場合はキャンセルとさせていただきます。
今回のキャリアデザインライブでは、酒サムライコーディネーターとして日本酒の国際化や地域振興に長年取り組まれ、各界で高く評価されている平出淑恵さんをお迎えし、「SAKE から観光立国~伝統と革新をつなぐキャリアデザイン~」をテーマに開催されました。会場の「VORT SPACE 茅場町」には約20名が集まり、世界で認められた日本酒を試飲しながらの熱量あふれるライブとなりました。
平出さんは 1983年に民営化前の JAL に国際線 CA として入社され、月20日を海外で過ごす生活の中でワイン文化と出会ったそうです。世界各地のワイナリーを訪れ、生産者の想いと地域文化に触れるうちに、「良いワインのある地域は訪れたくなる場所になる」という確信を持つようになったとのことでした。その後、利き酒師・ソムリエ・シニアソムリエなど多様な資格を取得し、学びを深める過程で初めて訪れた京都の酒蔵で、日本酒の奥深さと文化的価値に衝撃を受けたそうです。「利き猪口の中には日本がつまっている」という言葉が象徴するように、日本酒を“世界に誇る文化資源”と捉えたことが、後の活動の原点となったと語られていました。
一方で、当時の日本酒業界は 1970 年の 3,533 社から 2019 年には 1,563 社へ減少するなど、国内消費の減退により「斜陽産業」と言われる状況でした。しかし、平出さんは、日本各地の酒蔵が持つ歴史・技術・文化に注目し、「世界的ブランドに必要な要素は十分揃っているのに、その価値が世界に知られていない」と感じ、「このギャップにこそ、日本酒の未来を切り拓く余地がある」と考えたそうです。
そこで平出さんは、JAL 在籍中から社外活動として日本酒の国際化に取り組まれました。第一歩は“ 教育(Education)” 。世界最大級のワイン教育機関WSET に SAKE コースの開設を働きかけ、日本酒を体系的に学ぶための国際的教育基盤をつくり上げていきます。続いて “ 評価(Competition)”として、世界最大級のワインコンペティション IWC に SAKE部門を創設。国際的審査員による品質評価を通じ、日本酒の価値を世界に発信する仕組みを構築することに成功します。そして“ 発信(Promotion)” として、世界18か国に 108名の SAKEアンバサダーを生み出し、佐賀県鹿島市の酒蔵ツーリズムをはじめ、多くの地域が観光振興に成功するきっかけをつくりました。
講演を通じて強く印象に残ったのは、平出さんのキャリアが単なる専門性の積み重ねではなく、「経験の再意味づけ」によって創られてきたという点です。国際線 CA として世界を飛び回った経験、地方空港で感じた寂しさ、娘の運動会で目にした少子化の現実 そ――れら一つひとつの気づきや感情が、やがて“日本酒を通じて世界に日本文化を発信する“と いう大きな使命へとつながっていく。経験の点が線に繋がっていくキャリアプロセスを体現されていました。個人が抱いた“違和感” や“危機感” を社会的価値へと転換するプロセスは、まさにキャリアデザインそのものであり、会場にいた参加者一人ひとりが、心を動かされていたように思います。
平出さんは「ワインの世界でできることは、日本酒でもできる」という確信のもと、教育・評価・発信という三位一体の仕組みを自らの行動で形にしてきました。その歩みは、個人のキャリアが社会課題の解決へ広がる可能性を示す好例であり、そのお話を聞きながら素晴らしい日本酒を試飲して味わうという、まさに“ライブ”の名にふさわしいひとときでした。当日の日本酒の試飲は3種類。佐賀県の「鍋島」、福島県の「会津ほまれ」、岩手県の「南部美人」と、どれも最高に美味しく、個人的には喉越しの良い「鍋島」が特に印象に残っています。
日本酒を通して日本文化を世界に伝える精力的な取り組みとともに、一人の働き手が“自らの生き方を軸にキャリアを編み直していく”姿、「一人のただの CA が、人とのご縁や周囲に恵まれてここまでやってこれた」と語る平出さんの生き方に、参加者一人ひとりが大きな学びと勇気をいただいたライブでした。
研究会企画委員会