私のキャリアデザイン

「キャリアデザイン教育を実践する」
元桜華女学院高等学校教頭
山野 晴雄
「キャリアデザイン教育を実践する」

進路指導30年
私が高校教師になってから30年間、校務分掌は進路指導部でした。公立高校はもちろん、私立高校でも30年間、ずっと同じ校務分掌というのは、たぶん例がないと思います。教師になって3年目の1976年に専修学校制度が発足し、進路指導部の専門学校担当になりましたが、このことが、その後の私の教師人生を大きく変えることになりました。

高校では、専門学校への進路指導は大学進学指導と就職指導の狭間におかれ、生徒にきちんと指導・援助ができる教師はほとんどいませんでした。最初は私もその一人に過ぎず、専門学校の実態を知らないまま、専門学校情報誌を生徒に配付して学校見学に行かせるだけの、指導とはいえない「指導」をしていました。その結果、何人もの生徒が中途退学していたのです。それを知ったとき、生徒のために何もしてこなかったことに気づき、愕然としました。それが、私を専門学校研究、進路指導研究に導いていく契機となりました。
先進的な実践例に学びながら専門学校への進路指導を実践するとともに、多摩地区高等学校進路指導協議会や東京都高等学校進路指導協議会の活動にも関わり、地域での高専連携、高大連携の取り組みを進め、また、ひろく進路指導のあり方を研究し、自校で進路学習を実践することにも取り組んできました。そうした経験を積み重ねる中で、全国高等学校進路指導協議会の活動、特に『高校生の進路ノート』の編集等で進路学習教材の開発・研究に関わることができたことは、その後、自校で総合学習を核としたキャリアデザイン教育を取り組むことになり、3年間のプログラムを作成するときに役立ちました。

総合学習「人間・生きる」
2003年に新学習指導要領が施行されることになり、新しく設定された「総合的な学習の時間」を学校としてどのように取り組むかが検討されましたが、そのとき私が提案したのが、「生き方・働き方」の学習に焦点をあてた教育活動に取り組み、生徒たちが、自分の人生と生き方(人生の課題)を社会のあり方(現代の課題)と重ねて選択し、未来に向けて自覚的に生きていく力を身につけていくことことをねらいに、キャリアデザイン教育に取り組むことでした。幸い私の提案が承認され、総合学習「人間・生きる」として取り組んでいくことになりました。

私が総合学習の3年間のプログラムを組むときに留意したのは、『高校生の進路ノート』の教材作成の経験から、これまできちんとプログラムの中に入れられなかったことを取り入れることでした。具体的には、(1)現代社会におけるさまざまな生き方や働き方、産業構造や職業、労働の実態などについて、きちんとした科学的認識を獲得させること、(2)将来、職業的自立を果たしていくために、専門性や専門的な知識・技術を身につけるための道筋をつけさせるとともに、自らの専門的力量を発揮し、充実した働き方ができるように、職場そのものを改善していけるような力量を身につけさせること、の2つを意識してプログラムを組むことでした。そこで総合学習では、(1)進路講演を取り入れ、男性優位の社会の中で女性としてどのように生きていったらよいかを考えさせる1年次の「女性とキャリアデザイン」、2年次の「男女共同参画の時代を生きる」、「変わる社会・変わる女性の生き方」、就職して働く女性として知っておくべき法律について考え、正規雇用者と非正規雇用者の労働条件の違いや実態について考える「働く女性に必要な法律」をテーマとした講演を行うこと。ふり返りの時間があるときはグループで話し合ったりしながら自分の考えをまとめるワークを入れること、(2)1年次に職業インタビュー、2年次にジョブ・シャドウイングの取り組みを行い、職業理解を深めるとともに、職業と学業とのつながりを考えさせること、(3)大学・専門学校の教職員による模擬授業体験を1・2年合同で実施し、また、進路講演「大学の『知』を学ぶ」を設定して、学問の世界に触れさせ、進学への道筋を考えさせること、(4)ゼミ形式での課題研究を取り入れ、希望進路に関わらせて研究課題を見つけ、調査研究し、レポートにまとめること、この4点をプログラムとして取り入れました。

3年間のプログラムには、自己理解を深めること、職業や卒業後の具体的な進路を考え、情報を収集したり調査研究すること、それをふまえてキャリア・プランを描いてみることといった、多くの高校で行われているプログラムも含まれています。ただ、多くの高校では、自己理解→情報収集→進路の選択・決定という「積み上げ型」で行われているのに対して、本校では、どの学年でも、自分のことを見つめ直すことと、現在の社会はどうなのかというということを見つめ直すことを同時に行うようにした、いわば「循環型」のカリキュラムになっていることが特徴だと考えています。

本校では、2009年度から、コース制による教科教育と総合学習を核としたキャリアデザイン教育の両輪で、生徒の総合的な力を育んでいくことにしています。

キャリアデザイン教育は、総合学習を核としつつも、教科、特別活動を含む学校の全教育領域を有機的に関連させて取り組む必要があります。しかし、現状はまだ各教職員が、キャリアデザイン教育という視点で教育課程をつなぐ意識をもち、実践するまでにはなっていないところがあり、共通理解を深めつつ取り組んでいくことが、これからの課題となっています。4月には校内のキャリアデザイン教育研究会が発足するのを契機に、学校における「勉強」を、生徒が主体的に取り組める「学び」とすること、そのために各学年の実践を検証しつつ、生徒が将来の自分の生き方に希望と展望がもてるような知識や力量を獲得できるように、プログラムの改善と充実を図っていきたいと考えています。

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